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つぐない Atonement

●「つぐない Atonement」
2007 イギリス Unversal Pictures,Working Title Films,Relativity Media,
Studio Canal  123min.
監督:ジョー・ライト 原作「イアン・マキューアン『贖罪』
出演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、シアーシャ・ローナン、ヴァネッサ・レッドグレイヴ
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<2007年度アカデミー賞作曲賞受賞作品>


'07に、かなり評判になった映画ですね。WOWOWで放送されましたので、鑑賞してみました。
イギリスの文芸モノ、というと重いなあ、という印象が強いのですが、この作品も、アンハッピーエンド
ですし、主人公の妹(ある意味主役)の結果論ではあるかもしれませんが、タイトルどおり「つぐない」
になりきれてない、というスッキリしなさついて回ると思います。配役陣は、キーラもマカヴォイも、
レッドグレイヴもいいです。映像も、タイプをリズムに使った音楽も良かったです。
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何がダメだったかというと、(ストーリーは面白いのですが)、原作を読んでいない身とすると、前半が
なんともたるい。何が言いたい映画なのかが判ってくるのは、マカヴィオイが逮捕されてから。
そこからは一気呵成に見せるので、もったいない気がします。思わせぶりな前半にはそれなりの意味が
あるのでしょうが、原作を読んでない人にはわかりづらいですね。

タイムシフトを使って時制を少しずらして、後追いで見せる方法などは、上手いなあ、と思ってみてい
たのですが、後半、マカヴォイの戦争のシーンは、(取材はしっかりしたといってますが)妹ブライオニー
の創作物だったわけで、そのあたりの整理の仕方に戸惑いを覚えました。

『1935年、夏のイングランド。政府官僚ジャック・タリスの屋敷では、小説家を夢見る末娘のブライオニー
が休暇で帰省する兄とその友人を自作の劇で歓待しようと準備に追われていた。
一方、大学卒業後の身の振り方が定まらず鬱屈した日々の姉セシーリア(キーラ)は、ある出来事を
きっかけに使用人の息子ロビー(マカヴォイ)への愛を自覚する。<中略>
そんな時、タリス家に預けられていた15歳の従姉妹ローラが敷地内で強姦されるという事件が起きる。
現場を目撃したブライオニーは、ロビーが犯人だと告発、彼は無実を証明することも出来ず警察に
連行されていく。
4年後、ロビーは戦場の最前線に一兵卒として送られ、セシーリアはそんなロビーとの再会を信じて、
彼への手紙をしたため続けていた…。』(allcinema)
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前記、中略に入るの部分は、実は妹ブライオニーもロビーに憧れていて、庭の噴水の前で繰り広げられる
シーンや、図書室での、シーとロビーのセックスシーンを目撃して衝撃を受けたブライオニーは、姉に
無垢な少女らしいジェラシーを持つのだった。そこで、森で従姉妹が襲われた、と言ったとき(襲ったのは
後に襲った少女と結婚し、軍用チョコレートを開発して金持ちになるポール・マーシャルだった。彼女は
性的な関係を森でしていたことを隠すため、とっさに襲われた、とうそをいい)ブライオニーはそれを
ロビーに対する復讐(大事になるとはその時は思わなかった)としたのだ。
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医者を志していたロビーは逮捕され、刑務所からフランス北部の戦線に送られてしまう。仲間と協力して
何とかドーバー海峡のところまで逃げてきて、戦争も終わったことだから、引き上げようと待っていた
ところロビーは敗血症にかかり死んでしまう。 戦場のロビーと手紙をやり取りし、無罪を立証し、結婚
する、という一途でいたシー(セシリア)も、ロンドンでドイツ軍の爆撃を逃れるため地下鉄の駅にいたところ、
運河かなんかが決壊して、大量の水が地下鉄に流れ込み、シーは溺死してしまう。
(この真実は後に晩年のブライオニーが語るのだが)

突然画面は現代に。テレビのインタビューに答える作家ブライオニー。21作目の作品は「つぐない」という。
インタビューに答えて、自分は痴呆症に罹っていて、次の作品を作ることが出来ないから、この作品は
遺作となると語る。ブライオニーは、自分がついたささやかな?嘘で、姉と恋人の人生を狂わせ、二人とも
死なせてしまったことを、戦時中は大学を諦め看護師として奉仕したり、つぐないの一生を送ってきたと
いうのだ。実際はロビーは、二度と英国の地を踏むことなく、姉は二度とロビーと会うことはなく亡くなって
しまうのだが、小説の中では、二人は無事にロンドンで再会し、謝罪にきたブライオニーを酷く責める、
というシーンになっていて、二人は夢に見ていた海辺に建つ窓枠の青い白い家の前で幸せそうにしている
シーンで映画は終わっていく。
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「あの二人に幸せを上げた」と現代のブラオニーはいうのだが、その小説を書き上げることで、一生掛け
てきた「贖罪」の締めくくりとし、二人の幸せを壊したことの罪滅ぼしとして、小説では、二人の希望どおり
の結末とした、という訳だろうが、そう言われてもねえ、死んだ人間が生き返るわけでもなし(それを言っ
ちゃおしまいか)、ブライオニーは、「つぐない」を出版したことでも贖罪仕切れたわけではないだろう。
それはブライオニー自身が一番よく判っていたはずだ。彼女は死ぬまで二人からは許されない、いや
死んでも許されないだろう。ブライオニーの行動は、そこまで自分を責めなくても、、という人もいるだろう
が、私としては、些細な(とその当時は思っただろうが)嘘が、結局姉と恋人の人生を破壊したことを思うと、
どうしてもブライオニーを許す気にはなれないのだ。
ブライオニーが小説の中で、ロビーに、「首を折ってやろうか」と言わしめるのは彼女の贖罪意識が高い
ことを主張している訳だが、それでも、許されない。死んでも天国で、二人に謝りつづけなくてはいけない。

この映画で一番私がうなったのは、戦後からいきなり現代に(テレビ局のモニター群)に、時制がワンカット
で変わったこと。これは実に鮮やかだった。そしてレッドグレイヴの登場。
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前半が良かったって人もいるんだよなあ。映画って見る人によってホントに千差万別。またそれが面白い!
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by jazzyoba0083 | 2009-03-31 22:05 | 洋画=た行 | Comments(0)

NEXT-ネクスト-

●「NEXT-ネクスト-」
2007 アメリカ IEG Virtual Studios,Revolution Studios,96min.
監督:リー・タマホリ
出演:ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビール、トーマス・クレッチマン、ピーター・フォーク他
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自分の2分後が判ってしまう男のお話です。子供のころからその能力に気が付きていて、様々な実験
とかにさらされてきたクリス・ジョンソン(N・ケイジ)は、ラス・ヴェガスでマジシャンとして生計をたてつつ
ささやかな(能力がばれてそれがイカサマだと言われない程度)ギャンブルで、儲けていたりした。

そんなクリスが、カジノの強盗を予知して押さえつけたのに、逆に強盗と間違われて逃亡の身に。
そこで知り合ったのが先住民の子供らの先生をしているリズ(ジェシカ・ビール)だった。不思議なことに
彼女だけは、自分以外で未来が判るのだった。

一方、テロリストが盗み出した核弾頭がアメリカ西海岸に運び込まれたことを察知したFBIはカリー
捜査官(ジュリアン・ムーア)をボスとしたチームが、クリスの能力に注目し、彼の力で核弾頭を
見つけ貰おうとする。そうこうしているうちに、リズが一味に捕まり、車いすに縛りつけられたまま爆発
させられ、結局核爆弾は見つからず、爆発してしまう未来がクリスに見えてしまったのだ。(なぜか
このところはえらく遠い未来が判るのだ)これを阻止するクリスとFBIチームが、テロリストと対決していく。
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もちろん核爆弾は爆発しないし、クリスも爆殺されることはない。圧巻?だったのは、船の中を捜索する
クリスの分身の術、そしてラスト、クリスを救うための分身の術。これって予知とどう関係のある能力なの?

短い映画で、判りやすいので、そこそこ楽しめましたが、超能力の男の前にFBIが現われて、テロリスト
が持ち込んだ核爆弾を探して、と頼むのは、あまりにも展開がイージーじゃござんせんか?
困り顔をさせたら天下逸品のニコラス・ケイジの困り顔がここでも堪能できます。ジェシカ・ビールが
良かったですね。ジュリアン・ムーアはもったいない。ミスキャストな感じ。
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ニコラス・ケイジ、多作の人ですが、映画を選んでほしいなあ。この前の年の作品「ウィッカーマン」と
いい。彼がプロデュースに参画すると駄目になる感じですね。製作より、演技で行った方がいいんじゃない
かなあ。
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by jazzyoba0083 | 2009-03-30 22:50 | 洋画=な行 | Comments(0)

再会の街で Reign Over Me

●「再会の街で Reign Over Me」
2007 アメリカ Columbia Pictures,Madison 23,Greentrees Films,124min.
監督:マイク・バインダー
出演:アダム・サンドラー、ドン・チードル、ジェイダ・ピンケット=スミス、リヴ・タイラー、サフロン・バロウズ
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9:11の被害者とその周辺の人々を、苦悩と暖かさをもって描くハートフルドラマ。けっこう気に
いって観させていただきました。PTSDの患者に対する振る舞いに、いささかの反論もあるの
ですが、ドラマとしてはまずまずまとまっていたと思います。ただし、やや深みに欠ける点は
惜しいところです。

登場人物は、9:11でWTCに2回目に突っ込んだ飛行機に妻と3人の娘と愛犬が
乗っていて、家族が一瞬にして殺されてしまった歯科医師チャーリー・ファインマン
(A・サンドラー)。彼は事件以降、典型的なPTSDとなり、人と接することをせず、記憶を遮断し、
引きこもりの生活を続ける。彼には政府からの補償金や保険金を管理する会計士シュガーマンが
ついて金の世話だけは焼いていた。それとマンションの管理人のおばさんも少ない理解者である。

ファインマンの歯科医大時代のルームメイトで、マンハッタンで歯科医院を開業している
アラン・ジョンソン(D・チードル)。彼は妻ジャニーンと娘がいて不自由のない生活を送っている。
受付の辛口のお姉さんがいい味出してます。彼は数人の医者村のリーダー的な存在だが、
最近は、他の医者からうとまれている様な気がしていて、穏やかでない。
ある日、精神的に変な女性ドナが現われ、性的な関係を強要する、断ると訴えるという。
そんな女にも悩まされていた。
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ある日、NYの街の中をクルマで移動中、チャーリーの姿を見かける。あの事件以来、
彼の行方は判らなくなっていたので、とても気になるのだった。彼らは、再び出会うことになる。
声を掛けると、何とチャーリーはアランを覚えていないという。そして、過去のことに触れようと
すると、粗暴になるのだった。
いつもiPodにBoseのノイズキャンセラーヘッドフォンをして、外界から自分を遮断していた。

何とか、食事をしたり、自分の医院に連れてきたりして、心を開かそうとするが、自分のことは
絶対に話さないし、触れられることを酷く嫌うのだった。そして、自分には家族はいない、と
言い張るのだ。
自分の親友を何とか元に戻してあげたい、と願うアダムは、彼のわがままに付き合い夜遊びを
したり、チャーリーのマンションで一緒にテレビゲームをしたりして、心を開いてもらおうと
彼なりに努力を重ねた。
しかし、素人には限度がある。チャーリーのことにかまけて家のこと妻のことを疎かにしがちに
なり妻とのすれ違いが目立ち始めていた。

アダムは、同じビルの中で開業する若い女性セラピスト、アンジェラ(L・タイラー)に、彼の
相談を持ち掛ける。そして、チャーリーにも、君には一度医者に観てもらう必要があるよ、と説得、
何とか彼女のセラピーを受けるようにはなる。しかし、チャーリーは彼女に心を開かず、若い
アンジェラも彼の過去を強引に聞き出そうとするので、少しも治療にならない。

本作を見ている人は、アダムもアンジェラもPTSDの患者に対して、性急過ぎると思うだろう。
もう少し時間をかけて、やるべきだと。6年間かかって閉じられた扉は、そう簡単には開かない
ものだ。観ていると、チャーリーの行動にいらつくこともあるが、これは一家4人を一度に失って
しまった事実にもう一度想いを致せば、誰も責められないことが判るだろう。

ある日、アンジェラの治療を終えたチャーリーは付き添って来ていたアダムのそばで、自分の
家族のことを独り言のように語り始めた。好転するのか、と思われたが、彼は部屋から銃を
持ち出し、カフェで警察が休んでいることを確認しておいて、横断歩道で立ち止まりタクシーを
止め、文句を言いに降りて来た運転手に銃を(弾は入ってない)向け、それに気がついた警官に
取り押さえられ逮捕されてしまう。

9:11の遺族に警官が暴行した、ということがバレルとまずい警察は、彼を特別に不問に付し、
ただし、彼を病院に入れるかどうかの審査会が開かれることになった。

どう見てもチャーリーは病院に入った方がいい状況だった。若い検察官は、チャーリーの
亡くなった奥さんの両親に、かつての写真を見せ、それをまたチャーリーにも見えるようにしたり、
遺族の気持ちをまったく理解しない質問ばかりして、チャーリーを苦しめた。
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法廷で怒号が飛び交う状態に裁判長は双方の弁護士と妻の両親を休憩中に自室に呼び、この
問題は大変に深刻だが、法廷の問題というより家族の問題だ、彼の妻だったら、彼を病院に
入れるという行動をとっただろうか、妻の両親はよく話し合って、月曜の朝、どうするか私に
知らせてほしい、と告げた、(裁判長ドナルド・サザーランドはおいしいところだけもっていったなあ)

ところが、チャーリーは、突然引っ越してしまった。唖然とする両親に、しばらく彼を一人にして
おいてくれませんか、月曜に裁判長にそう言ってください、とアダムは頼むのだった。実際は、
アダムが新しいマンションを探してきて、チャーリーを引っ越させたのだ。
少しづつだが、心を開き始めたチャーリーは、自分との時間を増やしてしまい、家族と、特に
妻のジャニーンとの心のすれ違いをきたしてしまっているアダムのことを心配しはじめていた。
そう、ようやくチャーリーは人のことを考えられるようになったのだ。

そんな引っ越し初日に、アダムは、自分の医院に来て性的関係を迫ったドナを連れてきた。
彼女も夫の浮気から心を病んでしまい、歯科医院であんな真似をしてしまったが、あれは
本来ではないとアダムに謝罪してたのだった。そしてチャーリーと同じアンジェラにセラピーを
受けていて、チャーリーはドナが気になっていたし、ドナも同じ心に悩みを抱え寂しい彼に
惹かれたいたのだった。
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宅配のピザとビールが届き、チャーリーとドナは一緒にピザを食べることに。そんな2人を残して
アダムは家に帰ることにしたが、妻に電話し、自分が悪かったと謝った。妻の方も、私こそ、
あなたにもっと早く愛しているわ、というべきだったわとわびたのだった・・・
アダムは、心を閉ざした友を立ち直らす手伝いをしているうちに、自分も再生していったの
だった。

あの事件の後には、こんなような話は、たくさんあったのだろうな、と思う。そして、そうしたことの
2度と無いようにと思う。(こう書くと安っぽくなるけど)
PTSDのチャーリーを演じたアダム・サンドラーの好演が光る一遍であった。
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by jazzyoba0083 | 2009-03-28 23:20 | 洋画=さ行 | Comments(2)

●「ジェシー・ジェイムズの暗殺 
    The Assassination of Jesse James By The Coward Robert Ford」

2007 アメリカ Warner Bros., Scott Free Pro., Plan B, Virtual Studios 160min.
監督:アンドリュー・ドミニク  製作:ブラッド・ピット、リドリー・スコット他
出演:ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック、サム・シェパード、メアリー=ルイーズ・パーカー他
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これまた、長い西部劇。テーマは、もう何度も映画化されている、アメリカ人ならビリー・ザ・キッドと並び
知らない人はいない(と思う)19世紀末の伝説の極悪人、ジェシー・ジェイムズ。強盗団を率いて何件も
銀行強盗をし、殺人も繰り返したのに、庶民には優しかった、という民衆の間に伝わった義賊伝説で、
英雄視されるジェシー・ジェイムズ(ブラッド・ピット)と、彼に憧れながらも、遂には「ジェシー・ジェイムズ」
にはなれず、背後から彼を暗殺したことから、臆病者(coward)とそしられた、ロバート・フォードの人生
を対比させながら、ジェシー・ジェイムズの人生の晩年を主に描いていく。

印象としては、ちょっと長すぎたな、という感じが、まずしましたね。特に前半では、端折れる、あるいは
端折った方がいいシーンもあったと思います。それと、これは事実だがら仕方がないのだけれど、
強盗団の誰と誰がどうで、という脇の登場人物の多さが、物語の理解をいささか複雑にする。
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最後にロバート・フォードも殺されるのだが、彼を撃ったのが、ジェシーの長兄、フランク(サム・シェパー
ド)ではない、ということが判るのに時間がかかった。(皆さんはすぐに判りました?もっともちゃんと冒頭の
頃を見ていれば、兄は暗殺の報をボルチモアで聞くことになる、って言っているのだが。いきなり
ナレーションで、エドワード・オケリーと言われてもとっさに誰だか判らなかったわけで・・・)
エドワード・オケリーというただの名声がほしい爺さんだったのだな。

物語の印象としては、ジェシー・ジェイムズという悪党は、時々突然泣き出したり、少年を半殺しにしたり、
ナレーションでは相当体もあちこち病気に蝕まれていたようだが、精神にも異常を来したとしか思えない
その振る舞いに、ちょっと感情の移入がしずらかった。悪党だが、実は寂しく、孤独で人を信じられず、
体もボロボロ、そして精神にも異常が・・・、ああ、あはれ、西部の極悪人・・・。というオチだろうが、
ジェシーは性来の粗暴犯で、そこにはなんら同情もなければ、ましてや英雄視などはあるわけはない。
(そう感じさせることが製作者側の成功なのかもしれないけど)、それに比して、ロバート・フォード。彼に
強い憧れを抱いて強盗団に加わったのはいいが、仲間さえ殺してしまうジェシーの非情ぶりに、いつか、
自分の命に危機を感じるようになる。そして、ついには一緒に暮らしていたジェシーの家で、丸腰の彼を
背後から撃ち、殺してしまった。賞金が目当てだった、と後から彼は言うのだが・・・。ジェシーは34歳
だった。

ここで映画は終わらない。そこからは臆病者ロバート・フォードのお話だからだ。殺されたジェシーは
雑誌の表紙になり、遺体は氷漬けにされて、全米を見世物として回された。世間は、英雄の暗殺と見て
いたようだ。そして、英雄を殺したロバート・フォードには称賛は寄せられず、兄と、ジェシーの暗殺の
一部始終を舞台劇に仕立てて、自ら出演してみたりしたが、卑怯者、とか臆病者、とかのそしりばかりが
投げつけられ、極悪人を殺した英雄になりそこねてしまった。そんな雰囲気に耐えられず、兄は自殺、
酒場では流しのギター弾きが(音楽担当のニック・ケイヴが歌を披露している)、「臆病者のロバート・
フォード・・」とかいうジェシー・ジェイムズの暗殺をネタにした歌を歌っていると、たまたま酒場で飲んで
いたロバートは、「おれがロバートだ!」と、やけを起こしたりしていた。そして後日、世間の称賛と名声を
狙った、エドワード・オケリーという男に、先込めの旧式銃で自分の経営する酒場で撃ち殺された。
彼には全米から嘆願書が集まり、終身刑が言い渡されたものの、後には釈放されたという。
ジェシー・ジェイムズは民衆の間ではあくまでも英雄だったのだ。彼を殺したロバートについてまわった
誤算には、ロバートも、彼の兄も事前に気づく由もなかったろう。ロバートは、自身殺される直前頃には
ジェシーを暗殺したことを、心から後悔し、暗殺なんてしなければよかったと悔いていたという。
ジェシー自身は、最後の方では、ロバートの心変わりを承知していて、銃を贈ったり、暗殺される直前には
ガンベルトを自らはずし、まがった絵を直すといって背を向けた、その絵のガラスには銃をこちらに
向けるロバートが映っていたことに気がついていたのに、何もしなかった。疑心暗鬼の生活に疲れていた
ジェシーは、もはやロバートに撃たれて死ぬことに平安を求めていたのかも知れない。

というわけで、邦題のタイトルより、原題の「臆病者ロバート・フォードによるジェシー・ジェイムズの暗殺」
というのが、やはり中身を表わしていて正しい。映画で描かれる主役は2人だからだ。
ロバートを演じ、アカデミーで助演男優賞にノミネートされたケイシー・アフレックと、彼の兄チャーリーを
演じたサム・ロックウエルが良かった。特に、最後の銀行強盗の会話を3人でするシーンは、すでに
ロバートに疑いを持ち始めたジェシーの気持ちと、警察の手先になっていた兄弟の心の微妙な動きが
現れた息詰まるハイライトシーンだと思う。
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ジェシー・ジェイムズを神格化せず、むしろ理解しがたい狂人の
タッチで描き、これにロバート・フォードを対比させて描いたところに、この作品の面白みがあるのだろう。
「アメリカン・ギャングスター」を観ても判るとおり、リドリー・スコットがプロデューサーの一人に名を
連ねていることからも判るように、殺人や暴力シーンは血がドバドバです。

全体としては、いろいろ言いましたが長い映画だったものの、結局面白く観ました。ブラッド・ピットは
狂気を孕んだ極悪人を、ストレートに演技し、これまた良かったと思います。ヴェネチア国際映画祭で
男優賞をとっただけのことはあるな、と。
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西部劇ですが西部は出てきません。ジェシーが生まれたミズーリやミネソタなどの中西部が主な舞台で
全体としては曇り空、雪景色。そのトーンが映画の中のやりきれなさを演出していますね。
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by jazzyoba0083 | 2009-03-27 23:20 | 洋画=さ行 | Comments(0)

おくりびと

●「おくりびと」
2008 日本 松竹、TBS、セディック、小学館、アミューズ・ソフトほか 130分
監督:滝田洋二郎  脚本:小山薫堂 音楽:久石譲
出演:本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、吉行和子、笹野高史、杉本哲太、峰岸徹(故人)ほか
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<2008年度アカデミー賞外国語映画賞受賞作品>


ついに観ました「おくりびと」!第一印象、こんなに長い映画だとは思いませんでした!が、いい映画
でした!すでに評価の定まった映画に、私ごときが何を言えというのしょうか。3回、のどの奥が熱くなり
殆ど泣きそうでした。特に、笹野さん演じる、火葬場のおじさんが、「私は旅立ちの門番だと思うております。
何人の人の新しい旅立ちを見送らせてもらったことでしょう。声をかけるんです。『また、会おうの』ってね。」
このときは、ほとんど涙が流れました。
そして、納棺に遅れたと叱った喪主(夫)が、亡くなった奥さんの死に顔が山崎努演じるNKエイジェンシー
の佐々木社長の手で、美しくなったとき、「ありがとうございました。今までで一番綺麗でした。本当に
ありがとうございました」と本木と山崎に深々と頭を下げるところも、ほとんど泣きそうでした。
(この場面で、本木演じる小林大悟は、納棺師の仕事の素晴らしさを心から理解できた)
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そして、エンディング。小林が6歳の時、経営していた喫茶店のウエイトレスと家出してしまったオヤジと
30年ぶりで遺体で対面。幼いころ、父親と近所の河原で交換した「石文(いしぶみ)」の、
小林少年が父に握らせた石が、亡くなったオヤジの握りしめた手からポロリと落ちた時も、ほとんど
泣いていました。

極めて日本的なメンタリティーの中で、死に向かいあうことによって生を見つめる、という主張、そして
滝田監督も言うように「だれもが、おくりびと、おくられびと」という、ある種、達観した生死観が判り易く
主張されていく。
納棺師という、映画になりづらい題材を取り上げ、その職業に対する一般的な忌避観も提示しながら、
日本人的な、「死は不浄」という概念を、彼らの仕事を通して拭い去り、死を真正面から取り上げることに
より誰もが避けれれない死にゆくことへの尊厳までをも、表出させている。ラスト、石を妊娠した妻の
腹に当てるシーンは、まさに仏教でいうところの輪廻転生の他ならない。脚本の小山薫堂のペンが
冴えるところだ。

本木の元チェリストで納棺師が、特殊な職業についてしまった男の戸惑いと、その職業に目を開かされて
いく心の動きが、抑え目だがひょうひょうとした中にも感情豊かに演じられていてよかった。
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小生としては、山崎努の演技に感心した。「安らかな旅のおてつだい」という誤植(確信犯?)のチラシを
折込み、それを見た本木を面接、自分の後継に仕立てようとする、納棺の会社の社長佐々木を演じて
いるのだが、演技の確かさ、重み、自然な所作、せりふ回し、どれを取っても、この映画にはなくては
ならない存在だろう。広末涼子という女優を小生はあまり好まないが、ぎりぎりセーフだったかな。
後は、笹野、吉行、杉本という芸達者で脇を固め、演技陣としては盤石だった。
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小生のオヤジが亡くなった時も、こういう人が来られましたね。美容院の人が着るような白衣を着ていらした
が。それと、本木のような格式のある所作はなかったですね。

雄大な山形の自然と、人間の生と死というテーマとを溶け込ませた映像の美しさもまた、この納棺師という
職業を描く映画にとって大きな味方になっているだろう。

ストーリーはごく簡単で、一線級とは言い難いチェリスト、小林はやっとのことで東京のオーケストラに採用
された。奮発して1800万円もするチェロを買ったものの、早々にオーケストラは解散。小林は自分の
能力にも限界を感じ、故郷山形に帰って、他の職を探すという。妻の美香(広末)も、夫の行動に賛成し
夫の生れ故郷に帰ることに賛成する。
2人が落ち着いたのは、父が始めたものの、ウエイトレスと家を出てしまったため、母親が一人で経営して
いた喫茶店。その母も2年前に他界していた。
職を探す小林の目に留まったのが、「安らかな旅のおてつだい」というチラシ。さっそく面接に行くと、
出てきた社長(山崎)から一発で採用の決定が。月50万でどうだ、と言われびっくり。で、何を・・・と尋ねる
小林に、「遺体をお棺に納める納棺師だよ」と説明する。

手付金で山形牛を買ってきて、お祝を、と思った小林だが、妻に本当のことを言えない・・・。そのまま
小林の納棺師としての訓練?が始まる。社長佐々木の遺体に接する態度、そして遺族から喜ばれる様を
観ているうちに、納棺師の素晴らしさを肌身で感じていく小林であった。
しかし、やがて妻美香も彼の仕事を知るところとなり、「さわらないでよ、汚らわしい」などといわれ、実家に
帰られてしまう。小林は一人でも、もくもくと社長の見習いを続け、遂に独り立ちの日が来た。(冒頭の
シーン)
やがて美香も妊娠したことから帰ってきたが、「子供に言える職業に就いて」「一生涯の仕事なの」とか
まだ言っている。そうしたある日、古くからの付き合いだった銭湯のおかみさん(吉行)が亡くなる。
美香を伴って銭湯に行き、始めて、夫の納棺の儀式を見た美香は、亡くなった方をいとうしみ、最高の
旅立ちのお手伝いをする夫の姿に、はじめて彼の仕事への思いを理解したのだった。
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そして、ある日、6歳の時以来行き別れていたオヤジが亡くなったので、遺体を引き取りに来てほしいという
電報が届く。自分を捨てた父親の納棺になんて行きたくない!と言っていた小林だが、佐々木の会社の
女事務員(余)にぜひ行って、私も6歳の子供を北海道において出てきたの、だから・・・・と。
美香にも態度でうがなされ、美香を伴い、社長からもらった高級のお棺をワゴンの後ろに積んで、港町に
向かったのだった。そこには、女と逃げたけど、すぐに一人になってそれ以来独り身で生活してきた
70歳を超えた父親の亡骸があった。小林は、駆け付けた葬儀社のおざなりな納棺を拒否し、自分の手で
納棺の儀式を執り行ってあげたのだ。そして、父親の手から、小林が子供のころ河原で交換した小石が
こぼれ落ちた・・・

メインの話の外側を彩る、山崎、笹野、吉行、余、らの話題もそれぞれ生死観に繋がるものだ。
この手の映画は、時に価値観の押し売りになりがちだが、それをギリギリのところで抑え、なお日本人の
メンタリティーにフィットするように演出した滝田監督の力量も素晴らしい。遺体を直接触る納棺師という
仕事を、河原の石とかサボテンの花とか、白子料理とか、山形の四季などのメタファー的要素を加える
ことにより、映画に正しい厚みを付けることに成功した映画ということができるだろう。
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by jazzyoba0083 | 2009-03-23 23:20 | 邦画・新作 | Comments(0)

●「燃えつきるまで Mrs.Soffel」
1984 アメリカ MGM Pictures,United Artists,113min.
監督:ジリアン・アームストロング
出演:ダイアン・キートン、メル・ギブソン、マシュー・モィデーン、エドワード・ハーマンほか。
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『1901年のピッツバーグ。刑務所長である夫ピーター・ソッフルと4人の子供たちと暮らす、信仰心厚い
女性ケイトは、善意で囚人たちのために聖書を読み聴かせていた。
ある日、強盗殺人の罪で死刑宣告を受けたエドとジャックのビドゥル兄弟が刑務所に送りこまれる。
ケイトはエドと惹かれ合うようになり、死刑執行が迫った兄弟の脱獄に手を貸してしまう・・・』
(Wikipedia)

これは実際にあったお話。せっかくダイアン・キートンを配しておきながら、信仰心厚い女性が、「女」と
しての恋に目覚め、刑務所長夫人としての抑圧された暮らしの中で、いったん弾けてしまったら、
4人の子供も捨てて、相手が脱獄囚であろうが、逃避行を演じ、ついには、最愛の人の銃で撃たれて
死のうとまでする、という激しい話が、ずいぶん薄くなってしまった感じがした。
4人の子供さえ捨てて、という気迫が(囚人を愛してしまったという)伝わってこないんだな。無実の罪で
収監されたエド(メル・ギブソン)とジャックの、犯行は何だったのか。長女が夫人に、彼らは無罪なんだよ、
犯人は別にいるんだよ、と名前まであげて町の噂を言うのに、夫人の、彼らの無罪を立証してあげようと
いう行動(少しはするが)が無いんだよなあ。すぐにあきらめて脱走へと突っ走るんだね。

聖書を読み聞かせるうちに、自分でも詩を書く兄のエドと鉄格子越しに愛を通わせるようになた夫人は、
刑の執行が近いことを知り、兄弟に鉄ノコを密かに渡す。彼らは、それで鉄格子をまんまと切断し、
脱獄。夫人も付いていく。最初は脱獄囚に拉致されたか、と思われたが、すぐに夫人が脱獄を手引きし
たと判明、長女は、ママは帰らない方がいいいわ、死ぬべきだわ、と、なかなか厳しいことをいう。

カナダに向かって逃げた一行を、すぐに捜索隊が追いかける。兄弟と夫人は、ある老夫婦の家に泊めて
貰い歓迎されるが、孫が、泊まっている一行は、脱獄したビドル兄弟だよ、と祖父母に教える。
あわてて逃げだし、追っ手に知らせる二人。
追手が迫ったことをしった一行はすぐに逃げ出すが、(雪中なので馬ソリ)、多勢に無勢、たちまち取り
囲まれる。兄のエドは一発喰らう。夫人はもはやこれまで、と覚悟し、エドに殺して、と頼む。
無理だ、と断るエドだったが、絶望の中で彼は引き金を引く。そして、林の中に逃げだした兄弟も、すぐに
銃の餌食となってしまったのだった。

だが、夫人は生きてた。そして罪に問われ、かつては自分が聖書を読み聞かせていた囚人のいた監獄に
収監される身に。きっと夫人は死んでいたかったろう。生きて恥を晒したくなかったろう。でも生きた。
自殺を禁止している聖書の教えに反して自殺しようとした夫人の、エドを思う気持ちがいかにつよかったか。
そして、収監されても、もはや死のうとは思わない夫人の気持は、エドとジャックの分も生きようと、
割りきったのだろうか・・・。牢獄の夫人がその後どうなったかは映画の中では描かれない。
ビドル兄弟が無実であることが、町の中でもかなりの噂であったにも関わらず、なんの手も下されなかっ
たことに割り切れなさを感じる。それが、この映画も割りきれないものにしているようだ。
兄は悪いのはおれで、弟は悪くない、というが、それじゃ、一緒に死んじゃった弟こそ可愛そうじゃない?

因みにThe New York Times Archivesによれば、脱獄事件が起きたのは1902年の1月30日。
ビドル兄弟が死亡し、夫人が捕まったのが2日後。夫人は2年の刑を言い渡され、出所後はこの事件が
"Desperate Chance" (命がけのチャンス)という劇になったという。そして1909年の8月31日、
腸チフスで亡くなったという。
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by jazzyoba0083 | 2009-03-21 22:30 | 洋画=ま行 | Comments(0)

ワルキューレ VALKYRIE

●「ワルキューレ VALKYRIE」
2008 アメリカ MGM Pictures,United Artists,121min.
監督:ブライアン・シンガー
出演:トム・クルーズ、ケネス・ブラナー、ビル・ナイ、トム・ウィルキンソン、カリス・ファン・ハウテン他
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私は戦記ものが好きで、WOWOWでも時々過去の名作を見たりしているのですが、ピーター・
オトゥール主演の「将軍たちの夜」という映画で、本作の「ワルキューレ作戦」というものを知りました。
「将軍たちの夜」は作戦とは関係ない話でしたが。

この映画は若い女性にとってはよほどのトム・クルーズファンか歴史好きでないとむずかしいでしょうね。
今日もエンドロールの時横で泣いていた若い女性は、たぶんトムの大ファンなんでしょう。泣く映画じゃ
無いと思うのだがなあ。よほどの人類愛に満ちた人でないと。

結末の判っている史実をベースにした映画は、ラストが判っているだけに、どういう風にテンションを
保てるかが、脚本家と監督の腕の見せどころでしょう。その点ではこの映画はエンタテインメントと
しては成功していると思う。ただ、ドイツ人の中にもいた正義の人、という側面からみると、全体に底が
浅く、単調な描写に終始した感じだ。ドイツ人がどう見るでしょうかね。アメリカ人の演じた自分の国の
英雄の姿を。

ワルキューレ作戦の首謀者シュタウフェンベルグ大佐(トム)は、ドイツ国民なら知らない人はいない
ほどの国家的英雄であり、通りの名前にまでなっている人物。これまでもワルキューレについては
メディアで取り上げられる機会も多かった。それをどう見せたかったのか。「ユージュアル・サスペクト」
の監督だし、脚本も同作品でオスカーを獲ったクリストファー・マッカリーだし、下手はしまい、と期待して
封切りの日の映画館に足を運んだわけです。
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舞台はまずドイツ語で日記を綴るアフリカ戦線のシュタウフェンベルグ大佐から始まる。自身のナレー
ションがドイツ語からやがて英語に換わり、あとは全編英語で展開される。もちろんヒトラーも英語を
しゃべります。
彼は、祖国を愛しているからこそ、現在のヒトラーの専制政治が気に入らない。なんとかしなければと
思っている。そころのドイツ軍の上層部には、ヒトラーのやり方に不満を持っている将軍や佐官もかなり
存在した。砂漠の部隊の将軍もそうだった。しかしシュタウフェンベルグはイギリス軍の空襲に遭い、
左目、右手、左の指を数本失ってしまう。
本国に帰国したシュタウフェンベルグは、ドイツ国内で反ナチス派によるクーデターが起こった場合、
すべての軍属はいちど階級を解かれ予備役兵が動員されてクーデターを制圧する仕組みを考案し、
「ワルキューレ作戦」と命名して、ヒトラーの承認も得た。実はこれを利用して、ヒトラーを暗殺し、
これを過激な親衛隊の仕業と見せかけ、クーデターを鎮圧する、という目的で全軍を掌握し臨時政府を
うちたてようというものだった。(この辺、ややこしいでしょ??)

ヒトラー暗殺はそれまでにも40回以上も実行されていて、ことごとく失敗している。多くの将軍や上級
将校も加担したこの作戦は、果たしてうまく行くのだろうか。本作のなかでも、飛行機で移動するヒトラー
の爆殺を狙ったトレスコウ少佐の「コアントロー」作戦も描かれている。
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シュタウフェンベルグは、国内予備役参謀長に昇進したことからヒトラーも出る会議に出席する機会も
多くなった。彼はカバンの中に爆薬を忍ばせ、「狼の巣」と呼ばれるヒトラーの会議場に出入りするが、
ヒトラーだけではなく、ヒムラーやゲッペルスも一緒に消したかった。そんな機会はめったになく、
チャンスはなかなか巡ってこない。そして遂に1944年7月20日、会議の席に爆弾入りのカバンを置き、
自分は電話がかかってきたということで、外にでた。
爆発は起こったが、ヒトラーの生死は確認できなかった。(会議の参加者が机の下のカバンを、じゃまだ
ということで移動してしまったのだ)シュタウフェンベルグは、仲間の待つ司令部にヒトラーは死亡したので
「ワルキューレ作戦」を発動させるよう、無線で指示するが、優柔不断な将軍により、行動が遅れる。
一度は予備役で交通要衝とかSS本部などにも、ナチスを逮捕する部隊が向かうが、ヒトラー存命の報は、
たちまち全軍に知られることとなり、シュタウフェンベルグら反乱軍は、逮捕、即日銃刑に処せられる。
処分を命じたフロム上級大将は、ヒトラーの生きて捕らえよ、という命令に従わず勝手に処刑したことを
「口封じ」と見られ逮捕された。彼、フロムこそ、煮え切らない自己保身の塊のような人間で、
シュタウフェンベルグらを右往左往させた張本人だったのだ。彼はのち裁判で死刑になる。
因みに砂漠の鬼と恐れられたロンメル将軍も、この作戦の嫌疑を受け、自殺を強要された。(この件は
映画にはない)

シュタウフェンベルグは、銃殺の際、「神聖なるドイツ万歳!」と叫ぶが、彼の祖国や国民・家族への
思いは最後まで変わることはなかった。

この「ワルキューレ作戦」というものは一口ではなかなか語るには長い話なので、いちど
こちらの
Wikipedia「ヒトラー暗殺計画」を一読されることをお勧めする。

ナチの悪行を暴いたり描いたりする映画は多いが、あの戦争中、ドイツ国民が全員ナチス=ヒトラーに
唯々諾々と従っていたわけではなく、己の良心に従って反抗したドイツ人もいたのだ、という勉強にはなる
と思う。だがなあ、観終わって、作戦実行から失敗までの描写などはテンポよくスリリングだったが、
シュタウフェンベルグの内面とか、妻(「ブラックノート」で主役を演じた女優さん)の気持ちとか、作戦に
関わった主要人物の背景などが描かれると厚みのある映画になったのではないか、と痛切に感じた。
トム・クルーズという人気俳優を使い、この歴史的事実を知らしむることには意義はあると思うし、エンタ
テインメントとしては、まあ許容範囲だが、映画としての完成度はどうなのか。
休日のシネコンの小さめのスクリーンはほぼ満員で、中高年のおじさんが多かったかな。
<観てから1日経過しての感想>
映画を反芻すると、マッカリーの脚本は複雑な「ワルキューレ作戦」とシュタイフェンベルグ周辺の話を
2時間に上手く纏めてあった。そのあたりエンタテインメントとしては上々だろう。ただ、いささが難儀なの
は、たくさん出てくる将軍たちの名前と顔と敵味方の区別が判然としなくなる、ということ、そして作戦を
会話で説明しようとするから、字幕を追うのが忙しい、その中で名前と行動と場所を理解していくには
相当の理解力が必要ではないか?トム・クルーズだが、一部の人は彼のシュタイフェンベルグに嫌悪を
示しているが、私は、良かったんじゃないかと思う。隻眼・ドイツ軍服のトムはカッコイイ。しかし、その
カッコ良さの裏側に、ヒトラー(ナチ)を憎み、自己や家族を犠牲にしても、国を救いたいというクールな
(別の意味では熱い)意思がメタファーとして表出されていたと捉えることが出来た。そのあたりは監督の
ブライシンガーの力量も大きかろう。

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by jazzyoba0083 | 2009-03-20 12:20 | 洋画=ら~わ行 | Comments(0)

●「靴をなくした天使 Hero」
1992 アメリカ Columbia Pictures,118min.
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:ダスティン・ホフマン、ジーナ・デイヴィス、アンディ・ガルシア、ジョーン・キューザック他
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面白かった。楽しかった。期待しないで観て、これだけ面白いととても得した気分になる。唸る傑作では
ないけど、映画って楽しいよなあ、と思わせてくれる佳作。
出演者がみなハマっていて映画に上手くのめり込める大きな要素となっている。いかにもアメリカ人が
好みそうなストーリーだが、ところどころに笑うポイントのあるユーモアも配され、かといっておふざけの
映画ではない、「嘘」「偽」という人生の深淵を覗かせる大きなテーマもさりげなく持っている点もいい。
お気楽映画はどうも、という方にも、人生の一部をしっかり考えさせてくれるので、観て損はないでしょう。
オープニングとエンディングはWOWOWで見る限りテレビ放映用に後から作られたもの。著作権か
何かの問題があったのでしょうか。

詐欺とか寸借詐欺とかのちんまい悪をやっては捕まっているバーニー・ラプランテ(ダスティン)は、
6日間の保釈期間の延期を何とか許してもらい、娑婆に復帰。そんな彼がポンコツ車で家に帰る途中、
飛行機が頭上を落下して、目の前に不時着、炎上した。
100ドルもする靴を履いていたバーニーは、「嘘だろ!」とはいいつつ、救助を求める声に素早く反応
しない。そんなやつだ。おりしも降りしきる雨の中、靴を河原に脱いでしぶしぶ乗降ハッチに到着し、
押したり引いたりしているうちにドアが開いた。中からどっと逃げ出す乗客。助けたバーニーは彼らに
踏まれたりの、散々な目に。
しかし、脱出してきた少年に父がまだ中にいるんだ、スティーブっていうの、助けて、と言われ、突然
善人と化し、煙が充満する機内に入っていく。途中で一人の男性を、そして、その機にたまたま
乗り合わせていたテレビリポーター、ゲイル・ゲイリー(ジーナ)が、足を挟まれて助けを求めていた。
バーニーは彼女も救出し、機外に出たところで、消防隊から、爆発するから機体から離れろ、といわれ
少年の父親がまだいる・・、と後ろ髪を引かれながらも、機体を離れるのだった。そして大爆発。
(ゲイルを助ける時に彼女の財布の入ったバッグを失敬したことが後々大事件になってしまうのだが)
実は少年の父スティーブは、入れ違えで早くに機外に脱出していたのだった。

一人を助けられなかったバーニーは、悄然としてその場を立ち去り、自分が乗ってきた車が消防隊に
より排除されていたため、空き缶を集めて売って生活しているジョン・ババー(ガルシア)のクルマに
乗せてもらった。車中で飛行機が落ちて、泥だらけになって救助に当たったが、靴が片方なくなって
しまった、と愚痴る。ババーは、回収所に右足だけ必要なやつがいるから、そいつにやるよ、といって
預かる。
裸足になってしまったバーニーは職場に行くが、飛行機が・・・と裸足の恰好で言い訳するが、頭から
信用されず、その場でクビになってしまう。
家に帰って、飛行機が・・と言おうとするが、妻は鼻から夫を信じず、家から追い出してしまう。(家には
消防士の男がすでに妻と同棲を始めていた)

リポーターのゲイルらテレビ局は、54人の乗客を危険を顧みず救助し姿を消したヒーローを探しに
かかった。他の媒体に先を越されたくないテレビ局は、ヒーローに100万ドルの謝礼を用意した。
現場から靴が乗員乗客のものでない靴が見つかりそれが10Bだったことから、そのサイズの靴を持つ
さもしい偽者が大挙局に乗り込んできた。
そのころ、バーニーは酒場で、機内でゲイルから盗んだカードを故売しようとして囮捜査官に捕まって
しまい、監獄へ。これでは前の犯罪(塗料を大量に盗んだ)罪の執行猶予は絶望となってしまった。

なかなか現れないヒーローだが、ついに名乗りを上げる男が現れた。なんとそれはバーニーを乗せた
空き缶回収の男、ババーだった。ババーはバーニーから預かったあの靴を履いていた。
それからのババーは、ヒーローとして国民的英雄となり、マスコミから、慈善団体からひっぱりだこ。
また、彼のスピーチが、謙遜的でいいことをいうので、大衆はますますババーが好きになっていく。
自分を助けてくれたゲーリーも、髪を切り、スーツを着るとカッコイイ、ババーに心がよろめくのだった。
しかし、ババーは周りのあまりの変化に、良心の呵責を覚えていた。

病気の少年少女を励ましにいったとき、重病の少年に「勇気を出せ」と声をかけるとこの少年が覚醒し
言葉もしゃべるようになるという奇跡のおまけつきだった。このとき、バーニーは現場に行って、自分
こそ、ヒーローだ!あいつは偽物だ、と声をかけるが、誰も相手にしてくれない。
またババーのベトナム戦争時代の戦友たちが集められ、ババーにいかに助けられたかを証言、ますます
ババーの人気は高まる。彼は本当に勇気の人だったようだ。海軍大臣は、ババーに名誉勲章を
授けることを決定した。

そのうちに、警察が押収したバーニーが売りつけようとしたカードがゲイルのものであることが判明、
まさか、あの英雄ババーが、ゲイルを助ける時にカバンを盗み、カードをバーニーに売りつけようとした
というのか?みな、そんなことはあるわけない、と信じようとしない。
一方で、ゲイルのテレビ局は助けられた54人とババーで、救出の一部始終を本物の配役で再現ドラマを
作ろうとしていた。断っていたババーだが、ゲイルに説得され、出演されることに。よく覚えていないんだ
というと、相手があのときはああだったと言ってくれるので、本当はなにも知らないババーもなんとか
役を演じきった。しかし、心は痛んでいた。

バーニーが盗んだカードが警察に押収されたことに違和感を覚えたゲイルはカメラマンをつれて、
バーニーのアパートへ。バーニーは不在だったが、ソファの下から、ゲイルがハンドバックにいれていて
一緒に盗まれた局長賞のマイク型のトロフィーが見つかった。違和感が確信に変わっていく。
と、その時、大家が、ババーが自殺しようとしている、と駆け込んできた。ゲイルを呼んでいる、と。
テレビをつけると中継で、まさしくホテル尾ベランダの外に出ているババーがいた。
彼はあまりの自分の周囲の変化と良心の呵責に耐えかねたババーは飛び降り自殺を企てたのだ。

バーニーを伴ってババーの元に駆けつけたゲイルだったが、ババーの説得にはバーニーが当たった。
ババーはすべての真実を書いた手紙をバーニーに渡すが、バーニーは隣に座り、自分の計画を
話し始めた。自分は名誉なんていらないからおまえがもらった100万ドルの中からバーニーの息子が
大学院をでるまえの学費と、今係争中の裁判の弁護費用をだせ、そうして、お前はヒーローを演じ
続けろ、と。カードのことは小さなことだとも。取引に納得したババーは自殺を思いとどまり、窓へ戻ろう
としたその時、バーニーが足を滑らして落ちそうになる。腕一本で彼を支えたババーは、バーニーの
腕を離さず、そばに来ていたレスキューの力も借りて、バーニーを救ったのだ。これでババーは本当に
人命救助をしたことになった。またヒーロー度があがってしまう。

騒動が一段落してババーが記者に囲まれて「自分は弱さと勇気を併せ持つ普通の男だ。ヒーローは
誰にでもなれる」とまた美しいことを言っていると、バーニーのところにゲイルがやってきて、
本当の私の命の恩人はあなたでしょ、と尋ねる。「俺がそういう状況で、人を助ける人間に見えるか」と
悪ぶるバーニーに、一度は納得して見せるゲイルだったが、別れ際に、「私を助けてくれてありがとう」と
もう一度声をかけるとバーニーは「いいさ」と答える。やはり、と確信して笑顔になるゲイルだった。

ラスト、動物園で、息子と遊ぶバーニー。息子だけには本当のことを言っておかなくちゃと、すでに
大学院までの学費は用意した、で飛行機事故の真実は・・・と語ったのだった。息子が信じたかどうかは
不明だが。と、そのとき、子供がライオンの檻に落ちた、誰か助けて、という声が!バーニーはとっさに
だれか飼育員を呼べ!と叫ぶが、やれやれまたおれの出番か・・・とつぶやいて現場に向かうのだった。

この映画の見所は、嘘をついてヒーローになってしまったババー(ガルシア)が、良心を責められる
結果に。
そして、実際のヒーローのはずのバーニーは、小悪党だが、いざという時には黙っていられないタイプで
金が名誉に優先する。彼がヒーローとして脚光を浴びることはないわけだが、自殺者未遂者を救った
父として息子にはヒーローであり、ゲイルには真実のヒーローであるのは変わらないのだ。
「真実は大切だが、本当のことだけを言っていたら世の中は上手く回らない時もある」ということが
あちらこちらから感じられた一遍であった。
真実を説明するバーニーに、なんでみんな信じないんだ(普段の行いが悪いと信じてもらえないんだな)
あるいは、もっと強く自分が本物だと主張すればいいのに!と感じたあなたはノーマルです。
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by jazzyoba0083 | 2009-03-19 23:40 | 洋画=か行 | Comments(0)

●「アメリカン・グラフィティ American Graffiti」
1973 アメリカ Universal Pictures,110min.
監督・脚本:ジョージ・ルーカス  製作:フランシス・フォード・コッポラ
出演:リチャード・ドレイファス、ロン・ハワード、ポール・ル・マット、チャーリー・マーチン・スミス他
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この名作を観る機会が今、来ました。アメリカが一番アメリカらしかった1960年代初頭。ラジオからは
ビーチ・ボーイズ、プラターズ、チャック・ベリー、ドリフターズ、ビル・ヘイリー、コニー・フランシスらの
能天気なロケンロールが流れていた。若者はベトナム前のアメリカンドリームの世界を疑いもなく生きて
いた。鈴木英人のイラストの世界だ。ああ、今は亡きウルフマン・ジャック!
そんなよき時代の若者の群像を、大ヒットのロケンロールミュージックに乗せて、「落書き(グラフィティ」
のように綴っていく。彼らのベースになっている「Mel's Drive-In」は、ユニバーサルスタジオジャパン
にもレプリカがあり、遊べるようになっている。ドライブインにクルマを船着き場についた船よろしくクルマを
つけマイクから注文、するとローラースケートを履いたお姉ちゃんが品物を持ってきてくれる、という具合。
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1962年カリフォルニアの田舎町。そんなドライブインに集まる地元を卒業した高校3年生たち。カート
(ドレイファス)。彼は、大学に行くため、町の人たちから奨学金を1000ドルももらったが、なかなか東部
の大学に行く気になれない。スティーブ(ロン・ハワード)とローリーは、スティーブが街から離れる間は
男女の付き合いは自由にしよう、とか言いだして気まずい雰囲気。メガネででっぱのテリー(C・M・スミス)
は、街を離れるスティーブから不在の間クルマを使っていいよ、といわれ、その車でさっそく街にナンパに
出かける。そして「謎のサンダーバードの女」を探して彷徨ううちに、悪のグループに引き込まれ、パトカーを
壊したり。
街に残るジョン(ポール・ル・マット)は、声をかけた女の子のませた妹を乗せる羽目になり彼女を乗せて
街をドライブする。このジョンがなかなか憎めない好青年だったりする。それぞれの旅立ちの中での夕方
から夜明けまでを綴る。このジョンとチキンレースをやり、クルマを転覆させてしまうボブ・ファルファが
若きハリソン・フォードであります。
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<"31-year-old Harrison Ford">

これといったストーリーはないのだが、キスしたくて、ヤリたくてしかたのない青春暴発系の男の子や
逆の立場の女の子(この時代、まだまだ親は怖かった)、そしてイカした音楽やファッション、そして
なにより、乗っているクルマによって男の価値が決まる時代、そんな若者の心理が「らくがき」のように
ほろ苦く、バカバカしく、しかし共感を呼び起こしながら描かれていく。そして、いよいよ東部に行くことに
なったカート。飛行機で東部へ。クルマで行くんじゃないんだな。そんな幕切れも眩しい。みなさん、
テリーのパートが一番好きなんじゃないかな。
預かった車をギヤを入れ間違えてバックして後ろの車にブツケタリ、ナンパした女の子と上手くやった
ことはいいが、外に出ているうちにクルマを盗まれたり、悪のグループに引き込まれてパトカーを壊した
り、彼女にウィスキーを買ってこようとして、未成年だからIDがないので悪戦苦闘したり。
だいたい冒頭で、"Mel's"にベスパに乗って現れるテリーが、ブレーキをかけそこなって、おっとっとっと
と体がスクーターに引っ張られて、たたらを踏むところなどはもう、自分も経験があるので、失笑を禁じ
得ない。
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<"29-year-old George Lucas">

ジョージ・ルーカスにしてみれば自分と同じ時代を追体験して描いているのだろう。私はこれよりもう少し
あとの時代だ。ビーチボーイズの時代ではなく、モンキーズの時代ですね。それにしても、この感覚が
判る時代の人にはたまらん映画であるし、感性するどく描かれる原題の青春群像は、このあとの青春
映画というジャンルに大きな影響を与えたことは間違いない。スティーブ役のロン・ハワードは
今や「ダ・ヴィンチ・コード」「フロスト×ニクソン」などの大監督であります。

加えて、クルマの好きな人にはなおたまらない。1950年代後期から60年代初頭の、大排気量で羽の
生えた大型のアメ車の名車がたくさん出てくる。エルドラド、ビスケイン、エドセル、サンダーバード、
などなど。なかでもジョンが乗り回す1932年型フォード・デュースのホットロッドモデルは、映画の象徴
だろう。テリーがスティーブから借りるのが1958年型シボレー・インパラであります。USJにも映画に出
てくるクルマが展示されています。
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<"1958 Chevrolet Impala Sport Coupe">

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<"1932 Ford Deuce Coupe">

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by jazzyoba0083 | 2009-03-19 20:40 | 洋画=あ行 | Comments(0)

●「アリスの恋 Alice dosen't live here anymore」
1974 アメリカ Warner Bros.Pictures,114min.
監督:マーティン・スコセッシ
出演:エレン・バーステイン、クリス・クリストファーソン、ビリー・グリーン・ブッシュ、ジョディ・フォスター
    ハーヴェイ・カイテル、ローラ・ダーン他
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<1974年度アカデミー賞主演女優賞受賞作品>


スコセッシというとNYを舞台にした「タクシードライバー」やオスカーを獲った「デパーテッド」など、癖の
強い映画の印象だが、こんな愛すべきコメディも作っていたのね。デ・ニーロとライザ・ミネリの
「ニューヨーク・ニューヨーク」も素敵な映画だったけど。

エレン・バーンステインにオスカーを獲らせてしまった佳作であります。スコセッシならではのカメラ
ワークとか音楽の使い方(選曲)なども優れているが、やはり脚本がいいのですね。それとエレンの
体当たりというか、なりふり構っちゃられないわよ!っていう雰囲気が良く表れた演技が素晴らしい。
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貧乏な未亡人親子のロードムービーだが、この二人がものすごいキャラクター!!特に12歳の息子の
トムのませガキっぷり。言うことはイッチョマエの大人だし、皮肉も凄い。憎めないんだけどね。これは
母親のアリスが甘やかしてきた躾の無さに尽きる。アリスが自分も子供目線で子供と付き合うから
躾なんてできやしない。このこましゃくれた小僧に、まともにやりあうアリスが面白い。
それとこんな時期からDVってあったんだな(ハーヴェイ・カイテルの役どころ)とビックリもしたりした。
オープニングの35ミリ映画を模した映像の中、8歳のアリスが歌を歌うシーンは「オズの魔法使い」の
オマージュかパロディか?トムのガールフレンドとして登場する男の子と見まがう少女オードリィーを
演じているのは、2年後にスコセッシの「タクシードライバー」で娼婦役をやる、ジョディ・フォスターだ!
彼女もいい感じだ。

コカコーラの配送車の運転手の旦那は、アリスの賢明な主婦業に感謝もなければ感激もないし、夜の
お相手もおざなり。長男はこましゃくれて言うことは聞かないと。もともと歌手になりたかったアリス、
私の人生はこんな風になる予定じゃなかった・・・と思うのだった。

ある日、夫がトラックの運転中交通事故で死亡。未亡人となったアリスはトム(夏休み中)と二人で
街を出て、夢見ていたモントレーで歌手になるため移動を始めた。途中の町でも歌手の職はないかと
探していると1件のピアノバーが雇ってくれることに。
しかし、ベン(カイテル)という男が近寄ってきて、最初は拒否していたアリスだったが、ベンの積極的な
攻撃についに撃沈、男女の仲になる。だが、ベンには妻がいて、ある日その妻がおどおどとアリスを
訪ねてきて、夫とどういうことになっているの?と尋ねる。しかしそこにベンが現れ、妻を殴り小突きまわし、
アリスにも暴力を振るい、「おれをなめるなよ、今夜も1時に待っているからな」と言い捨てて妻と
出ていった。唖然とするアリス。なんて私は男運がないの?と。モントレーに行くために貯めた金も
ベンへのプレゼントで消えていた。

すぐにその街を出たアリスとトムはツーソンにやってきた。そこで、アリスはレストランのウエイトレスと
して働くことにする。そのレストラン、賑わっているのがが、ガサツな人間と変なウエイトレスが集まって
いるところで、猛烈に忙しい上に、ガサツな点がアリスをさらに疲れさす。
このレストランでもアリスはデヴィッド(クリス・クリストファーソン)という男から盛んにモーションをかけられ
る。必死に逃げ回るが、デヴィッドはトムと仲良しになり経営している牧場で馬に乗せたり、で、そのうちに
アリスとも仲良くなっていく。しかし、デヴィッドと家に遊びに来ていたトムがあまりにも言うことを聞かない
ので、尻を叩くと、アリスはなんで私の子を叩くの!と怒り出ていってしまう。しかしどう見てもデヴィッドの
行為は正しい。だめなのはしつけが出来ないアリスなのに。トムには父親が必要なのだ。

ケンカして飛び出してきたアリスだが、デヴィッドを愛している気持ちは変わらない。いつものように
レストランで忙しく働いているとデヴィッドがやってきて、君に戻ってほしい、という。
アリスは私には誕生日までにモントレーに行って、歌手にならなくちゃ、というと、デヴィッドは、おれも
キミとモントレーにいくさ。牧場なんて売ればいい、と言ってくれた。思わずレストランの中で抱き合う二人。
客からは暖かい拍手が・・・。

ツーソンでギター学校に通うようになるトムの悪友になる女の子がジョディ・フォスター。レストランの
同僚ウエイトレス、フローを演じたダイアン・ラッドの怪演も面白い上に迫力がある。
最近は「ナショナル・トレジャー」などで悪役をやっているクリス・クリストファーソンも、さすがに若い!
「私には守ってくれる男がいつも必要なの」という一人のおばさんになりかけた(35歳)の女性の
ハチャメチャだけど、色んな人と出会って、とりあえず夢に向かう姿が、心地よく描かれる。面白く観ました。
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by jazzyoba0083 | 2009-03-18 22:30 | 洋画=あ行 | Comments(0)