許されざる者(2013邦画版)

●「許されざる者(2013邦画版)」
2013 日本 Warner Bros.Pictures.135min.
監督・アダプテーション脚本:李相日 音楽:岩代太郎
出演:渡辺謙、柄本明、柳楽優弥、忽那汐里、小池栄子、近藤芳正、國村隼、滝藤賢一、小澤征悦
    三浦貴大、佐藤浩市他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<評価>
これがオリジナルの映画だったら大絶賛だろう。が、イーストウッド版オリジナルを
貰うにあたり、どのような契約があったかは知らないが、寸分たがわぬといえるほど
そっくりそのままのリメイクをしたことに何の意味があったのだろうか、と考えると
一体、監督は、あるいはプロデュースサイドは何を考えてこの映画を創ったのかと
疑問に思えてくる。イーストウッドにリスペクトしたい、という気持ちが強いのは良く
理解できるが、オリジナルをベースにしつつも李相日版ならではのひねりは許され
なかったのだろうか。原作が持っていたそれまでの西部劇を全く別の切り口で
描いて見せた力強さを、コピーしても何も生まれてこないと思う。

イーストウッド大ファンとして、当然のことながらオリジナルの傑作西部劇(オスカー作品、
監督賞受賞作)は大いに感動して観たものだが、同じストーリーを日本に引き写し、その
ままなぞって見せて何が生まれるというのだろうか。感動の種類も重なってしまう。
この映画で渡辺謙51歳、イーストウッドが1992年にオリジナルを作ったとき彼は60歳を
超えていた。製作側としては渡辺謙ありき、だったと推察されるが、若い。オリジナルに
描かれていた苦楽を重ねて一定の境地に達した老人の醸し出す人生の哀愁、家族への
愛情は、人生観といったものは本作からは感じることは出来ない。黒沢作品「七人の侍」は
、「荒野の7人」にアダプトされるが、しっかりとしたその作品としてのオリジナリティを持っていた。
(渡辺謙の演技の問題ではない)

それにしても、明治初期の北海道に舞台を移す、屯田兵やアイヌの登場など設定は
よく考えられていたが、こういう設定にすることそのものの発想はそう難しい作業では
なかったのではないか。まさか、「よくそっくりつくりましたで賞」なんかを狙ったわけでも
あるまいに。李監督の画面作りや、バイオレンスシーンは好きで、本作でもそのあたりの
演出は、あるいは北海道の冬を巧く使った画面構成は評価できるのだが・・・。
個人的に一番感じたのは「静」と「動」の落差の面白さの違い。それはアクションだけではなく
登場人物たちの心理的なものも大きいと思うのだ。

柄本明もモーガン・フリーマンに似た俳優を持ってきた、という感じをもろに受けた。
柳楽優弥は良かったが、忽名汐里はどうなんだろう。新人賞を受けたけど、おぼこ過ぎないか。
佐藤浩市を「悪人らしくない」という人もいるが、私は不自然さはあまり感じなかった。
こちらもオリジナルのジーン・ハックマンと比べてしまえば、若さが目立つ。狡猾さが若さで
潰れてしまった感がある。

本作を最初に観て、オリジナルを後から見た人は、どう感じるのだろうか・・・。
大好きな映画の鳴り物入りのリメイクだったがゆえに、辛口になった。
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<プロダクションノート&ストーリー>
「第65回アカデミー賞で作品賞など4部門に輝いたクリント・イーストウッド監督による
名作を、日本を舞台にリメイクしたヒューマンドラマ。一度は戦う事をやめた男が、女郎の
願いを聞き入れ、再び戦いの世界に身を投じるようになる姿をつづる。
主演の渡辺謙をはじめ、柄本明、佐藤浩市ら、日本映画界きっての名優が顔を揃えた
力作だ。

明治13年。開拓が進められている北海道に、かつて人斬り十兵衛との異名を持ち恐れ
られていた幕府軍残党・釜田十兵衛(渡辺謙)がいた。十兵衛は愛する女性と出会って
から刀をしまい、子どもをもうけた。幸せも束の間、妻は早世し、男は幼い子どもを抱えて
貧しく厳しい生活をしていた。
そこへ、かつての仲間がやってくる。そして、無残にも切りつけられた女郎のこと、街を
牛耳る暴力的な支配者がその事件に関して深追いさせないこと、女郎は支配者に逆らい
仲間たちとともに賞金を作り敵を討ってほしいと懇願していることを話す。十兵衛は自分の
ためではなく他の者のために、あらゆる覚悟を背負い、再び刀を手にするという苦渋の
決断をする……。」(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2014-07-17 23:25 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)