●「最高の人生の見つけ方 The Bucket List」
2007 アメリカ  Storyline Entertainment,Two Ton Films,Warner Bros.Pictures,97min.
監督:ロブ・ライナー
出演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン、ジョーン・ヘイズ、ビヴァリー・トッド、ロブ・モロー他
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名作「スタンド・バイ・ミー」、「ア・フュー・グッドメン」のロブ・ライナーが、二人の名優を迎え、人生の
深淵を覗かせるようなテーマを、重くなくあっさりと描いて見せた。楽しくも考えさせられる作品だ。

本作品は、ニコルソンとフリーマンの演技を堪能するのが一義でいいでしょう。そして、彼らの演ずる
死に直面した老境の男の素直な心意気を感じ取って、しみじみと、ほんのりとするのがいいでしょう。
97分という時間も、作品を嫌味ない仕上がりにしていてよろしい。
びっくりするようなスゴイ作品ではないが、観終わってキモチの良い掌編といえるでしょう。

ニコルソンが病院をいくつも経営していて自家用ジェットを持っている大金持ちだったから出来たこと、
という見方もできるでしょう。誰でも彼でもがこんなことができるわけがないことは十分判ります。
それは「設定」というものですから、そこに目くじらを立てていては、この映画は楽しくありません。
むしろ、金も名誉もあるけど、1人きりの寂しい人間と、家族に恵まれ信仰心あふれる普通の対比の
中で、人間の本当の幸せって何さ?あなたは棺おけに入る前に何をやっておきたいかね?と
問い掛けてくることを受けて止めて考えることのを楽しむ(楽しいというコトバじゃないかも)映画ではない
でしょうか。

自動車修理工として45年間、自分の夢も犠牲にして家族を支えてきたカーター・チェンバース
(フリーマン)。いくつもの病院を経営、バツ2で独身生活を謳歌するエドワード・コール(ジャック・
ニコルソン)。二人は同じ時期にガンと診断される。
ニコルソンの病院経営理念は「入院はバカンスじゃない。1室2名。例外なし」というもの。そのおかげで
自分も2人部屋に入ることに。そこで隣のベッドにいた男がカーターだった、というわけ。

手術やら化学療法が続くが、老体にはとても苦しい。そんな中、エドワードは特注の料理を病室に
持ってこさせたり、コーヒー沸かしセットを持ち込んだり、オーナーならではの買ってし放題。
そして二人揃って余命6カ月から1年との宣告も受ける。
残された人生は家族と信仰とともに静かに生きようとするカーターは、棺桶リストと称して、死ぬまでに
やりた事と書き綴っていたが、あほらしくなりメモをまるめて捨てた。その紙を拾って読んでしまった
エドワードは、どうせなら俺とやりたいことをやろう、とカーターに持ちかける。そして作ったリストに従い、
病院を抜け出て、冒険を始めるのだった。

スカイダイビング、カーターが憧れていたムスタングとダッジチャレンジャー(だと思う)で、サーキットを
貸し切っての二人だけのレース、自家用ジェットを駆使して世界旅行。イタリア、エベレスト、インド、
万里の長城、香港と、途中でトラブルもあったが、旅は続いた。途中でカーターの妻から、エドワードに
夫を返して、と言われたり。
しかし、香港で、エドワードが、気を利かせてカーターに女性をあてがうような真似をしたため、
カーターは家に帰る、と言い出し、二人はアメリカに帰ることに。
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アメリカに戻ったカーターは、エドワードの絶縁状態の娘と合わせようとして、エドワードの逆鱗に触れる。
二人はケンカ別れしてしまう。

家族の元に帰り、皆で楽しく食事をするカーター。方や、億ションの部屋で女を呼んでは見たものの、
窓に向かって泣いているエドワード。
しかし、カーターは妻の前で倒れてしまう。急いで病院に駆けつけるエドワードだった。カーターは彼に
遺言ともいうべき手紙を渡す。カーターは脳に転移したガンを切除する難しい手術を受けるが、上手く
行かず、不帰の客となってしまう。カーターがエドワードに渡した手紙には、無理に娘さんに合わせようと
したことを詫びていたが、また同じことをするだろう、とも。エドワードに対し、「あんたは『俺は皆とは
違う』といっていた。その通りだ。しかし、あんたは皆の中の一人でもあるんだよ。牧師がいうには
"我々は皆同じ川に向かって流れている。その滝の先に広がるのが天国だ"と。人生を楽しんでくれ。
親愛なる友よ、目を閉じて水の流れに身を任せるのだ。」と書かれていた。
礼のしようがない。二人の目的を果してくれ、とも。

そして、カーターの葬式の弔辞に登壇したエドワードは「身勝手に聞こえたら残念なのですが、彼の
人生最後の数カ月は、私にとって最高の日々でした。人生の恩人です。彼はそれを知っていました」と
切々と語るのだった。人生のファイナルステージで知り合った二人はお互いに友情を育み、短い
時間で、無二の親友となったのだった。そしてエドワードも5カ後に亡くなる。

エドワードの眼が永遠に閉じられた時、彼の心は開かれたのだ・・・・。

二人が世界旅行をしながら語り合う言葉も含蓄に富む。人は死ぬと天国の扉の前で神様から2つの
質問をされる。ひとつは「人生を楽しんだか?」、二つ目は「他人のために何かをなしたか」だ、とか。

人は、人の中にいて初めて人であり、それは楽しいものであり、感謝すべきものであるのだ・・・。
そんなことを考えました。
ラストシーンはファーストシーンにセリフごとつながり、二人の遺骨が特別な入れ物に入って、山の上に
(エベレスト?)に埋葬される。それがリスト最後の希望「荘厳な景色を観る」であり、エドワードの
遺骨がそこに収容されたとき、彼の秘書の手でリスト最後の項目に線が引かれ、遺骨とともに置かれた
のだった。
二人の演技は、いまさら語るべきものは何もない。エドワードの秘書が、映画を締めていた。彼とボスの
会話もウィットに富んでいて楽しかった。「世界最高の美女とのキス」という目的が、エドワードが娘と
和解し、孫娘にキスをすることだったのもいいところだ。

一体にアメリカ人て、戦争ものの時もそうだが、どうして死に臨んで楽天的にジョークを飛ばせるのだろう。
信心深いカーターはともかく、信仰心のないエドワードも皮肉たっぷりにジョークを飛ばす。国民性の
違いだろうか。少なくとも私には、あんな度胸はないだろうなあ。
この映画の情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-05-31 22:50 | 洋画=さ行 | Comments(0)

●「ダーウィン・アワード The Darwin Awards」
2006 アメリカ 3 Ring Circus Films,Blumhouse Productions,95min.
監督・脚本:フィン・テイラー
出演:ジョセフ・ファインズ、ウィノナ・ライダー、デヴィッド・アークエット、ジュリエット・ルイス、クリス・ペン他
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短い時間で、余り頭を使わず笑えるコメディをひとつ、という感じえで見てみました。これは、アメリカ人で
ないと作れないし、この映画が表したい真の笑いというものも判らないんだろうなあ、と思いながら観ま
した。
ドタバタなので、そのあたりはドリフにも通じる万国共通のものですが、「世界一愚かな死に方をした」人に
与えられる賞がベースになっているので、そのシニカルというかブラックの面では付いていけない
笑いもありましたね。主演のジョセフ・ファインズは、お馬鹿な元警官の保険会社のプロファイラーを好演、
ウィノナ・ライダーは、個性が出きってなかった感じを受けました。

『優秀なプロファイラーのマイケル・バロウズ(J・ファインズ)は血を見ると失神してしまう欠点のために
ヘマをやらかし警察(サンフランシスコ市警)をクビになってしまう。
そんなマイケルは、あまりにも愚かな死に方をした人を称えるインターネットの“ダーウィン賞”にハマって
いた。ある時彼は、この賞で取り上げられているような人たちが保険会社に莫大な損害を与えていると確信、自分のプロファイリング能力でそのリスクを回避できると保険会社に自分を売り込むのだった。
会社側はそれを証明できれば採用すると約束。こうしてマイケルは、保険調査員のシリ(ウィノナ)を
パートナーに、全米各地のダーウィン賞候補の再調査に向かうのだったが…。』(allcinema)
印象的なのは、おやつの自動販売機の下敷きになって死んだ男の話=マイケルによれば、おやつ自販機
に手を突っ込んで、クッキーを盗み出そうとしたその男は、手が抜けなくなり、週末で誰も居なくなった
ビルの中で、焦って手を抜こうとして自販機が倒れこんできて潰された・・・と推理(なんとアホな!)
キャンピングカーが突っ込んできて重傷を負った歯科医と患者、それに会社経営者と秘書で愛人。
マイケルによれば、自家用ジェットのオートパイロットの話を聞いた愛人は、自分の運転でキャンピングカー
を運転して移動中、クルーズコントロールのスイッチを見つけ、これをオートパイロットと思い込み、
スイッチを入れて、座席を立ち、ボスにブロウジョブのサービスを実施。ボスが「誰が運転しているんだ?」
と尋ねると、「大丈夫よ、オートパイロットだから」と愛人。「え!」と思った瞬間、目の前には、まさに
治療の真っ最中の歯科医院があったのだった!と推理。(そんなアホな!!)

さらに、メタリカのライブ会場で、会場内に落ちてきたバンに潰されたて落命した男。マイケルの推理では
チケットがないのにメタリカのライブ会場に来た男二人。ダフ屋を装ってチケットを入手しようとしたが
だめ。そこで、会場の塀を乗り越えて、中に侵入することを決意。1人が塀を乗り越えたものの、実は
塀の内側が地面まで相当な高さがあることが判る。塀に捕まる力が尽きて、1人が落ちるが、途中の木に
引っかかって止まる。だが、余計な動きをしたばかりに、やっぱり地面まで落下してしまう。
打撲で動けない仲間を、クルマに紐をつけて、バックして引っ張り上げようとしたが、なにせ二人とも
ハッパを吸ってラリっているので、クルマの男、間違えてアクセルを踏み、塀を突き破って内側に落下、
下で助けを待っていた男の上にクルマは落ちたのだった。その音でコンサートは一旦中止。運転して
いた男も重傷を負ったのだった。(アホばっかり!!)

そんなオバカな死に方をプロファイルしていくマイケル。あっけに取られるシリ。マイケルも自分が
シャワーを浴びているときに滑り止めのないバスタブで石鹸を落とすと、ひっくり返って怪我をするか
悪くすると落命する確立が高い、と自分の時は、体中にロープを巻いてのシャワーとするが、腰を中心に
くるくると回ってしまってどうしようもない、そんなオバカには単純に笑えた!
血を見ると失神するマイケルに、シリがこっそりケチャップを着けて見せると、見事にひっくり返るなんて
ところも。

ようは「トムとジェリー」で、たとえばトムがローラーに轢かれて紙のようにぺッタンコになるシーンを
笑い飛ばせる風土のある国のお笑いなんですな。

全編、大学生の卒業制作ビデオという風体を取っているので、学生のカメラが捕らえた映像ですよ、という
意味でフレームが表示されるが、時として、本来のカメラのショットと、大学生カメラのショットが判然と
区別できなくなる。そのあたりの甘さはいただけなかった。結局この大学生もトラブルにまきこまれるの
だが・・・。
お気楽に観飛ばすには面白い映画だと思いました。このダーウィン賞ってほんとにあるからスゴイですね。
この映画の詳しい情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-05-28 22:30 | 洋画=た行 | Comments(0)

●「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド There Will Be Blood」
2007 アメリカ Miramax Films,Pramount Vantage,Ghoulardi Film Company,158min.
監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン 原作:アプトン・シンクレア「石油!」
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー、ディロン・フレイジャーほか。
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<2007年度アカデミー賞主演男優賞、撮影賞受賞作品>


この年のオスカーは、本作といい「ノー・カントリー」といい、地味で良く解らん映画が評価された年でした。
シネコンも集客というにはちょっと、という感じで、懸りはしたものの、あっという間に終わってしまいました。
かくいう私もWOWOWでいいか、てな感じで今日まで待っていた、という次第。

PTAの作品は「マグノリア」に次ぐ観賞。まだ本作で5作目なんですね。寡作の割に賞の確立が高い
監督さんです。しかしだ。「マグノリア」の時もそうだった記憶があるが、何を言いたいのか良く解らん
という点は一本筋が通っているんだな。他の作品もそうだろう。最後のクレジットにロバート・アルトマンに
捧ぐと出てくるが、PTAがアルトマンに多大な影響を受けたことは、画面からも理解できる。アルトマン
作品も相当不条理だが、PTAほどじゃあない、と思うけど、どうだろう。
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で、この作品。20世紀初頭のアメリカ西部。石油に一攫千金の夢を追う、ダニエル・プレインビュー
(ダニエル・デル=ルイス)は、子供のH・Wを連れて、旅を続けていた。或る時、ポールという青年から
自分の家の敷地には絶対石油がでる、という情報を買う。
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さっそくそのサンデー牧場へ出向き、ウズラ撃ちに来たのだと嘘をいい、H・Wと、広大な土地を石油の
痕跡を追って歩きまわる。すると、H・Wがつまずいた土の中から、黒い原油がにじみ出ているのを
発見した。さっそく主人に、実は息子が健康を害していて、新鮮な空気がなにより、と言われている。
そこで、この土地を買いたいが、どうだろう、と持ちかける。
しかし、ポールの弟のイーライが、ダニエルの狙いが石油であることを見抜く。そこで自分の主宰する
教会に5000ドルを寄付することも条件にして、売ることに同意する。

石油採掘の仲間を呼び寄せたダニエルは、サンデー牧場の小高い丘の上に第一号油井を建設し
あえて、油井にサンデー家の末っ子のメアリーの名前を付けて、付近の住人の歓心を買い、採掘を
始めた。その一方で、石油が出た場合、ドラム缶を列車で運ぶコストを考えて、海までパイプラインを
敷くことを計画、ユニオン石油と手を組み、油井を買いあげたいと行ってきたスタンダード石油とは
ケンカ別れとなる。このためにパイプラインを敷設する周辺の土地を買い上げていくが、バンディという
一家は、良い返事をしない。ダニエルはこの土地の周辺が油田地帯だと踏み、不動産屋に買占めを
命じる。
その頃、ダニエルの弟だ、と名乗る男が現れる。実の妹からの手紙を持っていたため、自分には兄弟
なんていないと思っていたダニエルだが、彼のことを信じ、仕事を一緒にすることになる。
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そんな折、石油が噴き出る前のガスの噴出で、近くにいたH・Wが吹き飛ばされ、怪我こそなかったが
聴力を失う。だが、石油は勢いよく噴出してきた。大金が入ったことで浮かれるダニエルと自称弟だった
が、ダニエルは、自称弟を疑っていた。そして、ついに彼の口から、「あんたの弟だという人と知り合い、
兄に会いに行くということだったが、彼は病気で亡くなり、日記も頂戴して、弟さんになり済まして
あんたに会いにきたんだ」と告白を聞くことになる。だまされたダニエルはこの男を許さず、射殺してしまう。
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見事石油を掘り当てたダニエルだが、問題はバンディ家が土地を売らないこと。パイプラインが敷設
出来ないからだ。そこで自らバンディに会いに行く。するとバンディは、イーライの教会に行き、懺悔を
しろ、罪びとだと認めるのだ、そうすれば土地は譲ろう、という。イーライの胡散臭い宗教活動を軽蔑し
馬鹿にしていたダニエルだが、石油が運べなければ金にならないので、教会での儀式に参加すること
に承諾する。そして、イーライの悪魔払いのような儀式のなかいで、ダニエルは「自分は罪びとだ!」と
絶叫させられる。だが、決して改心してはいないし、口で懺悔を叫びながら、心で「やった!パイプライン
だ!」と快哉も叫んでいたのだった。その後、イーライは全国を布教して回る、と土地を離れていく。
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もう一方の問題は聴力を失ったH・Wの扱いだった。彼は自分も行くと見せかけて、列車で遠くの施設に
送り込んでしまった。しばらくしてまた引きとるのだったが、H・Wは大いに傷ついた。その後H・Wは
幼いころから良く遊んでいたサンデー家のメアリーと結婚したのだった。

10数年が経過し、ダニエルは自宅にボーリング場もあるような邸宅に住み、石油成金になっていた。
ある日、成人したH・Wが、オヤジを愛しているが、妻とメキシコに行き、自分も石油事業を始めてみたい。
自分の手で石油を掘る、家をでる、と言い出す意。(手話で。その頃は専属の手話通訳を連れていた)
しかし、一緒に仕事をやるのだと信じていたダニエルは、息子がライバルになりかねない事態に激怒し、
「お前は俺の子どもなんかじゃない。孤児だったんだよ。砂漠に捨てられていたのだ。石油が出る土地を買う時の小道具として育てた。何をいうか、役立たずのロクデナシ!」と隠されていた(真実かどうかは判らないが)ことを暴露する。事実を知ったH・Wは「あんたの血が流れていないことを神に感謝するよ」と言って
ダニエルのもとを去っていった。
この時、しゃべれないと思っていたH・Wが口を利くのだが、デフを装っていたのか、たまたましゃべれた
のかは明らかでない)
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そんな折、イーライが現れる。彼とは息子(であった)H・Wがイーライの妹と結婚したため、義理の兄弟
になっていたのだ。そのイーライは、ダニエルの孫がハリウッドに出て、俳優になりたがっている、
この際、バンディの土地を買い上げるため、私の教会が間に立とうか、と持ちかける。それにあたっては
10万ドルと教会への寄付5000ドルが必要だ、と。「妥当だな。君とは仕事をしようと思っていた」と
ダニエル。だが、それには条件がある。「偽預言者だ。神は迷信にすぎない」と言うんだ。と、かつて
バンディ家の土地の一部をパイプラインの敷設のため、教会で受けたみじめな懺悔の復讐に出たのだ。

(投資に失敗して金に困っていた)イーライは、ダニエルの前で、言われたことを絶叫する。そんなイーライ
を観ていたダニエルはボーリングのピンで、イーライを「おれこそ第三の啓示だ!」と叫びながら、撲殺して
しまう。そこで映画は終わる。

2時間半。長く重い映画を、どう受け止めるべきか。観客を突き放すような終わり方は何なんだ?
石油と金に取りつかれた男の「寂しい人生」を哀れむべきなのか。H・Wが自分の元を去って行ったあと
彼は、幼いころのH・Wと楽しく遊ぶシーンが回想されるが、これは本当はH・Wを愛していたということか。
ダニエルの生き方に何を感じればいいのだろうか?
ストーリーとしては理解できても、映画の主張が見えない、「ノー・カントリー」もそうだが、そういう映画から
何を得ろ、というのか。
アルトマンも難しい映画だが、まだ「映画の主張」がPTAよりは判りやすいと感じる。畢竟、私とPTAの
相性の問題なのだろうな。コーエン兄弟にも同じようなことを感じる。
アルトマン>コーエン兄弟>PTAという相性かな。今のところ。
一匹狼の一攫千金石油男VSオイルメジャー、資本VS宗教、親子、兄弟VS周囲を信用しない孤独な男
など、さまざまな側面を読み取ることは出来るが、それがPTAの言いたいことなのだろうか、本当に
それでいいのだろうか、私には、この映画は重すぎて、手に余る。カタルシスのないタイプの映画、
確かにオスカーを獲得したダニエル・デル=ルイスの演技は、凄まじいものだった。映像もいいし、
音楽もいいのだがなあ・・・。

「ストーリーは判るが、映画の主張が見えない」、最近そんな映画ばかり観ているような気がする。
映画が病んでいるのか、アメリカが病んでいるのか・・・・!そんな映画がオスカーを獲るって・・・!
この映画の詳しい情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-05-27 23:30 | 洋画=さ行 | Comments(1)

●「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」
2007 日本 東宝、フジテレビ他  116分
監督:馬場康夫  原作:ホイチョイ・プロダクション  脚本:君塚良一
出演:阿部寛、広末涼子、吹石一恵、伊藤裕子、劇団ひとり、小木茂光、森口博子、薬師丸ひろ子他
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「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」が、あまりにも重い映画だったので、普段はあまり
観ない種類のお気楽映画を観てみました。
それと、20年前のバブルを若者ではない立場で体験したものとして、ちょっと興味があったから。

ホイチョイ・プロが「彼女が水着にきがえたら」とか「私をスキーに連れてって」とかの映画を作り、
サザンやユーミンをバブル気分の音楽にしてしまったのが、20年前。時代は昭和から平成へと移り
株価は4万円に迫り、地上げの横行で、土地の値段は急騰していたころ。シーマ、ジュリアナ、ティラミス
アルマーニと、連赤の頃と同じ日本とは思えない、そんな・・・
『2007年、現在の日本。景気の回復に力強さはなく、低迷が続く日本経済だが、なかでも800兆円と
いう国の借金が重くのしかかり、国家の崩壊は目前に迫っていた。そんな日本の危機を救うべく、財務省
大臣官房経済政策課に勤める下川路功(阿部寛)はある計画を進めていた。それは、1990年にタイム
スリップしてバブル崩壊をくい止め、歴史を作り変えるという極秘プロジェクトだった。

ところが、タイムマシンの開発者・田中真理子(薬師丸ひろ子)が90年3月の東京にタイムスリップした
まま行方不明になってしまう。そこで、真理子の娘で借金取りに追われるフリーターの真弓(広末涼子)
が、母親を救うためタイムマシンに乗り込むのだったが…。』(allcinema)
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まあ、どうこういう程の映画ではないので、それこそお気楽に観飛ばす感じでいいんじゃないでしょうか。
タイムパラドクス的には突っ込みどころ満載だし、だいたい、タイムスリップの構造が「バック・トゥ・ザ
フューチャー」のパクリですからねえ。

不良債権を増やしてしまう法律の成立は、真弓や当時はお気楽通産省役人だった下川路らの活躍で
確信犯だった芹沢(伊武雅刀)らの陰謀を暴露して、食い止めた。しかし真弓は自分が、母真理子と
下川路の子供であることも知ってしまったのだった。結果、現在に帰ってきた真弓が見たものは、総理
大臣になった下川路、夫人の真理子、お嬢様、と呼ばれる真弓。バブル崩壊の後の「失われた10年」は
見事に食い止められたのだった。ベイブリッジは4本だか5本も架かっていて、日本は繁栄を続けて
いたとさ・・・。

ストーリーはあまり関心がなく、20年前の時代考証をどう表現するか、が楽しみでした。広末が’90に
タイムスリップしてきたとき、見上げたところにあったのは、建築途上のベイブリッジ。もちろんCGだが、
ここは良かったんじゃないかな。それと、吹石一恵の役どころの20年前の姿。「ソバージュワンレン・
ボディコン太い眉」、ここもいい感じ。(吹石一恵、似合いすぎ)
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ザッピングするテレビに出てくる露木茂と松山香織の2ショットはフジテレビならでは。広末が現代から
持ってきた携帯は圏外で、彼女が着ているダメージジーンズやへそ出しルックを奇異な目でみる若者、
でもパーティーのビンゴの賞金が現金200万円なんて、そんなの実際にあったのかな?総じて17年
前は結構リアルに再現されていたのではないでしょうか。

難しいことはさておき、あのハイ・テンションで浮かれていた時代、良かったなあ(ちっとも良くないんです
がね)と、人ごとのように懐かしみ、楽しんでしまうのがホイチョイの真骨頂なんだ。
因みに薬師丸ひろ子が演じた「田中真理子」という名前、「彼女が水着にきがえたら」では主人公・原田
知世の、「波の数だけ抱きしめて」では主人公・中山美穂の、名前だったんですと。その辺のおちょくり
具合もホイチョイらしいですね。

確かに87年ごろから91年ごろの日本は、良く考えれば変だったよ。でも誰もそれに気がつかなかった
のが悲劇だったんだよね。だから経済学的にいえばバブルの崩壊を食い止めるのでは無く、バブルの
発生そのものを止めなければならないはずなんだ。現代に戻ってきた主人公らが目にする東京は
バブルが継続している感じ。それじゃ、今度は日本は完全に破産してしまうわけで・・・。
この映画の詳しい情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-05-26 22:50 | 洋画=は行 | Comments(0)

●「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」
2008 日本 若松プロダクション、スコーレ 190分
監督・脚本・製作:若松孝二  音楽:ジム・オルーク
出演:坂井真紀、ARATA、並木愛枝、地曳豪、伴杏里、大西信満、中泉秀雄、伊達健士、奥貫薫ほか。
ナレーション:原田芳雄
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昨年のキネ旬ほか、ネット上でも評判が良く、気になっていたものの、若松監督の作品は観たことが
無かったし、第一190分という超長編にチャレンジする勇気もなかった。ただ、この事件はリアルタイムで
見聞していて、あさま山荘事件は大学時代、東京の下宿でテレビの生中継にかじりついていた。
通う大学も、学園紛争末期で、学内で「反帝学評」のデモが行われていた。タテ看もびっしりだった。
大学は2年時の年末にロックアウトし、その後期はすべてレポートでの試験だった。
世の中が政治の季節であったことはリアルタイムの経験がある。私は当然ノンポリであったが・・・。

そんな自分のおよそ40年前の記憶と体験を確認する意味も含め、WOWOWの録画を紐解きました。
確かに長い映画ではあった。特に前半の1時間は、1960年代初頭からの日本の学生運動の流れを
原田芳雄のナレーションで当時のアーカイブ映像を使って説明するパートなので、だれてきます。
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ただ、いよいよ、真岡での銃砲店襲撃事件、交番襲撃拳銃強奪事件、そして赤軍と京浜安保共闘の
榛名山麓や、大菩薩峠での軍事訓練など、ドキュメントタッチで、冷徹に淡々と(でもないか)描いていく
あたりから俄然、映画に迫力が出てくる。
結局、頭が良く、弁が立つ森恒夫と、それに追随する永田洋子の二人の下、山中で「武装革命」をなしと
げるため、「自己を共産化し」するという大義のもと、「自己反省」と「総括」というリンチが(当時は内ゲバ
とか呼ばれていた)行われ、10数人の青年たちが命を落としていく。
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彼らは「共産主義的暴力革命」がなしえると信じて疑わず、それだけ純情だったのかもしれないが、
見ていると、ある種新興宗教ともいうべき、盲信的な部分に幼さを感じざるを得ない。官憲の包囲網が
狭まり、山での訓練も出来なくなった一行は、二手に分かれて逃げるが、森、永田は早々に逮捕され
大菩薩峠周辺から、「総括」の名の下のリンチで死んでいった兵士の遺体が次々と発見される。

もう一方の、坂東國男、高校生の加藤元久らは、逃げ場を失い「あさま山荘」に侵入し、たまたま一人で
留守番をしていた牟田泰子さんを人質に取って立てこもった。彼らは牟田さんに「あなたに危害を加える
つもりはない。あなたは人質でもない。私たちに味方せよとは言わないが、警察にも味方しないでほしい。」
と訴える。牟田さんは「裁判で私は証言は一切しません」と自分の立場を守ろうとする。

後は、ご存じのガス銃と放水、鉄球での山荘破壊、そして突入。逮捕と至るわけだ。この映画では
(予算の関係もあるだろう)終始、山荘の内側しか描かない。外からの音と、警察や赤軍メンバーの
家族の訴え、牟田さんの夫の励ましなどの声で、警察などの動きを描く。
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「突入せよ!あさま山荘事件」は、佐々淳行ら、時の権力側から、警察がいかにして、あさま山荘事件を
解決したか、と言う内容で、赤軍派は単なるテロリストとしてしか描かれていないが、実は彼らの
バックには、理解しなければならない事実があったのだ、ということを本作は訴えている。

必要以上とも思える、「総括」「処刑」の、禍々しいシーンは、森と永田を中心にした圧倒的なイデオロギー
に、誰も反論できない。単なる「サディストによるリンチ殺人」、みなそうは思っても、誰も口に出来なかった
のはなぜか、ということを、その時代の風潮を背景に見ている人に問いかけてくる。最後のシーンで
加藤元久が「みんな勇気がなかったんだよ!」と絶叫するが、まさに、「革命を成し遂げる」という勇気には
止まり、考え、異なる意見を交換しあい、時に引く、という勇気もまた一方で、必要なのだが、彼らにはその
勇気が欠けていたのだ。
翻って、時の権力も、また勇気を欠いていた。当時、連赤を鬼畜のように、唾棄すべき殺人テロリストと
して決めつける論調が主であったし、事実そのような部分が大きいことも確かだ。ただ、どうして、そういう
「時代のお化け」を生み出してしまったのか、その時代の日本という国の権力構造をしっかりと見ておかな
ければならない、といことだ。

「全学連」が大学から去っていくと、大量消費と高度成長の波の中で、大学での政治の季節は急速に
終息していく。今の大学生に、異常であり、犯罪ではあり決して肯定は出来ないが、あの頃の学生の
ような情熱はあるだろうか。パリの五月革命、中国の天安門事件、ベトナム戦争以降のアメリカの政治
活動など、中心はいつも大学生であった。しかし、体制側モラトリアムとしての大学生活を送る今の
大学生たちにとって、自分たちが政治に関わることなど、考えられもしないことなのだろう。

ただし、当時の学生が、全員政治的だったか、といえば、そうではなかった。私の周りのほとんどの仲間
は、それぞれの青春を、政治意外で謳歌していた。だから「連合赤軍」は、尖鋭化した一部にすぎないが、
それでも、彼らはまぎれもなく当時の大学生たちであったのだ。加藤元久などは高校生だ。
それが幸せなのか、不幸なのか。殺された彼ら、犯行を犯した彼らとほぼ同じ年代の私はそんなことを
考えていた190分だった。

坂口真紀と奥貫薫以外は観たことのない俳優さんばかり。だが、森恒夫役の地曳豪、永田洋子役の
並木愛枝(不気味なくらい迫力あるブスを好演)は見ごたえがあった。永田洋子は逮捕されたとき
バセドウ氏病だとの報道が、妙に記憶に鮮明である。ジム・オルークの音楽も良かった。
疲れる映画ではあったが面白かった。
この映画の情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-05-25 23:50 | 洋画=さ行 | Comments(0)

●「波も涙も暖かい A Hole in the Head」
1959 アメリカ Sincap Productions,United Artists,120min.
監督:フランク・キャプラ
出演:フランク・シナトラ、エリノア・パーカー、エドワード・G・ロビンソン、キャロリン・ジョーンズ他
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<1960年度アカデミー賞歌曲賞受賞作品>


3か月ほど前、CDショップでDVDの900円ワゴンセールをやっていて、その中から、シナトラの名前と
アカデミー歌曲賞(劇中歌"High Hopes"=サミー・カーン作詞、ジミー・ヴァンヒューゼン作曲)を
獲っている、という理由で買っておきました。そしたら数日前にNHK-BSで放映していましたね。

この頃のアメリカ映画(特にミュージカル)は、好きだなあ。MGMのミュージカルが盛んだった頃で、
その様子は「That's Entertaimnment Ⅰ~Ⅲ」に詳しいのはご存じの通り。
出てくるクルマにハネが生えている頃のアメリカですね。1950年代から60年代初頭の時期。

ここでの歌"High Hopes"を書いたヴァン・ヒューゼンも最盛期の頃ではなかったかな。彼は20世紀の
アメリカが生んだ最も偉大なポピュラー・ソング・ライターの一人です。さすがにここでの歌も、実に
いい感じではまってます。

1934年に「或る夜の出来事」でオスカー監督賞を獲得したキャプラの最後から2番目の作品となります。
こういう心温まる作品は彼の得意とするところで、この作品でもそんな雰囲気が満ちています。

舞台は、映画の舞台としては当時としては珍しかったんじゃないかな、フロリダ。3人の仲の良い男が
いた。一人は成功し、億万長者に、一人はタクシー運転手に、そしてここで小さなホテルを経営する
トニー(シナトラ)は、妻を亡くしてアリーという少年と二人暮らし。しかし、彼はプレイボーイで女性を
追いかけることに忙しい。そんなことをしているので、かさんだ借金のためにホテルを立ち退かなくては
ならなくなった。付き合っているシリル(キャロリン・ジョーンズ)からは、子供を手放して私と一緒になって
と迫られている。
ニューヨークに住む実の兄に相談すると、身を固め、きちんと商売をするため、お見合いをするなら金を
貸す、という条件を提示される。嫌々お見合いに合意したトニーだったが、来た女性がびっくりするほどの
美人(E・パーカー)。しかもお金持ちの未亡人。
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一方、息子のアリーは、お父さんが大好き。お兄さん夫婦が預かる、というのだが、アリーはどんなに
出来の悪いオヤジでも、離れたくない。お父さんが大好きなんだな。この親子がホテル前のビーチで
歌うのがオスカーを獲った"High Hopes"。いい感じのハモリを聞かせます。
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そんな状況で、お金持ちになったかつての親友が故郷に帰ってくる。トニーは彼に会い、自分がこの地に
ディズニーランドを作る計画がある、と説明した。親友は、十分理解を示したので、トニーは出資してくれる
と思いこんだが、親友は、付き合いで上手を言っただけだった。
その上、ドッグレースに自慢のキャディラックを500ドルで売って掛けて獲得した5000ドルもま、さらに
増やそうとして、無一文になる始末。

意気消沈のトニーは、お見合い相手の「ロジャーズ未亡人に接近する。自分の家に招待し料理を作り
もてなそうするほど、トニーを気に入っていた。トニーも彼女なら、身を固めてもいいか、と思うが
付き合った動機が金であることに心を痛め、自ら身を引こうとする。
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再びトニーは兄貴に金策を申し出る。兄は、息子のアニーを預け、一生懸命働けば、金は都合しようと
提案、離れるのを嫌がるアニーを、わざと、お前なんかがいると足手まといなんだよ、と嫌うふりをして
アニーを振り切り、アニーはニューヨークに行くことに。
しかし、出発の朝、ホテルの前の海岸のヤシの木から、離れていく息子の姿を見つけたアニーは
空港に向かうタクシーを、元のホテルに戻してもらい、海岸で打ちひしがれていた、大好きなお父さんに
抱きつくのだった。

ストーリーとしては、詰めの甘さを感じてしまうが(特にラストはダメオヤジが反省した感じは受けなかった)
まあ、そういう映画ですから。キャプラの映像も、平面的でダイナミズムに欠けるが、まあ、そういう
映画ですから。兄貴を演じたエドワード・G・ロビンソンとその奥さんを演じたテルマ・リッターが、脇を
締める重しのような存在でした。シナトラはこの手の映画はお手の物。
映画をみてしみじみと人情を味わいたい人にはいい映画じゃないかな。2時間はちょっと長い気がするけど。
邦題の「波も涙も暖かい」は、誰が考えたか知らないが、波と涙が韻を踏んでいるし、温かいではなく
「暖かい」とすることにより、フロリダの雰囲気と温かい人情の雰囲気が表れている、秀作です。
この映画の情報はこちらまで。
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"Ms. Eleanor Parker in "Sound of Music"as The Baroness '65"

by jazzyoba0083 | 2009-05-24 20:51 | 洋画=な行 | Comments(0)

●「ミラーズ・クロッシング Miller's Crossing」
1990 アメリカ 20th Century Fox Film.Co.,Circle Films,115min.
監督:ジョエル・コーエン 製作:イーサン・コーエン 脚本:イーサン兄弟
出演:ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、アルバート・フィニー、ジョン・タトゥーロほか。
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このところWOWOWで特集をしていた「コーエン兄弟作品シリーズ」の1つ。タイトルの記憶から
一度、観たかな、と思って観はじめたら、未見であることが判明、そのまま面白く見終えました。
「ノー・カントリー」に通じる不条理みたいなものは、この作品でも顕著でした。
ストーリーはシンプルなのに何を言いたいのか判らない、という点。結局、私としては映画を通して
主人公のギャング、トム(ガブリエル・バーン=ごく普通な役者である点が不思議なリアリティを醸し出し
ている)が、何をしたいのか良く判らず、結局こういう人間にはなりたくないなあ、と感じた次第。

エンタティンメントとして見た場合、アメリカ東部を舞台としたアイリッシュマフィアとイタリアマフィアの
対立・抗争という陳腐な題材を、コーエン兄弟ならではの映像タッチ、テンポ、間、そしてストーリーの
組み立てなど、独特のスタイルを確立していて、観ていて妙に引きつけられてしまう。「ノー・カントリー」
のときもそうだったが、そのあたりがコーエン兄弟の真骨頂なのだろう。
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筋書きはこうだ・・・(By allcinema)

『1929年、アメリカ東部の町。アイリッシュのレオ(フィニー)とイタリアンのキャスパー(ポリト)、二つの
勢力が暗黒街でシノギを削っていた。
レオとその片腕で博打好きのトム(バーン)は厚い友情で結ばれていた。同じくレオの部下バーニー
(タートゥーロ)の姉、高級クラブで働くヴァーナ(ハーデン)はレオの情婦だったが、トムにも魅かれ
一夜を共にする。
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やがてその事実がばれ、トムはレオと袂を分かつ。博打の借金に追われるトムはキャスパーの下で働く
ことになるが、受けた命令は<好きな女の弟である>バーニーを殺せ、というものだった……。』

ボスの女に手を出す、ボスに放り出される。敵対するイタリアマフィアに取り入る。ここのボスから出た
指令は、女の弟を殺せ、というもの。だが、トムは、殺せず、バーニーを逃がす。
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今度はバーニーがトムをゆする。トムは、もともとのボスの用心棒、デーンがボスを裏切ろうとしている
と画策、しかし女は自分の弟をトムが本当に殺したと思い、去っていく。
やがてトムの策略で、アイリッシュとイタリアンが殺しあいとなり、結局、元のボスに戻ると見せかけて
トムは自分の身の安全を図る。アイリッシュのもともとのボスは、トムに礼を言い、もう一度俺のところに
戻ってくれ、と頼まれるが、断って去っていく。
どうです?私の説明も出来が悪いが、判りやすそうで判りにくいでしょ?これは主人公トムが何をどうした
いのか、その目的が判らないゆえの不安定感なんですよね。「ノー・カントリー」のシガーと同じ不安定さ
だと感じる。殴られれば弱いし、自分で人殺しを積極的にしない(最後にバーニーを殺すところぐらいじゃ
ないかな)、女には弱い、という主人公トムの生き方、ずる賢いのか、恐ろしいくらいのゴーイングマイ
ウェイの人物なのか。ジョエルの奥さん、マクドーマンドがカメオで出ているのですが、どこに出ていたの
か、判らずじまい。トホホ。

相変わらず計算された映像は美しいし、本作は音楽もすごくいい感じだ。コーエン兄弟の他の作品も
ますます観たくなりましたね。
この映画の情報は、こちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-05-18 23:10 | 洋画=ま行 | Comments(0)

●「天使と悪魔 Angels and Demons」
2009 アメリカ Sony Pictures Entertainment,Columbia Pictures,Imagine,138min.
監督:ロン・ハワード    原作:ダン・ブラウン『天使と悪魔』
出演:トム・ハンクス、アイェレット・ゾラー、ユアン・マクレガー、ステラン・ステルスガルド、ほか。
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『「ダ・ヴィンチ・コード」のロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演で贈る“ロバート・ラングドン”シリーズ
第2弾。ダン・ブラウン原作のシリーズ1作目を、映画版では時制を前後させ続編として製作。教皇選挙
(コンクラーベ)が行われるヴァチカンを舞台に、宗教と科学の数百年にわたる対立の歴史が招いた恐る
べき陰謀の阻止に奔走する宗教象徴学者ロバート・ラングドンの活躍をサスペンスフルかつダイナミック
に綴る。共演は「ミュンヘン」のアイェレット・ゾラーと「スター・ウォーズ」シリーズのユアン・マクレガー。

 ハーバード大学の宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授は、ルーヴル美術館での一件以来冷戦関係
だったヴァチカンから思いがけない協力要請を受ける。
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秘密結社イルミナティがヴァチカンを窮地に陥れていた。それは17世紀にガリレオを中心とする科学者に
よって組織されるも、ヴァチカンの激しい弾圧で消滅したものと思われていた。しかし秘かに復讐の機会を
待ち続け、教皇の逝去を受けて行われようとしていたコンクラーベに乗じてついに復活を果たしたのだ。

 彼らは最有力候補の枢機卿4人を誘拐し、1時間ごとに殺害すると予告、その上ヴァチカン全体を爆破
する計画まで進めていた。そのために彼らはスイスのCERN(欧州原子核研究機構)から恐るべき破壊
力を秘めた“反物質”を盗み出していた。そこでCERNの科学者ヴィットリア・ヴェトラも駆けつけ、
ラングドンと協力して事件解決に乗り出すが…。』(allcinema)
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前回の「ダ・ヴィンチ・コード」を観た時は、原作を読んでいたにも関わらず字幕を追うのが忙しく、画面の
美しさや演出・演技を堪能出来なかった、(物語が専門的で複雑だったこともあるが)ので、今回は私以上
に歴史に疎い奥さんと相談して、日本語吹き替え版を観賞。洋画をいきなり吹き替えで観たのは初めて
でじゃないかしら。飛行機の中は別として。

事前の知識として「前作よりは判りやすい」という評判を聞いていたので、やはり字幕版にしたほうが
良かったかなあ、と一瞬思いましたが、吹き替え版で結果正解でした。複雑ではないといはいえ、
バチカンと科学者との歴史的な対立。ガリレオの存在、「イルミナティ」の存在、ローマ法王庁のこと、
最新の科学事情などが背景にあるので、より物語を理解するためには吹き替えで良かったと思いました。

「コンクラーベ」や、枢機卿秘書長であり、ローマ法王未決定時のバチカンの責任者であるカメルレンゴ
という職業も、本来は事前に勉強しておくと、より理解が深まったことでしょう。これから観に行かれるかた
はウィキペディアで「カメルレンゴ」という職位を確認しておくことをお勧めします。

そのカメルレンゴを演じるのがユアン・マクレガーであります。この人がキーマンとなります。
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物語は出てくる単語以上にシンプルで、かつてガリレオたち科学者を迫害したローマカソリックの総本山
バチカンに対し、科学を否定し迫害してきた復讐をするとして、「反物質」を盗み、教皇候補の4人を
「土」「火」「風」「水」の4要素に絡めて殺していく。しかし、その裏には、宗教と科学という表のテーマ以外
の意外な陰謀が隠されていたのだった。
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亡くなった教皇は実は毒殺されていて、それはガリレオの時代から続く秘密組織「イルミナティ」の仕業
ではないか、とカメルレンゴと、ラングトン教授たちは推測する。しかも、バチカンの内部に「イルミナティ」
のメンバーがいるのだ。彼らは、次々と殺されていく教皇候補たちの謎を追いかけて真実に迫ろうとする。

何とか教皇候補らが殺されないように4つの要素のある教会を、暗殺者より先回りしてローマ市内から見
つけ出そうと必死に考えをめぐらすラングトンとヴィットリアだが、3人の候補者については先を越されて
まんまと殺されてしまう。加えて3人目のところでは暗殺者から銃撃をくらう。ようやく4人目の「水」の謎を
犯人より早く解き明かし、現場に行くが、警官は射殺され候補の枢機卿は泉の中に重しをつけられて沈め
られた。
ラングトンは必死に水面上に押し上げようとするが、重い。ようやく近くにいた人たちの手も借りて、
最後の4人目は命を救うことができた。

ラングトンらは、「イルミナティ」の手がカメルレンゴに及ぶことを察知し、急ぎバチカンへと走った。
カメルレンゴの部屋に飛び込むと、部隊長が床にへたり込んだカメルレンゴに何かをしようとしていた。
(ように見えた)カメルレンゴは「裏切り者だ」と叫び、警官隊は彼を射殺、さらに、枢機卿の中でも
カメルレンゴと対立していた枢機卿が飛び込んでくると、カメルレンゴは「彼こそイルミナティだ!」と叫び
彼も警官隊に射殺されてしまう。なんとカメルレンゴは、胸に教皇の焼印を押されていたのだ!
 時刻を限られた「反物質」の爆発までは時間が迫っていた。最後に助けた枢機卿の証言で、彼ら
が捕えられていたのが、サンタンジェロ城であることが判明、やけどの苦痛をこらえてカメルレンゴと
ラングトンらはサンタンジェロ城の枢機卿らの捕えられていた施設に急行するが、「反物質」は確保した
ものの、すでに爆発は避けられない状況にあった。

一方暗殺者は、ラングトンらの追跡を振り切り、逃亡用にあてがわれていたクルマに乗り、エンジンを
かけた瞬間に爆弾が爆発、実行犯は身内の手により消されたのだった。

「反物質」爆発を止められないと知ったカメルレンゴ、亡くなった教皇にわが子のように育てられた彼は、
自分が「反物質」を持ってヘリに乗り込み、バチカン入り前に空軍にいた経験を活かし自ら操縦して高高度
に上昇、自らはパラシュートで脱出して、被害のない上空で爆発させることに成功した。
「反物質」の爆発って理論的に良く解らんのだけど、映像ではああいう風になるのかね。

<ここから下はネタばれしていますので、未見の方は、読まないでくださいね>

で、無事にバチカン広場に舞い降りたカメルレンゴには称賛の嵐。彼を次の教皇に、という枢機卿が
続々と現れた。
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一方、自分の仲間の手帳を取り上げてしまった(すでに射殺された)バチカンのスイス傭兵部隊長の
机の中を探ると、日記のほかに、常に教皇室を見張れる4つの監視カメラのモニターが出来てきた。
部隊長は健康に不安のある教皇の様子を監視していたのだった。

ラングトンらは、何かが録画されているかもしれない、と巻き戻してみると、先ほどの部隊長射殺シーンが
現れた。そこには驚愕の大どんでん返しが写されていた。

実は、カメルレンゴこそ「イルミナティ」の黒幕、であったのだ。彼は「反物質」を見つけた科学の力を認めた
教皇を毒殺で亡きものにし、旧来の教義に基づく原理主義的教皇の座に自ら着き、バチカンの威厳を復活
させようとの欲望に負け、自分の対立候補になるであろう改革派4人の有力枢機卿を、「イルミナティ」の
仕業に見せかけて、雇った暗殺者に、自分で書いた宗教的な筋書きに従い、殺させたのだ。

殺された4人(4人目は助かったが)すべて、胸に、「EARTH」「FIRE」「AIR」など4つの要素の焼印が
暗殺者により押されていた。カメルレンゴは、最後の教皇の焼印を自らに押し当てて、自分も被害者を装っ
たものの、それを見破った傭兵隊部隊長を、カメルレンゴの部屋にラングトンらと共に飛び込んだバチカン
警察に射殺させ、自分の存在を怪しいとにらんでいた枢機卿の一人も「イルミナティだ!」と名指しすること
で殺害させたのだ。

そう、すべての筋書きは、カメルレンゴの仕業であった。自分の悪事がばれたカメルレンゴは、バチカン
の中で、石油ランプを掴んで自ら頭から灯油を浴びて焼身自殺を図り、果てたのだった。

そして、「コンクラーベ」は終わり、イタリアの枢機卿が新しい教皇に選ばれ、ルカと名乗ることになった。
ルカは医者でもあったことから、科学と宗教の融和を象徴するような命名と思われた・・・。

全体の印象としては、重厚さとしては難解ではあったものの「ダ・ヴィンチ・コード」に軍配があがる。
映画の娯楽性から見れば「天使と悪魔」かな。なんか軽い活劇風になっちゃったウラミはあるけどね。
カメルレンゴの最後の大どんでん返しは、見ごたえあったものの、彼の仕業に帰結させることにより、
「宗教対科学」の構造がやや希薄になった。
また4つの教会の謎解きが、わざと臭い感じがした。なぜって、ローマの教会って何百年前からあった
わけで、ラングトンくらいの知識を持つ人なら4つの要素とローマ教会なんて、大学で講義していそうな
もんだけどなあ。

作品自体、前作より確かに判り易く、エンタティンメントとしても良くできていたと思うので、まあ、そう
目くじらを立てるほどじゃないんじゃないかな。
「グラン・トリノ」とか「ノーカントリー」などとは全く別次元の、映画の楽しさの側面を堪能できる作品で
あろうかと。
この映画の情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-05-17 12:20 | 洋画=た行 | Comments(0)

●「セックス アンド ザ シティ Sex and The City」
2008 アメリカ New Line Cinema,HBO,Darren Star Productions,144min.
監督:マイケル・パトリック・キング
出演:サラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、シンシア・ニクソほか
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1998年、つまり今から11年前にスタートした人気テレビシリーズ「SATC」の映画化。私はテレビ
ドラマを観たことはありませんが、もうこの4人がこのシリーズで共演することもないだろう、ということで
一度は観ておこうかと。11年前から変わらないメンバーで、彼女らは30代から40代を(この映画の
時点でサラは44歳)の、それこそ女の一番旬な時代をドラマの中で演じて見せたわけですね。
彼女たちのライフスタイル、ファッション、恋愛に対する考え方、ひいては人生観など、共感する女性は
多かったわけです。season6まで制作されたシリーズなので、良くできたドラマだったのでしょう。

で、同じメンバーで挑んだ映画。テレビを観ていた人はより楽しめたでしょうね。テレビを観ていない私も
結構観ちゃいましたね。ただ長い! 結局サラ演じるキャリー・ブラッドショーが、結婚して幕となる
ハッピーエンドですが、それはそこ、簡単にはゴールイン出来んわけですわ。

これに夫と別居し悩む弁護士のミランダ(シンシア・ニクソン)、ハリウッドスターのマネージャーとして
ハリウッドに行ったちょいと年上の基本男がいないと生きていけないサマンサ(キム・キャトラル)、
さらに中国人リリーを養子に取った途端に妊娠したシャーロット(クリスティン・ディヴィス)のそれぞれの
事情が絡みつつ、キャリーがずっと付き合ってきたビッグ(クリス・ノース)との結婚話が進みます。

同棲していたキャリーとビッグ、ついに結婚を決意しますが、ビッグにちょっとした心の迷いが生じ、
式の当日に躊躇して会場に現れない。キャリーは、うすうす感じてはいて、式を中止して戻る道々
会場に向かうビッグに遭遇、彼の口から「僕らは結婚すべきかな?」と迷いの言葉を聞くにおよび
逆上、付き添いで参列していた3人の仲間もひどい仕打ちにビッグを呪うのだった。

自分のした愚かな行動をひどく反省したビッグはメールや手紙で謝罪を続けたが、キャリーは許さない。
新婚旅行を仲間4人との旅行に切り替えて、悪いことは忘れようとする。ショックは大きかったが仲間が
自分を励ましてくれるので次第にキャリーの気分も好転。しかし、ビッグが結婚に一瞬の躊躇を覚えた
きっかけを作ったのが、式の前のパーティーで、自分が別居で結婚に疲れていたミランダがビッグに
「結婚なんて最悪よ!」と言ってしまう。2度結婚に失敗しているビッグはこれで心にブレーキがかかって
しまったのだった。

それを知ったキャリーは今度はミランダと絶交状態に・・・。
ま、それはそれ、ビッグの真意はやがてキャリーに伝わり、ミランダとも仲直り。最初予定していた派手な
結婚式をジミ婚に変えて、表面だけでなく、心のこもった挙式となり、仲間に祝福され、キャリーとビッグ
は結ばれましたとさ。
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とまあ、他愛もない恋愛話であります。タイトル通り、きわどいベッドシーンやヌードも出てきます。
お子様と観る映画ではないので、アラサー、アラフォーの女性が嬉しければいいわけでね。
そういう夢を叶えるエンタテインメントとしての映画としては、まあ、男の私でも観れる程度の作品では
ありましたね。手抜きはない感じはしました。ファッションも楽しいです。私としては50歳を超えて
若い恋人の気を引かんと、自ら寿司の女体盛りに挑戦しちゃうサマンサが好きですね。男狂いだけど
性格がパキっとしていて気持ちいい。それにしても実年齢52歳のキム・キャトラル、良くヌードになりました
ねえ。よほど体に自信がないと出来ないですね。お見事!それに比べるとメインどころのサラは
やはり年を食いましたね。それともともと馬面系、昆虫系の彼女の顔はあまり私の好みではないですね。
シリーズ幕引きの映画で多少は長くする必要はあったにせよ、ラブコメの2時間20分は長すぎだ。
この手の映画は100分前後が望ましいと思います
この映画の情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-05-16 23:00 | 洋画=さ行 | Comments(0)

●「ノーカントリー No Country for Old Men」
2007 アメリカ Paramount Vabtage,Miramax,and others,122min.
監督:ジョエル・イーサン・コーエン 原作:コーマック・マッカーシー:『血と暴力の国』(扶桑社刊)
出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソンほか。
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<2007年度アカデミー賞作品、監督、脚本、助演男優賞受賞作品>


昨年オスカーの主要部門を独占し、評判は上々だったのにも関わらず、シネコンではあっという間に
上映が終わってしまった。見逃していたら先日WOWOWで放送された機会にやっと観賞できた。
コーエン兄弟は、トム・ハンクスの「レディ・キラー」しか観たことがないし、最新の「バーン・アフター・
リーディング」も、パスしてしまったので、楽しみにして観ました。不気味な映画で、話はシンプルなのだが、
観終わった後に、この映画って何を言いたかったのだろうと、まじめに考えたくなる映画であった。
そいう言う意味では、とても「良くできた映画」「面白い映画」だった。
人間の心を持たない殺人マシーン、アントン・シガー(バビエル・バルデム=オスカー獲得)と、のんびり
でも人情味のあるベル保安官は、きっと何かのメタファー(暗喩)に違いない、と思うわけ。
タイトルの「ノーカントリー」では言わんとするところは解りづらく、「No Country for Old Men」と
して初めて、何かしらが見えてくるような気がする。

描かれている時代も大事だろう。1980年。ベトナム戦争が終わった直後で、アメリカの文化も倫理や
道徳も荒廃して、回復途上にあったころ。いわゆる古き良きアメリカの価値観が、ベトナムによって
徹底的に壊され、この映画でも描かれるように「老人にいるところがない国」と、その頃のお年寄りが
思うほど、価値観の大転換、瓦解、新たな価値観(これは古い人間には受け入れられるものでは無かっ
たものだ)の台頭が著しかった時代だ。

冒頭は、殺人鬼シガーがせっかく逮捕されたのに、保安官助手のちょっとした油断で自らも殺され、
自分の欲求に対して圧縮空気を使った特殊銃を使い、殺人を重ねていく。彼はのちにモスを追うことに
なるのだが、そのあたりの血生臭さに奥さんは早々にリタイア。
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そんな時代にベトナム帰還兵のモスは、シカ撃ちに出かけて、そこで麻薬取引の抗争現場に出くわす。
すでにメキシコ人とかが殺され、大量のコカインが残されていたが、金は無かった。そこから続く血痕を
追跡したモスは、すでに息絶え200万ドル入りのカバンを持った男を発見した。
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モスはこの金をローラーハウスに持って帰った。しかし、抗争現場に一人だけ生き残っていたメキシコ人が
水を欲しがっていたため、水を持って夜中に現場に戻ったのがケチのつけ始め。そこにシガーらが
現れた。犬にかまれ、銃で撃たれたが、モスは川に逃れ、なんとかローラーハウスに逃げ帰った。
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彼は取り急ぎ金をどこかに隠さなければならないと、妻を置いて、メキシコを目指す。しかしカバンの中には
発信機が隠されていて、どこにいてもモスの居所はシガーには判ってしまう。モスは、モーテルのある部屋
の通風孔にカバンを隠すが、シガーに場所を特定され、カバンを取り出して逃げる。逃げたモーテルにも
シガーは迫る。その部屋でモスはカバンの中に発信機があることを発見、もうすぐ近くにシガーが来ている
ことを覚悟したモスは、ショットガンを構えてシガーを待つ。やがてドアの前に現れたシガー。
ドアノブのシリンダーを空気銃でふっ飛ばし、中のモスと撃ち合いになる。
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モスはカバンを持ち、窓から逃亡、途中で横腹を撃たれるが、トラックを止めて銃で脅し、逃げようとするが
シガーの銃は正確にトラックを狙い、運転手を殺し、クルマは車線をはずれ駐車中の車に激突して
止まった。そこに近づくシガー。またモスと撃ち合いに。今度はシガーがモスの銃弾を受けて一旦は
退却。
彼の傷の治療法がまた常軌を逸している。ドラッグストアに止めてあるクルマのガソリンタンクに火を付け
爆発させ、周囲が驚き集まっているうちに、人がいなくなったドラッグストアに入り込み、治療に必要な
用具・薬などを奪った。そしてモーテルに行き、自分で麻酔をして傷を縫ったのだ。

一方横腹に傷を受けたモスは、妻に、母を連れてテキサス州のエル・パソで合流しようという。妻から連絡
を受けたベル保安官は、基本的にはやっかいな事件と関わりたくなかったが、モスは前から知っているし、
若い妻も気になり、エル・パソに出かけてみることにした。
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モスは何とか国境を越えて、メキシコの病院に200万ドルの中から拝借した金に物を言わせ治療をさせて
いた。
金を奪われシガーがそれを奪回しようとしている、と聞いた取引の元締めは、シガーを亡きものにしようと
カーソン・ウエルズという殺し屋を送り込んだ。カーソンはすぐにモスの居所を突き止め、金を返すように
迫る。そうすればシガーから守ってやると。このままだと、おまえも奥さんも殺されるよ、と言い残し
ホテルへ帰っていった。

しかし、ホテルに待っていたは空気銃を構えたシガーだった。絶対的に不利になったカーソンは、すでに
モスから金のありかを聞いてある。それはお前にやるから。というが、カーソンはあっさり殺される。
カーソンを送り込まれたことに激怒したシガーは、元締めのもとに現れ、元締めさえ殺してしまう。

病院を抜け出たモスは再び国境を越えて、河原に隠してあった金をピックアップして、エル・パソに急いだ。
ベル保安官も何とかモスを保護しようと急行したが、モスはメキシコ人グループに母親とともに射殺されて
しまった。金はメキシコ人が奪ったのか?

ベル保安官はそれを知りたくてモスが殺されたモーテルの部屋に行ってみる。すでにそこにはシガーが
姿を忍ばせていた。シガーがベルと最も接近した瞬間だ。だが、最後までこの二人は顔を合わせることが
ない。ベルの手によってシガーが逮捕される、なんて思っているあなたは、この映画の本質からはじかれ
ていることになってます。結局金は無かったのだ。

母の葬儀を終えて家に帰ってくると、そこにはシガーの姿が。なんか妻はシガーを前から知っている風情。
シガーは「おれはあんたを殺すと旦那と約束をした」「旦那はあんたを救うチャンスがあったのだ。だが
それを無視して逃げた」「おれは金を返せば奥さんは助ける、と約束したのだが、その約束は守られ
なかった。だからあんたを殺す」と。当然、妻は「筋が通らないわ」と言い立て、「殺さないで」と懇願する。
するとシガーは「みんなそういうよ」と。

妻を殺して帰ろうとすると、運転していた車が、交差点で信号無視のクルマにシガーのクルマの横っ腹に
激突され、シガーは腕から骨が飛び出る大けがを負った。しかし、シガーは近づいてきた少年に金を
私、彼が着ていたシャツを買いそれで腕を吊って、現場から去って行ったのだ。

最後はベル保安官と奥さんの会話で終わって行くのだが、それは奥さん相手に語られる自分の親父の
話や、若かったころの自分の思いでであり、そこには古き良き時代の代弁者としての保安官が描かれる。

シガーがカーソン・ウェルズを殺す時、「殺されることがお前のルールだったとしたら、そのルールはお前
にとって意味のないルールということか?」などという形而上的な質問をするんだ。それと、シガーが
ガソリンを入れに立ち寄った店の親父と、強引にコイントスをして何かを決めようと(親父が外れたら
殺すつもりだったのだろう)するところの何を考えているのか判らない不気味さ。エアガンの不気味さも
音楽を使わない不気味さも、ハビエル・バルデムの圧倒的存在感を上手く演出している。
それにしてもバビエルのおかっぱ頭とあの顔は、おっかないねえ。イメージ強すぎてほかの映画で
使い難くならないかな。いらん心配かもしれないが・・・。

さて、拙文冒頭のメタファーの話だが、結局シガーはベトナムを通して病んでしまったアメリカの暗部
そのものであり、ベル保安官は、旧体制のメタファーであろう。ではモスは何か。殺されてしまうモスは
その時代の善も悪も含めた一般常識であり、シガーはそれさえも圧倒的に破壊し、殺戮して、消して
いってしまう。とことん病んだアメリカという国。シガーは結局捕まってないんだよ。そのことさえ、
80年代から21世紀も10年が過ぎた現代に、捕まってないシガーは、今もアメリカのどこかにいて
圧倒的な悪の臭いを放っているのだ。そう感じることにした。
もう一度かみしめながら(恐怖も)観てみたい映画であった。こういうコーエンなら好きだ。
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by jazzyoba0083 | 2009-05-12 23:30 | 洋画=な行 | Comments(3)