最後のマイ・ウェイ Cloclo

●「最後のマイ・ウェイ Cloclo」
2012 フランス  LGM Cinéma,StudioCanal and others.149min.
監督:フローラン・エミリオ・シリ
出演:ジェレミー・レニエ、ブノワ・マジメル、モニカ・スカッティーニ、サブリナ・セヴク、アナ・ジラルド他
最後のマイ・ウェイ Cloclo_e0040938_1524032.jpg

<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
60年代の後半から70年代の前半といえば、私のポップス人生のど真ん中。しかし、
驚くことに、本作の主人公クロード・フランソワについてはまるで知らなかったということが
判明した。世界的名曲「マイ・ウェイ」の共作者であることも含め。「マイ・ウェイ」は、ポール・
アンカの曲、と思い込んでいた。恥ずかしい。アンカは英語訳詞を手掛けたに過ぎなかった
のだった。

映画の出来はともかく、ビートルズやモンキーズの時代、フランスで云えば、ミシェル・ポルナレフ
やシルビー・バルタン、ジョニー・アリディらの時代であり、ダニエル・ビダルの「オーシャンゼリゼ」
が日本でも大ヒットした時代で、私の中学から大学のころ、ヒットチャートを追っかけていたころ
なのに、なぜかクロードの名前は聞こえてこなかった。
フランスでは大スターで、本作を観てから、YouTubeで何曲か聞いてみたけど、ちゃんとした
ポップスを歌っているではないか。上手いし。踊れるし。
日本の音楽業界はなんで彼を日本で売り出さなかったのだろうか、不思議でならない。
自分でレコード会社、出版社とか作っちゃったので、権利の問題で難しかったのだろうか。
アメリカに進出しようとしていた矢先、事故で39歳の若さで亡くなっている。

本作は以上のような劇的な人生を生きていたクロード・フランソワの一代伝記である。長いのは
丁寧に描いているからであり、観ていて苦にはならない。むしろ、実にさまざまなエピソードを
持った人だったのだな、ということが良く分かった。上昇志向が強く、完成度に関する要求度が
強く、周りと常に軋轢を生み、片や女性に目がなく手も早く、お金に関する執着も強かった。
そういう人間としてどうよ、という嫌な面もたくさん描かれていて(むしろその方が多い)、
なんだか勘違い人間で鼻持ちならないな、と思わせる一方、幼いころから芸能方面への進出に
理解をしてくれなかった父へのコンプレックスを抱え(コンプレックスと云えばちびで不細工という
ことを自分で分かっていて美容整形をしたりする)ポップス界で成功したい、オランピア劇場を
満員にしたい、という願いというか執着はものすごいエネルギーだった。またギャンブル狂いの
母親にも終生悩まされてもいた。

脚色されているからどこまでが本当なのかは分からないが、存命の人も多いのでかなり
真実に近く描かれているのではないか。彼は永遠の憧れ「ザ・ヴォイス」=フランク・シナトラに
「マイ・ウェイ」という名曲を提供しておきながら、彼と直接会ってはいない。一度ホテルで
姿を見るのだが、恐れ多くて名乗り出ることが出来なかった。そんなナイーブな面も持ち合わせて
いるのだ。虚栄心、金、女、わがまま、才能、孤独、不安、失恋、家族、など実に人間臭い
クロード(クロクロ)・フランソワ。

クロードを演じたジェレミー・レニエという俳優さん、本人にそっくり。一時恋愛関係になるフランス・
ギャルも目の下のほくろも含めてよく似ていた。個人的にはフランソワのマネージャーを務めた
男性を演じた俳優さんが気に入った。

エピソードの多い人の人生なので、それを次々とつなげていくと驚愕の連続なのでそれだけで
映画としての面白さは出るのだが、それに乗っかってしまい、クロードの本心とかそのあたりは
心象風景で置き換えられてしまった感があり、残念。それとタイトルの原題には「マイ・ウェイ」が
使われていない通り、その曲の扱いは、本作の中ではそう重要ではない。ただ、ロンドンの
ロイヤルアルバートホールでのコンサートで歌った後の彼の顔には感動と充実感が見えた。
しかし、私としては、クロード・フランソワという人の一生を観させていただいた本作に出会えて
良かったと心から思った。
最後のマイ・ウェイ Cloclo_e0040938_15241785.jpg

<ストーリー>
「フランク・シナトラの名曲『マイ・ウェイ』の原曲となるシャンソンの作者でもあり、60年代から
70年代のフランス国内で絶大な人気を誇ったポップ・ミュージシャン、クロード・フランソワの
栄光とその知られざる実像を描き出す音楽伝記ドラマ。ショービジネスでの成功の影で
コンプレックスや父との葛藤を抱え、世界進出を目前にしてわずか39歳でこの世を去った
クロードの数奇な運命を、彼の数々のヒット曲とともに華麗に綴る。
主演は「ある子供」「夏時間の庭」のジェレミー・レニエ、共演にブノワ・マジメル、
モニカ・スカッティーニ、マルク・バルベ。
監督は「スズメバチ」「いのちの戦場 -アルジェリア1959-」のフローラン・エミリオ・シリ。

 1939年、エジプトでフランス人の父とイタリア人の母の間に生まれたクロード・フランソワ。
父はスエズ運河を管理する会社で働き、裕福な暮らしをしていたが、スエズ運河が国有化
されたことで失職、一家はモナコに移住し、一転して苦しい生活を余儀なくされる。

そんな中、音楽への夢を抱くクロードは、ショービジネスの世界へと足を踏み入れる。
父親はそんな息子を認めず、“大道芸人はいらない”と拒絶したままこの世を去ってしまう。
やがてデビュー2作目で大ヒットを飛ばしたクロードは、敏腕マネージャー、ポールの力を
得てスター街道を突き進む。飛ぶ鳥を落とす勢いの彼は、アイドル歌手のフランス・ギャル
とも付き合い始めるが…。」(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
Commented by gall_gall at 2014-12-25 22:33
クロクロの映画、観たいです。ギャルもでてるんでしょう
Commented by jazzyoba0083 at 2014-12-26 10:04
gal_galさん、レスありがとうございます。この映画、ホント目からうろこで面白かったです。ギャルもちょこっと出てきたような気がします・・。
by jazzyoba0083 | 2014-07-28 23:10 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(2)