カジュアリティーズ Casualties Of War

●「カジュアリティーズ Casualties Of War」
1989 アメリカ Columbia Pictures,114min.
監督:ブライアン・デ・パルマ   原作:ダニエル・ラング
出演:マイケル・J・フォックス、ショーン・ペン、ドン・ハーヴェイ、ジョン・C・ライリー、ジョン・レグイザモ他
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アメリカがベトナム戦争を正面から清算しはじめたのは、この作品の10年以上前からのこと。
オリバー・ストーン「プラトーン」が1986年、キューブリックの「フルメタル・ジャケット」が1987年、
コッポラが「地獄の黙示録」を製作したのが1979年。そしてスコセッシが戦場ものではないが、
「タクシー・ドライバー」を監督したのは、ベトナム戦争が終わった次の年の1976年だ。
比較的早くに、あの、アメリカを徹底的に傷めつけてしまった戦争を、アメリカ人たちは語り始めたの
だった。
この作品も、デ・パルマなりの語法でベトナム戦争のある一面を原作を元に描きだしたもの。ストーリーは
単純で、5人の偵察隊が、途中の村で若い娘を慰安婦として拉致同行させ、レイプし、じゃまになると
殺してしまったのだが、その中で新兵のエリクソンだけは、そうした行為に終始反対していた。

作戦が終わると、エリクソンは中尉に申告、黒人の中尉は自分の子供の頃の黒人ゆえのいやな思いで
を語りながらも、「これが世の中なんだよ。さからってどうする。5人を別々の部隊に別れさせる、それで
いいだろう」と彼を説得するが、エリックは納得できない。そのうちに、5人の仲間からトイレにいるときに
あやうく手りゅう弾で殺されそうになる。ついに頭にきたエリックは、更に上官の大尉に説明するが、
上に行くほど、やったことは許されないが、これが表に出たら国際問題になる、と逆に蓋をしにかかる。

酒場でやけ酒を飲んでいると、軍の牧師が近づき、彼の悩みを聞く。これがきっかけとなり、5人は逮捕、
軍法会議にかけられ、全て有罪となる。特に直接女を殺した兵士は無期懲役という厳罰だった。

冒頭、サンフランシスコの電車の中で帰還兵のエリックが、電車の中で、偶然見かけた女性が戦場で
関係した女性を思い出させ、そこから悪夢を見るところから始まり、「軍法会議にかかっても奴らは
刑務所なんかにはいかない、すぐに出てきて復讐にくるだろう」という大尉の言葉で目が覚める。
この言葉にエリックは怯えて暮らしていたのだろう。殺した女性に似た女性の後を追って電車を降りた
彼の顔からはつきものがとれたような表情が見て取れたのだった。

実際に起きた話をベースにしているので、嘘は付けないのだが、何だかいつものデ・パルマらしさがなく
上品にまとまっちゃっていたかな、という感じだった。「正義」と「狂気」。戦争はいつも「狂気が勝つ世界」
ということをいやでも見せつけられる。しかし、この映画は不条理をほっぽり出さないで、裁判という形で
カタルシスとしている。実話の限界か、イマジネーションがいま一つ膨らまず、ドキュメンタリーを見せら
れているようだった。若いショーン・ペンが良かったですね。ベトナム戦争を描いた映画としては評価は
下のほうじゃないでしょうか?少なくとも私はそう思いましたが。デ・パルマは好きな監督さんなんですが。
この映画の情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-04-09 22:55 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)