バーン・アフター・リーディング Burn After Reading

●「バーン・アフター・リーディング Burn After Reading」
2008 アメリカ Mike Zoss Production,Studio Canal ,Working Title Films,93min.
監督・製作・脚本:ジョエル&イーサン・コーエン
出演:ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、
   フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、エリザベス・マーヴェル他
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<感想>
「ノー・カントリー」で覚醒させられ、「レディ・キラー」「ディヴォース・ショウ」
「バートン・フィンク」「ミラーズ・クロッシング」と深みにはまり、「ブラッド・シンプル
/ザ・スリラー」で、判ったかな、と思ったコーエン兄弟だが、この作品でまた判らなくなって
しまった。この作品を面白い、と思えないとコーエン兄弟は判ったことにならないのかな。

異常と健常の境目を、独特の映像と衝撃的な展開でえぐって見せてきたコーエン兄弟、と
自分ながらに理解してきたつもりだが、たしかに本作にもCIAに対する強烈な皮肉が埋設されて
いて、おバカな騒動を描くことによって、あるいはブラピやジムの支配人であるリチャード・
ジェンキンスがマルコヴィッチにハンマーで殴り殺される衝撃のシーンを狂気的に織り込む
ことによって、バカと狂気のシナジーを提供しているように感じる。
「クソややこしい話だな!」と文句を言いながら、事なかれ主義に徹したCIA長官は、実に
見ている健常側の客の目線であり、「も~なんでもいいけん、何にもなかったようにしといて」
と言いたくなるような観賞後の観客の感想を、掬いあげていたようにも思う。
そう理解すると、コーエン作品としてぶれていない見事な作品であり、豪華出演者もそれなりに
バカと狂気を上手く理解して好演していた、といえる。だが、そういう理解でいいのかな、と
クエスチョンマークが頭にいくつも浮かぶ観賞後だった。「え、これでもう終わりなの??」
といううっちゃり方が見事といえば見事だった。
配役では、CIAの分析官をクビになるおバカ1号のマルコヴィッチと、整形代欲しさにトラブル
に巻き込まれるジムの女、リンダ・リツキ=元財務相警護官であったジョージ・クルーニーとは
出会い系で知り合う浮気相手=を演じたフランシス・マクドーマンドが良かった。
ブラピはおバカ2号なのだが、そのブチ切れ具合と、圧倒的にバカで衝撃的は死に方は、脚本の
勝利。この映画ってもう一度見ると、正体が判るのかもしれない。時間を置いてもう一度観て
みることにしよう。

<ストーリー>
「クソややこしい話」なので、以下を引用させていただく。出典はallcininemaに投稿された
三葉十四郎さんのコメントである。
『アカデミー賞受賞後の一発目はコーエン兄弟の本領、得意のブラックユーモアを湛えた軽量風
コメディ、それを豪華キャストでやる。 そこが贅沢。
地球が大写しに現れてぐんぐん地上におりて行くとそこはCIAラングレー、観客の視点は神の
目線になるワケだ。
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マルコビッチ演じる情報分析官オズボーン・コックスはいきなりクビ。 蝶ネクタイ姿も尋常
じゃなく口汚くキレまくる。 帰宅して妻ケイティにした話しが、これから自叙伝を執筆して
いこうと思う、と言うモノで、すでに愛想が尽きていて浮気相手ハリーも居るケイティ
(ティダ・スウィントン)は弁護士と打ち合わせた離婚対策としてオジーの資産調査を始める。 
(これこそ離婚劇「ディボース・ショウ」)
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オジーはヨットでまるで死人みたいな父親に、この国は変わってしまったよ、とボヤく。
(「ノーカントリー」だな)
すると今度は、抜き取られたオジーのデータが入ったディスクがスポーツジムの従業員リンダ
(マクドーマンド)とチャド(ブラピ)の手に渡ってしまい、入っていた自叙伝を国家機密と
勘違いした彼女らは強請りにかかる。 (私欲の為おかしな人物がおかしな事態に至るのは
「ファーゴ」や「ビッグ・リボウスキ」他諸々)
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人物は複雑に絡み合いしながら死人も続出する様になりエスカレートしていくが、描かれる
人物には感情移入出来る人は一人もいない。 
連邦保安官ハリーは浮気がケイティだけに留まらず出会いサイトを通じてリンダとも関係し、
通販で見た快楽椅子を自作。リンダは弛んだ肉や目尻の皺の整形(アゴはいじらないのか)の為に
犯罪に手を染める。
 
どうやらこの映画に出てくる人物たちと言うのは、現実にはこんな人間はいねえよ、と言う
話しになってくる。 この映画の中で一番抑制した芝居しているリチャード・ジェンキンスの
ジムマネージャー、テッドにしたって、元が神父の上にリンダみたいな女に惚れたせいで
他人様の家に忍び込む、こんな人は普通人じゃないだろう。 
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つまりは、彼らの役どころとは、はっきりコメディアンなのだ。おかしな人物がおかしな事を
やっている。 
それらを一級の出演者が敢えてコメディらしくない、現実に居そうな人な方に傾斜した芝居で
演じて、誇張のない現実背景に跳梁している。 
そうするとどうなるかと言うとシニカルさが生まれる。冷笑的な笑いが起きる訳です。
 
お話にはコーエン兄弟の過去作のエッセンスが入ってますよ、みたいな書き方しましたけど、
本作は何もコーエン兄弟が作って来た映画の集大成ってことじゃないですよ。 
改めて判った事はコーエン兄弟はこれまで全くブレの無い世界観に立って映画を創造してきた
のだ、と言うこと。 彼らは常に狂気と正気の端境に立って映画をつくってたんだな。』
(以下略)
この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2010-03-05 22:40 | 洋画=た行 | Trackback(3) | Comments(0)