シン・ゴジラ

●「シン・ゴジラ」
2016 日本 東宝 120分
総監督・脚本:庵野秀明  監督・特技監督:樋口真嗣  音楽:鷺巣詩郎
出演:長谷川博己、石原さとみ、竹野内豊、高良健吾、松尾諭、市川美日子、余貴美子、國村隼
    平泉成、柄本明、大杉漣、ピエール瀧、小出恵介、松尾スズキ、古田新太、光石研、他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
一部ネタバレを含みますのでご注意ください
東宝特撮シリーズはリアルタイムで観、ハリウッド版のゴジラもチェックしてきた私と
してはドキドキのシネコン。大きなスクリーンで夏休みの日曜ということもあったか、
上々の入りだった。年齢層はやや高め。
直近で見たのが2014年のギャレス・エドワーズ版「Godzilla」。渡辺謙さんが出た
やつ。前の爬虫類みたいなゴジラからオーソドック版に戻り、VFXもストーリー性を
重視した物語も、まあ良く出来ていたと思った。さて、庵野版。どうか。

面白かった。ゴジラファンも満足な出来ではないか。100%満足、とは参らない部分も
あるが、全体としてよく出来ている。VFXもそりゃ、大金かけたハリウッド張りとまでは
行かないけど、初のフルCGのゴジラも含めてよく頑張っていた。
1954年製初代ゴジラへのリスペクトは、冒頭の「東宝マーク」から始まり作中、そして
エンドロールに使われる伊福部昭氏のあの有名なゴジラのテーマ、そして「終」の文字
まで、しっかりと表現されていた。
劇場から「面白かったなあ」と思いながら出てきたのだが、何が面白かったのか、
考えてみた。構成が凄くシンプルであったこと、活劇として出来が良かったこと、
俳優陣が良かったこと、が挙げられよう。少年の心で本作に接しられたということは
初代のゴジラが持つ、プリミティブな分かりやすい魅力を持っていた、ということなのだ
ろう。すなわち、これまでコジラ映画なんて一度も観たことがない、という人にも
十二分に面白い。

冒頭から暫く続く会議の様子。政治家は責任を逃れ、役人は縦割りで融通がきかない。
会議ばかりで対応はさっぱり前に進まない。特に大杉漣演じる首相の主体性のなさ、
これらは、いざ対応したことのない災害などに対し、政治家や役人がさもありなん、の
現象であろう。これらに対して皮肉たっぷり。やがて乗り出してくる米国の有り様も
無理ばかり言ってくる様子が、これまたさもありなん、の風情。御用学者の有様も
思わずニヤリだ。役人の会議の手続きとかしっかりリサーチされていてリアリティが
あった。
自衛隊に武器を使わせて「除去」するときも、法解釈的に自衛隊が国内で武器使用を
することがどうなのか、などの侃々諤々も、現代の時事問題にフィットしかつ、
アイロニカルで面白かった。

初代のゴジラは原爆実験が産んだ時代の怪獣だった。そして本作のゴジラは、3.11の
原発事故が生み出した生物体であった。最終場面で、ゴジラは冷凍になるのだが、
まるで今の原発の冷凍土作戦のようだし、冷凍にしたまま死んではいない。そして
尾っぽの先には子どもと思しき姿が・・・。それは、そのまま原発の不気味さと表現している
と見られる。初代の持つメッセージが、60余年を経て、正しく伝えられたといえるのでは
ないだろうか。まず対決モノでないところがまず好ましい。

初代のゴジラは海に消えたわけだが、その末裔が原発の放射能を浴びて変容し、60余年
経過して現代の東京に現れたのだ(と私は解釈した)。なぜ東京に上陸したのか、それは
語られない。ひょっとしたら続編でその謎が解明されるのかもしれない。

一方、防衛省、自衛隊の全面協力を得て、自衛隊の活躍はかっこよく描かれる。かっこ
よすぎじゃねえか?と思うくらい。だが、自衛隊ではゴジラはやっつけることは叶わない
わけだな。ゴジラの動きを止めるのは、はぐれ科学者たちの一団だ。

見たことのないものの出現に慌てふためく政治家や役人。会議ばかり。役にたたない御用学者、
歯がたたない自衛隊、次第に被害は拡大するいっぽう。大きな口から放射線を吹き出す
ゴジラ。こうやって書いていると、その物語にはリアリティがあり、ゴジラと原発事故をそのまま
置き換えても成り立つなと。あれは福島原発のメタファーなのか?

役者陣が凄い。初めてちゃんと見た長谷川博己が良かった。周りの渋目の配役たちも
映画にしまりとリアリティを与えていた。固めの配役がむしろ石原さとみを浮かせてみせた
ほどだ。小出恵介、片桐はいりワンカット、松尾スズキ2カットなど、贅沢な使い方。
そしてエンドロールに出てくる野村萬斎の名前。さてどこに出ていたのか。

テンポが凄く良い。2時間という上映時間も非常に適切だ。カットが工夫されていて
アップを効果的に使い、絵の流れに変化を出していた。そして時々使われる劇画風な
演出。VFX以外の画作りも工夫されていた。ただ、中世音楽のようなコーラスのBGMは
いかにも感が強かった。

全体的にみてとても良く出来たゴジラ映画であり、邦画である。是非映画館の大きな
スクリーンでご覧になることをお勧めしたい。
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<ストーリー>
「ヱヴァンゲリヲン」シリーズの庵野秀明が脚本と総監督、「のぼうの城」「進撃の巨人」の
樋口真嗣が監督と特技監督を務め、世界的怪獣キャラクター“ゴジラ”を日本版としては
12年ぶりに復活させた特撮アクション大作。

謎の巨大不明生物“ゴジラ”の出現という未曾有の国難に直面した現代の日本を舞台に、
全てが想定外の中でギリギリの決断を迫られる政府関係機関の緊急対応の行方と、
ゴジラに立ち向かう人類の運命を、綿密なリサーチに基づくリアルなストーリー展開と
迫力の戦闘アクションで描き出す。

主演は「地獄でなぜ悪い」「進撃の巨人」の長谷川博己、共演に竹野内豊、石原さとみ。
そのほか大杉漣、柄本明、高良健吾、余貴美子、國村隼、市川実日子はじめ実力派
キャストが多数出演。

 東京湾・羽田沖。突如、東京湾アクアトンネルが崩落する重大事故が発生する。すぐさま
総理以下、各閣僚が出席する緊急会議が開かれ、地震や火山などの原因が議論される中、
内閣官房副長官・矢口蘭堂は未知の巨大生物の可能性を指摘し、上官にたしなめられて
しまう。しかしその直後、実際に巨大不明生物が海上に姿を現わし、政府関係者を愕然と
させる。
のちに“ゴジラ”と名付けられるその巨大不明生物は鎌倉に上陸し、逃げまどう人々など
お構いなしに街を蹂躙していく。やがて政府は緊急対策本部を設置するが、対応は後手後手に。

一方、米国国務省が女性エージェントのカヨコ・アン・パタースンを派遣するなど、世界各国も
事態の推移と日本政府の対応に強い関心を示していく。そんな中、様々な思惑が交錯する
関係機関をまとめ上げ、ゴジラによるこれ以上の破壊を食い止めようと奔走する矢口だったが…。
(allcinema)

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by jazzyoba0083 | 2016-07-31 11:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

●「ジョン・ウィック John Wick」
2014 アメリカ・カナダ・中国 Thunder Road Pictures,and more.101min.
監督:チャド・スタエルスキ  (共同監督=クレジット無し:デヴィッド・リーチ)
出演:キアヌ・リーヴス、ミカエル・ニクヴィスト、アルフィー・アレン、エイドリアンヌ・パリッキ、
    ウィレム・デフォー、ブリジッッド・モイナハン他
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<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
ただの「ヤクザの復讐ドンパチ」と見るか、「スタイリッシュなアクションもの」と見るか、
で評価は真っ二つなのだろう。私は観ている途中、これはIMDbやRottentomatoあたり
では辛口で、★3つとかかもしれないなあ、と思っていた。ところが上記2つのサイトとも
凄い高評価で、allcinemaの投稿も高評価。へえ!そうなんだあ・・・。

確かに生活感のない、今は足を洗って(何をしているのか不明)いる元ヤクザの男、
妻が残してくれた犬を、かつて仕えていた親分の息子らのグループが殺してしまい、
クルマを盗んだことから激しい復讐に出る、というお話。難しくもなんとも無く、
ただただ、ひたすらに、キアヌの銃撃アクションがカッコいいいというか、そんなに
殺せるの?というほどのドンパチ。本作の中で60人くらいは殺しているんじゃないの?
止めを刺すところがさすがは元殺し屋。撃たれても刺されても死なないのよね。

物語もよくある話で、実力者の息子が悪さをして、本来仲いいはずのボスと対決する
運命になるという・・・。
なんでみなさんの評価が高いのだろう。ガンアクションとしてスカッとするのかな。
正義は最期には勝つ、というカタルシスが満足を誘うのか。確かに成功する復讐譚というのは
気持ちの良いものではあるが、ここではストーリーもへったくれも、とにかく撃って撃って
刺して殺して、ということの繰り返し。「仁義なき世界」も真っ青だわ。
殺し屋のお姉さん、なんだか闇の組織に殺されちゃうけど、あれは何?

ラスボスとの対決も、相手の持ったナイフをわざと自分の腹に突き刺せておいて、
最期には勝つのだから、あのあたり、なんだかなあ、って感じだった。
おじさんには、そこまでいいかねえ、という映画でした。。。
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<ストーリー>
「マトリックス」シリーズのキアヌ・リーヴスが、ロシアン・マフィア相手に復讐の鬼と化す
伝説の元殺し屋を演じる痛快ガン・アクション・ムービー。共演はウィレム・デフォー、
ミカエル・ニクヴィスト、ジョン・レグイザモ。監督はスタントマン出身でこれが初メガフォンと
なるチャド・スタエルスキ。

 愛する妻ヘレンと静かに暮らしていたジョン・ウィック。その妻が病で亡くなり、悲しみに
暮れる彼の心を癒してくれたのは亡き妻から贈られた一匹の小犬デイジーだった。
そんなある日、ロシア人の若者がジョンの愛車69年式マスタングを気に入り、売って
ほしいとしつこく迫ってくる。マフィアのボスを父に持つこの男ヨセフは、ジョンに断られるや
夜中に彼の自宅を襲撃し、マスタングを奪い去っていく。その際デイジーまでをも殺され、
すべてを奪われたジョンの怒りが爆発、たった一人で犯人への復讐に立ち上がる。

彼こそは、かつて裏社会で恐れられた伝説の殺し屋だったのだ。一方、息子があの
ジョン・ウィックを怒らせたと知ったボスは、あわてて事態の収拾に乗り出すが…。
(allcinema)

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by jazzyoba0083 | 2016-07-29 22:50 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

クーデター No Escape

●「クーデター No Escape」
2015 アメリカ Bold Films (presents) Brothers Dowdle, Living Films.103min.
監督・(共同)脚本: ジョン・エリック・ドゥードル
出演:オーウェン・ウイルソン、レイク・ベル、ピアース・ブロスナン、スターリング・ジェリンズ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
小ぶりの作品で、ストーリー的には、驚くような仕掛けもないのだが、ハラハラ
ドキドキ感を演出するエピソードは上手く挿入されていて、★は6個だけど、結構
楽しく見させていただいた。WOWOWにて鑑賞。

水道インフラの整備のため赴任した東南アジアの小国で、行った途端にクーデターが
発生し、自分の会社が国民の怒りを買っていて、反乱民に外国人が殺されている、という
状況下、逃げ場を失ったジャック夫妻と幼い女の子二人一家の決死の脱出行が描かれる。
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エラいところに来ちゃったなあ、という風情の妻と、家族を不便な国に連れて来てしまったな
という風情の旦那。宿泊先のホテルではプール、プールとうるさい幼い娘達。
到着した空港に、出迎えのクルマが来ていない、というところから何かおかしい空気。
空港でピアース・ブロスナン演じるハモンドという謎の男に出会う。

宿のホテルに入ってみても、電気がつかなかったり、テレビが映らなかったり。ロビーには
新聞も売っておらず、近くの売店に出掛けてみれば、自分を見る目がおかしい。
売ってくれた新聞は三日前のものだし。ホテルに帰ろうとすると、道の左と右から反乱軍と
国軍が今や衝突しようとするところに出くわしてしまう。たちまち始まる殴り合い撃ち合い。
双方相当荒っぽい。反乱軍は手当たり次第に住民も殺しているような感じだ。

慌ててホテルに戻るジャック。武器を持った群衆は、アメリカ人がたくさんいるホテルを包囲。
武器を持って建物に侵入して、狼藉を始めた。同宿だったハモンドの手引も有り、屋上へ
避難する。そこには欧米人がたくさん避難してきていた。
待てばやがて欧米軍が駆けつけて助けてくれるだろう、と思っていたところへ、ヘリが登場。
喜ぶみんなだったが、空いたドアからは銃の乱射が降ってきた。そして向かいのビルからの
狙撃。多くが亡くなった。

10歩先を行く、が心情のジャックは、隣のビルに飛び移り、そこから逃げることを決心、
怯む妻を励まし、まず妻がジャンプ。そして二人の娘をひとりずつ投げる。受ける妻は当然
転倒、傷だらけに。そして屋上に出てきた反乱軍にやられる一歩先に、ジャックもジャンプ。
隣のビルに移ることが出来た。しかし屋上のドアは固く閉まっている。そこで一階下に壁
伝いに降りる。やがて戦車も登場。ビルの中に飛び込むと同時にそのビルにも反乱軍が
押し寄せた。また戦車の大砲も打ち込まれた。
ジャック一家は、瓦礫の隙間を死体で塞ぎ、反乱軍の目を避け、九死に一生を得た。
そこで見つけた地図を頼りに、アメリカ大使館を目指すことにした。

現地民の服装をまとい、部屋に転がっていたバイクのキーを持って地下の駐輪場へ行き、
片っ端からバイクの鍵穴に差し込んで見る。途中、反乱軍の一人に呼びかけられるがなんとか
急場をしのいだ。親子4人を載せたカブは、反乱軍の中を塗って数ブロック先のアメリカ
大使館を目指す。途中、一人の男にバレていたが、その男はなぜかスルーした。
なんとか大使館にたどり着くが、大使館はすでに反乱軍に占拠されていた。ジャック一家は
反乱軍に見つかり、逃げる。途中で民家に忍び込み、そこの老人の親切で、なんとか
難を逃れられるか、と思ったが、銃を奪おうとしたジャックが見つかり、それを助けようとした
妻も捕まってしまう。妻がリーダーに乱暴される寸前、なんとハモンドと手下のケニーが
登場、反乱軍を倒し、一家を救った。

ハモンドの忠告で、一家は川の3キロ下流にあるベトナム国境を目指すことになった。
追っ手は更に増える。一家を逃がしたハモンドは、自分が犠牲となり追ってのトラックを転覆
させたが、自分も轢かれて死んでしまう。彼らはイギリスの秘密工作員だったのだ。
イギリスの利権を確保するために影で動いていたわけで、搾取する側として反乱軍の
「国の水道の根幹をアメリカに取られた」という怒りには理解が出来てしまうのだった。

さて、川まですぐそこ、というところで、ボートを見つけ、その所有者の老人に腕時計と
履いていたスニーカーと交換するところまで行ったが、反乱軍が来てしまう。妻と娘二人は
隠れたが、自分は老人に言われるまま穴あきボートを伏せて隠れた。雨の夜である。
押し寄せた反乱軍に、老人は「白人は見ていない」と言ってくれるが、ボスは近くにあった
伏せたボートをめくり上げた。飛び出すジャック、争いが始まるが、なにせ多勢に無勢。
ジャックは捕まってしまう。そこへ、次女のルーシーが「パパ」といって飛びだしてしまう。
ルーシーは捉えられ、手に銃を握らされ、父親を撃てとボスに手を添えられて父に銃を
向ける。その時、走り寄った妻は持っていた棒だか、鉄棒だかをボスにおもいっきり
振り下ろす、怯んだすきにジャックは銃を奪い、反乱軍に発砲、数人の敵を倒すことが
出来た。駆け寄り抱きしめあう家族4人。

急いでボートに乗る。そして川を下り始めるが、ベトナム国境警備隊の目の前で敵に
見つかってしまう。ベトナム兵は「許可のないものは国境を超えられない。引き返せ」と
拡声器で言う。ジャックは必死で無抵抗の市民だと説明、川の流れのまま、やがて
ボートは国境を超える。するとベトナム軍は追ってきた反乱軍に「ボートはすでに
ベトナムに入った。発砲すれば交戦とみなす」と脅した。すると反乱軍は去っていった。
こうしてジャック一家は、絶体絶命のシーンから脱出できたのだった。
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全体の話は以上である。

子供を投げたうえでビルを飛び移るところ、飛び移ったビルで仕方なく反乱軍の一人を殺し
てしまうところ、ハモンドの最期の前後、そしてラスト、銃を握らされたルーシーと、妻の
会心の一撃。結局、大使館に向かおうとか川を下ろうとかの決断をし、最後は旦那の
危機一髪を救った妻こそ、強いなあ、と感じたのだ。しかし、ビルに飛び移るとき、自分の
子供をそう簡単に投げられるものか、あれだけの危機が背後に迫れば、親は一縷の望みを
絶望の中にも見出そうとするのだろうか。男親の決断、親子、夫婦の機微も含め、その辺りも
考えた映画であった。

放題のクーデターはタイトルとしてどうか、と感じた。原題は「逃げ場なし」というニュアンス
なので、そういう方向のほうがいい感じじゃないか。

この映画の詳細はこちらまで。

 
by jazzyoba0083 | 2016-07-27 22:45 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「ラブ・トライアングル 秘密 3 coeurs」
2014 フランス Rectangle Productions and more.104min.
監督・(共同)脚本:ブノワ・ジャコー
出演:ヴノワ・ポールヴールド、シャルロット・ゲンズブール、キアラ・マストロヤンニ、カトリーヌ・ドヌーヴ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
日本劇場未公開。WOWOWの「ジャパンプレミア」で鑑賞。フレンチラブミステリ?。
ジャンルもよく分からない、ある種恋愛の悲劇を描いたフランスっぽい映画だった。
「或る悲劇」を綴る、という主題は分かるのだけれど、冒頭から流れるコントラバスの
不気味な通奏低音のようなBGMは、監督はミステリとして仕立てようとしているのか?
というミスリードを誘うし、映画の真ん中で急に登場する男の声のナレーションは、唐突
過ぎて、説明臭くて、映画の味を薄くした。
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いわゆる三角関係。最終電車を逃した税務調査官マルクが、立ち寄った立ち飲みカフェ?
みたいなところでシルヴィ(ゲンズブール)と出会うところから物語は始まる。
二人はたちまち恋に落ち、パリで来週の金曜に会おうと約束する。夜中にそんなところに
いたシルヴィもいわく持ちなわけだ。

シルヴィと妹のソフィ(マストロヤンニ)は母(ドヌーヴ)とパリ郊外の街でアンティークショップを
経営している。資産もある家のようだ。
シルヴィには夫がいる。そして金曜日、彼女はパリに出かける。時間通りに約束の場所で
マルク(ポールヴールド)を待つが、マルクは税務署でややこしい中国人に引っかかり
時間を食い、おまけに慌てて出かけたところ、クルマの中で心臓発作を起こししばらく
失神してしまう。それでも2時間強の遅れで到着するが、流石にソフィの姿は無かった。

その後、傷心のシルヴィは夫とアメリカへと渡っていく。姉妹が離れるのは初めてということで
二人の心は悲しい。そんな折、お店の税務問題で困っている妹のソフィは税務署の中で
マルクと出会い、マルクは税務の問題の相談に乗ってやることに。店でPCを叩き、
問題を解決、マルクはシルヴィに似ているソフィに、シルヴィの妹とはつゆ知らず、恋に
落ちていく。もちろん、姉とマルクのことなど知らないソフィも次第に心をマルクに寄せて
いくのだった。そして二人は結婚することに。

アメリカから帰ってきた姉は、妹ソフィに紹介された夫を見て驚愕した。あのマルクじゃないか。
マルク本人は、家にあった写真や、シルヴィにあげたライターなどから彼女が妹ソフィの姉で
あることは分かっていて、対面することが気が気でなかった。運良く?披露宴の間、姉は
飛行機が遅延して、遅くなってからの到着だった。

マルクの心の中のシルヴィを想う炎は消えておらず、シルヴィもまたそうであった。
いけないと思いつつひかれあう二人。シルヴィは一旦アメリカへと帰っていく。
シルヴィもさすがに最愛の妹を不幸にする訳にはいかないと思ったのだろう、それから
数年はフランスに戻らなかった。この間に、マルクとソフィの間には男の子が出来ていた。
マルクは勤務場所もパリから郊外の街へ異動願いを出して変わり、このまま秘密は
秘密のまま行くのか、と思っていた。

ところがソフィが、母の還暦と姉の40歳の記念パーティーを家で開こうと提案してきた。
それを聞いたアメリカのシルヴィは、当初行かない、と行っていたが、妹の強引な
誘いに折れて、再びマルクの前に現れることとなった。不幸の第二幕の開幕である。

賑々しくパーティーは始まったが、マルクとシルヴィはすぐにくっついてしまい、妹のスマホ
から姉の電話番号を盗み、メールをやりとりする。そして二人でどこかへ出かけて行ったり。
シルヴィもマルクも理性では、やってはいけないと十分分かっている、分かってはいるけど
運命の出会いは決定的だったのだ。
もう会わない、とシルヴィは決心するが、一方で二人でどこへ行こう、というマルクの絶望的な
誘いを受けてしまったり、二人の心は大いに揺れるのだった。

医者から過大なストレスは禁物、静かな生活を、と心臓のために言われていたマルクで
あったが、実際は心臓に悪いことばっかり。こうした中、家に帰ってきたマルクは
シルヴィからの電話に出ていた。椅子に座ったマルクはそこで心臓の発作に襲われ、
スマホを床に落とす。呼びかけるシルヴィ。そこに近づく妹ソフィ。マルクの様子がおかしい。
一方で床に落ちているスマホを拾い上げて、耳に当ててみると、聞こえてくるのはシルヴィの
声だった・・・。
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バッドエンドである。妹に不倫を知られた姉シルヴィは生きてはいられない、という
ニュアンスを漂わせて映画は終わるのだが、可哀想なのは何も悪く無い妹ソフィである。
驚くのは、マルクが妻や子供をほっぽらかして、シルヴィとどこかへ行こうとするところ。
そんなに絶望的な愛を選ばなくてもいいのにと。男ならソフィを幸せにして家庭を大事に
しろと。彼は税務調査員として市長の公金不正使用を暴き、裁判に持ち込むのだが、
その際、自分らの結婚の立会人である市長の不正を暴くことで、自分の不倫を暴かれたら
どうするつもりよ、とハラハラした。マルクという男は一見温厚そうに見えて、激情型
破滅型の人間だったのか。

ゲンズブールの存在感は素晴らしい。それとカトリーヌ・ドヌーヴも貫禄である。妹ソフィを
演じたマストロヤンニとは実の母娘である。 マルク役のポールヴールド、美人姉妹を
ものにしてしまうほどのイケメンではないが、それが故に妙にリアリティがあってそれなりに
良かったと思う。映像も美しい。最初に言ったように音楽の趣旨が分からない。
下の写真は、ラストシークエンスのシーンだが、叶うことなかったシルヴィとマルクの
パリはティュルリー公園での再会である。二人がこうであったらなんの不幸も生まれなかったと
言う事と、シルヴィとマルクの愛の強さを示していたのか。それにしてもソフィは可哀想だ。
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この映画の詳細は
by jazzyoba0083 | 2016-07-26 22:40 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

●「チャイルド 44 森に消えた子供たち Child 44」
2014 アメリカ Worldview Entertainment,Scott Free,and more.
監督:ダニエル・エスピノーサ 原作:トム・ロブ・スミス『チャイルド44』
出演:トム・ハーディー、ゲイリー・オールドマン、ノオミ・ラパス、ジョエル・キナマン、ヴァンサン・カッセル他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
WOWOW「W座」で鑑賞。案内人の小山薫堂、長友啓典もサジを投げていたほど、
何が言いたいのかよくわからない作品。レーニン時代のソ連が舞台だが、個人的には
役者が喋るのが英語、という点で、まずダメ。字幕主義の私だが、これなら吹き替え版を
見たほうがましだ。

原作は未読。もっといろんなニュアンスが記されていて、面白いのだろう。日本でもかなり
評判になったと聞く。で、映画のほう。第二次世界大戦末期、ウクライナがソ連に兵糧攻めに
されたおりの(ホロドモール)生き残りでレオと名付けられた少年。彼はその後MGB
(ソ連国家保安省)の捜査官となり、やり手のエリートとなっていた。彼が主人公だ。

映画の冒頭で、「楽園には殺人はない」というソ連の思想が字幕で示されるが、スターリン
時代の恐怖政治、裏切りと密告と理由のない逮捕とラーゲリ送り、というある種の狂気の
時代をレオとその妻によって描こうとしたのか、44人の子供を殺し続けたマレーヴィチと
いうシリアルキラーのサスペンスなのか、その狂気の殺人事件を包含した狂気の時代を
描こうとしたのか、よくわからなかったなあ。

主人公レオは孤児院出身で出世した人物、正義感は旺盛だが、大勢には逆らわず、
自分の都合の良い時は、受け入れがたいものも受け入れるという融通を持つキャラクターだ。
狂気の国の狂気の時代を生き抜く上で孤児時代から自然と身についた習性、個性かも
しれないが、MGBが怖くて好きでないのに結婚してきた妻とともに我が道を見つけていく
生き方は見えるのだが、ともかく全体像が掴みづらい。

カタルシスとしてはレオを貶めようとしていた、かつての部下を殺し、かつての上司は
左遷され、レオはMGBに復帰、妻とも、かつて部下が両親を殺してしまって孤児になった
二人の女の子を引き取って暮らすことになった、というラストには感じることは
出来るのだが、なにせ、閉まらない長い映画になってしまったウラミは残るのだ。

ストーリーについてはこちらのブログが上手くまとめられています。
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<ストーリー>
09年版「このミステリーがすごい!」海外編で第1位に輝いたトム・ロブ・スミス原作の
ミステリー小説を映画化。1950年代、犯罪なき理想国家を掲げるスターリン体制下の
ソ連で起きた、子供ばかりを狙った連続殺人事件と、その行方を追う捜査官の姿が
描かれる。危険を顧みず、事件の真相に迫っていく捜査官をトム・ハーディが演じる。

1953年、スターリン独裁政権下にあったソビエト連邦で、9歳から14歳の子供たちの
変死体が次々に見つかった。死体は一様に全裸で胃が摘出されており、さらに山間部で
あるのに溺死していると不審な点が多かったものの、理想国家を掲げる体制のもと
犯罪は存在しないとされていたため、事故として扱われた。
親友の息子が死に、秘密警察MGBの捜査官レオ(トム・ハーディ)は真相を追いはじめるが、
国家の妨害に遭い妻(ノオミ・ラパス)には不当にスパイの嫌疑がかけられる……。
(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-07-25 23:20 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)

●「デュプリシティ~スパイは、スパイに嘘をつく~ Duplicity」
2009 アメリカ Universal Pictures,Relativity Media and more.125.
監督・脚本:トニー・ギルロイ
出演:ジュリア・ロバーツ、クライヴ・オーウェン、トム・ウィルキンソン、ポール・ジアマッティ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
時制の切り替えにマルチ画面をつかったり、またスパイ同士の疑心暗鬼を時制を
遡ることで、二人のスパイの成り行きを描いていったり、構成は非常に手の込んだ
もので、ラストで「結局こうだったのね」という大オチは納得できるのだが、それまでは
一体なにがどうなっているのか手続きが凝り過ぎで分かりづらかった、というかスッキリ
しきれないで映画が終わった感じ。過ぎたるは及ばざるが如しなのか、私がアホなのか。

スパイ合戦なんてどっちもどっちなのだが、新製品の化学式を盗んで自前の新製品にして
売りだしてしまおうとするジアマッティの会社が悪いのはよく分かるので、主演の二人が
大仕掛を仕込むウィルキンソンの会社が最後に笑うのも分かる。

それと冒頭、二人がまだCIAとMI6だったころの遺恨が、産業スパイとなってからも
繰り返されるのだが、時制が細かく別れて遡り、エピソードが少しずつ違うのでその辺りの
複雑さ、凝った構成が全体をすっきりさせない理由になっているのだな、私には。
ここが映画の肝だから、ここが気持ちよく理解デキる人には面白い映画、よく出来た映画
と思うのではないかな。それはそれでいいと思う。

ジュリア・ロバーツは好きなジャンルの女優さんではないし、スパイ役としてどうか、という
疑問は残った。コメディタッチ作品だとしても。クライヴ・オーウェンは、まあまあ。ただ
彼もスパイというニュアンスには欠けるんじゃないかなあ、と感じた。

ポール・ジアマッティとトム・ウィルキンソンの二人、特に悪役のジアマッティは流石に
存在感がある。
もう一度観て理解を深めようと思うか?いやそうは思わなかった。めんどくさい。ww
ちなみに原題のDuplicityとは「二枚舌」のこと。なるほど。
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<ストーリー>
トイレタリー業界の新興企業エクイクロム社のカリスマCEOディック・ガーシク(ポール・
ジアマッティ)と、業界トップシェアを誇る老舗メーカー、B&R社のCEOハワード・タリー
(トム・ウィルキンソン)は、同業経営者同士、常に互いの動向を注視していた。

そんな中、重要な株主総会を9日後に控えるディックは、宿敵ハワードが自信満々の
新製品を発売しようとしているという衝撃的な情報をキャッチし、激しい動揺を隠せないで
いた。
ディックは、B&R社の動向を監視させている産業スパイチームに、新たにイギリス諜報機
関MI6の元諜報員レイ・コヴァル(クライヴ・オーウェン)を加入させる。レイはニューヨークの
街なかで、浅からぬ因縁のある元CIA諜報員クレア・ステインウィック(ジュリア・ロバーツ)と
再会。クレアは表向きにはハワードに雇われ、B&R社の最高機密を守る部門で働いているが、
実はディックがB&R社に潜入させたスパイだった。

B&R社の画期的な新製品の情報を探るため、エクイクロム社のスパイたちは、盗聴やハッキング
などの非合法手段を駆使してB&R社に関するあらゆるデータを分析。やがて彼らは、
ジョージア州の子会社に目をつけ、今はバハマの高級ホテルに滞在中の若き天才博士
パーティズが、業界の常識を覆す新製品を開発したらしいとの確信を深めていく。世界市場の
制覇に向け、着々と準備を進めるB&R社のハワードと、そうはさせまいと新製品の横取りを
もくろむエクイクロム社のディック。二人のCEOの仁義なき抗争が激化する中、ある壮大な思惑を
秘めたレイとクレアは大企業をも欺く完全犯罪のトリックを仕掛けるのだった……。(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2016-07-23 23:10 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)

ブラック・シー Black Sea

●「ブラック・シー Black Sea」
2014 イギリス・ロシア Focus Features,Film 4.115min.
監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:ジュード・ロウ、スクート・マクネイリー、ベン・メンデルソーン、デヴィッド・スレルフォール他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
WOWOWでの鑑賞であったが、短い解説からはもっと軽いお宝探し騒動物語か、と
思ったらさにあらずで、なかなか骨太の面白い映画であった。内容にはステレオタイプな
ところ(潜水艦に乗り合わせる企業側の男の存在とかラストの持って行き方など)も
あったが、全体に緊迫した潜水艦ドラマとして、キャラクターを含めよく台本が構成されて
いて、終わってみれば、ラスト前に明らかになる驚愕の事実やステレオタイプな描写も含め、
面白く見ることが出来た映画だった。★は7.5を進呈したい。
ジュード・ロウの役柄のキャラクターは、最後に浮かび上がってくる避難用スーツの中身が
すべてを物語っているように感じた。 ソナー員の活躍で、一度は金を積んで逃げられるか
と思ったのだが、なかなか甘くなかった。そのあたりの緊迫感は良かった。細かいところも
(水圧などの問題)きちんと描けていてリアリティーと納得性がある。
 ナチスの黄金がそう簡単に転がっているわけもないのだが、また70年前のUボートの駆動
シャフトが今の潜水艦に使えるかどうか、その工具や作業も含め、う~む?という点はあるけど、
まあ、そういうところを吹き飛ばすパワーを持っている作品である。女性は誰も出てこないという
男臭い映画である。
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<ストーリー>
海洋サルベージの専門家ロビンソン(ジュード・ロウ)は、ある日突然、11年間も勤め
続けた会社を解雇される。イギリス海軍に所属した15年も含め、家族を犠牲にして
ずっと仕事一筋だった彼には、陸上での仕事など考えられなかった。
そして、途方に暮れる彼の元から、妻クリシー(ジョディー・ウィットテイカー)と12歳の
息子マーティンも去っていく。

そんな矢先、昔の仕事仲間で、鬱病を患うカーストン(ダニエル・ライアン)から、莫大な
金塊を積んだドイツ軍のUボートが第二次大戦時から黒海のグルジア沖の深海に
沈没したままになっているという情報を得る。ロビンソンは、その引き揚げに成功すれば
新規巻き直しの大チャンスになると考え、仲立ちをするダニエルズ(スクート・マクネイリー)の
プランに飛びつき、ロシア製のオンボロ潜水艦を手に入れると、その艦長を買って出る。

リーダーで事情通のブラッキー(コンスタンティン・ハベンスキー)らロシア人5人と、艦長の
ロビンソンのほか、激しやすい潜水士フレイザー(ベン・メンデルソーン)らイギリス人6人の
荒くれ者たちで急ごしらえのチームを結成し、ただ一人のアメリカ人、ダニエルズが彼らの
動向に目を光らせる。

海上を通るロシア海軍に探知されないよう深く潜り、沈没したUボートが横たわる海域を
目指す。暗く冷たい深海で、男たちは知力と体力を尽くして任務を果たそうと意気込んでいた。
しかし、ロビンソンが謎の投資家に渡す分を除いて金塊を乗組員全員で山分けすると宣言
したのを機に、艦内の空気は一変する。一攫千金に目が眩んだ乗組員たちは次第に
制御不能になり、取り分を巡る醜い争いが勃発。逃げ場のない船内は、やがて死闘の
場と化していく……。(Movie Walker)

潜水艦の男たちは結局壮大なダマシにあっていたのだけど・・・。

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by jazzyoba0083 | 2016-07-22 23:10 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「天使が消えた街 The Face of an Angel」
2014 イギリス・イタリア・スペイン BBC Films and more.101min.
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:ダニエル・ブリュール、ケイト・ベッキンセイル、ヴァレリオ・マスタンドレア、カーラ・デルヴィーニュ他
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<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
最後まで見たけど、ダメだった。何人かの方も書かれているように、実際に起きた
「アマンダ・ノックス事件」がどのくらいインパクトを持っていたかどうか知らないので
本作のような描き方をされても、「ただのドラッグ中毒野郎の幻視じゃないか」で、
「事件の真犯人はどうしたのさ」と言いたくもなるわけだ。(この件は後述します)
だから私の評価はひょっとしたら的を外れているのかもしれない。ウィンターボトムは
何を言いたかったのか、主人公の映画監督はダンテの「神曲」に心酔しているらしく、
事件と「神曲」を結びつけたがるのだが、なぜそうなるのかよく分からないところが
多すぎと感じたのだ。

解説にも「重層的に描く」と書いてあるが、確かに、主人公の現在と自分が作り上げた
夢想の中の事件、それにドラッグによって見ている現在における幻視と、描き方は
重層的ではある。それが極めて観念的なので、結局何が言いたいのか分からないわけだ。

原題が「天使の顔」である。このタイトルから透かし見えるところを探ると、主人公に
とって、天使の顔とは仕事上では、殺されたエリザベスと逮捕されたルームメイト
ジェシカであり、私生活ではともに取材をする間に男女の仲になるベッキンセイル、
カフェのバイトのロンドンから来ている女学生であり、LAにいてスカイプでやりとりする
自分の愛娘である。彼女らの顔を追いかけながら事件をベースにした脚本を書こうと
するが、進まない主人公。やがて製作者サイドから、時間がかかりすぎで、事件としての
新鮮さがなくなったから、映画化は見送るといわれてしまう。やれやれ。

調べれば、当時この事件はイタリアのみならず、欧米ではかなりメディアを騒がせた
ようだが、日本のメディア(特にテレビ)のありようを見ていると、この主人公が
感じるように、「事件を消費しているにすぎない」という感覚は本映画を通しては起きない。
むしろ、主人公が内省的かつ観念的、形而上的な思索をする人物ならば、ドラッグなどに
頼らず、自分の感性(ローマでの女性記者やカフェの女学生との触れ合いで良いから)で、
本事件の映画化は「愛の映画」とするべきだ、という結論に持って行かないといかん
のじゃないかな。

上記の意味から言えば、事件の真犯人はどうでもよくて、主人公が殺された女学生と
被疑者になった女学生を、ローマでの生活や私生活の中から、どう見えるように変化したか
ということなのだろう。邦題は「天使の顔」じゃ、いけなかったのかなあ。
Which one is an angel face for Thomas? or Who is the angel for Thomas?
(to make his brand new film.)
って感じでしょうか。
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<ストーリー>
容疑者となった美女の名前から“アマンダ・ノックス事件”などと呼ばれ、欧米メディアで
大々的な報道合戦が繰り広げられたイタリア・ペルージャでの女子留学生殺人事件。
「イン・ディス・ワールド」「グアンタナモ、僕達が見た真実」のマイケル・ウィンターボトム
監督がこの世界的スキャンダルをモチーフに、事件の映画化を目論むも一向に構想が
まとまらない一人の映画監督の葛藤と苦悩をメタ的構成で描き出す異色ドラマ。
主演は「グッバイ、レーニン!」「ラッシュ/プライドと友情」のダニエル・ブリュール、
共演にケイト・ベッキンセイル、ヴァレリオ・マスタンドレア、カーラ・デルヴィーニュ。

 2011年、イタリア・トスカーナ州の古都シエナでは、人々の関心がひとつの裁判に
集まっていた。2007年にイギリス人留学生エリザベスが殺害され、ルームメイトの
美しいアメリカ人留学生ジェシカ・フラーとその恋人ら3人が逮捕された。

そしてこれから、一審で有罪判決を受けたジェシカの控訴審が始まろうとしていたのだ。
そんな中、ロンドン在住の映画監督トーマス・ラングがイタリアにやって来る。
この事件の映画化に再起を懸ける彼は、アメリカ人女性ジャーナリストのシモーン・
フォードの協力でリサーチを進めていくのだったが…。(allcinema)

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by jazzyoba0083 | 2016-07-20 15:00 | Trackback | Comments(0)

●「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Guardians of the Galaxy」
2014 アメリカ Marvel Studios.Walt Dist:Disney Productions.121min.
監督・(共同)脚本:ジェームズ・ガン
出演:クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、ジャイモン・フンスー、ジョン・C・ライリー、
    ブラッドリー・クーパー=ロケットの声
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
MARVEL映画大好きな私としては、もう少しおちゃらけた映画か、と思ってシネコンには
行かずじまいになった本作、ようやく字幕版をWOWOWが放映してくれたので、鑑賞。
結果的には★7.5を進呈したいほどの良い出来だったのだが、心に響いてくるのは
登場人物の立ち位置がはっきりする後半から。前半は星の名前や人の名前がたくさん
出てくるので、相関関係が把握しづらく、またまだ活劇に至る前なのでいささか退屈した次第だ。

後半になり、それこそ「銀河の守護者」たるチームが結成され、ロナンと対決するシチュエーションに
なると、ワクワクドキドキ感が増し、また勧善懲悪、駆けつける「第七騎兵隊」的なヒーロー
映画の王道を行く構成にカタルシスを感じることが出来たのだった。宇宙船や戦闘機などの
造形も良く工夫されていて、CGの出来も良かったと感じた。男の子映画のマストアイテムである
勇気、友情、など泣かせどころもちょっとくさめだけどちゃんとしているし。
主人公チームを取り囲むサブキャラクターたちもいい感じ。

70年台アメリカン・ポップスと初代ウォークマンがキーになっていて、構造としては宇宙モノに
よくあるパターンだが、構成が異色で面白かった。年代的にど真ん中だったことがあるのだが、
本作は宇宙モノ映画をどう捉えるか、この映画が許容範囲になるかどうか、また話題のキーに
なる70年代の洋楽に反応するかどうかにより、面白さが全然変わってくるかもしれない。

ブラッドリー・クーパーが声をやっていたロケットと呼ばれるアライグマと「私はグルート」と
しか言わない木のお化けみたいややつのコンビも、SWのR2-D2、C-3POとかチューバッカ
のような役回りで楽しかった。主人公のピーター・クイルはスター・ロードとも名乗る、
地球から少年時代に拉致された青年なのだが、どうやら彼の出生には秘密があるらしく、
それは本作では説明されないので、次作以降にとってあるエピソードなのだろう。

最後の字幕で次作があることが明記されるのだが、最近のMARVEL映画はチームの仲間が
どんどん増えていき、訳がわからなくなるし、結局味方同士で争わせたり、あまり面白くない
方向に行ってしまうので、本シリーズは是非そういうことのないようにお願いしたいものだ。
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<ストーリー>
9歳の時、何者かによって地球から宇宙に連れ去られたピーター・クイル(クリス・プラット)は
20年後、惑星間を渡り歩くトレジャー・ハンターに成長していた。

ある日、惑星モラグの廃墟で謎の球体“オーブ”を発見したピーターは、換金のために
ザンダー星のブローカーを訪れるが、彼を待っていたのは、宇宙に暗躍する“闇の存在”が
送り込んだ暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)だった。
賞金稼ぎのアライグマ、ロケット(声:ブラッドリー・クーパー)と相棒の樹木型ヒューマノイド、
グルード(声:ヴィン・ディーゼル)も加わって派手な戦いを繰り広げた彼らは、ザンダー星
警察に逮捕されてしまう。

投獄された4人が銀河一危険な刑務所で出会ったのは、凶暴な囚人ドラックス(デイヴ・
バウティスタ)。妻子を殺した犯人の仲間であるガモーラの命を狙うドラックスを、ピーターは
制止。実はガモーラは“闇の存在”を裏切り、その支配から逃れようとしていたのだ。

オーブを売って金を手に入れたいピーターとロケットたち。復讐に燃えるドラックス。それぞれ
目的の異なる5人だったが、ロケットを中心に協力して脱獄。希少なものの収集家で、オーブに
大金を払う“コレクター”と呼ばれる男に会うため、宇宙の果ての惑星ノーウェアへ向かう。
そこでピーターたちは、コレクターから驚くべき秘密を聞く。“オーブを手にした者は、無限の
力を得る”。その頃、5人の動きを察知した“闇の存在”が大軍を送り込んできた。奮闘虚しく
敗れ、“闇の存在”の手に落ちるオーブ。彼らは、その力で宇宙の秩序を司るザンダー星を
滅ぼし、銀河を混乱と滅亡に陥れようとしていたのだ。
この時に及んで、それまで逃げることで生き延びてきたピーターは、何故か戦う覚悟を決める。
それはチーム“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”誕生の瞬間だった。ヒーローとは縁遠い
生活を送ってきた5人は、宇宙の存亡を賭けた戦いにどう挑むのか!?(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2016-07-18 23:15 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「あの日の声を探して The Search」
2014 フランス・ジョージア(グルジア) La Petite Reine and more.135min.
監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ベレニス・ベジョ、アネット・ベニング、アブドゥル・カリム・マムツィエフ、マクシム・エメリヤノフ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
よく構成され、言いたいことが簡潔に伝わる佳作であった。もう少しインパクトのある
挿話が用意されると、もっと盛り上がりのある作品になったんじゃないかと感じた。
とにかく、への字眉毛のハジ少年が印象的で、子役ながらなかなかの演技だった。

映画を構成する主な視点が3つある。一つは少年ハジ。そしてEU人権委員会で働く
キャロル(ベジョ)、更に、ロシアのごく普通の青年だったが強制入隊させられ、戦争の
中で人格が変わっていってしまうコーリャ。グループとしてはハジとキャロルたちの
難民と赤十字らの国連やEU関係とロシア陸軍新兵コーリャの2つ。それらを上手く
切り替えつつ、戦争と人間の不条理、狂気、非人間的な側面を映画いていく。
これと同じようなことが今この瞬間にも中東やアフガンなどで繰り広げられているのだ
ろう、ということが痛いほど胸に迫る。

彩度を抑え、華やかは色彩を出さず、どちらかのいうとモノトーンに近い映像も、主題を
訴えるために良い働きをしていたと言える。またベジョやベニング、そしておそらくグルジアの
俳優さんもいただろう、現地の人たちを演じる役者たちも良かった。グルジアの協力も
あったのだろう、戦闘シーンや廃墟のシーンなどにもリアリティがあり、色彩と並び、主題を
浮き上がらせる重要なファクターとなっていた。

両親を目の前でロシア兵に殺され失語症なのかショックで喋るのをやめたのかは不明なれど
言葉を発しなくなったハジ少年の物語よりも、街なかで突然逮捕され、強制的に陸軍に
入隊させられ、まるで太平洋戦争中の日本陸軍の新兵いじめのような扱いを受け、次第に
人間性が戦争をなんとも思わなくなっていくコーリャの物語のほうに多くを感じた。
新兵時代にやらされた後方に送られてくる戦死者の処理、そして突然戦場に送り込まれ
死にそうになりながら、市民を殺し、そして次第に人を殺すことをなんとも思わなくなっていく。
ストレート過ぎるといえばそうだが、普通の優しい、むしろ正しいことを正しいと感じる青年が
戦争により人間が変わっていく様は、よく分かった。

なかなか見応えのある一遍である。
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<ストーリー>
『アーティスト』で第84回アカデミー作品賞、監督賞など5部門受賞したミシェル・アザナヴィシウス
によるヒューマンドラマ。
1999年のチェチェンを舞台に、両親を目の前で殺されて声を失った少年とEU職員との
交流を描く。グルジアでロケを敢行し、全編手持ちカメラで描かれるリアリティあふれる
映像が印象的だ。

1999年、ロシアに侵攻されるチェチェン。両親を目の前で殺され、声を失った9歳の
少年ハジ(アブドゥル・カリム・ママツイエフ)は、姉のライッサ(ズクラ・ドゥイシュビリ)も
殺されたと思い、まだ赤ん坊の弟を見知らぬ人の家の前に捨て、一人放浪していた。

子供さえも容赦なく攻撃してくるロシア軍をかわし、ようやく街へたどり着いたハジは、
フランスから調査に来たEU職員のキャロル(ベレニス・ベジョ)に拾われる。
仕事を人生の第一優先と考え、家庭も持たず、離れて暮らす母親のことも煩わしく
感じていたキャロルであったが、ハジと出会い、自分の手では世界を何も変えられない
ことを知る。せめて目の前の小さな命を守りたいと願い始めたキャロルは、ハジが生き
別れた姉弟を捜し出そうと奔走するが……。(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2016-07-12 23:45 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)