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隠し剣 鳥刺し

●「必死剣 鳥刺し」2010 日本 東映 「必死剣・鳥刺し製作委員会」114分
監督:平山秀幸出
演:豊川悦司、池脇千鶴、吉川晃司、岸部一徳、小日向文世、戸田菜穂、村上淳、関めぐみ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
藤沢周平の海坂藩シリーズは全部見ていて、中でも好きなのは「たそがれ清兵衛」だとは
ここでも何回か書いた。本作は藤沢作品の中でも傑作の呼び声高い小説を、豊川悦司で描いた。
毎度のことながら、武士としての理不尽に立ち向かう、言葉少ない剣豪の半生が綴られる
のだが、表題にもある通り、最大の見せ場は「鳥刺し」なる術がどんなものなのか、という
点であろう。それは後で語るとして、この映画全体を覆う、「静」と「動」の対比の見事さ、
また武士を始めとして当時の武家周辺の所作の美しさに心を奪われた。

ラスト近くに2つの剣戟があるのだが、「真剣勝負」の緊張感がこちらにも伝わってきて
、知らないうちに引き込まれている。勝負の必死さが、生々しくかつ痛々しく伝わってくる。
物語は細部にわたっては上手いことたたまれていて、冒頭の側室刺殺シーンからテンポも
良い。キャストも「殺気」を漂わすことに長けた豊川の起用は成功しており、別家様、
吉川晃司も良かった。(殆ど出てこないけど、庶民の見方の殿様の外腹かなにかであろう)
またおぼこい姪役の池脇千鶴も、控えた演技が良かった。最大のハイライトはなんといっても
エンディング前の20分、中老・岸部一徳の悪事が露見し騙されていたことを知った豊川が、
「鳥刺し」でカタルシスを表現することころだろう。願わくば、バカ殿も一緒に殺して欲しかった
けど。
その前に、ご別家様・吉川との一騎打ちもあるのだが、殿中で小太刀しか使えない豊川が、
吉川を仕留めるところもリアリティにあふれていて(武士の剣戟のリアルを見たわけじゃないが)
両人の必死さがビリビリと伝わって来た。しかし、「必死剣・鳥刺し」とは、一生に一度しか
使えないそれこそ「必死」の術であったわけだ。一度死んだはずの武士が相手が油断した
ところで、必殺の剣を繰り出すというもの。これで諸悪の根源であり、自分をだました中老・
岸部一徳を屠ったわけだ。

変に海坂藩の景色の美しさをことさららしくインサートすることもなかったのも映画を締める
結果を生んでいたと感じた。このところこうした役は役所広司と決まったものだが、いささか
too muchな感じもする中、豊川悦司の武士もいいじゃないか、と思った次第。

なおこの都市の日本アカデミー賞に何部門かノミネートされたが、この年には「悪人」「告白」
「十三人の刺客」などが居並び、残念ながら受賞は逃した。しかし非常に良くまとまった映画で
緊張感、演技、カット、編集など高評価しやすい映画であった。
機会があればまた観てみたい。
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<<ストーリー>
「戸時代。東北の海坂藩で近習頭取を努める兼見三左エ門(豊川悦司)には、決して
消えることのない暗い過去があった。三年前、藩主である右京太夫(村上淳)の愛妾、
連子(関めぐみ)を刺殺したのだ。
当時、政治に興味を持つ連子が右京を通じて藩政に口出ししていることは周知の事実。
冷酷で恣意的なその進言は悪政の元凶となっていたが、独善的な右京の存在もあり、
逆らえる者はいなかった。連子の言葉ひとつで人命さえも奪われてゆく毎日。
城下の空気は重苦しさを増していた。三左エ門が連子を刺殺したのはそんな時だった。

最愛の妻、睦江(戸田菜穂)を病気で亡くした三左エ門にとって、それは死に場所を
求めての行動だったが、下されたのは意外にも寛大な処分。一年の閉門後、再び藩主の
傍に仕えることに。釈然としない想いを抱きつつも、亡き妻の姪である里尾(池脇千鶴)の
献身によって、再び生きる力を取り戻してゆく。だが彼は、連子亡き後も変わらぬ窮状を
目の当たりにして、日々、自問自答を続けていた。自分の行為の意味、そしてそれが
藩の役に立ったのか…?

そんなある日、三左エ門は中老の津田民部(岸部一徳)から、右京暗殺計画の情報を
入手したと聞かされる。民部こそ、連子刺殺事件で三左エ門の斬首刑を止まらせた人物。
今またこの重大事を明かしたのは、“鳥刺し”という技を持つ天心独名流の剣豪、
三左エ門に対して、計画を阻止することで藩への貢献の機会を与えるためだった。
そして、討つべき相手は直心流の達人、帯屋隼人正(吉川晃司)。右京太夫の従弟であり、
臆することなく苦言を呈する唯一の存在だったが、今では決定的な対立が生じていた。

“負の過去”と向き合う時が来たことを悟った三左エ門は、藩命に従うことを決意。自分の
進む道を見極めた彼は、里尾の愛をも真正面から受け止める。やがて訪れる隼人正との
決着の日。三左エ門を過酷な運命が待ち受けていた……。」(Movie Walker)

ネタバレですが、岸部一徳が、殿中で側室を刺殺した罪をあえて減じたのは、対立する
ご別家様(吉川、こちらのほうが民百姓の味方)がやがて、本家に対し謀反を企てると
思われるので、その時、彼に対抗できるのは豊川しかいないと見て、あえて軽い罪とし
命を助けて恩義を売っておいて、押しかけた吉川を殺させたのだった。
その直後、「兼見が乱心して帯屋殿を殺した!始末しろ」と叫んだのだった。
兼見が中老に裏切られた、と悟った瞬間だった。裏切りを許せない兼見(豊川)は一旦
斬殺されたと判断されたのだが、どういうふうにやったのかは分からいのだが、最後の
一太刀、「鳥刺し」により、中老(岸部)は大刀で体を突き抜けられ即死したのだった・・・・。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-01-29 23:20 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)