関ヶ原

●「関ヶ原」
2017 日本 東宝映画、ジャンゴフィルム 149分
監督・脚本:原田眞人
出演:岡田准一、役所広司、平岳大、有村架純、東出昌大、北村有起哉、西岡徳馬、松山ケンイチ他
e0040938_21481649.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想:ネタバレに近い感想です。ご注意ください。出来ればご覧になってからお読みください
原作既読。原田作品は前作の「日本のいちばん長い日」の出来が良かったのでキャストも含め
期待してシネコンへ。結構入ってましたね。

で、2時間半の上映が終わって、館内の人に訊きたかった。「分かりました?」と。
これは難しい映画だ。いきなり合戦前夜の全体像を要求される。「蔚山の戦い」と言われて観客の
何人が分かるでしょう?それに朝鮮出兵、秀次事件、前田利長事件、会津征伐など、関ヶ原の
背景になる重要な事柄の知識が要求される。なので、早口での会話は時として何を言っているのか
分からないときがあった。さらに、どちらが西軍でだれが東軍なのかも、相当わかりづらい。そもそも
秀吉恩顧の大名たちだから余計にだ。前作でもそうだが、事象よりも人間にスポットを当てて映画の
面白みを描いて見せる原田監督としては、確かに石田三成という人物は「仁」「義」に篤い忠義の
臣であり、彼の「義」と家康の「利」の戦いに負けた、ということは浮かび上がっては来たが、
周辺の事情が分かりづらかっただけに残念だった。島左近、大谷吉継との友情は分かったけど、
大谷がなんであんなカッコをして神輿に担がれて戦をしていたか、についても説明はない。

私が一番人として魅力があるな、と思ったのが小早川秀秋(東出昌大)。合戦時には15000の
大軍を要して西に付き松尾山に陣取ったが、結局東に寝返り、善戦していた島、大谷部隊を
襲い、合戦の趨勢を決めてしまった、Mr.裏切りだ。これも映画では描かれないが、小早川は
北政所(高台院)の甥っ子であり、かつては木下、羽柴を名乗っていたばりばりの豊臣親族だ。
だが、淀君に秀頼が生まれると秀吉いとたんに冷遇され、岡山小早川家に養子に出される。
その後もすったもんだあり、三成に恨みを持つ状況もあったのだが、血は豊臣。
 島左近の息子が決死の覚悟で小早川本陣を訪れ、兵を動かしてほしいと懇願するも、本人は
三成側に兵を動かしたかったが、家康に送り込まれた家老らに押しとどめられ、自らの意思とは
逆の動きをすることになってしまう。(あくまで映画での話)秀秋、この時18歳。彼はその2年後、
20歳で亡くなる。大谷吉継の呪いに狂死した、ともいわれる。

閑話休題。本作、まず良い点。映像。合戦のリアリズムを含め、画作りは秀逸。東本願寺や
彦根城といった国宝が舞台を貸すという画面。カット、編集も含め全編秀逸。特に金と時間を
掛けて(CGの力も借りたけど)作られた合戦シーンは迫力満点だ。
加えて、やはり上手い岡田准一、役所広司。これに味わいを加える島左近役の平岳大、大谷吉継役の
大場泰正らの脇を固める渋いキャスティング。これも素晴らしい。女性陣の配置も単なる彩りだけ
ではなく、きちんとした役が振られ、映画を面白くしていた。秀吉役の滝藤賢一の名古屋弁は
パーフェクト。北政所のキムラ緑子のほうはいまいち。

一方、残念だった点。原田監督自身、関が原を製作するに当たり、最初は島左近を、次には小早川秀秋を
さらに島津義弘を、主人公にしようと迷っていたように、この時代において人物を描くのは誠に難しい。
当時の時代背景を説明しようとすると、人物説明を含め長い長い前説が必要になるが、そうもいかず、
原田監督自身、その端折り方をどうするか悩んだのではないか。結果、相当予習をしていかないと全体像が
分からないことになった。本作は合戦を時系列的に追うのではなく、あくまでも石田三成の人生を
描くのが目的であるから、思い切って端折ったのだろうけど、やはなぜあの時代石田三成はああいう生き方を
したのか、を浮かび上がらせるのにはチカラが弱いと感じた。ただ、この題材を映画にした原田監督には
敬意を評したい。

本作を一度観ただけで、全体を把握出来て、三成の人生に深く思いを致した人がいたら、私は心から尊敬申し
上げる。そういう人には極めて面白い映画なんだろうなあ。かなり予習していったのに、映画の良さの半分も
分からなかったかも。
e0040938_21482582.jpg
<ストーリー>

戦国史上最大の合戦である関ヶ原の戦いを描いた司馬遼太郎のベストセラー小説を岡田准一、役所広司ら実力派

俳優の共演で映画化した時代劇。正義で世の中を変えようとする石田三成や、天下取りの野望を抱く徳川家康ら、

武将たちそれぞれの思惑がつづられる。監督は人間ドラマの描写に定評のある原田眞人。


1600年10月21日、長く混迷を極めた戦国時代を終わらせ、その後の日本の支配者を決定づけた戦国史上最大の

天下分け目の決戦“関ヶ原の戦い”は、たった6時間で決着した。石田三成(岡田准一)は豊臣家への忠義から

立ち上がり、圧倒的に有利と言われた西軍を率いて合戦に挑んだ。しかし、権力に燃え、天下取りの私欲の

ために戦う徳川家康(役所広司)に敗北を喫する。

そして、命懸けで三成を守り、愛し続けた忍び・初芽(有村架純)との許されない淡い恋の行方は……。





by jazzyoba0083 | 2017-08-28 14:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

ヴィジット The Visit

●「ヴィジット The Visit」
2015 アメリカ Blinding Edge Pictures,Blumhouse Productions.94min.
監督・脚本・(共同)製作:M・ナイト・シャマラン
出演:オリヴィア・デヨング、エド・オクセンボウルド、ディアナ・ダナガン、ピーター・マクロビー他
e0040938_11325645.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
面白かったけど、今更のPOV、既視感あるオチ、ナイト・シャマランの作と期待が大きすぎたのか、
やや肩透かしを食った感じだ。ストーリーを単純化させ、恐怖を浮かび上がらせるのは彼の脚本の
旨さ、そこは評価するし、使い古したカットやデカイ音楽で脅す、という手法もないので、それは
今時のホラーを感じるが。一番の面白さは、弟のラップとじいさんばあさんの得も言えない恐怖の
対比。これはコメディか?ラストのおまけも含め、そう感じてしまう。まあ、そこら辺に
ナイト・シャマランのニヤッとした顔が浮かんできそうだが。ただのPOVホラーじゃないからね、という。
さすがだな、と思うのは、オチまでに至る、作り込みの丁寧さ。姉弟の行動でのミスリードが
効いている。

よく観ていると、なんとなくオチも想像できるし、伏線の張り方も上手いと思う。それに個人的には
ほとんど知らない俳優さん、というのが恐怖を倍加する要素であった。

夜、刃物、物音、物陰、異常な行動、見てはいけない地下室、しばらくあっていない祖父母、この手の
恐怖映画の要素は全部入っていて、それをどう料理しているかが見どころとなろう。
ネタバラシはしません。短い映画なので、暇があったら見てみてください。標準以上のサスペンスホラー
にはなっていると思います。
e0040938_11332651.jpg
<ストーリー>
田舎の母親の実家で休暇を過ごすことになった姉弟の恐怖体験を映し出す、『シックス・センス』の
鬼才M・ナイト・シャマラン監督によるサスペンス・スリラー。祖父母の家で3つの奇妙な約束をさせられた
姉弟が、約束を破った事でその家に隠された秘密を知っていく過程が、複雑に張巡らされた伏線とともに
描かれる。

休暇を利用して祖父母のいるペンシルバニア州メイソンビルへと出発した姉弟は、都会の喧騒から離れて、
田舎での楽しい1週間を過ごす予定だった。優しい祖父と料理上手な祖母に温かく迎え入れられ、母親の
実家へと到着した二人。だが祖父母に出会えた喜びも束の間、就寝時、完璧な時間を過ご(<すためにと奇妙な
“3つの約束”が伝えられる。第一の約束:楽しい時間を過ごすこと。第二の約束:好きなものは遠慮なく
食べること。第三の約束:夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと……。
そして、夜9時半を過ぎ、二人は異様な気配で目が覚める。部屋の外から聞こえるただ事ではないその物音に
恐怖を覚えた彼らは、絶対に開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまう……。(Movie Walker)




by jazzyoba0083 | 2017-08-27 22:40 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「ワンダーウーマン Wonder Woman」
2017 アメリカ Warner Bros.141min.
監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト、ダニー・ヒューストン、デヴィッド・シューリス他
e0040938_21084481.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ワンダーウーマンを演じたガル・ガドット、気に入った! この映画を観た多くのメンズは、彼女に
やられちゃったんじゃないかな。彼女、この役のために生まれてきたのではないか、と思えるほど
ハマっている。このところ、MARVELやDCものの実写映画は、やたら複雑になり過ぎて、「オモシロク
ナ~い」とい感じを受けていたのだが、前日鑑賞した「スパイダーマン ホーム・カミング」なども
そうだが、話を単純にし、そもそもコミックが持っていた、プリミティブなワクワク感、
分かり易い勧善懲悪、喝采を叫びたいスーパーパワー(武器)などに回帰してきた感じがする。

バットマンとスーパーマンを戦わせてどうするの?というところまで行っていたのだ。今回のDCは
満を持して、かつてコミック誌でスーパーマンやバットマンにワクワクしてた少年たちも喜ぶ
分かりやすい出来になっている。敵味方も分かりやすいし、見方の友人たちもわかりやすく良い奴だし。
映画としては長いけど、長さは全く感じなかった。それこそ派手な武器やVFXが繰り広げられるわけでも
ないし、アクションはあくまでワンダーウーマンの体力だ。舞台となる時代が第一次世界大戦というのも
わかりやすさにプラスしていよう。まだまだ戦争武器としては戦車や複葉機の登場となるような時代だから
ワンダーウーマンの活躍が目立つというか光る。 ワンダーウーマンが一義的に防ぐのはマスタードガス
である。非常に現実的。だが、ラスボス、アレスは不思議なガスを吸うと超人化するのだが、それとて
可愛いものだ。ワンダーウーマンの武器といえば、剣と腕をクロスして放出するかめはめ波みたいな波動だけ
もちろん超人的なジャンプなどはお手の物だが、空をとぶわけではない。そんなプリミティブさと女性という
キャラクターが、男の子としては応援したくなるし、ドキドキもするわけだ。女性監督、そのあたりの動きの
計算、仕草の計算はしているなあ、と思う。
ラストシーンにおや??と思う人も多いかもしれないなあ。時代がイキナリ100年飛んで現代になるんだ
から。

さて、主役を演じたガル・ガドットという女優さん、私は寡聞にして知らなかった。主にテレビ畑の人
なんだね。これからが楽しみ。でもワンダーウーマンのイメージが付きすぎても、将来困るだろうな。
DCも、MARVELのような同一世界にヒーローが同居するタイプの映画を作っていくんだそうだが、是非、
「分かりやすく、単純にワクワクドキドキするような」作品をお願いしたいものです。
e0040938_21085319.jpg
<ストーリー>
DCコミックの人気キャラクターで、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』で華々しいデビューを
飾ったワンダーウーマン。彼女がひとりの戦士として成長していくさまを描くSFアクション。ミス・イスラエルにも
選ばれた経験を持つガル・ガドットが『バットマン〜』に引き続き主人公を演じ、激しいアクションも披露する。

女性だけが暮らすパラダイス島で、プリンセスとして生まれ育ったダイアナ(ガル・ガドット)は、好奇心旺盛だが
外の世界を一切知らず、男性を見たことすらなかった。
そんなある日、島に漂着したアメリカ人パイロットのスティーブ(クリス・パイン)を助けたことで、彼女の運命が
大きく動き出す。外の世界で大きな戦争が起きていることを知った彼女は、自身の力で世界を救いたいと強く願い、
二度と戻れないと知りながらスティーブが暮らすロンドンへ行くことを決意。
やがて、ダイアナは、無敵のスーパーヒーロー“ワンダーウーマン”としてのパワーを開花させていく……。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.8>
<Rotten Tomatoes:Tomatometer:92% Audience Score:90%>



by jazzyoba0083 | 2017-08-26 11:55 | 洋画=ら~わ行 | Trackback(1) | Comments(0)

●「コンカッション Concussion」
2015 アメリカ Village Roadshow Pictures,Scott Free Productions,and more.123min.
監督・脚本:ピーター・ランズデマン
出演:ウィル・スミス、アレック・ボールドウィン、ググ・ンバーター=ロー、アーリス・ハワード他
e0040938_21252909.jpeg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
アメフトは全く分からないが、アメリカでの人気っぷりはただならぬものがあることは分かっている。
そのアメフトの世界で、コンカッション=脳震盪から来る鬱や社会不適合などの病気を見つけ、NFLと
対決するナイジェリア国籍の検死官・解剖医の奮闘の実話だ。最近いい映画に恵まれていないと感じていた
ウィル・スミスだが、ここでは実話という下駄は履かせてもらっているけど、なかなかいい。何がいいか、
というと、「慢性外傷性脳症」(これは主人公の命名)という医学的に光る発見をしていながら、(苦労も
とても多いにもかかわらず)飄々とし、でも、芯が通っている男を肩の力を抜いていい演技で描いている
からだ。もちろん演出の巧さもあろう。

オマル医師は、かつての名センターとして人気者だったピッツバーグ・スティーラーズのマイクの解剖を
担当する。彼の死に至る行動から、彼の脳に何か原因があるのではないか、と仮説を立て、他のケースを
当たり始める。すると、アメフトの世界では、鬱や奇怪な行動、自殺が異常に多いことが分かってきた。
何人かの解剖を経て、上司の協力も得て、論文を発表する。激しいタックルにより脳に外傷性のダメージを
負い、これが精神的な不具合を惹起し、記憶障害、異常行動、自殺などの異常行動に走らせる、というものだ。

当然、NFLからの妨害、嫌がらせを受ける。NFLもおざなりの脳震盪対策委員会を開き、因果を否定して
みせているのだった。だがそこに出ている医師はリューマチが専門でとても選手の脳のことを論じられる
レベルではなかったのだ。それでも次第に理解者を増やし、ついに元名選手にしてNFLの幹部が不可解な
自殺をするに及び、NYタイムズが報道することとなり、NFLは再度脳震盪対策委員会を開催する。だが
オマルは国籍を持たないので出席が出来ない。会議はウヤムヤに終わり、更にNFLはFBIなど国家権力を
動かしオマルらを潰しにかかる。

だが、更に選手の自殺が発生、ついに彼の主張が公になるところとなっり、多くの選手達が原告となり
裁判も起こされた。国はオマルに国家の検死官にならないか、とさそうが彼はそれを断り田舎町の
検死官であり続けたのだった。彼はアメリカの市民権は獲得した。

このメインの物語に、ケニアからやってきた看護師の女性プレマとの協力、愛情、結婚、妨害による
流産、引っ越しなど横軸が絡まり、事実の重層的深みもあり、なかなか魅せる。彼を支えるアレック・
ボールドウィンらの仲間たちとの友情や信頼関係も胸に響く。アメフトが分からない私だが、人間の
脳は60Gまでしか耐えられないという。アメフトのタックルは100Gに達するという。いくらヘルメットを
被っていても、終始激しい脳震盪にさらされていることは容易に想像が出来る。

この事件はまだ終わっていないのではないか。NFLにしてみれば、嫌な映画が作られたなあ、という
ことなんだろう。
e0040938_21255840.jpg
<ストーリー>
アメリカン・フットボールの選手が激しいタックルの影響で発症するCTE(慢性外傷性脳症)の恐ろしさを訴えた医師
ベネット・オマルの実話を、ウィル・スミス主演で映画化した人間ドラマ。NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)
という巨大組織やそのファンを敵に回してでも、信念を曲げずに真実を追求し続けた男の姿を描く。

ナイジェリアからアメリカに夢を抱いてやってきた移民のベネット・オマル(ウィル・スミス)は、検死官も
務める真面目で誠実な医師。2005年、アメリカンフットボールのプロリーグNFLを引退した元スティーラーズの
花形選手マイク・ウェブスター(デヴィッド・モース)が変死する事件が発生。
その遺体解剖に携わったオマルは、頭部への激しいタックルが原因となる脳の病気“CTE(=慢性外傷性脳症)” を
発見する。これに基づき、独自の論文を発表したものの、,熱狂的ファンを持つ国民的スポーツにメスに入れた
その内容をNFLは全面否定。絶大な権力で、オマルとその周辺に圧力をかけていく。
さらに、全米のアメフトファンもオマルを敵視。孤立無援の中、人種差別や偏見と闘いながら、一歩も譲らずに
真実を求めてNFLに立ち向かうオマルだったが……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:60% Audience Score:74%>




by jazzyoba0083 | 2017-08-25 23:10 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

血と砂

●「血と砂」
1965 日本 東宝映画 132分
監督・脚本:岡本喜八 音楽:佐藤勝
出演:三船敏郎、仲代達矢、伊藤雄之助 佐藤允、団令子、伊吹徹、名古屋章、長谷川弘ほか
e0040938_11031174.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
岡本喜八の戦争映画3本目の鑑賞となる。だいたい彼の戦争映画の作風と、作品に通底する
感性みたいなものが、ほの見えてきたようか感じである。タイトルから予想も出来ない内容で、
音大生で編成された軍楽隊の戦争参加を通して、岡本一流の戦争感(虚無感、滑稽感、バカバカしさ、
非痛感など)が上手く表現することに成功している。そしてエンディングの衝撃。作劇全体が
岡本イズムに溢れている。「人間愛と戦争のバカバカしさ」である。

現実、軍楽隊が「聖者の行進」を演じながら満州を戦うなんてことは無いのだが、
登場人物のキャラクターも含め、戦争をアイロニカルに表現する岡本の独特のタッチがある。
結構長い作品だが、これも岡本の強さであるカット、編集、そして佐藤の音楽と、飽きることはない。

三船、仲代という当時の東宝を代表する男優を据え、骨格のしっかりした映画となっている。
「古参兵が二等兵の頬をスリッパで理不尽に殴り倒す」という分かりやすい表現を使わず、戦争の
理不尽さ、アホさ加減を演出させると、岡本の右に出るものはないのだと思う。

三船、仲代ともにいい。それに紅一点団令子の物語上の存在も光る。音楽隊の少年たちの悲哀が、滑稽な
だけに余計にせり上がって見えてくる。岡本演出の優れたところだろう。
クセのある映画なので、見る人を選ぶかもしれない。でも、日本映画にオリジナルの存在感を
示したエバーグリーンの戦争映画の一つであることは確かだ。WOWOWの放映に感謝したい。
e0040938_11031740.jpg
<ストーリー>
昭和二十年の北支戦線。陽家宅の独歩大隊に、小杉曹長と軍楽隊の少年十三人、それに小杉にほれている
慰安婦お春がやってきた。小杉は朔県の師団指令部で少年軍楽隊を最前線に送るのを反対して、転属を
命じられたのだ。独歩大隊には、小杉の弟小原見習士官がいたが、小杉のつく直前に銃殺されていた。

通称ヤキバ砦の守備隊を指揮していた小原は、八路軍の猛攻にあい、彼を除いた全員が戦死し、連絡に
戻った小原は、敵前逃亡の罪で銃殺されたのだ。怒った小杉は隊長を殴りとばし、根津憲兵曹長に逮捕
されてしまった。営倉には、戦うことがいやで、三年も入っているという志賀一等兵や見習士官殺しの
炊事係犬山一等兵などがいた。そのころ、少年兵たちは、楽器をとりあげられ、一般兵として毎日軍歌を
歌わせられていた。

一方お春は、小杉の身を案じて、寝物語りに隊長に泣きこんで、小杉の命乞いをしていた。そのかい
あってか、数日後小杉に出動命令が下った。少年兵を指揮してヤキバ砦を奪い返せというのだ。

それからというもの、小杉の指揮のもとに、少年兵たちは猛烈な戦闘訓練に明けくれた。そして数日後、
お春に送られて出発した小杉隊は、熾烈な戦闘の末、見事ヤキバ砦をとり返した。ところが、
それから数日後、日本軍のトラックに乗った敵のゲリラ隊のために、砦は、また多くの犠牲をだしてしまった。
小杉は、少年兵を元気づけようと、お春に少年たちの筆下しをたのんだ。これに感激した少年兵たちは
今度は、敵のゲリラ隊に勇敢に立ちむかった。
しかし敵の潮のような人海戦術にはいかんともしがたく小杉をはじめとするヤキバ砦の隊員は佐久間大尉の
指揮する援軍をまたずに、全員うち死にした。日本軍の中で倒れた敵の少年ゲリラの手には、終戦を告げる
伝単がしっかりとにぎられていた。時にして、八月十五日の朝のことであった。(Movie Walker)




by jazzyoba0083 | 2017-08-23 23:20 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

●「スター・トレック BEYOND Star Trek Beyond」
2014 アメリカ Paramount Pictures,Sky Dance,Bad Robot,and more.123min.
監督・(共同)製作:ジャスティン・リン (共同)脚本:サイモン・ペッグ
出演:クリス・パイン、ザカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、カール・アーバン、アントン・イェルチン他
e0040938_13234688.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
1979年にスタートした劇場版「スター・トレック」もすでに13作目となった。オリジナルに対し
話のどこかで関連性を持たせながらも、全く新しいクリス・パインシリーズになってからもも3作目。
今回はJ・J・エイブラムズはプロデューサー側にまわり、監督はジャスティン・リンに変更された。

なんか久しぶりで本作シリーズを観たので、宇宙の勢力分野はまったく分からなくなっているのだが
本作は、前作までのことを知らなくてもストーリーを追うことが出来る。クリンゴンとか出てこないから。
全く新しい話として観ることができる、ということ。これまでを知っている人には関連性がやや薄いかも。

先日のスパイダーマンもそうだったけど、この手の映画の肝の一つに分かりやすい、ということがある。
その点本作は、敵対するグループ(実はかつての仲間だったりするのは既視感がりだが)と、
エンタープライズの一行との対決、これに、今後は仲間に入ること間違いないソフィア・ブテラ(メイク
していので誰だかわからない。性格のいい娘なので、もう少しキャラや能力をクローズアップしても
良かったんじゃないかなあ。

エンタープライズ一行に助けを求める女性(だと思う)、彼女の懇願で、一路助けに向かうが、
実は、そこにはクラールという一族が待ち構えていたのだ。助けを乞うた女性は騙すつもりでは
なかったのだが、自分の星を助けてほしいと。このクラールの舞台の、まさに雲霞の如くの攻撃船と
強力な武器で、エンタープライズはかつて無いほどのダメージを負うことになる。機体がバラバラに
なったため、脱出ポッドでクラールの星に降りるのだが、敵の攻撃はなかなかタフであり、さらに
中継点の大型宇宙基地「ヨークタウン」に攻撃に向かう。しかも、太古の宇宙で、2つ合わさると
とてつもない災を起こすというので、先祖が2つに割って宇宙にほかった石を彼らは手にしてしまったのだ! 

この敵の親分というのが、かつて連盟に打ち捨てられた将軍の進化した姿だったのだ。悪さ百倍!って
やつだ。まあ、正義は最後には勝つわけだが、全体として、良いもんと悪もんの位置づけ、悪もんの
正体、スポックとウフーラの恋の行方、全壊したエンタープライズの再建、など、手堅くまとめ、
3Dだったら迫力あるだろうな、というシーンもあって、平均以上の出来ではあった。サイモン・ペッグが
脚本に入って、TV版で観ていたユーモアやペーソスが効いたのではないか。
ただ、分かりやすいが故に、ストーリーにおける緊張感、という点については凡庸のそしりは出るだろうな。
更にこの映画の完成を待たずて、宇宙の彼方に旅立った、レナード・ニモイとアントン・イェルチンに
捧げられている。
さて、次作チェコフはどうするんだろう。
e0040938_13241667.jpg
<ストーリー>
往年の大ヒット・ドラマ・シリーズを「M:i:III」「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の
J・J・エイブラムス監督がリブートしたSFアドベンチャー大作のシリーズ第3弾。深宇宙へ
向けて航行を続けていたエンタープライズ号が惑星連邦を否定する新たな敵と遭遇、連邦の理念を
守るべく過酷な戦いに身を投じるカークたちクルーの運命を描く。
出演はクリス・パイン、ザカリー・クイント、ゾーイ・サルダナらレギュラー・メンバーに加え、
新たにイドリス・エルバ、ソフィア・ブテラが参加。監督は前2作のJ・J・エイブラムスに代わり、
「ワイルド・スピード EURO MISSION」のジャスティン・リンが務める。
また本作は、長年スポック役としてファンに愛され、2015年に惜しまれつつこの世を去った
レナード・ニモイと、本作にもチェコフ役で出演し、全米公開直前に事故で急死した
アントン・イェルチンの2人に捧げられている。

 5年におよぶ宇宙探査へと旅立ったエンタープライズ号。それから3年あまりが経ち、ジェームス・
T・カークの中には艦長という役目に対する迷いが生じていた。一方、副艦長のスポックもまた別の
理由から迷いを抱えていた。そんな中、宇宙基地ヨークタウンに寄航したエンタープライズ号一行は、
そこで未知の宇宙船に乗る女性から仲間の救助を求めるメッセージを受け取り、すぐさま救出へと
向かう。しかしそれは巧妙な罠で、エンタープライズ号はクラールという異星人からの襲撃を受け
不時着を余儀なくされ、クルーたちもバラバラになってしまうのだったが…。((allcinema)

<IMDb=★7.1>
<Rottten Tomatoes: Tomatometer: 84% Audience Score:80% >







by jazzyoba0083 | 2017-08-22 23:15 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「ベニスに死す Morte a Venezia」
1971 イタリア Alfa Cinamatografica,Warner Bros.119min.
監督・製作・(共同)脚本:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン、シルヴァーナ・マンガーノ、ロモロ・ヴァリ他
e0040938_17361603.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
私のここ12年間に約2300本の映画を観てきた私ですが、食わず嫌いの監督や作品というもの、
あるいは全く興味のない範疇の作品は、無理してまで観ることもなかろう、ということで
観てこなかった作品もたっくさんあります。その中の筆頭がイタリア人巨匠と呼ばれる諸監督に
よる作品群です。
つまり、ヴィスコンティも、フェリーニも、アントニオーニも、ベルトリッチもデ・シーカも、
パゾリーニも、ベニーニも、その作品を観たことがないのです。いけませんかね?

おそらくは先入観だと思います。彼らの映画というのは「高踏的、抽象的、形而上的」という
印象が何かを観た折についちゃったんだろうと思います。何かウラミがあって、ということでは
もちろんありませんし、現代のイタリア映画は観ます。食わず嫌いなのは「名匠・巨匠」と云われ
「なんだ、それを観てなくちゃ映画を語る資格はないよ」と云われそうな作品です。

というわけで、ヴィスコンティ。先日「夏の嵐」を30分で脱落。WOWOWで放映して録画して
あった本作も、実は奥様が観たいと言って、録ってあったものを間違えて観始めてしまったのです。

もちろん、トマス・マンの原作による本作の名前は知っていましたが、内容や時代設定など全く
予備知識なしで観たわけです。冒頭、ベニスに船で近づいてくるボガード(何を職業にしている
か不明)。船頭にああだこうだと云われ、着岸してからも、何を言いたいドラマがどういう風に
展開するんだろう、という具合に、話が見えてこない。

後からネットでいろんな感想や評伝を観たのですが、私にとってこの手のこのくらい評価が
定まった映画は、内容をある程度知っておいたほうがいいな、という感想をまずもちました。

主人公アッシェンバッハ(ボカード)は作曲家なんですね。(マンの原作ではグスタフ・マーラーを
イメージした前衛作曲家らしい)作品中終始自信なさげで、音楽生活に煮詰まっていたのかもしれま
せん。そんな彼が静養のためにイタリアはヴェニスにやってきます。時代は第一次世界大戦が始まる
やは前、という設定です。

あとはもう、終始、アッシェンバッハが当地で見初めた美少年タジオへの思いを如何せん!?という
ストーリー。おもったより後半戦で話が動いたので、面白くなってきました。終始流れるマーラーの
交響曲第5番第4楽章「アダージェット」の調べと、狂気にも似たアッシェンバッハの美少年タジオへの
恋慕。「少年愛」と髪を染め、口紅を塗り、白塗りにして、タジオへの歓心を買おうとする老作曲家。
もう、痛々しいというか、正気でないというか。だからといって何かを言ったり行動するまでには
ならない。大人としての自制であろうか。ラストシーンは長回しのおそらくファンの間では名シーンと
されるところであろうが、老作曲家からの思慕を知っているタジオのじらせっぷりも含めて、しまいにゃ、
笑えてきてしまうレベルだ。

タジオの「若さ」に何か優れている点が具体的に有るわけではないのだ。それなのに一方的にその
輝かしい若さに、恐らくは芸術家ならではの「憧憬」と、自らの絶望的な「老い」を引き比べ
悶々とするという・・。先日観た「ヤング・アダルト・ニューヨーク」や「ドリアングレイの肖像」に
通底する、芸術の永遠のテーマなのであろう。

タジオの美少年ぶりはさて置くとしても、ボカードの鬼気迫る演技。ほとんどピエロと化してもなお、
純粋に若さに憧れ続けるその「哀れ」。ベニスには当時疫病(コレラ)が蔓延していて、周りの友人らに
はベニスを去るようにいうのだが、ついには自分も罹患してしまい、あの浜辺で絶命するわけだ。
その瞬間もタジオは夕日の中で煌めいていた・・・。

こういうのがヴィスコンティの作風なのでしょうか。いささかタルい感じの流れではあったが、確かに
アッシェンバッハの存在感は圧倒的であった。音楽と映像がここまでマッチした作品もあまり知らない。
ワンカットワンカットが計算されつくした画角、意味深いズーミング、そしてプロダクションデザイン。
好きか、と言われれば、好きだとは言えない映画の有り様では有るが、「映画芸術」としての不朽の
名作、であろうことは認めなくてはなるまい。「ルードウィヒ/神々の黄昏」「地獄に落ちた勇者ども」
あたりは観てもいいかもしれない、と思うに至りましたけど。

1940年代から70年代のイタリア映画と私のソリの悪さ、とはどこに有るのだろうか。エンタテインメント性の
ありようがハリウッドとは全然違うから、だろうか。あまりにも「高踏的」「芸術世界」だから、
だろうか。描かれる世界が「貴族的」とかそういうことではなく。相性の悪さ、というのはあるんじゃないか
なあ。ヴィスコンティの良さが分からないって、本当の映画見ではないぜ、と言われてしまうと身も蓋も
ないのですけど。
e0040938_17364782.png
e0040938_17371760.jpg
<ストーリー:最期まで触れています>
純粋な美の具現と思えるような美少年に、魅入られた芸術家の苦悶と恍惚を描いた作品。製作総指揮は
マリオ・ガッロ、製作・監督はルキノ・ヴィスコンティ、脚色はルキノ・ヴィスコンティとニコラ・
バダルッコ、原作はトーマス・マン、撮影はパスカリーノ・デ・サンティス、音楽はグスタフ・マーラー(
第3・第5交響曲より)、衣装デザインはピエロ・トージが各々担当。

1911年のヴェニス(ヴェネチア)。グスタフ・アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は休暇をとって、
ひとりこの水の都へきたドイツ有数の作曲家・指揮者である。蒸気船やゴンドラの上で、さんざん不愉快な
思いをしたアシェンバッハは避暑地、リドに着くと、すぐさまホテルに部屋をとった。

サロンには世界各国からの観光客があつまっていた。アシェンバッハは、ポーランド人の家族にふと目を
やった。母親(シルヴァーナ・マンガーノ)と三人の娘と家庭教師、そして、母親の隣りに座った一人の
少年タジオ(ビヨルン・アンデルセン)にアシェンバッハの目は奪われた。すき通るような美貌と、
なよやかな肢体、まるでギリシャの彫像を思わせるタジオに、アシェンバッハの胸はふるえた。
その時からアシェンバッハの魂は完全にタジオの虜になってしまった。

北アフリカから吹きよせる砂まじりの熱風シロッロによってヴェニスの空は鉛色によどみ、避暑に
きたはずのアシェンバッハの心は沈みがちで、しかも過去の忌わしい事を思い出し、一層憂鬱な気分に
落ち込んでいった。ますます募るタジオへの異常な憧憬と、相変らず、重苦しい天候に耐え切れなくなった
アシェンバッハは、ホテルを引き払おうと決意した。
出発の朝、朝食のテーブルでタジオを見た、アシェンバッハは決意が鈍った。だが駅に着いたアシェンバッハは、
自分の荷物が手違いでスイスに送られてしまったと知ると、すぐにホテルに引き返した。
勿論アシェンバッハの心は、タジオとの再会に、うちふるえていた。タジオへの思いをアシェンバッハはもう
隠そうともしなかった。タジオの行く所、いつも、アシェンバッハの熱い眼差しが後を追った。
タジオも、ようやく気づき始めているようだ。

しかしこの頃、ヴェニスには悪い疫病が瀰漫しはじめていたのだ。街のいたる所に、消毒液の匂いが立ちこめ、
病い冒され、黒く痩せ衰えた人々が、行き倒れになっていた。しかし、観光の街ヴェニスにとって旅行者に
疫病を知られることは死活問題であり、それをひた隠した。何とか聞き出したアシェンバッハはそれが、
真性コレラであることを知った。アシェンバッハは、それでも、ヴェニスを去ろうとはしなかった。
ただ、タジオの姿を追い求めて、さまよった。精神的な極度の疲労の中、肉体もコレラに冒されて、浜辺の
椅子にうずもれたアシェンバッハの目に、タジオのあの美しい肢体が映った。海のきらめきに溶け込んで
ゆくかの如き、タジオの姿にアシェンバッハの胸ははりさけんばかりとなり、最後の力をふり絞って差し
のべた手も、遂に力尽き、ガックリと息絶えた。(Movie Walker)

<IMDb=★7.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometr:76% Audience Score:82%>



by jazzyoba0083 | 2017-08-21 23:20 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「日本のいちばん長い日」(1967年・岡本喜八版)
1967 日本 東宝映画 157分
監督:岡本喜八  脚本:橋本忍 音楽:佐藤勝
出演:笠智衆、三船敏郎、山村聡、志村喬、黒沢年男、中丸忠雄、高橋悦史、宮口精二、戸浦六宏、
   小杉義男、井上孝雄、田崎潤、天本英世、久保明、藤木悠、加東大介、伊藤雄之助、松本幸四郎他
e0040938_11162684.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
岡本版は複数回の鑑賞となる。毎度のことながらすごい迫力だ。一昨年、原田版を観てこれはこれで
いい出来だな、という感想を持ち、機会があればまた岡本版も観てみたいな、と思っていた。
WOWOWでは終戦記念日あたりにこの手の映画を毎年何本か放送するのだが、今年はこれが含まれて
いたので録画して鑑賞した。

原田版の人物に焦点を当てたものと違い、時系列的なイベントを丁寧に追い、長い映画にはなったが
主に軍部の馬鹿さ加減が良く出ていたと感じた。当時の政治家の無能ぶりや、軍部の狂気は、定説に
なっているが、引くべきタイミングを逸して、広島、長崎を許した当時の日本の主導者のどうしようも
なさが、事実の中から浮かび上がって来る。

岡本は、「独立愚連隊」などの戦争ものでも分かる通り、先の大戦の体験から独特の戦争感を持ち、
アイロニカルに斬ったものを作っていたが、本作では半藤一利の原作に橋本忍の脚本を得て、
狂気に正面から向き合った作品となった。特に黒沢年男を中心に描かれる「本土決戦組」の狂気を
時間を追って丹念に描き、またカットのスピードやアングル、ズームの工夫など作画にもアイデアを
注入し、二時間半の8月14日から15日にかけてを一気に見せる。現状に至るまでの戦局は冒頭から
20分間くらいかけてナレーションで説明される。そしてタイトルというアイデアである。
さらに岡本版の優れているのは、狂気を描きつつも、映画というエンターテインメントに仕上がっている、
という点。しかつめらしく見終わるのではなく、面白かった、という気分を持てる点である。
東宝映画のオールスターが次から次へとたくさん出てくるが、個人的には歴史の流れとして整理されて
いるのか、ごちゃごちゃ感と言うものは全くなかった。ただ横浜警備隊長天本英世の絶叫が何言って
いるのか聞き取り辛かったが。

半藤一利が描いた陸軍省の実戦を知らない若手参謀の、一体開戦からいままで何を見てきたのか、
と頭を抱えたくなるような馬鹿さ加減には本当に今更呆れる。挙げ句の果てが「運を天に任せるのだ」と
いう、国民に取っては絶望的な精神論。これは横浜警備隊長の天本英世、(鈴木貫太郎首相を襲う)
終戦を知りつつ、部下に出撃を命ずる厚木航空隊の田崎潤や、伊藤雄之助らにも一貫として描かれる
精神論である。阿南陸相の自害も、まさに武士道の精神論そのもの。青年たちの本土決戦論を
「純粋なる愛国精神」などと、この期に及んで口にする首脳部がいた不幸を思う。ここまで狂気が
進むと「冷静な現状分析」などは出来なくなるのだろうか。

戦争という狂気に国ごと引きずり込まれると、こういう風になるのだなあ、と改めて感じる。
最近の世界を見ていても、非寛容で嘘をつき、精神論をぶち上げるという、トランプにせよ、欧州の
右翼にせよ、日本の右派にせよ、70年経っても、いや70年たって忘れたのか、同じような気配を
感じるのだ。マスコミが黙るというのも同じような流れだ。

本作を見ながらWikipediaで「宮中事件」を読んでいると、ほぼ同じ流れが書かれている、というか
こっちが半藤一利の著作をフォローしたんじゃないか、と思うほどだ。敢えてモノクロにしたトーンが
ドキュメント性をクローズアップさせて迫力にさらにチカラを加えていた。

おそらくこの岡本版、何年後かにはまた観るのだと思う。終戦に向けた日本の動きのスタンダードと
なり得たのだろう。
e0040938_11165690.jpg
<ストーリー>
大宅壮一名義(実際の著者は当時編集者だった半藤一利)で当時の政治家宮内省関係、元軍人や
民間人から収録した実話を編集した同名原作(文芸春秋社刊)を、「上意討ち -拝領妻始末-」の
橋本忍が脚色し、「殺人狂時代」の岡本喜八が監督した終戦秘話。撮影は「喜劇 駅前競馬」の村井博。

戦局が次第に不利になってきた日本に無条件降伏を求める米、英、中のポツダム宣言が、海外放送で
傍受されたのは昭和二十年七月二十六日午前六時である。直ちに翌二十七日、鈴木総理大臣官邸で
緊急閣議が開かれた。
その後、八月六日広島に原爆が投下され、八日にはソ連が参戦、日本の敗北は決定的な様相を呈して
いたのであった。第一回御前会議において天皇陛下が戦争終結を望まれ八月十日、政府は天皇の大権に
変更がないことを条件にポツダム宣言を受諾する旨、中立国のスイス、スウェーデンの日本公使に
通知した。
十二日、連合国側からの回答があったが、天皇の地位に関しての条項にSubject toとあるのが
隷属か制限の意味かで、政府首脳の間に大論争が行なわれ、阿南陸相はこの文章ではポツダム宣言は
受諾出来ないと反対した。
しかし、八月十四日の特別御前会議で、天皇は終戦を決意され、ここに正式にポツダム宣言受諾が
決ったのであった。この間、終戦反対派の陸軍青年将校はクーデター計画を練っていたが、阿南陸相は
御聖断が下った上は、それに従うべきであると悟した。
一方、終戦処理のために十四日午後一時、閣議が開かれ、陛下の終戦詔書を宮内省で録音し八月十五日
正午、全国にラジオ放送することが決った。午後十一時五十分、天皇陛下の録音は宮内省二階の
御政務室で行われた。

同じ頃、クーデター計画を押し進めている畑中少佐は近衛師団長森中将を説得していた。一方厚木
三〇二航空隊の司令小薗海軍大佐は徹底抗戦を部下に命令し、また東京警備軍横浜警備隊長佐々木大尉も
一個大隊を動かして首相や重臣を襲って降伏を阻止しようと計画していた。
降伏に反対するグループは、バラバラに動いていた。そんな騒ぎの中で八月十五日午前零時、房総沖の
敵機動部隊に攻撃を加えた中野少将は、少しも終戦を知らなかった。

その頃、畑中少佐は蹶起に反対した森師団長を殺害、玉音放送を中止すべく、その録音盤を奪おうと
捜索を開始し、宮城の占領と東京放送の占拠を企てたのである。しかし東部軍司令官田中大将は、
このクーデターの鎮圧にあたり、畑中の意図を挫いたのであった。
玉音放送の録音盤は徳川侍従の手によって皇后官事務官の軽金庫に納められていた。午前四時半、
佐々木大尉の率いる一隊は首相官邸、平沼枢密院議長邸を襲って放火し、五時半には阿南陸相が遺書を
残して壮烈な自刃を遂げるなど、終戦を迎えた日本は、歴史の転換に伴う数々の出来事の渦中にあった
のである。
そして、日本の敗戦を告げる玉音放送の予告が電波に乗ったのは、八月十五日午前七時二十一分のこと
であった。(Movie Walker)




by jazzyoba0083 | 2017-08-18 23:30 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

●「ヤング・アダルト・ニューヨーク While We're Young」
2014  アメリカ Scott Rudin Productions 95min.
監督・脚本・(共同)製作:ノア・バームバック
出演:ベン・スティラー、ナオミ・ワッツ、アダム・ドライバー、アマンダ・サイフリッド
   チャールズ・グローディン、アダム・ホロヴィッツ他
e0040938_12532524.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
自分の今、置かれている立場とか年齢によって、特に年齢によって見方というか感じ方が
変わる作品だと思う。私はちょうどこれからリタイア生活に入るところなので、いろいろと
考えさせられた。「若さ×老い」という縦軸と「ドキュメンタリー映画」という横軸を上手く
絡めて構成された脚本だが、いささかこねくり回し過ぎで、よくわからないところもあった。

ラストのナオミ・ワッツのセリフ「ついに悪魔が放たれたわね」、に対し、ベン・スティーラーの
「そうじゃないよ。彼が若いというだけのことさ」、と返す。そして目の間でスマホを自由自在に
操る1歳位の男の子に刮目する二人のアップ。ここに本作の主旨が現れていたのではないか。

高名なドキュメンタリー映画監督を父に持つコーネリア(ナオミ・ワッツ)、その夫ジョシュ
(スティラー)は、ドキュメンタリー映画監督・作家だが、もう長いこと自分の作品が出来ていない。
そんな折に、知り合ったジェイミー(アダム・ドライバー)とダービー(アマンダ・サイフリッド)の
カップル。ジョシュとコーネリアには子供がいない。2度の流産を経て子作りを諦めていた。
しかし、周囲の友人たちはみな子供をもち幸せそうだ。一方ジョシュは最近関節炎だの老眼だの、
体に老いも感じるようになってきた。44歳だ。

自由気ままに生きる若いジェイミーとダービーに、ジョシュは憧れや羨ましさを感じつつ、深く
付き合うようになる。同じドキュメンタリー映画監督を目指すジェイミーは、ジョシュ夫妻の
手助けもあり、なかなか良いドキュメンタリー映画を作れそうな気配だ。一方自分の作品は
編集しても6時間半もある。

しかし、若いジェイミーには成功野心が満々で、偶然出会った良いネタも実は仕組んでいたことが
明らかに。ジョシュは憤慨するが、妻も、妻の父である大監督も、そのことを大事なことと
捉えてくれない。立場がなくなるジョシュ。ヤラセをしたにもかかわらず、成功を収めていく
ジェイミー・・・・。

結局、ジョシュとコーネリアは何を求めていたのだろう。子供に幸せを感じることが出来ず、
若いカップルの自由な才能に憧れ、妻の父の大監督にコンプレックスを感じ、まったく自分自身を
見失っていたのだ。誰になりたい?自分自身にならなくてはならないだろう。人にはなれないし
なる必要もないのだ。さまざまなトラブルの中からやがてジョシュとコーネリアは答えを見つけて
いく。

1年後、二人は養子を迎えることにした。そして雑誌には成功したジェイミーのインタビューが掲載され
ていた。彼らは負けたのか?いやいや、「ジェイミーが若い」というだけのこと。ジョシュと
コーネリアには他人と比較できないオリジナルの幸せがあるのだ。それに気がつくまでに時間が
かかったけど。若いからずるいことが許される、というのではなく、若さの可能性に、年を取った
ものが真似しようとしても、ムリな点は有る、それより自分らが重ねて来た時間から得たもののほうを
大切にしたほうが幸せだよ、そんな感想を得た映画だった。スノッブな感じを受ける人は評価が低そう。

カイロ・レンのアダム・ドライバーが憎めない小狡い若手を上手く演じていた。総じてキャスティングは
成功していたと思う。アマンダ・サイフリッド、ひっぱりだこですね。
e0040938_12544320.jpg
<ストーリー>
ニューヨークのブルックリンに住む40代のドキュメンタリー映画監督ジョシュ(ベン・スティラー)と
映画プロデューサー、コーネリア(ナオミ・ワッツ)の夫婦は、子供は作らないと決めていた。
ジョシュは新作をなかなか完成させられずアートスクールで講師を務め、コーネリアは著名な監督である
父の作品ばかりを手がけており、行き詰まりを感じていた。

ある日、ジョシュはアートスクールの聴講生である監督志望のジェイミー(アダム・ドライバー)と
その妻ダービー(アマンダ・サイフリッド)に声をかけられる。ジェイミーの作品を見てほしいと
招待され彼らの家に赴くと、LPレコードやVHSテープ、レトロな雑貨、手作りの家具に囲まれており、
常識にとらわれずクリエイティブな生活をする二人に刺激を受ける。ユニークなセンスを持つ若いカップルと
交流していくうちに、ジョシュとコーネリアはエネルギーを取り戻していく。
しかし野心を秘めたジェイミーの映画作りに巻き込まれていき、思いがけない人生の選択を迫られる。
(Movie Walker)

<IMDb=★6.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:84% Audience Score:51%>



by jazzyoba0083 | 2017-08-17 23:00 | 洋画=や行 | Trackback | Comments(0)

●「アバンダンド 太平洋ディザスター119日 Abandoned」
2015 ニュー・ジーランド Making Movies.86min.
監督:ジョン・レイング
出演:ドミニク・パーセル、ピーター・フィーニー、オーウェン・ブラック、シボーン・マーシャル他
e0040938_13541635.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
1989年にニュー・ジーランドで実際に起こった海難事件を映画化したもの。驚くのは
119日、ほぼ4ヶ月漂流を乗り切った4人の心の強さと、地図で見るとよく分かるのだが、
トンガに向かって出港したピクトンという南島の、一番北島に近い港と漂着したグレート・
バリア島の距離だ。ほんとに目と鼻の先。これでは「彼らは嘘をついている」と言われるのも
分かるなあ、と思う。

さて、おそらく個人的にニュー・ジーランド映画を観たのは初めてだと思う。日本では劇場
未公開で、WOWOWの「ジャパン・プレミア」で鑑賞。事実に基づいているので、物語は
誠に「事実は小説より奇なり」で、面白いが、こうした「下駄を履いた」面白さを上手く短い
映画に仕立てた。面白く観た。

それぞれに曰くのある4人を載せて多胴船(3つの胴がある大型ヨット)「ローズノエル」号は
トンガに向けて出港した。先を急ぎたい船長は、嵐を利用して船足を早めようとしたが、大波を
食らって転覆。この手の船は一度ひっくり返ると立て直せない、が沈みもしないという特徴がある。
まずこの「沈まない」、出向して間もなくの遭難であったため食料と水はふんだんにある、救難
信号を発信する機械を積んでいる、などの安心材料があったから、4人はパニックにならずに済んだ
のかもしれない。だが、無線は遠距離が利かない、地元に航海ルートを報告していないなど
杜撰な面もあり、救助が難航する。4人の中にはヨットの操船が未経験のものもいた。
ラッキーだったのは調理師がいた事だ。なかなか救助されない中、彼らは雨水を集める方法、
魚を捕まえる方法、ヨットの備品であったプロパンガスを調理に利用出来るようにしたこと、など
困難な中にも工夫を加え、危機を乗り越えていく。

神を信じる船長と、病気を抱え気が荒く、すぐに喧嘩になるリックという男。4人の心は最初から
団結ていたわけではなく、喧嘩も絶えなかった。ただ、諦めなかった。空軍も出ての捜索も
上手く行かず、家族たちはほとんど諦めていた。

ところが119日目、海流の加減で、彼らは島を発見。そのまま潮流に乗り、上陸できたのだった。
彼らの生活を綴ったカメラも入れて上陸したが、体一つで上陸し船は置いてきたため、その後
船は波で大破、彼らが生活していた痕跡は失われてしまった。

上陸した4人は崖からすぐのところにある大きな無人の家に入り、さっそく冷蔵庫を漁り
調理師がディナーを作り、風呂に入ってワインを飲んだ。一晩寝たところに地元警察が
やってきて、4人は保護される。家族への電話。狂喜する家族・・・。

ハッピーエンドか、と思っていたらさにあらず。家族の元に帰って来た一行を待っていたのは
当局の捜査と、虚偽ではないか、という世間の厳しい目であった。119日間も、海の上で生活
出来るわけがない、というのだ。悲しいかな、証拠はすべて失っている。しかし、当局は大破し
沈没しているヨットを捜索し、点検した。すると4人の言っていることはどうやら間違いはなさそうだ、
ということになり、公式に運輸大臣が119日間の漂流を認めたのだった。
しかし、世間の目はあくまで冷たかった。喧嘩もし、いがみ合った4人だが、4人いたから危機を
乗り越えられた、というのは本心であった。脳腫瘍を患っていたリックは数ヶ月後死亡。あとの
3人もそれぞれの道を歩くことになるのだが、事件後別れてから二度と会うことはなかったという。
まあそんなもんかもしれない。

119日間の漂流という事実はどんな脚本よりも強いストーリーを持つ。故に事実を丁寧に描いて
いけば面白いものになるのはわかっているのだが、その点本作においては、4人のキャラクターや
漂流中の出来事、そして上陸後のこと、家族の様子などが90分未満の長さの中に的確に
配分されていて、良かったと思う。船長はその後も世界を航海し続けたようだが、この事故は
誠に「事実は小説より奇なり」であった。

邦題は、なんか投げやりのような付け方で、もう少し知恵がなかったか、という感じだ。
アバンダンとは英語の単語を勉強すると最初に出てくる単語で、「捨て去る」「遺棄する」とか
いう意味ですね。
e0040938_13544746.jpg
<ストーリー>
1989年に実際に起きた海難事故に着想を得たパニックドラマ。ニュージーランド
からトンガへ向けてヨットで航海に出た4人の男性が、大嵐に遭遇して4カ月近く
にもおよぶ漂流生活を続けるはめに陥った顛末を綴る。
当初は水も食料も十分にあり、心配した家族たちが捜索願いを出して遅かれ早かれ
救助が来るはず、と状況を楽観視していた彼らが、いつしか何もない大海原の中で
不安を募らせていく姿がスリリング。極限状態での人間ドラマが見どころだ。
主演はTVドラマ「プリズン・ブレイク」のD・パーセル。

たまには家族を忘れ、男だけの冒険旅行を楽しもうと、ニュージーランドから
トンガまでのヨット航海に出発したジムたち4人。
だが、大海原で嵐に巻き込まれ、ヨットが転覆してしまう。そのうち救助が
来るだろうと楽観視する4人だったが、船底を上にしたまま漂流を続ける彼らの
船は発見されず、やがて捜索が打ち切られてしまう。
いつまでも来ない救助に待ちくたびれ、
物資も乏しくなる中、4人は精神的に追い詰められて……。(WOWOW)

<IMDb=★6.2>


by jazzyoba0083 | 2017-08-16 22:45 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)