2010年 04月 05日
ミルク Milk
2009 アメリカ Focus Features,128min.
監督:カス・ヴァン・サント 脚本:ダスティン・ランス・ブラック
出演:ショーン・ペン、ジェームス・フランコ、ジョシュ・ブローリン、エミール・ハーシュ他
<感想>
昨年のアカデミー賞を賑わせた一作。劇場に観に行く機会を逸し、WOWOWでやっと観賞。
ゲイの映画なので、そういうシーンも当然あるのだが、やはり私にはどこかヘテロ感が
付きまとう。それをすれすれのところで感動作に仕上げたカス・ヴァン・サントの手腕は
さすがというべきだろう。いささか単調なキライはあるが・・。
アメリカ現代史にハーヴィ・ミルクという人物がいたことを知らなかった。ほんの40年前の
ことだ。当時のアメリカはベトナム戦争が泥沼化し、黒人問題、ジェンダー問題、世代の対立
などなど今よりも何倍か激しいパラダイムシフトに晒されていた時代だ。
サンフランシスコはフラワームーブメントの発祥の地であり、リベラル、反体制の象徴の
ような都市であった。映画の中にも出てくるハイト・アシュベリーはジャニス・ジョプリンも
一時生活しいた場所だ。
そうした時代と場所で、本作にも出てくるがゲイというだけで逮捕される状況の中、ゲイで
あることをカミングアウトし、彼らのために命を落とした(ホントの原因は私怨だが)男が
実在したことに、素直に感動した。ミルクはサンフランシスコの市政委員に当選するのだが、
そこでの彼の動きは極めて政治家的ではあるが、ゲイを世の中に認知させたい、という思い
は無償のものであり、それは映画からも良く伝わってきた。
映画は当時のニュース映像なども多用し、現実感を加速させている。ゲイの教師から免許を
取り上げる「提案6号」を阻止するために全力を尽くすミルクと仲間だが、キリスト教的
倫理観からすればとんでもない同性愛者たちを認めると「モラルは崩れる」とのインタビューが
使われるが、モラルなんて、教師からゲイを追放してもしなくても崩れるときは何もしなくても
崩れるのだ、今日現在の日本人を見ているとそう思う。そんなことも考えさせた映画だった。
ショーン・ペンはこのところ外れが無い。本作でも、見事にゲイに成りきっている。そして
脇を固めるゲイの仲間たちの演技も良い。加えてドキュメンタリーとしてのストーリーテリング
も、テープに遺言を残すミルクの光景を縦軸にして進めていく方法を取り、判り易く、
次第に衝撃的に山場を構成することに成功している。ミルクはゲイにカミングアウトして、
どんなに自分の身近にゲイがいることを判らせ、彼らがいかに”病気”とかじゃない普段は
普通の人間であることを知らせろ、といっていたが、あの時代、厳格なキリスト教国でゲイを
家族や職場で告白することは、物凄い勇気が必要だったろう。しかし、彼らはそれを乗り越えた
のだ。
この映画をみてつくづく思ったが、アメリカと言う国は多様性の国だなあということ。モノの
考え方だけじゃなくて、現実、人種だって国の成り立ちから合衆国だし、宗教、言語、など
など。今からほんの30年前キリスト教的に普通でないことは許されないことが、どのくらい
彼の国の人々を縛っていたか・・・。だからアメリカの映画って面白いんだろうな。
<ストーリー>
「1972年、ニューヨーク。金融業界で働いていたハーヴィー・ミルク(ぺン)は、20歳も
年下の青年スコット・スミス(ジェームス・フランコ)と出会い、恋に落ちる。
2人は変化を求めてサンフランシスコに移住し、同性愛者も多く住む“カストロ地区”で
カメラ店を開き、新生活をスタートさせる。
陽気なミルクの人柄が多くの人を引き寄せ、いつしか店は同性愛者たちの社交場となっていく。
それにつれてミルクは、同性愛者をはじめとした社会的弱者が抱える問題を改善するために
積極的に活動するようになり、次第に政治に目覚めていく。
そして、市の行政に直接関わるべく、ついには市政執行委員選挙にも立候補する。自由な空気
漂うサンフランシスコとはいえ、同性愛者であるミルクの決断は周囲に大きな波紋を広げていく」
(allcinema)
映画は、スコット・スミスとの関係、ついにはミルクと市長を射殺することになるダン・ホワイト
との関係、市政委員選挙から提案6号を反対多数で排除する活躍や仲間との軋轢、協力。
そんなエピソードがふんだんに散りばめられ、暗殺を予期していたミルクがカセットに
自分が暗殺されたときに聞いてくれ、と残す録音風景を縦軸にすすんでいく。
ハーヴィ・ミルクに興味を覚えた方は、一度Wikipediaなどでをお読みになるといいです。
それとドキュメンタリーがあるので、それも観るといいと思います。
この映画の詳細はこちらまで。
『1970年代のアメリカ。マイノリティのために戦った政治家 ハーヴィー・ミルク…人生最後の8年間 「ミルク」は、 希望のはじまりだった。』 コチラの「ミルク」は、アメリカ史上初のゲイと公表した公職者ハーヴィー・ミルクの48年間の生涯の最後の8年間をガス・ヴァ....... more
あけおめです。本年もよろしくお願いします。
こういう映画見ちゃうと、アメリカって面白い国ですけど、
住みたいとは思わないなぁw
こちらこそ、いつも有難うございます!今年も宜しく
お付き合いください!
「ミルク」のご感想、至極ごもっとも。そう思わせる
映画ってたくさんありますけどね!一体アメリカって・・・
(爆)