2013年 01月 03日
一番美しく
1944 日本 東宝 配給:社団法人・映画配給社
監督:黒澤明
出演:志村喬、清川荘司、菅井一郎、入江たか子、矢口陽子、谷間小百合、尾崎幸子ほか。

<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
敗色濃い昭和19年に国策映画として作られた。冒頭「撃ちてし止まむ」と出る。
そして「情報局選定国民映画」と、国の検閲を通過した作品であることを謳う。
平塚の光学工場で働く女子挺身隊の献身ぶりを描くが、センチメンタルな作風を
見ていると誰に見せるために作ったのだろうか、という気がする。
確かに自己犠牲、滅私奉公の美徳を歌い上げてはいるが、母の死に会えず、
工場で涙ながらに働き続ける主人公の少女のラストシーンから、当時はどういう
印象を受けたのだろうか。親の死に目に会えずとも、お国のために働くことの
尊さを?こんな可憐な少女を鬼畜米英から守らなくてはならない、と?
現実はもっともっと過酷だっただろうから、反感を覚える人たちもいたかもしれない。
どうも戦意高揚のため、というには迫力に欠けるのではないか、こういう映画をよく
当時の戦時国家が許したな、と思える程だ。描いている内容は悪いものではないが
女々しい、と言われなかったのだろうか?
黒澤は本作をどんな思いで撮ったのだろう?彼の気質からすると婉曲に戦争なんか
いやだ、と主張している節が嗅ぎ取れるのだが。
主役の矢口陽子は後の黒澤夫人。彼女の名前が「渡辺」。後年の「生きる」で
主役の志村喬の役名がやはり「渡辺」。黒澤にとって「渡辺」という姓は、
「江分利満」氏の如く、市民共通の、代表者としてのネーミングであったのでは
ないだろうか。
画像からは黒澤らしいフレーミングのこだわりとか、ズームじゃなくてトラック
バックを使うなど既に映像表現者としての個性が見て取れる。

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