●「第89回 アカデミー賞授賞式 89th The Oscars」
2017 26th Feb. At Dolby Theater,Hollywood,Los Angels,Ca.
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
予想通り、反トランプ旋風が吹き荒れたステージだった。これはハリウッドの持つリベラルさの
歴史的な背景があるから、まあ当然であろう。ステージアクトとしては、この3年間で一番地味だった
ような気がする。ダイナミックなステージショーの代わりに、小ネタが並んだという感じで、いろんな
楽しい工夫・演出もあり楽しませてもらった。ステージ全体の評価としては「作品賞」発表のドタバタで
マイナスとするのだろうが、「ラ・ラ・ランド」のプロデューサーらの大人な態度に感激し、マイナスとは
しなかった。ウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウエイは貧乏くじだったなあ。

反トランプで一番尖っていたのが、この式典の放映権を持つABCテレビで「The Jimmy Kimmel Live!」と
いう人気番組を持つ、ジミー・キンメルだった。冒頭から辛辣なジョークを繰り広げ、大先輩メリル・
ストリープを引き合いに出し、「過大評価だけど、みなさん、大きな拍手を」と、身内もからかって
笑いを取った。「その素敵なドレスはイヴァンカかい?」とか。台本があるのかアドリブなのかその両方なのか
よくわからないけど、彼の吐く毒のあるセリフはいちいち今のハリウッドの気分を代表しているのだろう。

マット・デイモンとキンメルの「争い」(笑)は、キンメルのショーを観ていないと分からないだろう。
もちろんジョークで、仲良しなんだが、2008年以来、「いがみあい」キャラとして2人は国民に
親しまれている。今回は、マットが「マンチェスター・バイザ・シー」の製作総指揮として授賞式に参加
していて、司会がキンメルだから、アメリカ国民もなにかあるだろう、と思っていたに違いない。

案の定、スターが自分の影響を受けた映画を紹介するコーナーで、キンメル自身が登場し、取り上げた
映画はマット・デイモンの2011年作品「幸せへのキセキ」。マットが動物園を買う話だ。これを、
真面目くさって語るのだが、からかい、ジョークで構成されていたりする。すると客席を歩くキンメルを
マットが足を出してつまづかせたり、ショー全体で、2人はじゃれ合っていた。結局「マンチェスター~」は
ケイシー・アフレックが主演男優書を獲ったから、マットの面目躍如と言った感じだった。
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キンメルはスマホを使ってトランプにツィッターをリアルタイムに打ち、「メリル(ストリープ)がよろしく
ってよ」とかホントにやっている。事程左様に、ステージ演出としても、反トランプの色彩は大変濃かった。
「この会場にTIMEと名のついた会社に勤めている人がいたら出ていってください」とか。

会場の演出としては、去年はピザの配達があったりだったが、今年は天井から小さい布の風船みたいなヤツに
オヤツを入れて投下させたり、素人の客を乗せたハリウッド周遊ツアーバスを会場に連れてきて、サプライズ
させたりしていた。
この客たちは羨ましかったなあ。だって、目の前にデンゼルやらメリルやらエマ・ストーンやマット・デイモンが
並んでいるんだからな。一生の思い出となる夢のようなひと時だったろう。

作品賞のミスは、ステージ上の役者、スタッフたちには気の毒だった。プレゼンターのウォーレン・ベイティや
フェイ・ダナウェイも含めて。封筒から紙を出した時にウォーレンは明らかにオカシイな、と気がついた。
それをフェイに確認の為に渡したら、フェイが読み上げちゃったからね。しょうがないな。
「ラ・ラ・ランド」は3人めが感謝のメッセージをスピーチしている最中だった。その後の彼らの、驚いた
だろうけど、ウラミや文句を言わず、「ムーンライト」が素晴らしい映画であることを強調し引き下がった。
あの態度は立派だった。みんなを救ったね。キンメルの「ボクが悪いんだよね」などという引き取り方も上手かった。
但し、故人を追悼するコーナーで、写真を取り違えたのはいただけない。
来年は発表の紙の管理に工夫がなされるであろう。

さて、各賞の行方である。作品賞、主演男優、主演女優、監督、作曲、歌曲、美術などは納得で、今回は
観ていない映画が多くて現在の日本での評価は難しいが、個人的には「え?なんでこの作品?」という
ものは無かったと思った。落ち着くべきところに落ち着いたと。

いろいろあったが、やはり毎年この授賞式はアメリカの映画の力、映画に対する愛情、そしてHollywoodの
多様性とリベラルさを確認出来る、夢のような興奮する時間であることは間違いない。これだけのショーを
今の地球で観ることは不可能であろう。来年は90回。素晴らしい、ミスのないwwショー(授賞式)を期待したい。

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by jazzyoba0083 | 2017-02-27 23:55 | アカデミー賞 | Comments(0)

●「ラ・ラ・ランド La La Land」
2016 アメリカ Black Label Media,Gilbert Films,Summint Entertainmet,and more.128min.
監督・脚本:デイミアン・チャゼル 撮影:リサヌ・サンドグレン 音楽(作曲):ジャスティン・ハーウィッツ
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、ローズマリー・デヴィッド、J・K・シモンズ他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想・結末まで触れています>
私が一番好きな音楽「ジャズ」。大好きな映画のジャンルの一つ、「ミュージカル」。これが
一体となり、大きな衝撃を受け二度観た傑作「セッション」のチャゼルが監督、加えて主役が
お気にいりの二人という事もあり、うわさが聞こえて来たころから封切を待ちわびていた。
そういう作品は最近珍しい。日本時間の明日午前に発表されるオスカーの多くの部門にノミネート
されていて、結果が分かるまでになんとか観ておきたいと、日曜のシネコンに奥様と出かけた。

ここに描かれているのは、オーソックスな夢の実現に向かう若い二人の話。「セッション」が息詰まる
物語であったのに比べ本作はシンプルな「夢」がメインテーマとなる。ストーリーとしては、驚くことは
ないのだが、ともかく芸事を舞台とした、ありがちな話をどう「ドキドキを踏まえ」「夢」の世界に
仕上げるか、がチャゼルの力量の見せ所になっていた。

この映画、いいところがたくさんあるのだが、
観ている人が絶えず高揚できるということがひとつあるだろう。冒頭の高速道路のダンスシーンでまず心を
きゅっとつかまれる。そこで主人公の出会いが設定される。その後折にふれて繰り広げられる歌とダンスの
シーンでは、ウキウキ感が加速されるのだ。

「夢とは簡単に実現できない」というテーマは今までそれこそ腐るほど映画にされてきたが、
本作では徹底して主人公二人にまつわる「夢を追う話」しか描かれない。例えばそれぞれに恋敵が出てきて、
話題がそっちにもとっちらかる、などは無く、そのあたりの端折り方、焦点の絞り方が上手い。
さらに、端折り方といえば、ラストシークエンスの「5年後」の話。この間の事情は気持ちいいほど一切
触れられない。だが、二人の5年後の姿や暮らしを観れば理解できる仕組みになっている。

そこで登場する「セブズ」という名前のジャズクラブ。その名前はセバスチャンとミアが一緒に考えたものだ。
そのクラブにすでに著名な女優となっていたミアが夫と訪れる。ミアは5年前、オーディションに合格しパリで
仕事をするため渡欧、セバスチャンはLAに残り、自分のクラブを持つ夢を追い求めていたのだ。
クラブは大繁盛していた。セバスチャンも自分の夢も実現したのだ。

ステージにいたセバスチャンは彼女に気づき、2人が一緒にいた頃の歌をピアノで弾く。すると画面には、
セバスチャンとミアが出会ってから今に至るまで、全て2人の間の出来事が上手く行ったら、という過去の
様々なエピソードの光景が繰り広げられる。しかし、現実は・・・。この部分のストーリーの持って行き方、
まとめかたも上手いなあ、と感じた。2人で育んだ夢、しかし愛し合いながら別の場所で夢を追うことになる。
夢は実現したけど、2人は結ばれず、別の道を歩き始めた。ビターな結末が、ありがちなストーリーを締めて
いる。

主役を張れるようになったミアの存在を、セバスチャンが5年間知らなかったはずはない。5年後ミアには
2歳くらいの女の子がいるのだが、3年前に結婚したとなると、パリに行ってから2年後に結婚した
ことになる。連絡は取り合っていただろうが、何が2人にあったのか、セバスチャンはミアが滞在する
とされた7ヶ月間パリに行ってないのだろうか、ミアは7ヶ月でLAに帰らなかったのだろうか、などなどは
まったく説明されない。 ラストシーンでの笑顔は、愛しているけど、別の道を歩きましょう、という
ことなんだろう。決して「見果てぬ夢を追っていたわけではない」と。
全体に脚本の出来がいいと感じた。物語はありふれたものだが、それを歌と音楽と色でアクセントを付ける。
こうして観客のテンションは落ちること無く終幕までキープされるのだ。
 
個人的には一番大きないい点であったのが、「映像が歌っている」「踊っている」という点だ。
思わず撮影監督を確認したくらい(「バード」とか「ゼログラビティ」のあの人かと思ったらさにあらず
でした。)それにしても(当然監督の演出も大きいのだが)アップから中ロングの絵の中でフレームに
出入りする人物を中心にした手持ちカメラ(だけではないけど)のカットの長短と、動き。心のウキウキが
カメラの動きで倍加するのだ。
特に歌のシーンでは観ていてウキウキしてしまった。吹き替えなしで臨んだというゴズリングのジャズ
ピアノも、演技のためとはいえ、よくあれだけ弾けるようになったものだ、ピアノの先生である奥様と
びっくりいていた。

さらに歌がいい。曲が全部いい。中にはワム!のありもの(演奏されるものだが)もあるが、
オリジナル曲が皆美しいし、耳について覚えやすい。ゴズリングもエマも上手い。サントラが出たら買うぞ! 
流れるジャズの選曲センスもいい。それに過去のミュージカルに対すリスペクトとオマージュが楽しい!
「雨に唄えば」「バンドワゴン」「パリのアメリカ人」「ウェストサイド物語」などなど。
そして結構キーになるLAの名所、グリフィス天文台に至る場面で流れる昔の映画はジェームズ・ディーンの
「理由なき反抗」ではなかったかな。私も行ったことあるので思い入れをもってみることが出来た。
加えて色彩のバランスというか、ワンカットずつに計算された色彩が美しいし、ビビッドである。

バレーパーキングで、セブがミアの車はなに?と尋ねるシーン、係のキーボックスに並んでいたのは
全部プリウスだったという落ちは日本人受けする!ww

いやあ、近年ない、スカッとしたそして心温まり、自分の趣味性が満喫できた作品に出合えた!

以上の良い点を、オスカーにはめれば,作品、監督、撮影、脚本、主演女優、主演男優(ここは?)
作曲、歌曲、衣装、編集だどが、間違いなく多くの部門で選ばれるだろう。
明日の午前中にはわかちゃっているよね。それにしても、「映画のエンタティンメント、ここにあり」と
いう作品だ。
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<IMDb=★8.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:9.3% Audience Score:84%>

<ストーリー>
「セッション」のデイミアン・チャゼル監督がライアン・ゴズリングとエマ・ストーンを主演に
迎えて贈る本格ミュージカル・ラブストーリー。大きな夢を抱いてLAへとやって来た男女の
出会いと甘く切ない恋の行方を、カラフルかつマジカルなミュージカル・シーンと、夢と現実の
狭間で苦闘する主人公2人の葛藤のドラマを織り交ぜほろ苦くもロマンティックに綴る。

 夢を追う人々が集う街、ロサンゼルス。女優志望のミアは映画スタジオのカフェで働きながら、
いくつものオーディションを受ける日々。なかなか役がもらえず意気消沈する彼女は、場末のバーから
流れてくるピアノの音色に心惹かれる。弾いていたのは、以前フリーウェイで最悪な出会いをした
相手セブだった。彼も自分の店を持って思う存分ジャズを演奏したいという夢を持ちながらも、
厳しい現実に打ちのめされていた。そんな2人はいつしか恋に落ち、互いに励まし合いながらそれぞれの
夢に向かって奮闘していくのだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=358727#1こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-02-26 12:25 | 洋画=ら~わ行 | Comments(0)

砂上の法廷 The Whole Truth

●「砂上の法廷 The Whole Truth」
2016 アメリカ PalmStar Media and more.94min.
監督:コートニー・ハント
出演:キアヌ・リーブス、レニー・ゼルゥイガー、ググ・ンバータ=ロー、ガブリエル・バッソ、ジム・ベルーシ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

「犯人は被害者と一番遠い関係にある者だ」、「一見悪いと描かれる人は実はそうは悪くない、善人ぶるヤツこそ
怪しい!」という2時間ドラマの王道を行くような展開。ま、見事に引っかかったので、その点は良しとしても、
観終わって、騙されたなあ、という点以外に残らない映画なんだな。それを目指したのよ、と言われればそれ
までだけれど。

キアヌとレニーの名前に惹かれて観てみたのだけど、レニー、この後の「ブリジット・ジョーンズ~」の時より
痩せていて最初ダレだか分らなかった。法廷映画なんだけど、証言に基づく再現シーンにより、観客はミスリード
されていく。嘘をついているのはだれか?ということなんだけど、その割に緊張感は薄い。

キアヌは弁護士、レニーは殺された男(キアヌを育て上げた弁護士でもある)、犯人はレニーと殺された男の
長男(すごく優秀で法律家を目指している)という構図。
ある日、ロレッタ(レニー)の夫ブーンが寝室で胸にナイフが突き刺さった状態で死んでいるのを、ロレッタと息子
マイクが発見。警察はマイクが「自分がやった」と言ったという証言からマイクを逮捕した。ラムゼイ(キアヌ)が
顧問弁護士として裁判に臨む。マイクは証言をしない。なぜか知らないが口を開かないのだ。そのため
状況はどんどん悪くなっていく。 そこで、ラムゼイは助手を勤める若い黒人女性弁護士ジャネルと、ある
作戦に出る。

まあ、常道どおり、息子は母をかばって犯人と言っているのじゃないか、という風になるのだが、殺された
ブーンは、母にも、息子にも暴力を振るっていたらしい。近所に住む住人からも証言がなされる。
しかし、急にマイクが証言台に立つという。マイクは父に幼いころから性的暴力を振るわれていたというのだ。
陪審員の同情が一気にマイクに集まる。(観ている人も陪審員目線になるわなあ) 判決は無罪。すべては
暴力的なブーンのせいにされた。

しかし、実はマイクは父の死体の近くにラムゼイの腕時計が転がっていたのを知っていた。判決の後、
マイクはラムゼイに、あの日寝室で何をしていた、と問い詰める。そう、ラムゼイと母ロレッタは不倫の
関係?暴力を見かねた関係?にあったのだ。(あれあれ)であれば、何故にマイクは自分が逮捕された後、
黙っていたのか?ラムゼイをも庇ったのか? 父は本当は母を虐待もしていないし、マイクに性的暴力はして
いなかったのではないか?ただ粗野な性格だっただけで。ブーンがラムゼイに「どうやら妻が浮気している
ようなんだ、ダレだか分かるか?」というような問いを投げるシーンがある。別れ際にブーンはウィンクして。

恩師であるブーンの粗野な態度に嫌気がさした妻ロレッタは夫の教え子ともいうべきこの家の顧問弁護士
ラムゼイと不倫。夫にバレて、ラムゼイが殺した。しかし、魔が悪くそこに息子が帰ってきて死んだ夫を
見つけてしまう。「ボクがやれば良かったんだ」、普段から父からいじめのような言葉を投げられ、かなり
頭に来ていたマイクは、逮捕されても、母やラムゼイを庇って黙ってしまった。さらに自分が父から性的
暴力を受けていたという嘘までついた。彼は法律にも詳しかったから無罪は獲得できた。そして、ラムゼイに
詰め寄った。殺したのはお前だろう!と。・・・というのが全体像じゃないかな。

ラムゼイの腕時計がベッドの下にあって・・・あたりで映画がぐんと安くなってしまった感じだなあ。

<IMDb=★6.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:29% Audience Score:31%>

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<ストーリー>
巨額の資産を持つ大物弁護士が自宅で殺害される事件が発生。容疑者として逮捕されたのは、被害者の
17歳の息子だった。拘留後、完全黙秘を続ける少年の弁護を引き受けたのは、敏腕弁護士ラムゼイ
(キアヌ・リーヴス)。
何も語ろうとしない被告人をよそに、開廷された裁判では多くの証人から少年の有罪を裏付ける証言が
飛び出す。だが、その証言のわずかな綻びから、ラムゼイは証人たちの嘘を見破る。有罪確定に見えた
裁判の流れが変わり始めた矢先、沈黙を破って衝撃の告白を始める被告の少年。彼の言葉は果たして
真実なのか?そして、真犯人は別に存在するのか……?(Movie Walker)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355436こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-02-25 23:15 | 洋画=さ行 | Comments(0)

御用金

●「御用金」
1969 フジテレビジョン・東京映画(配給:東宝) 123分
監督・(共同)脚本:五社英雄
出演:仲代達矢、丹波哲郎、中村錦之助、浅丘ルリ子、司葉子、夏八木勲、東野英治郎、樋浦勉他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
珍しく、2日続けて時代劇を観た。新旧の対比が出来て面白かった。好みだろうけど、個人的には
「殿、利息でござる!」の方が圧倒的に面白かった。本作は、フジテレビが初めて劇場映画に進出した
記念すべき一作で、当時フジテレビで「三匹の侍」などのテレビドラマを演出し、既に映画監督として
「牙狼之介」などを撮っていた五社英雄が脚本家・田坂啓と本を書き、演出した。

テレビドラマ「三匹の侍」で、日本刀の当たる音や、人が斬られる音などを入れて新たな地平を
開いた五社の作品で、映画では更に劇的に仕上がっている。短い心象光景のカットバックなど、今は
あまり使わないような手法も多用、「芸術」的な雰囲気を表出しようとした気分は、五社監督の若さ
(当時40歳)ゆえだろうか。私は、さいとうたかをの「劇画」を観ているような気分であった。

映画としては寒さは伝わってきたが(苦笑)、全体として凡庸な出来だと感じた。しかし、1969年当時
では、新しかったのだろうなとは推察出来るが。終盤の御用船をおびき寄せるシーンでは、大きな薪は
リアルで良かったが、夜の海を行く御用船の模型がチャチで残念だったのと、砂浜でも馬がパカパカいうのは
如何なものか、とも感じた。
今観ると、出演者の若さにばかり目が行ってしまった。浅丘ルリ子なんてまだ29歳!仲代も30代だ。
丹波哲郎は、一生懸命観ていた「キーハンター」の放映が本作の前年から始まったところ。
水戸黄門になる東野英治郎(当時62歳)、西村晃(当時46歳)が共に出演していたり。
ちなみに東野英治郎版黄門は本作が作られた年からスタートしている。そんなところばかりに関心が
行っていた。中村錦之助の役は本来、三船敏郎がキャスティングされたが、寒い中でのロケを嫌がった
のと、仲代との間が非常に悪くなり、錦之助に交代したといういわくがある。

閑話休題、本作の出来に戻ろう。ストーリーは単純だし、ラストも想像出来てしまう。活劇として
単純に楽しめば良いのだろうけど、あまりにコテコテな時代劇で、ストーリーの綾、みたいな楽しみは
ない。これは脚本の問題だ。昭和40年代の時代の雰囲気と役者の若さを感じながら観ると楽しいかも。
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<ストーリー>
天保二年の冬、越前鯖江藩領内で奇怪な事件が起った。黒崎村の漁民が一人残らず姿を消してしまったのだ。
領民たちは、この事件を“神隠し”と呼んで怖れた。
三年後の江戸。浪人脇坂孫兵衛が、鯖江藩士の流一学らに急襲された。孫兵衛は、彼らが、
次席家老六郷帯刀によって差向けられたことを知り愕然とした。

その頃鯖江藩は、公儀より一万石を削減され、さらに享保以来の不況で、極度に疲弊していた。
帯刀は、佐渡から産出した御用金を積んだ船が黒崎村沖で遭難した時、漁民たちが拾いあげた金を
藩財政建てなおしのために横領し、その秘密を知る漁民をみな殺しにしていたのだった。
帯刀の妹しのの夫である孫兵街が、妻と藩を捨てて出奔したのは、それから間もなくのことだった。
帯刀は、その時竹馬の友孫兵衛に二度と“神隠し”を行なわぬと約束させられた。
だが、藩政改革に自分の政治的生命を賭ける帯刀は、再度の計画を練っていた。
孫兵衛は、帯刀への怒りをこめて鯖江に向ったが、その途中女賭博師おりはと知合った。

おりはも“神隠し”の犠牲者だった。年季奉行が明けて村へ帰った時、許婚者も父親もなく、
身を落した女だった。旅を続ける孫兵衛は、やがて、浪人藤巻左門と会った。その時、
左門は孫兵衛につかず離れずの旅をしていた。一方、藩では、孫兵衛の行動を察知し、
剣の木峠で彼を急襲させた。そして、死闘で傷ついた孫兵衛を救ったのは左門だった。
やがて、帯刀に、金を積んだ御用船が佐渡を出帆したという報告が入った。
そして、鮫ヶ淵村が“神隠し”の舞台に選ばれた。帯刀の片腕九内らに狩り出された
鮫ヶ淵村の漁民たちは、御用船を湾の暗礁地帯に誘導すべく、偽りの篝り火台を新設
していた。帯刀の野望と領民の悲劇を阻止するために孫兵衛が立ちあがり御用船難波の
真相究明に幕府が送った公儀隠密の左門もまた孫兵衛とともに鯖江藩の剣客と対峙した。
雪をついて二人の剣が次々と相手を倒し、やがて帯刀を倒し、“神隠し”の悲劇を未然に防いだ。

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=142846こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-02-23 22:50 | 邦画・旧作 | Comments(0)

殿、利息でござる!

●「殿、利息でござる!」
2016 日本 松竹・東日本放送 129分
監督・脚本:中村義洋   原作:磯田道史「穀田屋十三郎」
出演:阿部サダオ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、寺脇康文、キタロウ、千葉雄大、橋本一郎、中本賢、西村雅彦
   堀部圭亮、松田龍平、草笛光子、山崎努、羽生結弦(友情出演) ナレーション:濱田岳 他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
私は邦画の中でも時代劇が好きで、中でも事実に根ざした時代劇が特に好み。一方、先日の
「情熱大陸」で観た本作の原作を書いた磯田道史の凄さも確認したく、WOWOWでの放映を機に
観てみた。メガフォンを取った中村監督作品では一連の伊坂幸太郎ものが好きで、全部観ている。
本作も、脚本構成作家から叩き上げてきただけあり、作劇は確かで、面白く出来上がっていると感じた。
★は7.5。
冒頭の初代浅野屋(山崎努)が壺に銭を入れるシーン、更に夜逃げする一家に声を掛ける
シーンを始めとして、いろんなところに細かく埋められた伏線が、ストーリーの展開につれて
見事に回収されていくが、このあたり観ていて気持ちがいいものだ。オチは、浅野屋の正体。
そして宿場のだんな衆が寄進を競うお寺の住職が記録した本がこの作品の元になってますよ、
さらに主人公の穀田屋酒店は今も仙台にありますよ、というもの。これが歴史好きにはたまらない。

出てくる人が、伊達藩の収入役・松田龍平以外、(彼もそんなに非道な悪人ではない)基本的に
全員いい人で、それも、そこまで行くか!というくらいいい人だらけ。それがまたこの作品の
最大の魅力である「痛快さ」を創り出しているし、「売り」なポイントなんであろう。
現実社会への皮肉、とも取れる。

更に役者が良い。阿部サダオ、瑛太、寺脇、キタロウ、西村、松田龍平、など個性派が揃い、
加えて、山崎、草笛のベテランが押さえる。だから千葉雄大(宮城県出身繋がり)やゲストの
羽生くんら若手が出てきても、それはそれとして観ていられる。(羽生くん、結構上手いけど)

貧乏な村の衆が、一所懸命にお金を集めて殿様に貸そうとする物語、丁寧に表現はしているが
一年一年経過を説明しすぎたんじゃないか、もう少し短くしても良かったんじゃないかな、とは
感じた。
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<ストーリー>
 『武士の家計簿』の磯田道史が江戸時代に貧しい町を救うために奇想天外なアイデアで藩主に立ち
向かった実在の商人の知られざる感動歴史秘話を綴った評伝『穀田屋十三郎』を「予告犯」「残穢【ざんえ】
 -住んではいけない部屋-」の中村義洋監督、「舞妓 Haaaan!!!」「夢売るふたり」の阿部サダヲ主演で
映画化した痛快人情時代劇コメディ。
共演は瑛太、妻夫木聡、竹内結子、松田龍平、山崎努。また、フィギュアスケーターの羽生結弦選手が
殿様役で映画初出演を果たしたことも話題に。

 江戸時代中期の仙台藩。百姓や町人には重税が課され、破産や夜逃げが相次いでいた。貧しい宿場町・
吉岡宿も例外ではなく、造り酒屋を営む穀田屋十三郎は、そんな町の行く末を深く案じていた。
ある時彼は、知恵者の篤平治から、町を救うあるアイデアを打ち明けられる。それは、藩に大金を貸し
付け、その利息で町を再建するという前代未聞の奇策だった。計画に必要な額は、なんと千両(約3億円)。
簡単につくれる額ではないが、宿場の仲間たちを説得し、必死の節約を重ね、家財も投げ打ってひたすら
銭集めに奔走する十三郎たちだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353460#1こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-02-22 22:22 | 邦画・新作 | Comments(0)

サウルの息子 Saul fia

●「サウルの息子 Saul fia」
2015 ハンガリー Laokoon Filmgroup,Hungarian National Film Fund.107min.
監督・(共同)脚本:ネメシュ・ラースロー
出演:ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン、トッド・シャルモン、ジョーテール・シャーンドル他
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       <2015年度アカデミー賞外国語映画賞、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品>

<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
「息詰まるアップ」「終始手持ちの長回し」「音楽なし」。それでもナチスによるユダヤ人収容所の様子は
極めて良く分かる。内容、演出ともに衝撃的な作品だった。昨年、オスカーを始め世界中の外国語映画賞を
総なめにし、映画ブロガーの中でも評価が高かった本作、WOWOWでの放映を機に鑑賞することが出来た。
映画館でみたら、あのアップはもっと息が詰まったことだろう。故にラストの緑の林のロングショットが
大きなカタルシスとして描き得るのであろう。

冒頭から主人公サウルのタイトバスト(肩から上の)ショットから長回しの映像が始まる。
映像に入る前、字幕で解説される「ゾンターコマンド」という、処分された死体が脱いだ服から金目の
モノを抜き出し(映画には描かれないが、死体から金歯を抜いたり髪をそったりもしたようだ)たりする
役目を背負ったユダヤ人が描かれる。彼らもやがて処分されるのだが。

黙々と何かの仕事をしているサウルのアップの背景に、ややアウトフォーカスで描かれるホロコーストの
実態。衝撃的なカットはアップの人物で隠すものの、着いた列車からおりた大勢のユダヤ人が、「シャワーの
後はスープだ」とか「脱いだ服のフックの番号はよく覚えておけ」とか言われて裸になり、ガス室に送られる。
その瞬間からゾンターコマンドたちは脱いだ服からいろんなものを抜き取り、時計や貴金属を手際よく
集める。すぐにガス室から聞こえてくる苦悶の絶叫やドアを叩く音。それでも彼らは表情一つ変えずに
仕事に打ち込む。ガスによる虐殺が終わると、ゾンターコマンドたちは死体を運び出し、焼却炉に運び、
シャワー室の床を掃除する。おぞましい光景があくまでもアップ画面の背景に映し出されていく。

はっきりと見せられるより、サウルの無表情は顔のアップの背後に展開されることにより、ホロコーストが
余計にリアルに迫ってくる。川に行って何かを川に撒いている。それが遺体を焼却した灰だと、説明され
なくても分かるのだ。
ゾンターコマンドたちもだまってこの狂気の作業をしているだけではなく、一部は武器をなんとか都合し
て反乱を起こそうと計画していたのだった。

<以下、結末まで全部ネタばれで書かれていますので、未見の方はご留意ください>

こうした中で、処分が終わったガス室からまだ息があると言って運び出されてきた男の子がいた。
担当のナチス将校は、まだ生きている少年の口を手で押さえてトドメをさし、解剖せよ、と担当医師に命ずる。
それを見ていたサウルは少年を自分の息子だと思い込み、解剖はしないでくれ、ユダヤ教に則りラビに
葬儀を取り仕切ってもらってくれ、と医師(彼もユダヤ人)に頼む。医師は少年の遺体を隠していてくれる
のだが、その間、サウルは狂ったようにラビ(司祭)を探しまくる。少年を埋葬することがゾンターコマンドと
してやっていることの贖罪と思い込んだか、またあまりの環境に狂ったのか。

今いる班にはラビはいないとなると、新たな列車で到着したユダヤ人の中に入り込み、ラビを探しまくる。
その頃には焼却炉が追いつかず、穴を掘って埋めていくようになっていた。
その中からようやくサウルはラビを見つけ出す。しかし、こいつがどうやら助かりたくて嘘をついているようだ。

やがて、ゾンターコマンドの中から70人の抹殺命令が出る。彼らはガス室の前で反乱を起こし、銃撃戦となり
一部は収容所から逃走する。サウルも遺体を担いでその中にいた。とにかく遺体を埋葬したい、その一心で。
大きな川まで来た時、一緒に逃げてきたラビに祈りをお願いし、木の枝で穴を掘ろうとした。祈りを始めた
男は途中で止めてしまう。やはり偽物だったのだ。その時遠くに犬の鳴き声が。追手が迫ってきたのだ。
ラビと称した男はすぐに逃げ出す。サウルも遺体の袋を抱いて川に入る。なんとか泳ぎきろうとしたのだが
力が尽きそうになってしまう。その時、仲間がが彼のクビを後ろから支え助けてくれた。しかし、遺体の袋は
流れていってしまった。

林の中の掘っ立て小屋に、逃げた数人が集まってきた。その時、入り口のところに運んできた遺体と同じくらいの
地元の少年が立っていた。サウルの顔にようやく笑顔が。(この映画唯一の笑顔だ)あの遺体の少年が来てくれた、
くらいに思ったのだろうか。少年は踵を返すと森に去っていく。それと入れ替わりに追手の軍隊が駆けつける。
逃げていく少年の姿。そしてやがて遠くで聞こえる機関銃の音。林の中に消えていく少年。林の遠景。
暗転し、エンドロール。音楽。音楽が切れてもつづく字幕の背後に、林のノイズが生き続けている・・・。
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107分、「息詰まる」といったが、「息つく暇もない」という見方も出来る。アップをあの近さから撮り続けるとは
どういう技術だろう、フォーカスはどうやって合わせているだろう、川を渡るときはどうやって撮ったのだろう、
などテクニカルな部分にも興味が行った。ナチスの狂気と、サウルのカウンターに位置する狂気。そこに
この映画の生み出すパワーがある。戦争と狂った政治が生み出す人間の仕業とは思えないナチスのホロコーストに
思いを致すのもいいだろうし、サウルは一体何をしようとしたのだろう、とそれぞれ思うのもいいだろう。
個人的には、このブログを書きながら「処分」とタイピングする軽さと現実の重さに心も重くなるのだった。
この映画は実際に観てもらわないとその凄さは理解はしてもらえない、ということだけは確かだ。

<IMDb=★7.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:96% Audience Score:80%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354579#1こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-02-20 23:20 | 洋画=さ行 | Comments(0)

●「真夜中のピアニスト De battre mon coeur s'est arrêté」
2005 フランス Why Not Productions and more.108min.
監督・(共同)脚本:ジャック・オーディアール
出演:ロマン・デュリス、ニエル・アレストリュプ、オーレ・アッティカ、エマニュエル・ドォヴォス、リン・ダン・ファン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

この年の「セザール賞」作品、監督など主要8部門で賞を獲得した作品。主演男優賞は外れてしまい、ロマン君、
せっかくピアノを一生懸命弾いていたのに残念だった。もともとはアメリカ映画でハーヴェイ・カイテル主演の
「マッドフィンガー」をリメイクした形となっている。監督・脚本はフランスでは既に定評のある人のようだが
私は良くは知らない。手持ちの荒々しいカメラと、後半ピアノ演奏会などで使われる脚を使った安定した画が
対象的だ。
個人的に難点だったのは、前半しばらく、主人公が何の商売をしているのか分からなかった点。予備知識無しで
観たので、不動産ブローカーであることが分かったのは30分位経過してからであろうか。それは置くとしても
主人公がピアノを弾き始めてから、ストーリーが動く出す。それまでがもどかしかった。

ピアニストであった今は亡き母親の影響でかつてピアノを弾いていたトム(ロマン)。彼は父の手伝いもあり、
仲間と結構危ない不動産ブローカーをしていた。そんな日々を送る中、荒廃する心を開放しようとしたのだろう、
昔習ったピアノに10年振りで手を付けて見た。
ある日かつての母のコンサートマネージャーからピアノのオーディションを受けることを勧められ、ピアニストを
目指し本格的にピアノを習う決意をする。いくつかの学校に断わられ、友人の紹介で中国人ピアニストの
ミャオリンの個人レッスンを受けることになる。ミャオリンはフランス語を話さない・・・。

片や荒んだ生活が続き、辛い心の逃げ口として、また別の自分になりたいという希望をもち真夜中にピアノに
向かうトム。だが、短気な彼は言葉の分からないミャオリンに当たったり、なかなか上手くならない自分に
自暴自棄になったり。
暴力的な商売とピアノレッスンという非常に対照的な事象を合わせ、主人公トムの揺れる心が手持ちのカメラで
表現されていく。
いよいよオーディションの日がやってきた。しかし当日も仲間から商売に連れて行かれ、心が乱れてしまう。

<ここからネタばれです>

ラストに向かうオーディションから二年後の生活もある意味衝撃的だった。結局ピアニストにはなれなかった
トムはミャオリンのステージマネージャーになっていた。殺された父の復讐を経て、血のついた服でミャオリンの
コンサート会場に座ったトム、演奏を聴いて笑顔になるのだった。結局、トムは別の形で自分を見つけた、という
ことなのだろうか。

ハーヴェイ・カイテルのオリジナルは未見であるが、本作は脚本がとても良かったし、映像が荒々しいトムの心や
商売を活写していた。全体としてみれば異質なフィルム・ノワールではあるが、独特の味わいを持っている。
セザール賞は逃したが、トムを演じたロマン・デュリス、悪くなかったと思う。
ジャック・オーディアールは、本作から10年後の2015年、「ディーパンの闘い」で、カンヌ国際映画祭パルム・
ドールを獲得することになる。
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<ストーリー・結末まで書いてあります>
28歳のトム(ロマン・デュリス)は、友人ファブリス(ジョナサン・ザッカイ)、サミ(ジル・コーエン)と
組んで、不法住民を暴力で追い出し物件を転がす不動産ブローカー。
同業の父ロベール(ニール・アルストラップ)からは再婚する予定の若い恋人クリス(エマニュエル・ドゥヴォス)を
紹介されるが、トムは素直に認められない。

そんなある晩、亡き母のコンサート・マネージャーに再会したトムは、オーディションの機会を与えられ、
ピアニストへの道を薦められる。10年ぶりでピアノに向かったトムは、忘れていた音楽への愛と情熱を再認識した。
そしていくつかの音楽学校を断られたあと、中国人ピアニストのミャオリン(リン・ダン・ファン)の元にレッスンに
通うことになる。

ファブリスからは浮気のアリバイ工作を頼まれ、父からは取り立てを催促され、現実に嫌気が差すトムは、どんどん
ピアノのレッスンにのめり込む。さらにはファブリスの妻(オーレ・アッティカ)と関係を持ってしまうトム。
そして父から金を騙し取ったというロシア人のマフィア、ミンスコフ(アントン・ヤコフレフ)の若い愛人(メラニー・
ロラン)とも関係を持つ。
オーディション当日には物件の裏取引に連れ出され、当日は心が乱れてうまくピアノが弾けない。思わず会場を飛び
出したトムは、無残に頭を撃ち抜かれた父の姿を見つけるのだった。

2年後、ミャオリンのコンサートに付き添うトムの姿。彼は父を殺したミンスコフを発見し、追いかけて暴力を加える
ものの、最後のとどめは刺さなかった。そしてコンサート会場の席に着き、ミャオリンのピアノ演奏を堪能するのだった。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:85% Audience Score:84%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=323086#1こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-02-18 23:10 | 洋画=ま行 | Comments(0)

エール! La famille Bélier

●「エール! La famille Bélier 」
2014 フランス Jerco and more.105min.
監督・(共同)脚本:エリック・ラルティゴ
出演:ルアンヌ・エメラ、カリン・ヴィアール、フランソワ・ダミアン、エリック・エルモスニーノ、ロクサーヌ・デュラン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

なんの前知識なく、フランス映画とも認識がなく、WOWOWで録画されていたので観てみたら、これが
大当たり。社会的弱者や病気モノは最近富みによく製作されるが、その背景に、そういう人々と健常者が
日常どうあるべきか、を問わなければならないような社会である、ということと、その手の映画もちゃんと
観てもらえるようになったということがあるのだろう。ただし、お涙頂戴、ヒット狙いなものは当然ダメで
あるのだが。
その点、本作は、逆境を笑い飛ばすというフランス映画独特の乾燥度を持っていて、(例:「最強のふたり」
など)嫌味なく見ることが出来る。
障害者であることを変にオブラートに包むのではなく、あけすけに提示することにより、観ている方も、映画に
納得・同化しながら楽しむことが出来るのだと思う。
 とにかく登場人物がアッケラカンとしていて、めそめそしていない。ポーラに初潮が来た、といって大騒ぎ
して喜ぶ両親、また母が膣炎で婦人科にかかり、ポーラは通訳して、母に性生活を控えめにするように通訳したり
とかのシーンがあったと思えば、学園祭で歌う歌が、おいおい、こんな大人の歌を中学生に歌わせていいのかよ、
と思ってしまうような歌だったり、父親がなんと村長に立候補すると言い出したり・・。とにかくカラッとした
映画なのだ。だから最後の大団円が盛り上がるのだな。
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登場するのは四人家族。娘のポーラ以外は両親、弟3人共聾唖である。この設定が映画の全てといっても
いいくらいだ。一家は酪農を営み、回りの人達の理解もあり、不自由を感じることもなく暮らしていた。
娘は健常者であるのだが、手話を駆使し、家族と語り合う。家の手伝いを一生懸命するような、なかなか
出来た娘であるのだが、授業には疲れから居眠りをしてしまうなど、はなかなか打ち込めない。

ある日学校でコーラス・グループが結成され、ぶーたれていたポーラは先生から団に入るように指名されて
しまう。しかし、彼女の歌声を聴いた先生は、その歌声の可能性に驚き、個人レッスンを受けるようにいう。
パリの音楽学校に行け、その能力はある、というのだ。 
 一家のコミュニケートを支え、通訳代わりを勤め、酪農も手伝う生活をしているポーラ、自分が抜けたら
一家は大変なことになる、と大いに悩む。でも夢は叶えたい。自分の歌声を家族に聞いてもらうことは
出来ない、ということも彼女を悩ませる。個人レッスンを止めたり、なかば自暴自棄になったり、
ボーイフレンドと喧嘩したり・・・。両親にパリ行きを打ち明けるも、なかなか理解は得られない。

学園祭の出し物でコーラスや、ボーイフレンドとのデュエットを披露するポーラ。見に来ていた家族は当然
彼女の歌は聞こえなかったが、その美声は大評判だった。音楽の先生は、彼女は才能がある。応援してあげ
ないか、と語るが、事情をわきまえたポーラはそれを通訳しなかった。

その夜、父はポーラを庭に呼び出し、歌ってくれという。父は彼女の喉に手を当てて聞き入っている。
オーディションの日を知っていた父は、ポーラを起こし、パリへとクルマを走らせる。オーディションが
始まった。しかし、ポーラの歌う歌を伴奏者は楽譜がないという。そこに、ポーラがパリに行ったと
聞きつけた音楽の先生が登場、私が弾きます、と。そしてオーディションが始まった。
遅れて駆けつけた家族。その前で、彼女は手話も使い、まるで一家と自分の事を歌ったような歌を力一杯
歌い上げたのだった。結果は合格! ポーラのパリでの新しい人生と、ポーラ抜きの家族の新しい暮らしが
始まったのだ。
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大柄なポーラがちょっと初潮を迎える中学生にしては体格が良すぎるんじゃないか、とは思ったけど、
彼女を含め、手話を駆使し、特に両親と弟はセリフが全く無い演技だが、キャラクターを上手く出して
見ものであった。ポーラを演じたルアンヌ・エメラは実際にテレビのオーディション番組で優勝し、この
映画にキャティングされたまだ素人っけが残る女優さん。そこら辺も良い方に作用したんじゃないか。
独特の軽・重い感じがいい。自分の道を見つけていくという青春ドラマでもあり、家族ドラマでもある。
佳作。

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353061#1こちらまで。

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:81% Audience Score:76%>


by jazzyoba0083 | 2017-02-16 22:55 | 洋画=あ行 | Comments(0)

●「DEMONデーモン Go with Me(Blackway)」
2015 アメリカ Enderby Entertainment,Gotham Group.90min.
監督:ダニエル・アルフレッドソン
出演:アンソニー・ホプキンス、ジュリア・スタイルズ、アレクサンダー・ルドウィグ、レイ・リオッタ他
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<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>

日本未公開映画を紹介するWOWOWで鑑賞した。
「病んだ田舎町不気味さ」という雰囲気。ホプキンスを始めとして役者は揃っているのに、映画としては
非常に中途半端さを拭いきれないものであった。
単純に言ってしまえば、おじいさんと若者と若い女性が町の極悪ボスをやっつけに行くというお話。

ホプキンス(さすがの演技)演じるレスターは不気味な老人であるが、彼の背景は娘がヤクで亡くなり、
奥さんには逃げられたということや、娘の葬儀の帰りに当時警官だったブラックウェイ(リオッタ。これまた
ベタな名前で!)にあれこれとイビれたこともあるということなどが提示される。
レスターの娘はこのエリアの麻薬を一手に引き受けるローカル組織のボスであるブラックウェイにヤク漬けに
されて殺されたのだ。彼に大きなウラミがあることは分かる。
一方、レストランに勤める若い女性リリアンは、猫を殺され、ストーキングをされ、暴力も振るわれていた。
(ブラックウェイを殺しに出かけるにはちょっと動機が弱いか)
レスターに味方する甥のネイトの3人で山の鉱山の小屋にいるといわれるブラックウェイを探しに出かけた。
山深い、今は廃坑となっている所にブラックウェイはいるのか?高まる緊張感!

なんだけど、ラストは意外とあっさり終わっちゃうんだ。ブラックウェイは彼ら三人を付けてここまで
やってきて先手を打つ。ネイトと殴り合いになり、リリアンも危ない。爺さんはカモ撃ち銃を持って
ブラックウェイを狙うが、もつれあう2人に狙いがつけづらい。そこに爺さんの後ろから、ブラックウェイの
手下がライフルをぶっ放し、爺さんは肩を撃たれてしまう。しかし、負けない爺さんは起き上がり、
リリアンに迫ろうとしているブラックウェイを、ズドンと一発! ボス、即死! 手下も死んで、2人を山の中に
埋めてしまいましたとさ。で? 終わり? ラストの爺さんの顔のアップの意味は?

ホプキンスの笑わない演技はたしかに良いが、レイ・リオッタの極悪非道なボスは迫力不足。
だいたい脚本がアカンのだな。短い映画なので、ホプキンスファンの方はご覧になるといいかも。
この出来では配給会社は手が出ないだろうな。

<IMDb=★5.2>
<Rotten Tomatoes:Tomatometer=-- Audience Score=34%>
<ストーリー>
ハイネケン誘拐の代償」のアンソニー・ホプキンスとダニエル・アルフレッドソン監督が再タッグを組み、
謎の男から執拗に嫌がらせを受ける女性の姿を通してアメリカ地方社会の闇をあぶり出した社会派サスペンス。

母の遺産である一軒家を相続し、故郷の田舎町に戻ってきたリリアン。そこで彼女はブラックウェイと
呼ばれる謎の男から繰り返し嫌がらせを受けるようになるが、保安官や町の人々に相談しても町を去るよう
警告されるばかりだった。そんな中、老男性レスターと彼の親戚である若者ネイトだけがリリアンに味方し、
誰も居場所を知らないというブラックウェイを一緒に探しはじめるが……。

主人公リリアン役を「ジェイソン・ボーン」シリーズのジュリア・スタイルズ、謎の男ブラックウェイ役を
「グッドフェローズ」のレイ・リオッタ、レスター役をホプキンスがそれぞれ演じた。(映画.com)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=359268こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-02-15 23:00 | 洋画=た行 | Comments(0)

●「愛しき人生のつくりかた Les Souvenirs」
2015 フランス Nolita Cinema and more.93min.
監督・(共同)脚本:ジャン=ポール・ルーヴ
出演:アニー・コルディ、ミシェル・ブラン、シャンタン・ロビー、マチュー・スピノジ、ジャン=ポール・ルーヴ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

いかにもフレンチテイスト、「面白うて、やがて哀しき」という風情と「ビタースウィート」という
テイストをまとった、ある家族に焦点を当てた掌編ドラマ、という感じだ。★は6.5+α。

エスナール一家のおじいちゃんの葬儀から始まる。孤独になったおばあちゃんマドレーヌが主人公風。
そしておばあちゃん子にして孫で作家を目指している青年ロマン、その恋人になるノルマンディー地方の
女性教師、ロマンの父ミシェルは郵便局を定年退職したばかり。母は教師をしているが定年間近。2人の
関係は冷めそうでギクシャクしている。
父には2人の男兄弟がいる。そんな一家に起こるエピソードがとっちらかりそうで、なんとか纏めてあり
ラストシークエンスにおいての伏線の回収でカタルシスを得ている。ラストにかけての構成と盛り上げ方は
上手いのではないか。

おばちゃんは最愛の夫を亡くし、一人暮らし。しかしある日倒れてしまい、心配したミシェルは
おばあちゃんを老人ホームに入れることにする。納得して入ったホームだが友人が出来るわけでもなく
孫のロマンは頻繁に訪ねてくれたけど、自分の居場所ではないと考えていた。

ミシェルはメニューを1時間眺めていても決まらないグズで、そのあたり長年連れ添った妻との関係は
ギクシャクしている。ロマンはホテルの夜勤のバイトを始めていた。そんなある日、おばあちゃんんが
ホームから消えてしまった。慌てた一家はほうぼう探し回るが、長男ミシェルは自分がホームに入れた
からだ、自分が殺したんだ、と悲観する。もうおばあちゃんが生きていないような思い込みぶり。

冷静な孫のロマンはおばあちゃんは思いでの地に行ったに違いなと確信し、クルマでノルマンディーに
出かける。そこの案内所では自殺しにきた青年か、とかからかわれたが、おばあちゃんは母校の小学校を
訪ねていたのだった。そしてそこで、先日の葬式でちら見して気に入っていた女性が教師として勤めて
いることも判った。教師のアイデアで、小学校のこどもたちと触れ合い、みんなに自分の画まで描いて貰い
とてもいい時間を過ごせたおばあちゃん、だがホテルに帰ると、再び倒れてしまった。救急車で病院に
運ばれるが昏睡状態。ロマンは旅の本を読み聞かせてみるが・・・。

ラストシーンは映画冒頭の葬式シーンと同じ。しかし埋葬されるのはおばあちゃんだ。司祭曰く、
「人間は埋葬されるために生まれてくるのではない」「愛とは与えるものなのだ」とおばあちゃんが
生涯を通してみんなを愛したことを説いた。そこに遅れてきたノルマンディーの女性教師。すでに
ロマンとの間に愛が芽生えていた。

まさに「Life goes on」。三世代のふとした人生のドラマには含蓄のあるコトバも多く(ガソリン
スタンドの店員や司祭)一家三世代の愛のありようが心温まるストーリーで語られている。ラストの
閉じられたおばあちゃんの墓石からの引きながらの俯瞰パーンで、墓場から2人して仲良く去っていく
孫のロマンと恋人の女性教師の姿を捉えたシーンは非常に多くを物語る良いカットだった。
「流転する人生」・・・。短い時間であるが、フランス映画らしいウィットに富み人生の実相を
見る人に考えさせる良作といえよう。
監督で映画に出演もしているジャン=ポール・ルーヴはハフポストのインタビューで「この映画は
なにかを伝えたいという明確なものは無くて、今の社会はこうなんだ、ということを観てもらいた
かった」と応えている。そのように出来上がったと思う。三世代一家の事象から人生を考えさせる
ような仕上がりになっている。
主役のおばあちゃんマドレーヌを演じたのはフランスの国民的歌手アニー・コルディ。美しい
ノルマンディーの風景とともに流れるシャルル・トレネの「残されし恋には」が、効果的に
使われている。ラストシーンでは胸がキュンとなるだろう。

<IMDb=★6.5>
<Rotten Tomatoes:Tomatometer= --  Audience Score=56%>
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<ストーリー>
パリとノルマンディを舞台に、夫に先立たれたおばあちゃんが、それぞれに悩みを抱えた息子と孫と
織りなす家族3世代の物語を心温まるタッチで綴る人生ドラマ。
主演はフランスの国民的歌手のアニー・コルディ。共演に「仕立て屋の恋」のミシェル・ブラン、
TVを中心に活躍する若手マチュー・スピノジ。
監督は俳優としても活躍し、これが監督長編3作目のジャン=ポール・ルーヴ。

 最愛の夫をなくしたばかりのマドレーヌは、パリの小さなアパルトマンでひとり静かに暮らしていた。
3人の息子を育て上げ、それなりに充実した人生を過ごしてきたマドレーヌ。今も、大学生の孫ロマンの
ことが可愛くてしょうがない。
そんなある日、マドレーヌが突然倒れて入院する事態に。大事には至らなかったものの、ひとり暮らしは
心配と、息子のミシェルは兄弟と相談してマドレーヌを老人ホームに入居させることに。退屈なホーム生活に
不満が募るマドレーヌ。ある時、足繁く通ってくれるロマンから、息子たちがアパルトマンを勝手に売り払って
いたこと知り憤慨、ホームから姿を消してしまう。そこでロマンは彼女を探す旅に出るのだったが…。
(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354248こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-02-13 23:10 | 洋画=あ行 | Comments(0)