2009年 06月 23日
ラヂオの時間
1997 日本 フジテレビ・東宝 103分
監督・脚本:三谷幸喜
出演:唐沢寿明、鈴木京香、西村雅彦、戸田恵子、井上順、細川俊之、奥貫薫、梶原善、モロ師岡
布施明、近藤芳正、並木史朗、田口浩正、藤村俊二、渡辺謙、小野武彦、市川染五郎ほか。

三谷作品は最初が「THE 有頂天ホテル」で、次が「ザ・マジックアワー」で、今回が初監督作品という
ことになる。いつもの三谷組の出演者たちと、軽妙な脚本、関東喜劇の王道ともいうべき笑い。
ラジオのスタジオで繰り広げられる三谷お得意のシチュエーションコメディだ。最初チョロチョロ中パッパ
てな感じで、しり上がりに好調になっていく。
ちょいとこうした業界に身を置くものとして、「いるんだよなあ、こういう人」という面と「全然ありえないよな」
と判ってしまう面が半ばしたが、後半のいよいよ生放送が始まってからの時間は、クレイジー・キャッツも
かくや、というドタバタ系のお笑い。そしてディテールに拘る三谷流のこだわりが笑いを誘い始める。
最初から笑いっぱなし、って人がいるけど、そこまでは・・・。確かに面白い映画ではあったが、
2作、3作と作り続けることで、完成度は上がっていくような気がします。
懸賞ラジオドラマ小説で優勝し、生ドラマ化されることになった主婦、鈴木みやこ(鈴木京香)。スタジオ
ではリハーサルが行われていた。しかし、主役の千本のっこ(戸田恵子)が、役名を嫌って駄々を
こねたことから、すべてのトラブルが始まる。
優柔不断なプロデューサー牛嶋(西村)は、律子、という名前をメリー・ジェーンにしてしまう。そうすると
舞台は日本ではなく、NYに。職業もパチンコ屋に勤める主婦、でなく、女弁護士に。自分の台本が
どんどん変えられてしまうけど、素人だから文句は言えない。書き直しもスムーズでないので、牛嶋は
深夜放送に来ていた構成作家のバッキーさん(モロ師岡)に、書き直しを頼む。そうすると、台本は
ギャングものになり、ミキサー(田口)のこだわりから舞台がシカゴに変更、相手の男を演じる浜村(細川)
も、自分も英語の名前に、しかも、漁船の船員ではなくパイロットがいい、と言い出す。
そうなるともう主婦の書いた台本はどこへやら。矛盾につじつまを合わせるために、物語はどんどんと
変な方向に進んでいくのだった・・・。
そして本番の生放送の時間、午前0時がやってきた。ところが効果音CDのレコード室が誰かが鍵を
持って帰ってしまい開かないため、ディレクターの工藤(唐沢)らは、昔、音効マンをしていた守衛(藤村)
をスタジオに連れてきて、その場で音を作っていくという始末。

スタジオでは、メリー・ジェーンと自動車販売員で夫のハインリッヒ(井上)夫婦が危機を迎えていたところ
からスタート。しかし、役者たちのわがままで、話は途中で止まり、また話が変わり、と危機の連発。
大波の海辺で出会うメリー・ジェーンとドナルド・マクドナルドのはずが、シカゴに海がないことが判り、
急遽山の中でダムの決壊に会うことになったが、パイロットが山にいるか?という矛盾が発生。
メリー・ジェーンがダムの決壊にあうころ、ドナルド・マクドナルドはハワイ上空で消息を絶つことに。
しかし、編成の堀ノ内(布施)が、スポンサーから文句が入った、まずいよお牛嶋ちゃん、と迫ると
こんどは、ドナルド・マクドナルドはパイロットはパイロットでもNASAのロケットのパイロットで、宇宙の
かなたへ消えていく、という結末にしよう、と牛嶋。これにはさすがに主婦作家のみやこも怒り、主人公の
二人は再開してハッピーエンドでなければいやだ、といいスタジオに立てこもってしまう。
それまで、牛嶋のいいなりの仕事をしてきた工藤だったが、頭に来て席を立つ。しかし、エンディングを
何とかみやこの台本通りにやってあげたい、それは彼女のためではなく、自分の仕事のためであった。
そして、帰ってしまうところのドナルド役の浜村を玄関先で捕まえてスタジオに連れ戻し、何とか
ラストだけはみやこの台本どおりに終えたのだった。

このドラマを聴いているトラックの運転手役の渡辺謙がラストでおいしいところを持っていく。可笑しかった
のは、細川をむりやりスタジオに連れ戻し、ハッピーエンドのセリフを無理やり言わせようとするところ、
藤村俊二の効果マンがラストに打ち上がる花火を体を使って音をだすところ、ハインリッヒ役の井上順が
台本を変更している間の場つなきで、その夜の巨人戦の成績を、役のまましゃべり間を持たせるところ、
廊下で打ち合わせをしているのにお掃除のおばさん(宮本信子)が大きい音を出してじゃまするところ
などかな。まだ初々しいADの奥貫薫が可愛い。ナレーター役の保坂卓を演じた並樹史郎、役者の中の
ムードメーカー、ハインリッヒ役広瀬を演じた井上順が良かった。もちろん、プロデューサーの西村雅彦
は、風見鶏で人の顔色を見ながら世の中を渡っていく人種を、好演。(なぜかプロデューサーって
ブレザー姿なんだよね。ディレクターの唐沢の恰好はディレクターという人種をおちょくっているのか、と
思わせる服装。そして編成マンの布施明のワイシャツとネクタイの色。細かいところに拘ってます)
もともと東京サンシャインボーイズの舞台劇だったもので、基本はスタジオサブ。そして出演者の濃い
個性。これらが三谷脚本と演出で、喜劇として完成度の高いものに仕上がっていた。
「あるある」と思わせるところと、「ありえねえ」と思わせるバカバカしさの手際良い融合は三谷脚本の
真骨頂だろう。それにしても、中断があんなに長いドラマや途中で延々とテーマが流れたりニュースが
入ったりするドラマも普通はありません。スタジオの時計を観ているとどうやら2時間のドラマだったらしい
けど、そんなに長いラジオドラマもありません。それにしても笑った。
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