殺意は薔薇の香り Avant l'hiver

●「殺意は薔薇の香り Avan l'hiver」
2013 フランス Les films du 24 103min.
監督・脚本:フィリップ・クローデル
出演:ダニエル・オートゥイユ、クリスティン・スコット・トーマス、レイラ・ベクティ、シャール・ベリ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
日本劇場未公開。WOWOWの「ジャパン・プレミア」で鑑賞。
いかにもフランス映画っぽい、情緒的な映画。もっとスリリングか、と思ったら、さに
あらず。結局は脳神経外科医師とその妻の中年の危機の話だな。近づいてきた喫茶店の
女が、そもそも、医師を殺すことを狙っていたという警察の説明どおりなら、よく分からない
映画というか、荒っぽすぎるストーリー建てじゃないか、という印象を受ける。
ただし、映像は美しい。丁寧なトラック、ドリー、ズーム、パーン。計算された画角、色彩、編集。
あまりにも計算されているので、逆にそれが目について気になりだしてしまうほどだ。

「あるいは裏切りという名の犬」とかのフィルム・ノワールでお馴染みのダニエル・オートゥイユは
ここでは、カフェの女に振り回され、奥さんには捨てられるという役どころ。最近良く見る
クリスティンは、名医を支える奥様で造園家として知られて入るが、基本は家にいる主婦だ。
この二人の演技や存在感は問題はない。クリスティンは夫に30年間放置され、かつ夫の
同級生で親友でもある精神科医との危うい関係、孤独なども上手く演じていてさすがだ、と感じた。

金融界に進んだ息子とは折り合いが悪く、息子は嫁とも上手く行ってない。
そんな状況で事件は起きる。映画は、誰かが死んでその検視の現場での医師と警察とのやりとり
からスタートする。

高名な脳神経外科医ポールは、ある日入ったカフェでウェイトレスから「先生、幼いころの
手術ではお世話になりました」とお礼を言われる。「いや僕は脳神経外科だから盲腸は
手術しないんだ」。ここで既に冒頭で死んでいるのがウエイトレスとわかる。ならばなぜ
ウエイトレスは死んだのか。
以下にそれが展開する。この辺りは上手いところだ。

その後、医師の自宅と病院とまた個人的にやっているクリニックとに拘らずバラの花束が
送られ続ける。あのウエイトレスがやっているのか、とある日詰め寄る医師だが、どうやら
誤解らしい。そうした中で、名医と言われた医師が手術中緊張のためメスを持ちづづけられなく
なり、助手に助けられるということがあった。病院長からしばらく安めと休職を指示される。

最初のんびりしているつもりだったが、薔薇と、ルーと名乗るあの女が気になる。一方で
次第に彼女に惹かれていく自分がいた。妻リュシーは、旦那の行動がおかしいと後をつけると
若い女と会っている。家にも電話がかかってくる。普段から家に居ない旦那と間に隙間風が
吹き始めていたところに、これが決定的な材料となり、二人の間は最悪となる。
そして、リュシーも、旦那の親友で、彼女を想っていることを口にするジェラールに惹かれ始める。
ルーは、自分がやっているクリニックのビルに入っている親友のジェラールの精神科にも
来ているらしく、再び、彼女を捕まえて問いただす。そしてジェラールに彼女のことを教えろと
いうが、守秘義務があるから教えられないことはお前もわかっているだろうと言われてしまう。

ある日、デートをしていると、ルーは「私と寝ないの?」と聞いてくるが、ポールにはその気はない。
すると泣きながらその場をさり、消えてしまうルー。通っているという大学に行ってみるが、そんな
女学生はいないという。ポールはジェラールの診察室に忍び込み、カルテから住所を知り、
行ってみると、自分は病気でもう長くはないと、カセットを渡して、聞いて帰ってくれ、という。

そして明くる日、ポールは警察に同行を求められる。ルーが自殺しているから見てくれと。
現場にはあんたの電話番号のほかなにもないのだという。何故彼女は自殺したのか。
警察は、彼女は田舎の貧しい家の出身で、その一味が中年の男ばかり狙った強盗殺人犯だ
と教えた。「あなたもあと一歩で危なかったのですよ」と。すると、あの薔薇はやはりルーだったのか?

ルーが強盗団の一味とすれば、金を持っていそうなポールに目をつけて、カフェで声を
掛ける。関係を持つ中で、強盗殺人。では何で薔薇を送るのか?しかも大量に。安くなかろうに。

だいたいポールが最初からの顛末を妻に話しておけば大事になならなかったと思うのだが。
ちょっとポールの行動に納得が行かないな。いかに倦怠期であったとはいえ、だ。
自分が医師としての名声を獲得できたのも妻のバックアップがあったればこそ。そこをもう少し
考えなくちゃねえ。そこら辺のお話の持って行き方がヘタだったんじゃないか。
最後には夫婦はよりを戻し、ギクシャクしていた親友ともまた交際が始まり、息子夫婦も関係が
改善されたようで、ハッピーエンドな笑顔が並ぶのだが、エンディングで、彼女からもらった
カセットから流れる曲に耳を傾けるポール、近づいてきた妻の顔。そこで映画は終わるのだが、
余韻というにはあまりにも説明不足なんじゃないかな、見ている人の想像力で楽しむという
範疇を超えて、「どういこと??」と言いたくなる。せっかく雰囲気のいい作品だったのに、残念
な仕上がりになったと言わざるを得ない。
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by jazzyoba0083 | 2015-02-09 15:30 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)