ギフテッド/Gifted

●「ギフテッド/Gifted」
2017 アメリカ Fox Searchlight Pictures and more. 101min.
監督:マーク・ウェブ
出演:クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス、リンゼイ・ダンカン、ジェニー・スレイト、
   オクタヴィア・スペンサー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想:重要な部分が個人的忘備録のためネタバレしています>
面白かった。よく出来た物語だと思う。登場人物の意外な素性が次第に明らかになっていくところは
正体が正体だけに、あざとい感じもしないではないが、話の中心となる数学の天才、メアリーを演じた子役、
マッケナ・グレイスのナチュラルな演技に助けられ、上手くまとまった。
監督マーク・ウェブの演出が光るところだ。このところ数学の天才を描いた映画を続けて3本見る結果となった。
「ドリーム」「奇蹟がくれた数式」そして本作と。それぞれまったく異なったシチュエーションだが、本作は
7歳にして高等数学を簡単に解いていく天才が主人公。この少女の複雑な背景の中で、少女の才能と幸せを巡り
大人がもめる。ところどころに置かれる心温まるキャスティングやシークエンス。例えば隣の黒人女性
(オクタヴィア・スペンサー)の存在、メアリーの担任ボニーの存在、そしてフランクがメアリーを産院に連れて
いくところなどに、この物語の温かさを高める隠し味が忍ばされている。脚本もいいのだろう。
キャスティングはメアリーを演じた歯無しのマッケナ・グレイスを始め、全員、いい。

簡単に言ってしまえば、才能を伸ばしてあげる環境がいいのか、普通の子供達と普通の生活をしていくのが
幸せなのか、ということ。
ただでさえ母親を自殺、という過酷な状況で亡くした幼い子が、母の弟のもとで暮らしていたのだが、
少女メアリーに数学のずば抜けた才能があることが分かり、まず学校が、転校を勧める。
次に少女にとってはおばあちゃん、姉弟にとっては母イブリンが登場。メアリーの才能を埋もれたままで
置くのは社会の損失、とばかりに自分の近くに置いて育てようと、今の環境が如何に劣悪であり、メアリーの
才能を花開かせてあげることこを彼女にとっての幸せと説く。(ココらへんのおばあちゃんの供述にはムリを
感じるなあ)弟は姉の遺言として普通のこどもとして育って欲しいということを守っていたのだ。(この裏には
もうひとつの母娘の相克があるのだが)

結局、裁判所の判断は、メアリーを養子に出し伯父さんフランクとも会えるという条件でフランクはメアリーと
離れることになる。裁判長も難しい判断だっただろうと思う。もうすこしメアリーが大きければ別の道もあった
のだろうけど7歳というのが微妙だ。観ている方も、才能は伸ばしてあげたいけど、子供らしさがなくなるような
生活を強いるのは本当にメアリーのためなのか?と共に悩むことになる。

フランクおじさんと暮らしていた時、片目の猫フレッドが家族のような存在だったのだが、イブリンは猫
アレルギー。ある日メアリーの小学校の担任でありフランクの恋人になっていくボニーが、メアリーとともに
養父母のもとにいったフレッドが不要ペットとして引き取り手を募集されているところを見つけてしまった。
すぐにフランクに連絡。殺処分寸前でフレッドを救い、そのままメアリーの元へ。
するとそこには養父母になつかないメアリーがイブリンと家庭教師に囲まれて数学をやっている光景が。

メアリーは一端自分を「捨てた」フランクおじさんを許さなかったが、メアリーを抱きしめて、自分のやり方を
謝るフランクを許し、猫のフレッドと共にフランクの元へと戻った。

メアリーの動きとしてはそいういうことなのだが、実はメアリーの母は高名な数学者で、(このことは作品の
早い段階で分かる)誰も解けなかった数式を解けるのでは、という学会の見方であった。しかし、幼い頃から
母イブリンの英才教育に心を潰され、結局自ら命を絶つことなったのだ。それは母親に対する復讐でもあった。
幼いメアリーを弟に任せて自殺するとは、メアリーの母はどのくらい母を憎んでいたことか。それにまったく
気付かず、孫に同じ目に合わそうとしていた訳だ。弟フランクがメアリーを母の元に行かせたくないのが分かる
というものだ。フランクは裁判の過程で明らかにされるのだが、今はボートの修理技師をしているが実は元ボストン
大学哲学科の准教授だった。

フランクはメアリーを自分の元に戻す時、一つの論文を母に放り投げた。
それは姉があの噂の数式を証明した論文だったのだ。「姉さんは、これを死後に公表してと僕に頼んだんだ」
イブリン「自殺の後で?」 フランク「違う。自分の、じゃない」。驚愕の表情が母の顔に張り付く。
姉は、母の死後これを発表するように弟フランクに言い残して命を絶ったのだった。なんという凄まじい母子の
関係。

論文を見て驚愕したイブリンはマサチューセッツ工科大学(だっったかな)に電話する。イブリンは電話口で
名乗ったは自分が数学科の博士である、と。 最後の最後でまた考えさせられちゃうシークエンスだ。
フランクは数学の天才の母と姉の間にあって哲学という真逆の分野に進んだのだ。その彼が姉の子を巡り母と
争う。なるほど、メアリーだけの話だけではないのね、この映画。
ラスト、大学でも数学の勉強をするようになったメアリーの講義の中に、先日観た「奇蹟がくれた数式」の
主人公、インド人の天才数学者ラマヌジャンの名前が出てきたのにはびっくりするやら納得するやら。

心温まるほっこり系の映画なのだが裏には非常に凝った親子の関係がが忍ばされている。
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<ストーリー>
『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督による家族ドラマ。数学の天才である小学生の姪を“普通に育てたい”
という亡き姉の遺志に従って守ろうとする男を『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンスが好演。
数学の天才メアリーをそのファッションセンスがSNSなどで話題の子役マッケナ・グレイスがキュートに演じる。

フロリダの小さな町。独身男のフランク(クリス・エヴァンス)は、生意気ざかりの7歳の姪メアリー
(マッケナ・グレイス)、片目の猫フレッドと一緒にささやかな生活を送っていた。その小さな幸せは、
メアリーの天才的な才能が明らかになったことから揺らぎ始める。メアリーの特別扱いを頑なに拒む
フランクの前に母エブリン(リンゼイ・ダンカン)が現れ、孫のメアリーに英才教育を施すため、フランクから
引き離そうとする。
だが、フランクには亡き姉から託されたある秘密があった。メアリーの幸せは、一体どこにあるのか……?
そして、フランクとメアリーはこのまま離れ離れになってしまうのか……?(Movie Walker)

<IMDb=★7.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:73% Audience Score:85%>




by jazzyoba0083 | 2017-11-29 12:05 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「マイ・ベスト・フレンド Miss You Already」
2015 アメリカ S Films (production),New Sparta Films (presents) 116min.
監督:キャサリーン・ハードウィック
出演:トニ・コレット、ドリュー・バリモア、ドミニク・クーパー、パディ・コンシダイン、ジャクリーン・ビセット他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
難病モノは基本、苦手。しかし、ハリウッドが作るものはどこかに必ず救いがあるので佳作、と踏めば
観ることは多いのだが、本作もまさにそんな感じの一作。女流脚本家と女流監督による女性の友情の話。
全体の構成としては「よくある話」の類なのだが、しっかり見切ってしまった。

まず評価したいのが、編集。(★0.5は編集に謹呈)非常にリズムが良くテンポもいい。幼いころに知り
合ったミリー(コレット)とジェス(バリモア)。今に至るまではかなり急速に話を進め、ミリーが病を得て、
それが好転しないと分かるころからだんだんと時間の流し方がゆっくりになる。もちろん演出の妙味もある
わけだが、気持ちいい編集だなあ、と感じた。

結局、男の私には完全には理解出来ない「母性」の問題。幼いころからの大親友ミリーとジェス、片や
ろくでもない(と思われた)ロック野郎とできちゃった結婚。しかしこの旦那が音響屋を始め、大当たり。
子ども二人にも恵まれ、幸せな暮らしを送っている。
片やジェス。石油採掘エンジニアの旦那とボートハウスに住み、仲はいいのだが子どもが出来ない。
そこに、ミリーが乳がんに罹るという事態が発生する。化学療法が効いて一時は希望も沸いたが、
脳に転移が見つかり、余命宣告。
一方、ジェスは試験管ベイビーに挑戦し、ついに妊娠に成功する。

この対比が作品の後半のベースに流れている。わがままになるミリーに振り回され、辟易とするジェスが
一旦ミリーと距離を置くこともあったが、はやり二人は心の友である。ミリーに病気が見つかってからの
寄り添い方、わがままに付き合う様子、そして最期を看取るまで、二人は親友であり続けた。

日本流に作るとどっぷりと暗くなるような物語であるのだが、この作品は死を前向きに捕らえ、明るい。
それは結構あからさまなセックス談義や、病気なのに冗談を飛ばし合う欧米人のメンタリティを表現すること
で演出されていく。ミリーとジェスの明るさに救われる。果たして自分だったら、と誰もが思うだろう。

二人の幼い子供を残して逝かなければならないミリー。一方、新しい生命が誕生するジェス。女性としての
夢や幸せのありかを巡り、二人の心は「母性」を持った人間としてお互いを受け入れお互いに幸せのありかを
見つけていく。ホスピスに入ったミリーに添い寝していて朝、目覚めるとミリーは天国に旅立っていた。
一瞬悲しそうな表情のジェス、その後に微かに微笑みが浮かぶ。その微笑みこそ、この映画のテーマなの
だろう。
ミリーは最期に、夫に再婚を約束して逝ったのだそうだ。相手をジェスにしたかったけど、それは無理。
ラスト、一歳くらいになった自分の子どもを抱えたジェスがミリーの家で二人の子どもに朝ごはんを用意
しながら、頑張っている。ジェスの目には二人の子どもの姿にミリーの姿が重なっているに違いない。
何十年になるのか、長い長い友情の積み重ねの姿がそこにあった。

病気になるトニ・コレットはもともとふくよかな体型ではないが、臨終の時はかなり体重を落としての
演技ではなかったかな。ミリーのお母さんとして女優をしているミランダが、所々でアクセントになり
映画がダレるのを留める役どころの一つとなっているのだが、演じるのがジャクリーン・ビセット。
お年を召しても美しい。男が見てもいい映画だが、女性が観るとまた視点が変わってくるのだろう。
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<ストーリー>
幼なじみのジェス(ドリュー・バリモア)とミリー(トニ・コレット)は、ファーストキスから初体験まで
何でも話し合い、互いのすべてを知る親友同士だった。この友情は永遠に続くと思っていたが、ミリーが
乳ガンに罹っていることがわかり、時同じくして不妊治療を続けてきたジェスの妊娠が判明。
ジェスは誰よりもミリーと新たな命を授かった喜びを分かち合いたくても、彼女の病状を考えると伝えるに
伝えられない。相手を思いやるがために言えない言葉が増えていってしまう。(Movie Walker)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:71% Audience Score:68%>





by jazzyoba0083 | 2017-11-27 22:50 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「ジャスティス・リーグ Justice League」
2017 アメリカ DC Comics,DC Entertainment,Lensbern Productions,Warner Bros. and more.120min.
監督:ザック・スナイダー
出演:ベン・アフレック、ヘンリー・カヴィル、エイミー・アダムス、ガル・ガドット、エズラ・ミラー
   ジェイソン・モモア、ダイアン・レイン、J・K・シモンズ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
昨年、「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」で、個人的にはたたらを踏んでしまった
DCコミックシリーズだが、今回は、「普通」に戻った感じだ。それでも、ワンダー・ウーマン=
ガル・ガドットを見つめている場面が多かったな。ww アヴェンジャーズもそうだけど、所詮コミックの
世界なので、どうしても限界があって、正義には悪が必要で、更に双方に偉大な力をもたらす、未知なる
パワーを秘めた物体(物質)の争奪が絡む、というのが基本線。

前作でいわば掟破りの同士討ちをやらかした(アヴェンジャーズでもやっているけど)DCが、前作で
死んだはずのスーパーマンを生き返らせちゃって、天下無敵のジャスティス・リーグを結成してしまうと
いう・・・。コミックなら、なんでもありかよ!と思わず突っ込みたくもなります。いやいや漫画漫画、と
自らをナダメて鑑賞。

今回の「悪」は「ステッペンウルフ」という、羽を生やした虫みたいな兵士を連れて登場。狙うは
3つの立方体「マザーボックス」。これを手に入れると、無限の力を得ることが出来るらしい。それを
阻止するためにバットマンとワンダー・ウーマンが超人のスカウトに乗り出し、アクアマン、フラッシュ、
そして全身機械のサイボーグ、ヴィクターだ。冒頭では、悪の登場とマザーボックスの存在が示され、
次いで超人たちのスカウトが始まる。それぞれに紹介シーンのようなものがある。構成としての見やすさは
あり。しかし、足りないものがある。そう、スーパーマンだ。そこで、バットマンらは、マザーボックスを使って
(だっけ?)墓から掘り起こしたクラーク・ケントの遺体を生命のスープみたいなところに沈め、再生させて
しまうのだ!

だが、クラーク・ケントは我を失い事情を理解しておらず、暴走してしまう。そこで恋人ロイス・レインと
母ちゃん(ダイアン・レイン)の登場。ここで我に戻るスーパーマンは、ジャスティス・リーグの中では
やはり群を抜いて強い。さあ、ここにジャスティス・リーグの完成。こうなると、今回のヴィランである
ステッペンウルフなんて小物は吹き飛んでしまいますなあ。

地球に束の間の平和が戻ってきたのだが・・。しかし、前作で刑務所にいたレックス・ルーサー(ジェシー・
アイゼンバーグ)を覚えておいででしょう。彼が、正義のリーグに対抗して、悪のリーグを作るらしい
です。これが次回のテーマでありましょうか。

本作は監督が身内の事情で交代、「アヴェンジャーズ」のジョス・ウェドンになり、テイストが変わった
かも知れない。時間の短さといい、本来のコミック感といい。それがわかり易さに繋がる一方、ザック・
スナイダーの「内省的」な深み、というものが無くなってしまったかもしれないですね。それとDCは
今後、アクアマンとかフラッシュとかの単独モノを作ってくる可能性もあり、でしょう。

このシリーズの見どころはVFXをたっぷり使った戦闘シーンだが、それはたっぷりと楽しませて貰った。
まあ、3Dで見るまでもなかろう、と思い2D版を観たのだが、内容が内容だけに3Dの楽しみを付加させたほうが
映画全体は面白くなるかもしれない。
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<ストーリー>
「マン・オブ・スティール」に始まるDCコミックス原作実写映画のクロスオーバー・シリーズ“DC
エクステンデッド・ユニバース”作品の1本で、DCコミックスが誇る人気スーパーヒーロー総出演で贈る
アクション・アドベンチャー超大作。
「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」後のスーパーマン亡き世界を舞台に、滅亡の危機を
迎えた世界を救うべくバットマンによって結成されたスーパーヒーロー・チーム“ジャスティス・リーグ”の
活躍を圧倒的スケールで描き出す。
出演はバットマン役のベン・アフレック、ワンダーウーマン役のガル・ガドットのほか、エズラ・ミラー、
ジェイソン・モモア、レイ・フィッシャーがそれぞれフラッシュ、アクアマン、サイボーグ役で登場。

なお監督を務めたザック・スナイダーが家族の不幸のために本作撮影の最終盤で降板を余儀なくされたため、
急遽「アベンジャーズ」シリーズのジョス・ウェドンが電撃招聘され、追加撮影などを経て無事完成にこぎ
着けた。ちなみに監督クレジットはザック・スナイダー単独のままとされ、ジョス・ウェドンは脚本に
クレジットされた。

 スーパーマンの犠牲によって恐るべきドゥームズデイから辛くも守られた世界。しかしスーパーマンの
いなくなった地球にはさらなる魔の手が迫っていた。バットマンはそんな世界滅亡の危機をいち早く察知すると、
先の戦いで出会ったワンダーウーマンとともに超人たちのスカウトに乗り出す。こうして集められたのは、
世界最速にしてオタクな青年“フラッシュ”ことバレリー・アレン、水陸両棲の怪力男“アクアマン”こと
アーサー・カリー、全身のほとんどが機械化された“サイボーグ”ことビクター・ストーンといういずれ劣らぬ
個性派超人たち。迫り来る脅威に立ち向かうべく、そんな我の強い彼らを、柄にもなくチームとしてまとめ
上げようと奮闘するバットマンだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:41% Audience Score:82% >



by jazzyoba0083 | 2017-11-27 11:45 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「マイルス・アヘッド Miles Ahead」
2015 アメリカ Sony Pictures Classics and more. 100min.
監督・(共同)原案・製作・脚本:ドン・チードル
出演:ドン・チードル、ユアン・マクレガー、エマヤツィ・コーリナルディ、レイキース・リー・スタンフィールド他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
ジャズファンとしては、観てみたいな、と思いつつも映画館まで足を運ぶまでの映画かなあ、WOWOWを
待ってもいいかなあ、と思っていたら1年が経ち、WOWOWで放映してくれた。
ジャズの世界に燦然と輝く伝説のビッグスターの、フィクションを含めた自伝的作品。内容よりもドン・チードルが
マイルスによく似せている(トランペットの吹き方や指使いも)方に目が行ってしまった。そこはよく出来て
いた。ジャズやマイルスに興味のない人は観ても一般的な感動があるわけではないので、特に日本では一般受けは
しないだろう。

ビバップ、クール、モード、ジャズ・ファンクと常にジャズの世界をリードしてきたマイルズが、1980年代初頭に
5年間活動を停止していた時のお話だ。気分屋で、怒りっぽく、何を考えているかよく分からない変人としても
知られる(特に晩年は)マイルズが、次へのステップを踏み出そうともがく姿、というより、フランシス(名盤
「いつかお王子様が」のLPジャケットを飾る黒人女性)との別れやドラッグや酒で、破滅的な生活を送って
いる様を描く。自分がスターになり始め、フランシスと知り合うころと、荒んだ生活の現在をカットバックしな
がら物語が綴られる。カメラワークや編集などに工夫が見られるが、全体の物語としては、弱い。何に焦点が
当たっているのかよく分からない。フランシスの喪失なのか、新しい音楽への模索なのか。

雑誌「ローリングストーン」の記者役のユアン・マクレガーが狂言回し的な役どころ。ただ、100分では
マイルスってそういう人だったのだ・・・というところまでは行かない。個人的には名盤だと思っている
「クールの誕生」(一般的にも歴史的名盤として通用している)を、マイルスは駄作、と言っている点。
それよりも「スケッチ・オブ・スペイン」のほうが気に入っている、という点、「俺の音楽をジャズと
呼ぶな。ソーシャルミュージックと呼べ」と言っている点が新しかった。

マイルズは祖父は地主で父は歯科医、母は音楽家、という恵まれた環境に育ち、チャーリー・パーカーや
ディジー・ガレスピーらバップムーブメントの巨人たちとの交流にも恵まれた。そのあたり精神的に
打たれ弱いところがあったのではないか。自らの殻に閉じこもり、わがままを押し通す。妻フランシスが
怒って離れていくのも分かるというものだ。そうした彼の心には「寂しさ」が渦巻いていたのだろうけど、
それを他人にぶつけたり、ドラッグや酒に解決を求めたのでは、早死はするというものだ。

私にとってはマイルス・デイヴィスという男を再認識する点では面白い映画であったと思うけど、同じ
ジャズ映画の「ラウンド・ミッドナイト」のような一般的感動は獲得できなかった。ただしドン・チードルの
トランペットの当て振り(本物の音源を使っていたようだ)はお見事。
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<ストーリー>
ジャズ界を牽引してきた天才トランぺッター、マイルス・デイヴィス(ドン・チードル)は、1970年代後半に
入ると活動を休止。慢性の腰痛を抱え、ドラッグや鎮痛剤の使用から一人自宅で荒れた生活を送る彼のもとに、
音楽レポーターのデイヴ・ブレイデン(ユアン・マクレガー)が押しかけてくる。
二人は、盗まれたマイルスの新曲入りテープを取り戻すことに。脳裏にミューズであった元妻フランシス・
テイラー(エマヤツィ・コーリナルディ)との結婚生活の思い出が蘇り、気まぐれな性質に拍車をかける
マイルス。死を考えるほど苦悩し絶望する彼だったが、やがて音楽に救いを見出していく。(Movie Walker)

<IMDb=★6.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:74% Audience Score:57%>




by jazzyoba0083 | 2017-11-24 22:30 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「人生はシネマティック Their Finest」
2016 イギリス BBC Films, The Welsh Government,Pinewood Pictures. 117min.
監督:ロネ・シェルフィグ  原作:リサ・エヴァンス「Their Finest Hour and a Half」
出演:ジェマ・アタートン、サム・フランクリン、ビル・ナイ、ジャック・ヒューストン、ヘレン・マックローリー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
★は7.5。小ぶりながら、愛すべき掌編、という感じだ。映画を愛する人たちの作品に掛ける思いが
素晴らしい、ことはもちろんそうなのだが、戦時下において一生懸命自分の国、(の人々)のために、
一所懸命生きている、生きようといている主人公カトリンの健気な姿が私には眩しく美しかった。

たまたまノーランの「ダンケルク」を二回も観て、更に原作も読んだ身としては、作中映画に大変興味が
行った。いわゆる「ダイナモ作戦」において、民間女性が参加した、という公的記録はないようだが、
本作の姉妹のように、兵士撤退のためにいてもたってもいられなかった人たちはたくさんいただろう。

さて、本作の魅力は何と言っても主役のジェマ・アタートンの存在。まるで映画のことなど知らない女性が
何とかいい映画を作ろうとするひたむきな姿に心打たれる。加えて、堅物として登場する老男優(若い人は
戦争に行ってしまって映画界も老人しかいない状態)ヒリアード氏(ビル・ナイ)の存在も大きい。そして
含蓄のあるセリフをたくさん吐くんだ。共同で脚本を書き、やがてお互いに愛を感じ合うようになるトムなど
いいも悪いも混ぜ合わせて主人公カトリンの成長の過程が描かれていく。ただ、トムの最後はちょっと
あっけなさ過ぎな感じだ。しかしそれとて、カトリンとトムの会話の中に出てくる「生」と「死」のメタファー
のように感じた。トムは戦争では死ななかったけど、その死の意味は他人が決めること。カトリンは
悲しみの中から立ち上がるのだ。(ちなみに彼女の旦那は足の悪い絵描きで、浮気などかましてくれている)
またドイツの爆撃で犠牲になっていく人たちの姿を間近でみたカトリンの心にも変化が生まれてくる。

ナチス・ドイツとの戦いが苛烈を極めてくる1940年。英国の欧州派遣軍はドイツ軍に押され、ダンケルク
からドーバー海峡を渡って本国に兵士を撤退させる作戦に出た。「ダイナモ作戦」である。これには
ノーランの映画にも描かれている通り、多くの民間の船が参加、中には犠牲になった人々もいたが、結果的に
30万人以上の英仏兵を本土に運ぶことに成功した。イギリスはこれからバトル・オブ・ブリテンやドイツの
V1攻撃など厳しい戦いを強いられていくわけだが、そうした中で、「撤退」を「負け戦」と見せないような
プロパガンダは必要だったのは容易に想像出来、情報局が「ダイナモ作戦」を主題として戦意を鼓舞する
映画を作ろうとしたのだ。同じような事情は日本でもあったわけで。

脚本担当に起用されたのは、映画の素人だった、秘書のカトリン(アタートン)。彼女は脚本家のトムと
取材をし、苦労しながら脚本を書いていく。しかし、そこには軍部からの「あそこはああしろ」という
横槍や、頑固な俳優たちの抵抗などあったわけだが、何とかそれを乗り越えて映画を完成させていく。
観客は、カトリンの一人の女性として、夫を抱えお金も必要、そしてなれない仕事だけど一生懸命に取り組む
姿に共感を覚えるのだ。作っている映画はまあプロパガンダなのでさしたる内容でもないのだが、
カトリンにしてみれば、自分の思いや周囲の思いを込めた作品だったのだ。

そして上映会が開かれる。スクリーンを見つめる観客は涙を流し、あるいは興奮し、映画を楽しんでいた。
その姿と、非業の死を遂げたトムのことなどがその胸に去来したカトリンの目にも涙が浮かぶのだった。

作中映画の作るシーンがなかなか興味深い。ダンケルクの砂浜の兵士はガラスに描かれたんだなあ、とか。
原作は「彼らの輝かしい1時間半」という感じだろうか。みんなで作った映画に吹き込まれた思い、生命と
いったものを感じるタイトルだ。放題とはちょっと方向性が違うかな。

もう一度観てみたい作品だ。
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<ストーリー>
1940年、第二次世界大戦下のロンドンを舞台に、プロパガンダ映画の脚本家に抜擢された女性が、様々な
困難に直面しながらも、映画製作に挑む姿を描く人間ドラマ。『007 慰めの報酬』でボンドガールを務めた
ジェマ・アータートンが執筆経験のない新人脚本家に扮し、周囲の人々に助けられながら成長していく姿が
つづられる。(Movie Walker)

 「17歳の肖像」「ワン・デイ 23年のラブストーリー」のロネ・シェルフィグ監督が、第二次世界
大戦下のロンドンを舞台に、幾多の困難を乗り越え、国民に勇気を与える映画の完成に執念を燃やす一人の
素人女性脚本家と個性豊かな映画人が織りなす愛と情熱の物語を描いた戦時ラブ・コメディ。(←ラブコメディ
ではない=ブログ管理人文責)
主演は「ボヴァリー夫人とパン屋」のジェマ・アータートンと「世界一キライなあなたに」のサム・クラフリン。
共演にビル・ナイ。

 1940年、第二次世界大戦下のロンドン。ドイツ軍の空爆が続く中、政府は国民を鼓舞するプロパガンダ映画の
製作に力を入れていた。その一方、映画界は度重なる徴兵で人手不足。ある日、コピーライターの秘書をして
いたカトリンが、いきなり新作映画の脚本家に大抜擢される。
内容はダンケルクの撤退作戦でイギリス兵の救出に尽力した双子の姉妹の活躍を描く物語。戸惑いつつも、
自分をスカウトした情報省映画局の特別顧問バックリーらと協力して初めての脚本執筆に挑むカトリン。
しかしそんな彼女の前には、無理難題を押し付ける政府側のプレッシャーや、わがまま放題のベテラン役者など、
いくつもの困難が待ち受けていたのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:89% Audience Score: 72%>






by jazzyoba0083 | 2017-11-23 11:30 | 洋画=さ行 | Comments(0)

●「奇蹟がくれた数式 The Man Who Knew Infinity」
2015 イギリス Edward R. Pressman Film,Animus Films. 108min.
監督・脚本・(共同)製作:マシュー・ブラウン
出演:デヴ・パテル、ジェレミー・アイアンズ、デヴィカ・ビセ、スティーヴン・フライ、トビー・ジョーンズ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
★は7.5。どうしも「事実は小説より奇なり」となってしまい、事実の持つ重みは作り事より強い。
私はこのインドの不世出の天才数学者ラマヌジャンという人を寡聞にして知らなかった。数学の
研究者や学生にとっては当たり前の人物なのだろう。
映画の中では、彼ら数学者が何をどうしようとているものなのか、全く分からなかった。多くの人は
そうだろう。でもそれでいいんですね。恐ろしく難しい解析のことなどは本筋にあまり関係がない。
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インド・マドラスの港湾施設で働く貧しい青年ラマヌジャン。結婚したばかりの妻と母がいる。
彼は天才的に数学に秀で、独学で定理を作成してしまうほどだった。しかしインドの学者からは
相手にされない。一人の師が、イギリスに行くことを勧め、手紙を書いてくれた。そのうちの
ひとつがケンブリッジ大学のトリニティカレッジ(ニュートンが万有引力を発見したリンゴの木がある)
の数学者ハーディの目に留まる。彼はラマヌジャンをイギリスに呼び共同で研究をしようとする。
が、天才的な閃きが特徴のラマヌジャンに対し、ハーディは「証明」されなければ「定理」とはならない。
「証明しろ」「証明」とこだわる派。むしろまっとうな数学者であれば、「定理は元来そこに存在するもの」と
言われれても、それが「証明」されなければ、なんら意味を持たないものなのだろう。そこは分かる。

でも、ラマヌジャンにとってはそれが歯がゆくて仕方がないのだ。天才ゆえの悩みだろう。真の天才とは
こういうとんでもない人物のことなのだろうなあ。英国の植民地だったインドではあるが、インド人で
有るがゆえの迫害や偏見を受け、ラマヌジャンのいうことに「そんな天地がひっくり返るほどの真理が
証明できるはずがない」と鼻から相手にしない。ハーディーはラマヌジャンに地道に証明することを
教え、ラマヌジャンも辛抱強く勉強を重ねた。

一方、インドに置いてきた新婚の妻は頻繁に夫に手紙を書くが、姑の手により、タンスの奥にしまわれた
ままになってしまう。ロンドンでラマヌジャンは妻は自分を捨てたのだ、と悲しい気持ちになる。
更に彼を結核が襲う。牛肉を食べないなど戒律に厳しいラマヌジャンは食べるものが少なく、栄養を
満足に取れず、結核になっても回復力が弱い。それでもハーディーらの看護の成果もあり、一旦は医者に
見放されるほどの病状だったのが回復してきて、研究も進み、ついに、周囲から不可能だ、といわれていた
数式の定理を証明することに成功したのだった。

そして、あれだけインド人だと蔑んでいた大学も、彼を王立協会の会員に推薦、見事にメンバーに選ばれた
のだった。故郷では妻が姑が手紙を書くしていた事実を知り、そのことを含め手紙を再度書いた。受け取った
ラマヌジャンは故郷に帰ることにした。1年後に戻ることを約束して。

しかし、その約束は叶わなかった。ラマヌジャンは結核の予後が良くなく、妻と母と暮らした1年少々の後、
帰らぬ人となってしまった。ラマヌジャンが最後に発見した数式は現在もブラックホールの解析に役立って
いるのだという。
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「スラムドックミリオネア」の少年も大きくなり立派な青年に。「マリーゴールドーホテルであいましょう」
去年の「LION/ライオン~25年目のただいま」ではオスカーの助演男優賞ノミニーと確実に成長しています。
彼と、彼を支えるハーディー教授を演じたジェレミー・アイアンズが、なんとも言えず良かった。自分は
「証明できないものは信じない」という無神論者、片やラマヌジャンは敬虔なヒンドゥー教徒。「すべては
神の決めること」。そうした二人が数学を通して理解しあう。普通の人の思考のはるか上を行く超天才を
この世のものとする助けがどのくらい大切か、ということが分かる映画だった。天才は理解者と出会わないと
天才とはなりえない、ということだ。動きの少ないストーリーだが、魅力的な脇役を配し、面白い映画に
仕上げた監督の手腕も買いたい。「無限を知る男」という原題はカッコイイと思う。
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<ストーリー>
 「スラムドッグ$ミリオネア」「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」のデヴ・パテルがインドの
天才数学者ラマヌジャンを演じた伝記ドラマ。独学で数学を学んだラマヌジャンが、異国の地イギリスへと
渡り、文化の違いに苦しみながらも、著名な数学者G・H・ハーディ教授と数学を通じて友情を育み、
強い絆で結ばれていく感動の実話を描く。
共演にジェレミー・アイアンズ、トビー・ジョーンズ。監督は本作が長編2作目のマシュー・ブラウン。

 数学に魅せられ独学で学ぶインドの青年ラマヌジャン。事務員として働きながら、孤独な研究を続けて
いた彼は、自らの成果を認めてもらおうと、著名な学者たちに手紙を送るが、まるで相手にしてもらえない。
そんな中、ただ一人、イギリスの名門ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジのG・H・ハーディ教授が
その内容に興味を示し、彼を大学に招くことに。
こうして結婚したばかりの妻をインドに残し、期待を胸に単身渡英したラマヌジャンだったが、植民地の
出身で学歴のない彼は周囲から色眼鏡で見られてしまう。
しかも直感で定理や公式がひらめくラマヌジャンにとって、その数式の証明の必要性を力説するハーディの
要求がどうしても理解できない。次第に2人の間の溝は深まり、ますます孤独に苛まれていくラマヌジャン
だったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:63% Audience Score:71%>



by jazzyoba0083 | 2017-11-22 22:00 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

映画感想の投稿ではありませんが、私のブログにご訪問くださっている皆さんに謹んでお知らせです。

「雑誌で私の映画コラムがスタートしました。
               ラジオもやってます!」

▼私が毎月映画1タイトルを取り上げて、それにまつわるお話を書く雑誌半ページほどのコラムが本日発売の
「月刊Cheek」1月号(東海地区書店、あるいはAmazonで購入可。税込み500円)からスタートしました。

「立ち読み禁止」(苦笑)で、お読みいただけると幸甚です。また感想などトラックバックやコメントでいただける
と嬉しいです。今回取り上げたのは「ユー・ガット・メール」。(最新作は原則取り上げません)
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▼また、これに先立ち、ラジオでも同タイトルのコーナーでお喋りも始めています。
              毎月第一木曜日午後4時15分頃
から名古屋のMID-FM(76.1MHz)の佐野瑛厘さんの"Music WOW"の、いちコーナーを頂いてのおしゃべりです。

10月は「卒業」11月は「Back to the Future」を取り上げました。
このラジオはいわゆるコミュニティFMで電波が遠くまで届きませんが、いまはスマホアプリで全国全世界で
お聴きいただけるんですねえ。

"ListenRadio" "TuneInRadio" "SimpleRadio"などのアプリから検索してみてください。きれいな音でお聴きいた
だけます。またMID-FMのホーム・ページではスタジオ内の動画もお楽しみいただけます。放送中はツイッターで
リアルタイムでご意見ご感想を寄せていただけることも出来ます!

次回は12月7日(木曜日)。何を取り上げるかは現在鋭意検討中です。

ブログももちろん第一で書きますが、他媒体に触れるチャンスがあるかたは是非、読んだり聞いたりしてみて
ください。立体的に映画の感想を表現できるのはとても刺激的です。頑張ります!!




by jazzyoba0083 | 2017-11-22 11:21 | ご報告 | Trackback | Comments(0)

ある戦争 Kringen

●「ある戦争 Kringen」
2015 デンマーク Danmarks Radio (DR)、Studio Canal and more.115min.
監督・脚本:トビアス・リンフォルム
出演:ピルー・アスベック、ツヴァ・ノヴォトミー、ソーレン・マニング、ダール・サリム、シャーロッテ・ムンク他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<評価>
NATO縛りなのだろうか、いわゆる「集団的自衛権」の発動なのであろうか。アフガンのデンマーク軍。
北欧の幸せ度の高い国も、こうした国防事情があるのだな。本作、静かな中にも、じわじわと心に迫るものが
ある。「ある戦争」とは、主人公の部隊長クラウスだけを指すのではなく、彼の家族、彼の部隊、彼の人生、
全部に対しての「ある戦争」なのだ。

ストーリーは分かりやすいものの、泥沼のようにハマってしまっていく戦争の不条理が、重く心に残るのだ。
ラストには一応カタルシスは用意されてはいるが、それですべてが解決、でななく、観た人に引き続き
問いかけ続けている。短い時間に提示しようとする内容が上手くまとめられている。

アフガンでタリバンの掃討と偵察を任務とするデンマーク軍のクラウス率いる部隊。地雷や敵なのかそうでないのか
判然としないアフガン民たち。疑心暗鬼の部隊に、次々と悲劇が襲う。地雷を踏み絶命する部下、それを見て
ビビっている男も撃たれて死亡する。そうした混沌とした戦いの中で、隊長クラウスは、空爆攻撃を要請する。
しかし、その攻撃で民間人多数が死亡するとう誤爆事件を引き起こしてしまう。

この事件の結果、クラウスは起訴され本国で裁判となる。裁判では隊員のヘルメットについていたカメラに
録音された会話に「敵がいると言え!」とさもそのあたりに敵がいるように命令するクラウスの声が入って
いた。言い逃れは出来ないのか。しかし、混乱した中でとっさに誰が何をしたのか、良くわからない。
クラウスは自分の部下の命を守る使命もある。当時一緒に戦闘に加わっていた部下たちも証言するが、実際の
ところ良くわからないのだ。

これではクラウスの有罪は決まりか、と思われていたところで、ブッチャーと言われていた男が「戦闘地区で
銃の光を見た」と証言した。本当かウソかは分からない。事実当時の戦闘では四方八方から銃撃は受けていた
のだから。ただ、クラウスは部下の信頼が厚い隊長ではあった。この証言が決め手となって、クラウスは無罪と
なる。

メインとなる物語はアフガン戦争での空爆要請が正しかったかどうか、なのだが、デンマーク本国では
クラウスの妻と子どもたちの「ある戦争」もあった。長男がどうも問題児っぽくなっていたり、子育てに
一番いて欲しいときに父親がいないという母親(妻)の苦悩、苦労。衛星電話で会話は出来るが隔靴掻痒だ。

アフガン人を救いにいったはずが、現地人も自分たち部隊も家族も「正解のない不条理」に叩き込まれて
いる。一体、誰を責めろというのか!それが市民が、庶民が「戦争に巻き込まれる」ということ。そういった
主旨が、じわじわと胸に迫るのだった。
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<ストーリー>
デンマーク軍の部隊長クラウス(ピルー・アスベック)は3人の子どもと妻マリアを国に残して、アフガニスタンの
平和維持のため現地に駐留し、命がけの任務に没頭していた。ある日、パトロール中にタリバンの襲撃を受けた
クラウスは、仲間と自分を守るため、敵が発砲していると思われる地区の空爆命令を行う。
しかし、そこにいたのは民間人だったことが判明し、結果、子どもを含む11名の罪のない命が犠牲になった。
クラウスは帰国後、軍法会議にかけられる。消えることのない罪の意識と、過酷な状況で部下たちを守るために
不可欠だった決断の間で揺れ動く彼に、運命の結審が迫る。(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:91% Audience Score:80%>






by jazzyoba0083 | 2017-11-19 22:55 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「ロング・トレイル! A Walk in the Woods」
2015 アメリカ Route One Entertainment,Wildwood Enterprises. 104min.
監督:ケン・クワピス  原作:『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験 北米アパラチア自然歩道を行く』
出演:ロバート・レッドフォード、ニック・ノルティ、エマ・トンプソン、メアリー・スティーンバージェン他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
本作も実話に基づくが、アメリカにはこういう国土を縦断するような超長距離のトレイルコースが3つあり、
西のパシフィック・クレスト・トレイル(全長4260km)を走破に挑戦した実在の女性を描いた「わたしに会う
までの1600キロ」が有名なところ。
主演はリース・ウィザースプーンとローラ・ダーンでオスカー候補にもなった。この映画を観ると、パシフィック
クレストにはロッキー山脈があり、ニューメキシコからカナダ国境まで、歩くわけで、かかる日数と過酷さと覚悟は
アパラチアよりは大きいと思う。(だからアパラチアがダメというわけではないが)

閑話休題。その東側にあるアパラチアントレイルは全長3498km。14州ジョージア州から出発して途中には
グレートスモーキー山脈、ブルーリッジ、シェナンドーという日本人にも馴染みのある風光明媚なところを
通る。年間2000人あまりが挑戦するが、踏破できるのはわずか10%ほどだという。過酷なのだな。

そんなアパラチアトレイルに、老体を鞭打って出かける成功した紀行作家ビル・ブライソン(レッドフォード)。
国外はいろいろ出かけたが国内を知りたいと。で悪友カッツ(ノルティ)も同行することになる。
まあ、だいたい珍道中になることは予想できるわけで。出発するとすぐに音を上げるカッツ、(デブなんだもの)
川にハマる、グリズリーに出会う、崖から転落する、途中でずるしてレンタカーをかりようとする、などなど、
ブライソンの思いとは相容れない行動ばっかり。しかし彼はカッツを決して足手まといだ!とは言わない。

そう、見れば分かるが、カッツはブライソンの人生の負のメタファーにほかならないわけだ。年寄りには中々
過酷なトレイルだがそれでも何とか歯を食いしばってやれるところまではやってみる。でも途中でブライソンは
妻が恋しくなったり、カッツは気力が萎えてしまったりで、それでも3ヶ月歩いてちょうど中間点あたりまで
来たあたりで、ついに、リタイア。でも二人には後悔の念は無かった。むしろ自分なりにやり遂げ、それなりに
旅をする中で思うところも多かった。二人は意義を得て旅を終えることにしたのだった。肉体的には若い人には
叶わないが、カッツとの語らいの中で、また自分との語らいの中で肉体的なもの以上の心の満足を得た旅となった
のだ。現代通り、トレイルを歩くことが目的ではなく、森を歩いて得たこと、なのだ。

「私にであうまでの1600キロ」でも主人公は最後まで踏破出来ない。でも、その過程に描かれる過酷さは
今回の映画の比ではない。そのあたり、お気軽映画に仕上がっているので、どこかいっちょ上がり的な雰囲気は
拭えないところだ。レッドフォードはお年を召したがクール。ノルティが終始暑苦しく映画をかき回す役だ。

最後にモーテル軒ダイナーの女主人として登場するメアリー・スティーンバージェンとブライソンちょっとした
恋心?あたりが良かったかな。
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<ストーリー>
ユーモアあふれる旅行エッセイで知られる作家ビル・ブライソンの実話を基に映画化。ロバート・レッドフォード
が製作兼主演を務め、見た目も性格も正反対のシニア二人組が3500キロに及ぶ北米の自然歩道“アパラチアン・
トレイル”踏破を目指す旅を綴る。

60歳を超えた英国の紀行作家ビル・ブライソン(ロバート・レッドフォード)は、家族と共に故郷アメリカに戻り、
いまでは穏やかな生活を送っている。
だがそんな毎日に物足りなさを感じていたビルは、ある時ふと目にした一枚の写真がきっかけで全長3500キロと
いう北米有数の自然歩道“アパラチアン・トレイル”踏破を思いつく。
旅の同行者として名乗り出たのは40年ぶりの再会となる旧友カッツ(ニック・ノルティ)だった。

“酒浸りのバツイチ”で絵に描いたような彼の破天荒っぷりに心配を隠せないビルの妻(エマ・トンプソン)を
よそに、二人は意気揚々と出発。しかしシニア世代のビルとカッツの前に、大自然の驚異と体力の衰えという
現実が立ちはだかる。やがて彼らの冒険は、思いがけない心の旅へと進路を変えていく……。(Movie Walker)

<IMIDb=★6.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:46% Audience Score:48%>





by jazzyoba0083 | 2017-11-15 23:10 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

●「アムール、愛の法廷 L'hermine」
2015 フランス Albertine Productions and more.98min.
監督・脚本:クリスチャン・ヴァンサン
出演:ファブリス・ルキーニ、シセ・バベット・クヌッセン、エヴァ・ラリエ、コリンヌ・マシエロ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
この映画、ヴェネチア国際映画祭で、男優賞と脚本賞を獲っているんだ。映画のオチが、裁判長と、陪審員に
選ばれた想いを寄せる女性との、異型な恋愛譚なのだね。最初は法廷劇だとばかり思っていて、裁判の進行に
注目が行っていた。自分の赤ちゃんを蹴り殺したとして逮捕された男と、被害者的立場の女房。一体真相は
どこになるのか、父親は殺していない、と主張する。どちらかが嘘をついているのか。その真相を追っかけて
いる間に、裁判長の恋愛話になってくる。裁判の行方はどうでもいいというか。(実は裁判の進行と判決は、
この映画に欠かせない心の動きを示すものとして重要なのだが、気がつく人がどのくらいいるだろうか)

フランスの陪審員裁判てこういうふうなのね、という勉強にはなった。一方、裁判の進行に裁判長とその
恋の相手となる陪審員の女性の心の動きがどのような具合に埋め込まれていたかわかりづらく、観終わって
一体、結局何を言いたかったのか、と思ってしまう。彼女への恋心が裁判長の人間に対する気持ちを変えて行き、
映画の背景となる裁判ではしごくまっとうな判決を出すに至る、というこなんだな、と分かるのは私としては
だいぶ時間がかかった。

ラシーヌは刑事裁判を担当する判事で、物事を杓子定規に捉えて人間味が薄く、判決は「懲役10年」以上が
多かったため周囲からは「10年判事」と揶揄されていた。しかし、今回の裁判。陪審員の中に数年前に
自分が入院した時に世話してくれて、それ当時ほのかな恋心を抱いていた女性麻酔医ディットの姿があった。
まあ、焼けぼっくいに火が付いたってやつ。裁判長なんだけど、陪審員を食事に誘い出したり、恋心を
打ち明けたり、彼女の高校生の娘と会ったりしている。(フランスでは法廷外で裁判官と陪審員が裁判中に
プライベートとは言え会えるんだなあ)そうこうしているうちに、堅物であったラシーヌの心に人を思いやる
心が厚みを増し始めた。(もともと無かったわけじゃないから)ディットの方も、素直に愛情を打ち明ける
ラシーヌを憎からず思うようになってきた・・。

裁判の方は、父が殺したのか、事故だったのか、母の陰謀なのかはわからないまま。疑わしきは被告人の
利益に(取り調べた警察官の杜撰さが分かるような証言シーンも挿入される)という原則から、「陪審員
の判断」は無罪。裁判長ラシーヌは、無罪を宣言し、父親を直ちに釈放するようにと命じて閉廷した。

恐らく、ディットとの出会いがなければ、もうすこし杓子定規な判決になっていたよ、といいたいのだろう。
でも裁判長の心の変遷が今ひとつ重みを持って伝わって来なかった。下記アメリカRotten Tomatoesの
批評家と一般観客との評価の差に私の心情が表れているような気がする。物語の骨子は面白いのになあ。

後から言われると、なるほどと思うけど、100分程の映画の中で、主人公ラシーヌ裁判長の心の動きが、
作品が言いたいことにように作られていたかというとかなり深読みしてこないと分からないんじゃないか。
WOWOWで観たのだが、ラブコメディって書いてあったけど、全然ラブコメディじゃない。人間ドラマだ。

なんか、面白そうで良くわからない。裁判のシーンと裁判長の恋愛シーンの割合はこれで良かったのかなあ。
嫌な映画ではないが、なんかひとつ引っかかりが残る作品だった。ディットがもい陪審員にいなかったら
裁判で父親は有罪になったかも、ってこと? 今回この父親はディットに感謝しなくちゃなあ。そこら辺も
すっきりしないところであった。キャスティングは良かったと思う。
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<ストーリー>
ミシェル(ファブリス・ルキーニ)は、厳格で人間味がないと恐れられている裁判官。ある日の法廷で彼は、
思いがけない人物と再会する。かつて入院していた時に想いを寄せた女医のディット(シセ・バベット・
クヌッセン)が、陪審員の1人として姿を現したのだ。
当時、彼女に受け入れられなかった気持ちが蘇り、動揺を隠せないミシェル。彼女の優しさは、患者に対する
医師としてのものでしかなかったからだ。だが、その再会は裁判長としてのミシェルの行動を変えて行くことに
なる。冷徹だった彼の審議は、ディットとのやり取りを経て、次第に人間らしい温かみを帯びてゆく。
その変化は、やがて彼女の心も動かし始める……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:90% Audience Score:50%>



by jazzyoba0083 | 2017-11-14 22:50 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)