チャッピー Chappie

●「チャッピー Chappie」
2015 アメリカ・メキシコ・南アフリカ Columbia Pictures (presents) and more.120min.
監督・(共同)製作・(共同)脚本:ニール・ブロムカンプ
出演者:シャールト・コプリー、テヴ・パテル、ヒュー・ジャックマン、ニンジャ、ヨ=ランディ・ヴィッサ
     ホセ・パブロ・カンティージョ、シガニー・ウィーバー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ブロムカンプの第三作。なにせデビュー版「第9地区」のインパクトがもの凄かったので
期待してみちゃうというバイアスがかかるのだが、多くの人が否定的だった第二作
「エリジウム」も私は面白く観たので、まあ「第9地区」を凌ぐのは無理としても相当の
期待をしてシネコンにいったわけです。前評判もあまり芳しくないというか、日本でも
あまりプロモーションに力が入ってないように見えますね。すでにシネコンでは1日3回、
悪い時間帯での上映になっちゃってました。日曜の小さい小屋もガラガラ。

映画は例によって治安最悪の南アフリカ、ヨハネスブルグが舞台となる。で、「ロボコップ」
とか、一連のマーヴェル系アメコミでの既視感もありありで、こりゃ、丁寧には作ってある
けど、ストーリー的にはなんだかなあ、という展開か?と思っていたら、ラスト30分くらいで
ブロムカンプ節炸裂で、意外性(そうびっくりもしないのだが)の展開となり、なかなか
満足して席を立つことが出来た。

本来人間と同じ意識を持たないドロイドとして開発した警官ロボットに、開発者のディオンが
人間と同じ「心」の成長を持つプログラミングの開発に成功、廃棄となることになっていた
22号を会社のルールに違反して持ち出し、自分で組み立てようとしたのだ。
ところが、ロボット警察に手を焼いていた、お人好しギャング4人組が、ロボットならリモコンで
スイッチ切れるだろう、というパンピー的な発想をし、ディオンと22号を拉致してしまう。
それは、ロボット警官の無能化を目的としていたはずだった。しかし、人間の意識回路を
インストールすることで、悪の味方をするドロイドとして、何とかならないか、とディオンを
ボコボコにして、ついに、意識レベル赤ちゃんのドロイド「チャッピー」が産まれたのだ。
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チンピラ3人組がボスから上納金を納めなくては自分たちが殺される状況の中で、
真っ白な意識をもつ「チャッピー」は、チンピラの中で育てられていくことになってしまった。
その辺りの描写は面白かった。言葉使いとか、クビから太り金の鎖をジャラジャラ下げたり、
いかつい歩き方など、チャッピーの吸収は早かった。チンピラは、チャッピーの成長を促す
ため、街に一人で放り出す。しかし、不良たちから警官と見られているので、石を投げられ
火炎瓶をぶつけられ、さんざんな目にあって、チンピラのもとに帰ってくる。なんて自分が
こんなひどい目に合わされなくてはならないのかと、幼心に苦悩もしていた。しかし、
チャッピーの創造主であるディオンは、チャッピーに「犯罪」を犯してはいけない、「人間は
傷つけてはいけない」という約束だけはさせる。

一方、警察当局から100台オーダーの受注を受けたディオンの手柄を苦々しく思っていたのが
巨大ドロイドで、人間がヘルメットを被って制御する「ムース」というマシンを作ったヴィンセント
(ヒュー・ジャックマン)。ドロイドの登場で犯罪も減り、巨大なマシンの出番が無くなったことから
研究費もカットされ、なんとか騒動を起こしたいヴィンセントであった。そこで彼は警察ドロイドの
無能化をプログラミングすることにした。システムに入り込んで、警察ロボットを無能化、
街はまた犯罪に溢れ、しかも、チャッピーがチンピラと組んで現金輸送車を襲うシーンがテレビで
放映されるに及び、警察は、ドロイドの契約を破棄、会社は「ムース」に出動命令をだした。
社長(シガーニー・ウィーヴァー)は、ドロイド全てを破壊せよ、と指示する。そしてついに最後の
戦いが始まる。空中を飛んで、チンピラとチャッピーのアジトにやってきた「ムース」はチンピラたちに
容赦無い攻撃を加え、チンピラだけど結構気のいい「ママ」ヨーランディも、チャッピーの理解者でも
あった「アメリカ」も惨殺されてしまう。最後に生き残ったニンジャは、無駄な戦いを挑むが、
ヨーランディーの最後の一撃で「ムース」は破壊された。しかしヨーランディは射殺されてしまう。
されに、ディオンも撃たれ瀕死となる。ディオンを助けようとチャッピーは会社に乗り込み、
「ムース」を操縦していたヴィンセントを捕まえてボコボコにする。

そしてチャッピーは研究棟にはいり、ディオンと自分の「次の場所で」生きる道の作業にかかる。
チャッピーは意識をデータ化することを自らの知能で可能にしていて、「ムース」のヘルメットを
使い、まずはディオンを、たった一台残された実験用ドロイドにディオンの意識を転送する。
ディオンの肉体は死亡するた、ディオンの意識はドロイドに移転された。されに破棄される予定
だったため5日分のバッテリーしか無い上、充電機能も破壊されて「余命」の無いチャッピーが
別の充電可能なドロイド(36号だったかな)に意識を転送。
さらに、チャッピーは、死んでしまったヨーランディの前に収集していた意識を、PCで遠隔組み立て
したドロイドに移植したのだった。これで、チャッピー、創造主(メイカーといっていた)ディオン、
そしてチンピラの中で一番チャッピーを理解しかわいがっていた「ママ」ヨーランディの3人(?)は
ドロイドとして、「次の場所」での生き方をすることになった。(続編ありそう)
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こういうストーリーで、モーションキャプチャーを使った映像も、残酷なシーンは日本では
カットされた部分もあったようだが、(イスラム国がらみ?)、全体として、テンポ、活劇、そして
寓意性もあり、突っ込みどころもあるけど、面白く見ることが出来た。

「A・I」や、先日までWOWOWで放映されていた「エクスタント」など、人間の「意識」を持った
ドロイドと人間の「心」の問題、特に「罪」や「愛」についてのテーマはこれまでもいくつか取り上げ
られてきた。人間型警察ロボットも普通だし、これに対抗しようとするシステムの違う陳腐化した
巨大ドロイドとの同じ組織内、会社内での争いもありがちだし、気の良いギャングの存在も
想定内、ラストの戦いも予想はできるし、チャッピーが人間の優しい心を得て、愛する人を
救おうとする行為も想定できる。しかし最後の最後にこういうやり方でねえ、というのは
ブロムカンプが一矢報いた感じだ。しかし、(不可能と思うが)人間の意識をデータ化して
これを他の高性能演算機を備えたロボットに移植することが出来るなら、人間は永久に
死なないことになる。人間の体をしているかどうかは別として。これはSFの世界では常識なの
かもしれないが、私には結構衝撃的だった。悪人もそのまま残るわけだし、「人間の意識」の
データ化、なんて成功しないほうがいいな。さて、ドロイドになった3人(?)、続編はあるのか?

<ストーリー>
「2016年.犯罪多発都市、南アフリカ・ヨハネスブルグ。ロボット開発者のディオン(デーヴ・
パテル)は、学習機能を備えたAI(人工知能)を搭載した世界でただ一体のロボットを極秘で
製作。“チャッピー”と名付けられたそのロボットを起動させると、まるで子供のように純粋な
状態であった。
だが、チャッピーはディオンとともにストリートギャングにさらわれ、そのAIにはギャングに
よって生きるための術が叩き込まれていく。そんな中、加速度的に成長するAIは彼自身の
バッテリーが残り5日間しかないことを知り、さらに死への恐怖をも感じるようになっていく。
やがて、ただ生きることを目的としたチャッピーは人知を超えた行動を起こし始めるが……。」
(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-06-07 11:30 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)