小さいおうち

●「小さいおうち」
2014 日本 松竹映画 「小さいおうち」製作委員会(テレビ朝日系テレビ局他) 136分
監督・共同脚本:山田洋次  音楽:久石譲 原作:中島京子著「小さいおうち」(文藝春秋社刊)
出演:松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆・妻夫木聡、倍賞千恵子、橋爪功、吉行和子他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
 時々上質な邦画を観るとホッとする。もとより小津は好きな監督さんで、彼をリスペクト
する山田洋次作品を全部観ているわけでもないのだが、本作では、役者に付けるセリフ
回しなんかもどんどん小津っぽくなっていくような気がする。
原作は未読だが、原作に近いとはいえ、肝心な部分が描かれていなかったりするようだが、
山田洋次流の「脚色」は、それはそれでありかな、と思えた。
WOWOWで放映されたものを録画しておいて鑑賞したら、翌日地上波で放送されていた。

全部説明してしまうことを嫌った小津をリスペクトする山田監督の、「観念的」部分を補った
本作は「映画版・小さいおうち」として成功しているといえるのではないか。
大きな部分で言えば、「時子は後妻であり、息子は義理の関係」、「タキは鎌倉で時子と
板倉がデートしているのを目撃している」などだそうだ。映画ではそこはかとなく伝わる
程度で、中嶋朋子の存在でトピックス化しているレズビアンの関係なども、原作のほうが
濃くでているのだそうだ。タキが小児麻痺にかかったおぼっちゃまの体を長い間マッサージに
通ったり自宅でしたりする横で母である時子は相変わらずのノンシャランに自分の足を
マッサージさせたりするのも原作を読んでいる人は深い部分を読み取ることができるのかもし
れない。また逢瀬の証明となる帯のラインの左右入れ替わりは映像ならではの強みだ。

タキが時子の手紙を板倉に渡さなかった謎は、原作と同じでそこがこの映画の要になるのだが、
タキと大好きな奥様の、相互愛と恋敵、どちらだったからだろうか、というのは観客の判断に
任せている。そこが映画にいい余韻を与えていることも確かだろう。

また山田作品は、本作の特徴である、市民目線から観た反戦的なムードを今回も的確に
演出していた。「声の大きい威勢のいいやつがのさばる」と「英国を応援する日本はアメリカと
戦わない」などは当時の山の手の一般市民感情としてあったのだろう。
画面から伝わる強烈な昭和感、といったものは、細部に拘ったプロダクションデザインの
出来の良さがある。窓越しのショットが微妙に歪むのは当時のガラスを知っている人には
ドツボだろうし、旦那様の着替えや風習なども、山田監督の強い拘りを感じる。

さて、出演者である。松たか子は、ノンシャランな独特な山の手夫人を好演、これが一番
目立った。ベルリン国際映画祭で「銀熊賞」を獲った黒木華は、片方での本作の主人公であるが
テレビで観ないので、新鮮でありまた新人とは思えない演技で映画を支えた。この二人の
顔の並びを見ていると昭和10年代の東京山の手の市民という設定がすごくしっくりくるのだ。
片岡孝夫、吉岡秀隆、倍賞千恵子らお馴染みの「山田組」のキャスト陣も、安定した演技で
本作の出来の良さの大きな部分を負っている。

私がなぜ洋画を好んでしまうのか、ということを今回つくづく考えたのだが、ハリウッドの場合
テレビと映画とは出演者が基本的にはダブらないので、映画の中に日常を感じづらいと
思うのだ。一方日本はテレビも映画も歌舞伎も無く俳優が出演するので、映画に非日常を
期待するほうとしてはどうしても、馴染んだ顔がスクリーンにいると、それを感じづらいのだと
思う。「ポテチ」での演技で注目した(本作にも出ている)木村文乃とか本作の黒木華らは
テレビと距離を置いてほしいなあ。まあギャラが安いから二股かけないと稼げないという
ハリウッドにはない理屈が邦画にはあるのは理解するとしてもだ・・。
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<ストーリー>
「すべては、数冊の大学ノートから始まった。健史(妻夫木聡)の大伯母で、先日亡くなった
ばかりのタキ(倍賞千恵子)が遺した“自叙伝”だ。大学生の健史は、一人暮らしのタキの
身の回りの世話に来るたびに、執筆途中の原稿を読むことを楽しみにしていた。
 そこには、まるで知らない国のような、昭和初期の日本が描かれていた。物語は、タキが
山形から東京へ奉公に出るところから始まる。

小説家の屋敷に1年ほど仕えた後、タキ(黒木華)は東京郊外の平井家に奉公することになる。
赤い三角屋根の小さいけれどモダンな家には、玩具会社に勤める雅樹(片岡孝太郎)と
妻の時子(松たか子)、まだ幼い一人息子の恭一が暮らしていた。
 初めて会った瞬間から、若く美しくお洒落な時子に、強い憧れを抱くタキ。時子は気さくで
優しく、東京の言葉やマナーなど何でも教えてくれた。時子に尽くすことが何よりもうれしい
タキは、恭一が小児麻痺で倒れた時も、毎日おんぶして、日本橋の病院へ通った。

新年、正月の準備が整った平井家に雅樹の会社の社長と社員たちが集まり、日中戦争と
金儲けの話で盛り上がる。中に一人だけ、話の輪に入れない男がいた。デザイン部門の
新入社員、板倉正治(吉岡秀隆)だ。
 上司から逃げ出した板倉は、恭一の部屋で眠ってしまう。客が帰り、雅樹も寝た後、
ようやく目覚めた板倉は、タキの作った雑煮を食べながら、時子と映画や音楽の話で
意気投合する。その日以降、板倉はレコードを聴きに平井家を訪ねては、時子と楽しそうに
話していくのだった。

ある時、大きな台風が関東地方を襲った。藤沢に出張した雅樹は帰って来ない。不安に
震える時子とタキのもとを板倉が訪ね、激しい風雨も気にせず雨戸を打ちつけてくれる。
やがて一帯は停電となり、板倉は泊まっていくことになる。真夜中過ぎ、玄関の扉の音に
目が覚めた時子は、ソファで眠る板倉を揺り起こす。下駄箱で扉を押さえ、暗闇のなか
寄り添う二人。その時、雷の光が、重なる二人の影を一瞬だけ照らし出す。

次第に、時子と板倉の“密会”の噂が広がり始める。贅沢を戒める国の政策が、人々の目を
厳しくしていた。戦争は激化し、ついに板倉にも召集令状が届き、板倉は平井家に別れを
告げにやって来る。翌朝、ただならぬ様子で出かけようとする時子を見て、板倉に会いに
行くのだと直感したタキ。迷いに迷った末に、タキは時子を押しとどめ、ある一つの重大な
提案をもちかける… (松竹HPより)

山田洋次監督は海坂藩シリーズが好きなのだが、本作も私の好みの作品群に入ることに
なりそうだ。喜劇とサスペンス的心理劇の畑で育ってきた監督によるエンタテインメントとして
成功している作品といえる。
ちなみに、本作の元となっり映画の中でも、木村文乃が妻夫木にプレゼントする童話
「ちいさいおうち」はアメリカの童話作家バージニア・リー・バートンにより1943年に書かれ
私も幼いころ両親に買い与えられ、何度も読んだ童話の大名作。私にとってはこれと
「おさるのジョージ」は不滅の名作童話だ。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-02-28 23:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

●「エージェント:ライアン Jack Ryan:Shadow Recruit」
2014 アメリカ Paramount Pictures,and other productions.106min.
監督:ケネス・ブラナー  原案:トム・クランシー
出演:クリス・パイン、ケヴィン・コスナー、ケネス・ブラナー、キーラ・ナイトレイ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
トム・クランシーのジャック・ライアン シリーズの4作目。4代目のクリス・パインは、
「スター・トレック」の最新シリーズでカーク船長をやってますね。
本作に該当するクランシーの作品はなく、キャラクターを使ったオリジナル作品と
いうことです。クランシー、私も好きな作家で何冊か読んでいます。
原作がない、ということだからというわけじゃないとは思うけど、底が薄い映画に
なっちゃったなあって感じだ。★は6,5と言ったところ。話は分かり易く、人の配置も
良い(キャスティングも含め)。緊張感の盛り上げは買いたいが、何しろ、モスクワで
やりたい放題のCIA、あんなに上手く出来るわけがない。帰路の中の飛行機の中の
偵察分析機能はどうだ、あんなのがほんとにあるのか?そこいらへんも含め、
イージーな感じが(ご都合主義ともいうが)したのだ。

大学生➤9,11の体験➤海兵隊入隊➤アフガンでヘリがミサイル攻撃を受け、瀕死の
重傷➤ナイトレイ演じるドクターのもとでリハビリ(恋が芽生える)➤ケヴィン・コスナー
扮するCIAのボス登場➤アナリストとしてスカウトされ、銀行に就職➤潜入分析官と
してロシアの投資会社チェレヴィングループの不穏な動き察知➤モスクワへ➤終わったら
パリで落ち合おうと彼女と約束➤しかしモスクワに着いてすぐ、運転手兼ボディガードと
いう男にいきなり殺されそうになるものの反撃しバスタブで溺死させ九死に一生を得る➤
CIAに救助を求めると、コスナー登場。➤チェヴェレンの野望は国家のバックアップを得て
アメリカでテロを起こし、同時に大量のドルを売り、ドルを暴落させ、アメリカを国家破綻
させるというものだった➤銀行員としての投資会社への監査に失敗したライアンは➤
コスナーの指示でチェヴェレンのオフィスに侵入し、データを盗むことに➤モスクワに
現れた恋人ナイトレイとチェヴェレンに夕食に招待されたライアンは、女好き、酒好きの
チェヴェレンをナイトレイが気を引くウチに掏った財布から抜き出したIDカードでオフィスに
侵入、データを盗み出す。➤怪しいと睨んだチェヴェレンは警備部長が気付いたアラームの
報告を聞き、オフィスに戻るが、ビルの入口でライアンと出会う➤そこにいたるまではコスナーの
バックアップで迫る警備隊からかろうじて逃げた末、という顛末があったのだ。➤アメリカでの
テロを食い止めるべく急ぎアメリカへ帰る一行。➤どうやらチェヴェレンが死んだ、と言っていた
息子がアメリカに居て、テロを計画していることが判明、それはウォール街でビルを6棟くらい
吹っ飛ばす爆弾テロであった➤ライアンの機転で、一台のパトカーが怪しいと睨み、チェイスが
始まる➤地下にあったパトカーを表に出し、ハドソン湾に飛び込ませようと息子ともみ合う。
➤川へ転落する一歩手前でライアンはクルマから脱出、息子はクルマごと転落し、大爆発➤
これでチェヴェレンもドルを売ることが出来なくなり、計画は失敗。ロシアの外務大臣の手下に
殺されてしまう➤ナイトレイとも再会したライアンは、コスナーと一緒に大統領に報告に出向く
のだった。終わり。
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そんな感じの映画。モスクワやNYでのカーチェイスは見応えがあったが、とにかくCIAの
ハイテクがすご過ぎで、そんなバカな、というふうで・・・。
クリス・パイン、頑張っていたけど、ちょっとガキっぽい顔が迫力不足なところもある。コスナーと
ナイトレイ、それに監督も頑張っていたチェヴェレンを演じたケネス・ブラナーらに助けられて
なんとか纏まったという感じだ。スピード感があるので、男の子は楽しいかも。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-02-25 22:50 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「第87回アカデミー賞授賞式  87th The Oscars」
2015 22nd Feb. at Dolby Theater,Hollywood,Los Angels.
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
毎年ABCテレビによって放送され日本ではWOWOWが独占放送する授賞式の模様。
毎年楽しみにして観ているが、今年も良かった。なんといっても

「そこには一流がある」

ハリウッドのお祭り騒ぎ、というスルーな見方もあるでしょう。それはそれで愉しめば
いいのですが、実はアメリカという国を観るのにこんないい舞台もないと思うのです。
いろんな意味でです。
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授賞式は華々しい舞台(CGとの合成も見事)に現れたのはトニー賞主演男優賞にも
輝いたニール・パトリック・ハリス。もちろん歌が上手い!映画の感動を歌い綴る。そこに
客席にいたジャック・ブラックが舞台に上がり、「ハリウッドの薄っぽさ」を皮肉る歌を
入れる・・・もうこの辺で私の涙腺は緩み始める。なんというエンターテインメント!
舞台装置、映像、歌、進行、出演者、音楽、どれをとっても超一流のオンパレードだ。

そこからの3時間はまるで夢の世界。綺羅星の如くいならぶハリウッド・スターたちが
プレゼンターになり、また受賞する・・・
みんな映画を心から愛しているんだなと感じる瞬間たちだ。
短編映画賞も、最後の作品賞も、もらえるのは同じオスカー像。なんとフェアなこと。
そして映画のバックグラウンドを支える科学技術や音楽、長年の名誉を表彰する
ジャンルもある。映画の端から端までもれなく受賞対象となっているわけだ。
結果的には「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が主要4冠に
輝きその強さを見せつけたが、まだ見ていない本作を始め主演男優賞の「博士と
彼女のセオリー」、助演男優賞の「セッション」、脚色賞の「イミテーション・ゲーム」、
これらはこれから公開なので絶対に観る!
複数の賞を獲得した「6歳のボクが、大人になるまで。」(3時間を超える作品で
恐れをなして見に行かなかったのだなあ)と、「グランド・ブタペスト・ホテル」は見逃して
いるので、なんとかして観たい!

そして、感動的なのは受賞者のスピーチ。一応は用意してあるのだろうけど、
日本では絶対にしない、政治的主張が繰り返される。
「セルマ」では主題歌を歌ったジョン・レジェンドとコモンは、黒人の人権が50年前に
キング牧師がセルマを行進したころよりもひどくなっていると政治を批判した。
この歌の披露に際しては、会場の多くのスターが涙を流していた。
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脚本、監督、作品賞に輝いた「バードマン、あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは、メキシコ移民政策について訴え、移民国家と
して成功したアメリカを支える必要を説いた。
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主演男優賞を獲得したエディ・レッドメインはALSに対する理解を主張し、
長編ドキュメンタリー賞に輝いた「シチズンフォー」のマチルダとダークは退役軍人に
対する理解を訴えた。映画芸術科学アカデミー会長のシャーリー・ブーン・アイザックは
「表現の自由」対する信念を訴えた。
まさに、多民族国家アメリカの苦悩と栄光の縮図を観た思いだ。
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さらにエンターテインメントとして披露される歌の数々も今年は特に印象深かった。
映画にもなったアルツハイマーになったグレン・キャンベルが作った歌、そして
先にも書いた「セルマ」のテーマ「グローリー」、そしてそして、私が一番感動したのは
公開50年を迎えた「サウンド・オブ・ミュージック」のトリビュートとして登場した
レディ・ガガによる、同映画のメドレーだ。やっぱりそこには一流があった。
そして歌が終わると作曲賞のプレゼンターとしてジュリー・アンドリュースが登場する、
という演出!
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司会のギャグやユーモアには台本があるのだろうけど、受賞者のユーモアには、
日本人アジア人との差を感じる。そして、今回の授賞式を観てつくずく感じたのは
アメリカというのは、本当に移民国家、多様性国家だということだ。
表彰式で誰かも言っていたが、映画の中では「国籍、人種、宗教、学歴、性的嗜好、
ジェンダー、貧富は関係ない」と言っていたが裏返せば、アメリカはそういう問題を
抱え込み、かつ多様性をみとめながら国づくりをしてきたし、しているのだ、ということだ。
翻って日本を見る時、「多様性」を感じるDNAがないんじゃないか、と思えて来たのだ。
もちろん、アイヌや沖縄民族など日本も単一民族ではないけど、アメリカのように
移民が開拓した国ではない。そうしたなかでは「多様性」という概念は育ちづらいのでは
ないか、ということだ。もちろん偏狭な宗教観に名を借りて虐殺を繰り返すISなどは
論外である。

さらに踏み込んで考えると、太平洋戦争に突入した時期のこと、戦後の経済成長に
馬車馬のように突撃したこと、そして今またかつて来た間違った道を歩もうとしている
ように見える政治は、私達日本人が「多様性」ということを感じない国民だからか、と
考えてしまうのだ。一つのベクトルが示されると無批判に思考を停止し、お上のいう
ままに熱狂の渦の中に身をおく。そのほうが楽だもの。そして「煮え湯のカエル」と
なっていくのだ。「多様性」がDNAにないのなら、せめて「忘れない」ということに努力
しないとなるまい。それも日本人には不得意なのだが。
黒船の登場から明治維新を含め、先の敗戦、近年の対米追随、常にこの150年位は
外圧でしかまともな政治をしてこなかったわけで、それは取りも直さず日本の国民性の
反映に他ならない。

いずれにしても素晴らしいショーであった。アメリカという国の一面を見る思いだった。
そして感度もし、何度も胸が熱くなった。アメリカの全てが良いとは全く言えないが、
アメリカの強さ、とは確かにある、と思えたのだ。

ちょっと話が横にそれるが、以下も読んでいただきたい。今回の式から感じた国民が
「多様性」を理解出来るかどうかということから発想が繋がったのだが・・・。

先の敗戦後、映画監督の伊丹万作が言った言葉が忘れられない。
(1946年「戦争責任者の問題」より)

「しかしだまされたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して書いてはないのである。
だまされたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘ちがい
している人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。

しかも、だまされたもの必ずしも正しくないことを指摘するだけにとどまらず、私はさらに進んで、
「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。
(中略)
いくらだますものがいてもだれ一人だまされるものがなかったとしたら今度のような戦争は
成り立たなかつたにちがいないのである。

つまりだますものだけでは戦争は起らない。だますものとだまされるものとがそろわなければ
戦争は起らないということになると、戦争の責任もまた(たとえ軽重の差はあるにしても)
当然両方にあるものと考えるほかはないのである。

そしてだまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、
あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に
自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、
無責任などが悪の本体なのである。

このことは、過去の日本が、外国の力なしには封建制度も鎖国制度も独力で打破することが
できなかった事実、個人の基本的人権さえも自力でつかみ得なかった事実とまったくその本質を
等しくするものである。

そして、このことはまた、同時にあのような専横と圧制を支配者にゆるした国民の奴隷根性とも
密接につながるものである。
「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。
いや、現在でもすでに別のうそによつてだまされ始めているにちがいないのである。 」(攻略)
by jazzyoba0083 | 2015-02-23 21:00 | アカデミー賞 | Trackback | Comments(0)

●「アメリカン・スナイパー American Sniper」
2014 アメリカ Warner Bors.Pictures.132min.
監督:クリント・イーストウッド  原作:クリス・カイル 『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手』(原書房刊)
出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス、ジェイク・マクドーマン、ケヴィン・レイス他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
実話に基づく作品。ラストに本物が出てくるが、なぜか目頭が熱くなった。いや、
愛国者に心打たれたからではない、戦争というものの非情さに胸打たれたことも
あるかもしれない。主人公の愛国者だけでない生き様に感動したのかもしれない。
同じ事情がイラクにだってある、戦争は誰も彼も悲しくさせる・・・いろんな思いが
ないまぜになった感動だったのかもしれない。いろんな心情が胸を熱くさせたの
だろう。

下手な見方をすると、イラクに4度派遣され、160人を狙撃し仕留めた男の
「愛国主義的」な側面だけに目がいってしまう恐れも感じる。事実、アメリカでは
イラク戦争の英雄賛美映画だと断じて非難する声もあるという。むべなるかな。
まあ、さしあたり我が国でいうと安倍首相とその取り巻きあたりが見ると勘違いしそうな
雰囲気も持つ。
しかし、イーストウッドが言いたかったのはそうではない。元来南部の男として保守的な
考え方を徹底的に父から叩きこまれたクリスカ・カイルという男が、9/11を目の当たりに
して、海軍特殊部隊シールズに志願し、イラクで戦う一方、愛する妻や家族も守らなくては
ならないジレンマ。彼は仲間を守るために狙撃をする。対戦車ミサイルに手をかける
子供にはやはり「ミサイルを持つな」と照準器を覗きつつ心の中で叫ぶ極めてまともな
人間だったのだ。

彼の信条として、守るものは「神・国家・家族」。しかし、優秀な軍人として尊敬され畏敬
される男も、その順番に時として苦しむ。家族が一番じゃないのか!と。戦闘中に衛星
電話で妻の声を聞かざるを得ない、それだけ家族を愛し、早く帰りたいと願うのだ。
でも仲間を殺さないで帰さなくてはいけないのも彼の最大の任務だった。
そのハザマで苦しむ。帰国のたびに違和感を感じ、妻も遠くに行ってしまったような感覚を
覚える。PTSDの様な事象にも苦しむ。彼は精神的に強い人間だったが、弱ければ
自殺してしまったり、気が触れてしまったりした兵士も多数いただろう。その手の元兵士が
銃を乱射する事件とかはよく聞くことだ。

本作ではそれゆえ、戦争の背景や宗教的な対立を説明しない。ただ戦争がある、という
状況の中で、「男は人を守るために生きる」と信じた男の、戦争に加わることで味わう
周辺を巻き込んだ人生を描く。そこには戦争は男だけが戦っているわけではない、とか
敵側のスナイパーに象徴されるように、殺しあう相手にも自分と同じような事情の人生を
生きている男がいるのだ、というメタファーとしての存在もさりげなく置かれている。

クリス・カイルというイラク戦争に関わった一人のネイビー・シールズの隊員の生き様から
何を汲み取るのか。
イーストウッドはプロダクションノートの最後をこう締めくくっている

「イーストウッドはこう締めくくる。「クリスは何をするにしてもつねに、さらにひとつ多くの
ことをやっていた。そしてそれは、帰還兵たちのために彼が始めた仕事でも同じだった。
最終的には、それが悲劇につながってしまったわけだが、彼が重要な人物であることや、
このストーリーが重要であることはそのせいではない。
私たち全員が願うのは、彼のストーリーを知ることによって、兵士たちと彼らの家族が
どれだけ犠牲を払っているかということを人々が思い出し、祖国のためにあまりにも多くを
捧げてきた人々に対して、今以上に感謝するようになればいいということだ」。

またインタビューでは本作が訴えたかったことは、との質問に
「映画全体が訴えたいことだ。兵士は任務と家族な間でどう折り合いを付けようと苦悩したか
ということだ」とも。

当事者のアメリカ人が見るとまた別の感想もあるだろう。まさに自分たちの出来事だった
わけだから。しかし、取材と言い、構成といい、テンポといい、アクションといい、やはり
イーストウッドの映画にハズレはない。今回も無かった。
主役のブラッドリー・クーパー、体格の良かったクリス・カイルの体型に近づくべく
プロテインを取ったりの相当の苦労をしたようだ。もちろん演技もまた監督の期待に
また観客の期待に応えるものだ。オスカー、行くかな?

最後にもう一度言って置きたい。この映画は、一人の英雄的アメリカ軍人の愛国心を
描いた作品では全くないので、そこは間違えない(とは思うけど)で欲しい。
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この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-02-22 12:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「スライディング・ドア Sliding Doors」
1998 アメリカ Intermedia Films,Mirage Enterprises,Miramax,Paramount Pictures.100min.
監督・脚本:ピーター・ハウィット
出演:グィネス・パルトロー、ジョン・ハナー、ジョン・リンチ、ジーン・トリプルホーン、ザーラ・ターナ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
凝った構成で、ちょっと混乱するところもあったが、全般的に面白く観た。グイネスも若くて
綺麗だけど、親友アンナを演じたザーラ・ターナにも惹かれたな。彼女映画はこの一本しか
でていないようだ。勿体無いなあ。

「もしもあの時ああだったら」という永遠のテーマを恋愛の中に投影し、仕上げたもの。
伏線もあれこれ効いていて、最後はどうなるのかと思ったら、なるほどね、という塩梅。
小気味良い映画だった。所詮2つの人生を歩けるわけはないのであって、夢物語として
主人公ヘレンが、地下鉄に間に合ったか間に合わなかったか、でどういう風に人生が
変化していくかを興味深く観せている。同じ人が2つの人生を演じるのでどっちがどちらの
立場だったのか分からなくなるといけないので、片方には額に絆創膏を貼ったり、ショート
カットにしたりして、工夫はしてある。それでも時々こんがらがったりした。

ヘレンはPR会社の有能なビジネスパースンだが、寝坊を繰り返しクビ。悄然と地下鉄に
乗るが、一人のヘレンは間に合わず、地上に出てタクシーを拾おうとしたところをひったくりに
遭い、かばんは無事だったが転倒して額に怪我をし、タクシーの運転手の介抱で病院に
行く。そして、なんて付いてないと早めに帰ってくると、実はボーイフレンドのジェリーは
元カノのリディアと浮気をした直後であったのだ。

一方間に合ったほうのヘレンは地下鉄の隣に座った男ジェームズに色々と話しかけられる。
同じビルに勤める男で、その日の朝、エレベーターで彼女の落としたイヤリングを拾って
やっていたりしたのだ。会社をクビになったことに同情されつつも、同じ駅で降りて別れた
ヘレンは、部屋に戻ると、ボーイフレンドのジェリーが元カノとベッドインの真っ最中!
思わず部屋を飛び出て親友の部屋に転がり込む。このケースのヘレンはもうジェリーの
ことなど忘れて、新しい職を探そうとショートカットにし、小さいPR会社を始める。
地下鉄で出会ったジェームズとはその後も会って話したりしていたが、彼の友人が
レストランを開業するのでそのPRを手伝ったのだが、これが成功、ジェリーとの間も深まって
いった。一方作家志望の彼氏ジェームズは未練たらたらだが、元カノと別れることが
出来ずにいた。

一方地下鉄に乗れなかったヘレンは、ジェリーの浮気を疑いつつもサンドイッチの配達
係と夜はバーのウエイトレスをして頑張ってはいた。やがてジェリーの浮気に気づくことに
なるのだが、まずは就職、と面接に行くと、そこには元カノとジェリーが一緒にいて、
元カノが妊娠したことでもめていた。事態に動転したヘレンは階段を慌てて降りようとして
足を踏み外し階下に転落してしまった。実はヘレンも妊娠していたのだった。

ジェームズはレストラン開業の日、復縁を迫るジェリーが店にやってきて、あれこれ言うが
ヘレンは相手にしない。しかし別れ際にほほにキスをする二人を見て、誤解し、しばらく
ヘレンから遠ざかっていた。ジェームズが恋しくてたまらない自分がいることを認識する
ヘレン。やがて長い出張から帰ってきたジェームズは、探しに来たヘレンと会社の前で
出会う。ジェームズは彼女とジェリーがよりを戻したと勘違いし、電話することを遠慮して
いた、と説明したのだ。お互いが誤解していたとわかった二人は結ばれるのだった。
しかし、その後、ジェームスを訪ねて会社に行くと、奥様と病院に行っていると言われて
愕然。短い間に二人の男に騙されるとは! ヘレンはジェームズの前から姿を消す。
必死で探すジェームズ。雨の夜、ヘレンがいつも来る橋の上でジェームズはヘレンを
見つけ、妻は居るが離婚協議中で、キミへの愛は変わらない。病気の母の手前、妻が
上手く振る舞ってくれていたのをヘレンが観てしまったわけだった。誤解が解けた二人は
ヒシと抱き合い、彼女は親友に電話するため道を横切ろうとしたとき、トラックにハネられて
しまった。ヘレンはジェームズの子を妊娠していたのだったのに。

シーンはそれぞれのヘレンが救急搬入された病院に移る。そこでは必死に看病する
ジェームズ、そして階段から落としてしまったジェリー。しかし、ジェームズの看病して
いたヘレンは死亡してしまう。そして奇跡的に助かった方のヘレンは流産してしまうの
だが、ジェリーが「何でもするよ」と反省の言葉を口にすると「今すぐそこを立って、ドアを
あけて出て行って、帰ってこないで」と宣告するのだった。この場合、元カノに出来た
ジェリーの子の解決は付いてない。退院するヘレンがエレベータ前で待っていると
開いたドアの向こうに乗っていたのは母親の見舞いを終えて出てきたジェームズであり
彼女がそこで落としたイヤリングを拾ってくれたのだ。その後の二人の行方を暗示して
映画は終わる。

個人的には助かって欲しかった方のヘレンが死んでしまった。けど、バカ男ジェリーを
見事に振り、ジェームズと出会うというカタルシスはまあ、良かったな。

一人の人生に絡む部分を巧みに2つに分けて進行させ、いったん2つの道に別れた
人生を再び一つにまとめあげると。テンポも良かったし、どう終わらせるのかという点に
付いてもなかなか良く考えたエンディングで満足だった。
ロンドン、という舞台設定も良かったんじゃないかな。ウディ・アレンを意識したセリフが
入っていたり。戸田奈津子さんの字幕は相変わらずすぐにわかるな。
「モンティ・パイソンの言葉を?」 
「どんなことも宗教裁判よりはマシだ」
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by jazzyoba0083 | 2015-02-19 22:30 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「ロンドン・リバー London River」
2009 イギリス・フランス・アルジェリア 88min.
監督:ラシッド・ブシャール(共同脚本も)
出演:ブレンダ・ブレシン、ソティギ・クヤテ、フランシス・マギー、サミ・ブアジラ、ロシュディ・ゼム他。
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
日本劇場未公開。WOWOWのベルリン国際映画祭特集で観た。そういうチャンスでも
なければ出会えない作品だ。
「イスラム国」問題で世界が頭を悩ませてる現況、時宜を得た鑑賞だと思った。
映画自体は2009年で、今から6年前に製作され、舞台になったのは2005年7月に
ロンドンで発生した地下鉄とバスを狙った同時多発テロである。

それに巻き込まれてしまった二人の男女とその親の心の動きを短い時間に纏めた
ものだが、淡々と粛々と進む中にも、今だからこそ感じられる、鑑賞者の思いもある。
「イスラム国」に軍隊として行く息子や娘たちを持つ親、また中東の危険地帯に
ボランティアとして入る子供を持つ親、それぞれが同じような気持ちを持つんだろうな、
などと考えて見ていた。
事件に揺れる母と父、特にイスラム教のアフリカ人オスマンを演じたソティギ・クヤテは
本作でベルリン国際映画祭主演男優賞を獲得するのだが、その存在感、目つき、は
演技というほどではないのだが、事件に翻弄される異邦人の父親の姿が良かった。
それとは対照的に感情を表に表しつつ、なんでイスラム?と疑問を持ちつつ娘が
アフリカの青年と仲よかったことを受け入れていく姿も良かった。

イギリス海峡の殆どフランス・シエルブール(ノルマンディー地方)に近い、ガーンジー島で
農業を営むエリザベス。夫はフォークランド紛争で戦死しており、一人娘はロンドンで
生活している。2005年7月7日、ロンドンで発生したバスと地下鉄を狙った同時多発テロの
ニュースを観たエリザベスは気になって娘に電話する。留守電で繋がらない。
何回かかけるがダメだ。畑を弟に任せて、ロンドンに出てくるが、下宿はもぬけの殻。
男物の髭剃りがあったりで、自分の知らない娘の暮らしが見えてくる。アフリカで使う弦楽器の
ようなものもある。彼女は、事件の犠牲者が収容されている病院を探したり、街中に
尋ね人の張り紙をしたりして、必死に娘の行方を追った。

一方、フランスで森を管理する仕事をしているアフリカ人オスマンも、息子を探していた。
彼は6歳の時に息子と分かれていて、依頼15年間フランスで暮らしていた。アフリカには
妻のみが暮らすが、息子を連れて帰ってくれ、と言われ、自分ももう息子とアフリカに
帰ろうと、ロンドンに探しにやってきたのだ。ムスリムの彼はモスクで相談したり、やはり
事件の犠牲になってはいないかと病院を探したりしてた。彼はモスクで貰った集合写真の
隣に、尋ね人の娘が写っているのを見つけ、彼女を便りにエリザベスと接触する。

最初、得体の知れない黒人の登場に気味悪がっていたが、娘と彼の息子は一緒に暮らして
いて、一緒に探すことになる。ムスリムのアラビア語のクラスに二人で通っていたことが
分かり、何でクリスチャンの彼女がイスラム教に興味を覚えたのか、不思議というかむしろ
恐怖を覚える。オスマンも、息子が爆発事件の犯人かもしれない、と疑っていた。

二人は事件の直前に姿を消した。事件の犠牲者か、それとも共謀者なのか・・・。
オスマンのほうがホテルの金を払えないからフランスに帰る、というとエリザベスは
娘と一緒に暮らしていたのだから、娘のアパートに来れば、と彼を誘う。二人の間に
流れていた不信、疑惑が次第に溶け、同じ悩みを持つただの親として心を通わすことが
出来るようになっていたのだった。

そのうち、彼女の大家が、二人が事件の朝、二人で旅に出た、と友人が証言していると
教えてくれた。急いで代理店に行くと、二人は列車でパリに行った、と言う。ホッとする
母と父。彼らは二人でパリに旅行に行っているのだ。事件のことを知らないのだ、
良かった! 二人は心底安心するのであった。

さて、もう二人共それぞれの暮らしに戻ろうか、と言ったやさき、警察から連絡があり
DNA鑑定の結果、二人は事件の朝、バスに乗っていて犠牲になったことが判明した、
と知らせに来た。愕然として泣き崩れる母。呆然とする父。加害者ではなかったが、
犠牲者になってしまうとは・・・。

別れの朝、オスマンは言う「悲しみのまま別れては行けない」と。そしてアフリカの歌を
歌う。二人はそれぞれの子供の死を胸に故郷に帰っていったのだ・・・。
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ところで母エリザベスの出身地であるガーンジー島は殆どフランスに近く、中世では
ノルマンディー公の領地であり、ノルマンディー公がイギリスを征服し、ウィリアム征服王と
なったときから英国王室属領となり、今でもGBには属さず独自の議会を持って政治を
行っているという。元首はエリザベス女王だが、行政は英国に委託している。だから
代官がいるんだね。またここはタックス・ヘイブンとしても知られる。消費税がかからない
島なんだね。そんな島があることをこの映画で初めて知った。風光明媚な所らしい。

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by jazzyoba0083 | 2015-02-17 21:30 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

●「エージェント・スティール The Art of the Steal」
2013 アメリカ・カナダ The Weinstein Company,Sony Pictures,Entertainment One.90min.
監督:ジョナサン・ソボル
出演:カート・ラッセル、マット・ディロン、ジェイ・バイシェル、キャサリン・ウィニック、テレンス・スタンプ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
日本劇場未公開、WOWOWで鑑賞したが、面白かった。短い映画だし、レンタルして
みても面白いんじゃないでしょうか。ケレン味たっぷりで。邦題をカタカナで見ると字面からは
アイアンマンのスパイみたいだけど、まったくそうじゃない。劇場で公開しないからって
これはセンスないなあ。

で、ストーリーは名画すり替え詐欺グループの話で、後半に向けて進む大どんでん返しと、
ラストでにやりとする小さいサプライズ、全体にテンポがあり画づくりも工夫がされていて
見飽きることはない。どんでん返しの細工がややわかりづらいが、まあ、人を騙してばっかで
生きてきた弟(マット・ディロン)を、兄貴とそのグループが一泡吹かせてやるという小気味
いい出来で、意外と拾いモンだと感じた。セリフも気の利いたアメリカンジョーク満載で
やりとりが面白いし、ドジなインターポールが狂言回しとなる。

出演陣はトウが過ぎた役者たちが並ぶが、渋さ一杯で、詐欺の大物テレンス・スタンプが
最後の最後にニヤリとする美味しい役どころだ。

冒頭からゴーギャンの画の真贋を巡って、オートバイを使ったハラハラシーンが展開され、
つかみはOK。しかし、この作戦が失敗し、弟が逮捕、司法取引に応じた弟は兄を売り、
兄はそのためにポーランドの刑務所に5年半の懲役をくらった。
バイクスタントの見世物に転向し、その世界からは足を洗っていたが、貧乏であった。
彼には妻と助手がいた。

そんな兄の所に、ジョルジュ・スラー盗難事件でまたまた弟に裏切られた仲間が、弟の
居場所を聞きにやってくる。兄クランチは、かつての仲間たちを集め、更に妻と助手も
加わることになった。
この計画とはグーテンベルクの世界で二番目の印刷本、「ヤコブの福音書」の偽物を
10冊作り、それを欲しがるコレクターに売りつけ、美術館には盗まれたことを言ってやる、
コレクターは自分のものこそ本物と思うわけだ。彼らの欲しいのは金だけ。
さらに既にこの本は既に盗みが実行されていて、警備が厳しい保管庫に一時預けられ
鑑定を待つ状態だという。これを、それぞれの専門を活かして、偽物と差し替えて、
そののち偽物を10冊作り、売り抜こうというものだ。
計画は着々と進み、上手いこと行っていた。兄は弟に今度こそは信頼しているぞ、と
念を押す。弟も今度こそはちゃんとやるぞ、と決意しているようだった。

しかし、弟は別のニセ本の作り手を接触し、兄達が時代鑑定にも耐えうるような
立派なニセ本を1ヶ月を使って作る間に、5冊だけ、外側だけ本物に見えるニセ本を
作り、みんなでリストアップしたコレクター10人のウチ5人だけに先に売りつけて
トンズラここうと計画した。またまた裏切る計画だったのだ。

しかし、コレクターを知っているとされる牧師に電話してみると、何の話だ?と言われ
鑑定家と言われた女性に電話すれば、あなた何の話をしているわけ?と言われる。
そう、弟は裏切る、と確信していた兄が、仲間と壮大な騙しを打ったわけであり、
「ヤコブの福音書」なんて本はハナから存在していなかったのだ。
ニセ本作り手をパリから呼んだり、鑑定家を用意したり、して一芝居打っていたわけだ。
それに気が付き、愕然とする弟。

さて、偽物騒動にはもうひとつスラーの画のことが進行していた。弟はメキシコから
スラーの本物を盗み、仲間を空港で出し抜いて、自分の手元に置いてあったのだが、
兄の仲間、(インターポールに協力しているかつての兄の同業詐欺師サミュエルも
兄の味方をしてた)からのタレコミでホテルに警官隊が駆けつけ、逮捕、さらに画は
没収されてしまうのであった。鑑定に臨んだサミュエルは、偽物のスラーを本物だ、と
太鼓判を押すのであった。それ以前に兄とサミュエルとの間にスラーの本物は
サミュエルの元にいずれ送るというような約束がなされていた。

さらに、兄らのグループはスーラの画の偽物を7枚作り、それを欲しがるコレクターに
売りつけ、美術館には盗まれた画は偽物、と垂れ込むのだった。当然偽物を買わされた
コレクターは自分のモノこそ本物と思うだけだ。そして刑期を終えて出てきたサミュエルに
刑務官から渡されたものは、当然・・・。

弟にニセの福音書を沢山作って沢山のコレクターを騙すため、モナリザを使って昔
行われた同様の話をみんなの前で話したり、いろいろと手の込んだ作戦を展開したわけだ。
結局、兄は人生、結局カネではなく信頼なんだ、ということを弟らとの生活で学び、
最後に勝者となったのだった。

そんなお話。短い映画だがよく出来ていて面白かったよ。クライムムービーだけど
コメディな感じもある。レンタルショップで見つけたら、見てみてください。
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by jazzyoba0083 | 2015-02-16 21:30 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「フォックスキャッチャー Foxcatcher」
2014 アメリカ Annapurna Pictures,Likely Story,Media Rights Capital.135min.
監督:ベネット・ミラー
出演:スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、シエナ・ミラー、ヴァネッサ・レッドグレーブ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
「実話」「殺人」という以外、予備知識を持たずに鑑賞。今年のアカデミーに主演男優、監督
脚本など主要部門にノミネートされている上、すでにカンヌ映画祭で監督賞も受賞している
作品であるため、22日のオスカー発表前に観ておくべきかな、とシネコンに急いだ。
封切り直後ということもあったのか、小さい小屋なのに四分の一ほどの入りだった。

さて、本作は1996年にアメリカで実際に起きた大富豪デュポン氏による、レスリング金メダリスト
銃殺事件を描いたドラマである。私はこの事件を寡聞にして知らなかった。
物語は事実に基づいて淡々と進むし、レスリングというスポーツが地味であるので、映画全体が
平板な印象を受けた。

この映画を観て何を感じるだろうか。退屈な映画だ、と思う人もいるだろうし、そうでない
印象を持つ人もいるだろう。主演のデュポン氏を演じたスティーヴ・カレルはお馬鹿喜劇の
イメージが強い俳優だが、ここでは、(裁判では『統合失調症』と判断される)精神を持つ
キャラクターを終始抑えた縁起の中で、その恐怖を上手く演じていたと思う。が、事前に
オスカー候補とのバイアスがかかってしまっていたので、監督賞、脚本賞などとともに割り引いて
感想を言わなくてはならないだろう。

映画を見終わって色々と考えるのだが、カーネギー、メロンと並ぶアメリカの三大財閥にも
数えられる世界屈指の化学メーカー、デュポンの相続人である、ジョン・デュポンの、精神的に
壊れていく様(確かに恐ろしい。自分のお金で整えた立派なレスリング練習場で短銃を
ぶっ放したり、異常が進行していく。これが最後にはよく分からない理由で、デイヴ・シュルツ
(マーク・ラファロ)を射殺するのだが)は、尋常ではなく、その心の闇には何があるのか、
サラブレッドの生産に熱を上げ、レスリングを嫌う母との相克、マザーコンプレックスから
来るものか、お金持ち特有の、自分の思い通りに行かないと、その存在すら許さないという
心の狭小さを示したのか。一方で、兄弟で五輪金メダリストでありながら、デュポンにより
人生を狂わされてしまうシュルツ兄弟の悲劇に思いを致すべきであろうか。

腐るほどお金はあり、著名な鳥類学者、切手収集家、慈善家であり、自身も近代五種に
興味を持ち、歳を取ってからレスリングの試合に自ら出るようにもなる。母は広大な牧場で
サラブレッドを生産することに夢中で、息子の趣味を嫌っている。息子は逆に母の趣味を
嫌っている。作品中、母の死を受けて、厩舎から一斉に馬を解き放つジョンの姿は、
母に縛られ続けたことからの解放のメタファーと読み取れる。父は2歳の時に離婚し、
母に育てられたという点も、彼の性格形成に大きな影を落としたであろう。
ジョンは結婚にも失敗していて、その破綻の原因も、すでに彼の精神異常を示す点が
あった。

だが、上記の趣味を見ても粘着質っぽい制作のジョン。終始笑わない姿が更に恐怖を
呼ぶ。度を超えた金持ちで、彼に目を付けられたばかりに、人生をメチャクチャにされた
シュルツ兄弟。兄を籠絡するため、弟を大金でスカウト、コカインでスポイルする一方、
兄をチームリーダーとして迎え入れ、ソウル五輪に臨ませる。目指すところはもちろん
金メダル。特に弟のマークに対する期待は大きかった。しかしマークは金メダルを取る
ことは出来なかった。「必ず金メダルを取りますよ」と言った兄に対し、ジョンの態度は
おかしいことななかったが、ある日、拳銃を持ち出し、デイヴの家に行き、奥さんの
目の前で無表情のまま、無言で銃を発射し、殺害する。「なんで?」 自分の希望が
入れられなかったからか。(映画では表現されないが、彼はこの後自宅に立てこもり、
2日めに投降)裁判の結果、「統合失調症」と診断され、病院刑務所に入り、2009年に
獄死している。デイヴの弟、マークはプロレスに転向した。現在は教室を主宰している
らしい。

アメリカには金メダリストは沢山いるだろうし、地味なレスリングではそれだけで世の中で
成功するのは簡単ではないだろう。もがいていたシュルツ兄弟に前途の扉を開いたのは
ジョンであり、また閉ざしたのもジョンであった。その2つの人生の(大きく言えば3つの)
闇の部分を描き切ったのが本作、ということでいいのだろうか。
「カポーティ」「マネー・ボール」とも実在する人物を活写してきたベネット・ミラーは本作を
以って、描いた作品中の人物をして何を語ろうとしたのか。それが私には今ひとつ見えない
映画であったのだ。そうした点が分からなければカレルの演技がどんなに素晴らしい、と
言われても、具体的な説明が出来ないのである。
「フォックスキャッチャー」とは母の死後、父が所有していたサラブレッドの名前で、彼は
広大な牧場に「フォックスキャッチャー牧場」と名づけた。この名前が、自分の主宰する
レスリングチームの名前にしたわけだが、どこか、「狐を捉える人(動物・道具)」という
意味が、ジョンとシュルツ兄弟の関係を綴っているようで興味深い。

さて、本作、封切られたばかりであるが、そう長い間上映されているとは思えない。
見に行くなら早めに。是非、事前にジョン・デュポン事件の詳細をあまり詳しく予習せずに
ご覧頂き観た人が何を教えてもらいたいものです。
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<ストーリー>
「カポーティ」「マネーボール」のベネット・ミラー監督が、実在の殺人事件を題材に、
レスリング五輪金メダリストとそのパトロンとなった大富豪が悲劇の結末を迎えるまでの
心の軌跡を描き出した戦慄の実録人間ドラマ。
主演は、その鬼気迫るシリアス演技で新境地を見せ、高い評価を受けた「40歳の童貞男」
「リトル・ミス・サンシャイン」のスティーヴ・カレル。
共演にチャニング・テイタム、マーク・ラファロ。
 
 1984年のロサンジェルス・オリンピックで金メダルを獲得したレスリング選手、マーク・シュル。
しかし、マイナー競技ゆえに生活は相も変わらず苦しいまま。同じ金メダリストでマークが
頼りにする兄のデイヴも、妻子ができて以前のように付きっきりというわけにはいかない。
いまや、次のソウル・オリンピックを目指すどころか、競技を続けるのもままならなかった。

そんな時、アメリカを代表する大財閥デュポン家の御曹司ジョン・デュポンから、彼が結成した
レスリング・チーム“フォックスキャッチャー”への参加をオファーされる。この願ってもない申し
出を快諾するマーク。最先端トレーニング施設を有するデュポンの大邸宅に移り住み、ようやく
トレーニングに集中できる理想的な環境を手に入れたかに思われたマークだったが…。」

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by jazzyoba0083 | 2015-02-15 14:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「理想の結婚 An Ideal Husband」
1999 イギリス Canal+,Fragile Films ,Icon Entertainment International.100min.
監督・脚本:オリバー・パーカー  原作:オスカー・ワイルド
出演:ケイト・ブランシェット、ミニー・ドライヴァー、ルパート・エヴェレット、ジュリアン・ムーア他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
面白かったです。いかにもイギリスの戯曲をアダプトしたという内容で、オスカー・ワイルドの
原作を、オリバー・パーカーが脚本にして監督しています。

映画というのは様々な楽しみ方があるわけですが、本作は、軽妙洒脱なイギリス的会話の
応酬。日本人には絶対に出来ないユーモアとウィットの応酬。こいつが楽しい。
これをオスカー女優ブランシェットとムーアの対立したキャラクターを中心に描いていく
わけですが、舞台がダイナミックに変化する映画ではなく、あくまでも男女の愛憎の駆け引きと
「愛する人に理想のみを追いかけることは結局不毛であり、相手の欠点も含めて愛すること、
奪うことより与えることが愛だ」というこを、二組の男女を中心に描いていく。

舞台が19世紀末のロンドンのハイソサエティ。まあ、スノッブな恋愛談義などは、庶民レベル
では無理なので、舞台が貴族の世界を背景にするのはここでは仕方がない。

国会議員(ジェレミー・ノーザム)とその妻(ケイト・ブランシェット)、国会議員の妹(ミニー)と
独身貴族(ルパート・エヴェレット)、ウィーンからロンドンに現れた、かつてのブランシェットの
学友で仲が悪いチーヴリー夫人(ジュリアン)がメインキャスト。

彼らが過去の秘密とか、それぞれのやりとりの中で、真実と嘘を上手く使い分けつつ
危機になったり・・・。男女の中とは真実だけでは成り立たないということをオスカー・
ワイルド流の手法で物語るのだが、その間のやりとりが非常に面白い。
真実は誤解により曲解され、策謀が飛び交うがそれは上手く行かず、結局、清濁併せのむ
男女の中こそ、長続きの秘訣なのだ、ということが分かってくる。

会話劇から見出される、理想の結婚のありようとは。タイトルは理想の夫だから、夫の
方に力点が置かれているが、理想の夫のありようは理想の妻の投影であるわけで、
それは映画を見ているとよく分かってくる。
イギリス流の洒脱な会話と、戯曲の面白さが堪能出来る佳作であると思う。
ブランシェットやジュリアンらのキャストも安心して見ていられる。脇を固める俳優もいい。
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<ストーリー>
「1895年、ロンドンの社交界。独身貴族アーサー(ルパート・エヴェレット)は親友で政治家の
ロバート(ジェレミー・ノーザム)の妹メイベル(ミニー・ドライヴァー)との結婚に踏み切れない
まま、優柔不断に日々をすごしていた。
ロバートと聡明な妻ガートルード(ケイト・ブランシェット)は人も羨む理想的な夫婦。ところが、
ウィーンの社交界の華となったチーヴリー夫人(ジュリアン・ムーア)が帰国して事態は急変。
彼女はアーサーと婚約していたことがあるばかりか、今度はロバートに接近して過去の秘密を
ネタに彼を脅迫、自分が投資する運河建設計画に協力を求める。返事を渋るロバートに業を
煮やしたチーヴリー夫人はガートルードにロバートの旧悪を暴露。ショックを受けた
ガートルードはロバートを追い出した。
いっぽう、アーサーもチーヴリー夫人によって身の振り方の決断を迫られる。かくして二組の
男女は様々な思いを胸に、“理想の結婚”をめぐり揺れ動くのだった。」(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2015-02-12 23:15 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

●「ハニー・トラップ 大統領になり損ねた男 Wellcom to New York」
2014 アメリカ Belladonna Productions.110min.
監督・脚本:アベル・フェラーラ
出演:ジェラール・ドパルデュー、ジャクリーン・ビセット、マリー・ムーテ、ポール・カルデロン他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
最初に断っておくと、これはハニー・トラップでもなんでもありません。(ただし、強姦で
告発するホテルのメイドが主人公を貶めるため仕組まれてたのなら別。しかし、そんな
ことではないと思う) 本作も日本では劇場未公開。WOWOWのジャパン・プレミアで鑑賞。
wikiによれば、本国フランスでも、アメリカでも劇場では公開されていないという。
まあ、現存の人の生臭い作品だからねえ。

2011年にフランス次期大統領選の有力候補と目されていたIMF理事、ドミニク・ストロス=
カーンがアメリカで実際に起こしたレイプ未遂事件をモデルにしている。映画は冒頭で
完全なフィクションである、と断るのだが、実際は現実をほぼなぞっていると思われる。
ただ、警察捜査の内部とか、カーン自身のプライベートな部分については脚色されては
いるだろう。

基本、ドキュメンタリーなので、こういう人が居たのね。まあお金持ちは困った人が多いものだ、
くらいの感想しか無い。ただ、ドパルデューの存在感は素晴らしいし、老けたりとはいえ、
ジャクリーン・ビセットも英語とフランス語入り乱れる会話の中で混乱する妻であり参謀である
女性を迫力で演じていた。ドパルデューの演技から、モデルとなった男性のえげつなさが
感じ取られたらそれは彼の演技の勝利ということだろう。

旦那は自分は大統領になる気はあまりなく、妻(大金持ちの家の出身)の旦那を大統領に
する、という野心の犠牲になった、と思っている節がある。妻もそれはわかっているはずだ。
彼女は旦那を大統領にする、という目的が生きがいになっていたのだ。
そんな旦那は「セックス依存症」であることを公言して憚らない。まあバカな男であることは
確かだ。アメリカに赴いた折、ホテルで売春婦を読んで乱痴気をしているうちはまだ良かったが、
部屋に入ってきた黒人のメイドを捕まえてレイプ未遂を犯す。これがNY市警に届けられ
デヴロー(ドパルデュー)は、飛行機に乗るところを逮捕される。

ここから港湾局につかまり市警に引き渡され、裁判になり、保釈が認められず、裁判となり
ついに巨額の保釈金と、足首に電波発信機をつけさせられて保釈され、結局無罪となる。
NYに裁判のために月6万ドル(720万円!!)の家を借り、なんとか夫を保釈させ、無罪を
勝ち取った妻との会話。無罪になってからの男の態度の変わり様、あきれる妻。このあたりが
丁寧に詳しく書かれていて、リアリティを感じるのみならず、デヴローという男に対する
観客の捉え方を醸成していく。つまり、彼に対するツッコミの隙間を作っているということだ。
娘のボーイフレンドとの会話でも、平気で「娘とのセックスはどうだ?いいか?」とか聞いちゃう。
娘は一応怒るが席を蹴って去るまでは行かないわけで、この親にしてここ子って感じもある。
デヴローはいわゆる「変態」なんだな。
しかし、実際のカーンは、フランスで蔵相までやった人物で政治的にも成果を上げてきた人物。
反面、こうした性癖ももっていたのだろうか。裁判は結局検察が起訴を取り下げ、本人は
無罪放免になるが、民事裁判は成立している。(和解)

一方で、ある意味俗物な妻の旦那への接し方で見えてくる人生感も面白かった。この妻にして
この旦那、この旦那にしてこの妻、って感じかな。
何かを学ぶ、感動するという映画ではないが、事実が持つ面白さはある作品だ。

しかし、こうした感想を持つ映画が出来る一方で、カーン事件をネットで調べてみると、
カーン氏を訴えたメイドは、売春婦としての仕事も持っていて、合意の上のことであったとする説も
有力である。妻は有名な元テレビキャスターだそうだ。(大金持ちの出身であることは確か)
であるとすると、本作はカーン氏が色気違いであることの側面が大きく取り上げられすぎ、という
ことになる。そうするとハニートラップという面もありえないこともなくなる。その辺り、映画の内容と
タイトルがちぐはぐということになる。
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by jazzyoba0083 | 2015-02-10 22:55 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)