2015年 08月 29日
ダーク・ブラッド Dark Blood
2012 アメリカ・イギリス・オランダ Fine Line Features,Scala Productions.86min.
監督:ジョルジュ・シュルイツァー
出演:リヴァー・フェニックス、ジョナサン・プライス、ジュディ・デイヴィス、カレン・ブラック他
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
夭逝したことから、よくジェームズ・ディーンと比べられるリヴァー・フェニックス。
透き通ったような純粋さ、時折みせる儚さは確かに共通したところもあろう。
本作は、23歳でヤクのオーバードーズで亡くなったそのリヴァー・フェニックスの
遺作。撮影中、クランクアップ寸前での急死だったため、映画はお蔵入りとなった。
しかし、監督のシュルイツァーが自分が病気になり余命幾ばくもないことを知り、
この20年前の映画を完成させることを計画。版権などをクリアし、ナレーションを追加する
などし2012年に完成、公開したのだ。
映画の冒頭に、監督自身がこの映画の成立過程を説明している。
短い作品だが、何か夢を見ているような映画で、リヴァー・フェニックスの妖しくも
儚げなポジションが良く似合っていると感じた。物語の設定が良かった。
原爆実験で誰も住まなくなった先住民居留区近くに、一人暮らす”ボーイ”(リヴァー)。
結婚して12年、子供もいるが最近倦怠期に入っているハリウッドの俳優夫婦。
その夫婦が小旅行とて、ベントレーを駆って砂漠を走るが、途中でエンスト。クルマが
全くと言って通らず、携帯も圏外になるような場所で、夫ハリーの提案で動かないことが
大事、とクルマで夜を明かすことを決めたが、妻のバフィーは、遠くに見えた明かりが
気になり、一人で歩いて行ってみる。そこがボーイの暮らす小屋だったのだ。
翌朝夫も合流するが、ボーイとバフィーは惹かれ合っていく。それが気に入らない
ハリーであった。ボーイの仲間のところでクルマを修理してもらえることになったが、その間
ボーイの家にいなくてはならない。次の作品に向けて一刻も早く戻りたいハリー、
ボーイとのかりそめの恋に浮かれる?バフィー。
3人の間には次第に勘定のズレが生まれてきて、ついには悲劇が起きるのだった。
リヴァー演じるボーイという八分の一先住民の血が混じっている若い男性。妻は恐らく
原爆実験の影響なのだろう、白血病で死んでいる。一人で先住民の土産物?を作って
生計をたてているらしいが、正体はよく分からない。しかし、基本は優しいいい人で、
それ故、少しのことで傷つきやすいのだ。
ボーイは最後には、夫ハリーともめて、斧で頭を殴られ死んでしまうのだが、いまわのきわに
バフィーを呼んで、その胸の中で息を引き取るのだ。その儚さに、見ている方はまるで夢を
見ているような気分になる。
原爆シェルターを持っていたり、現実と夢が交差するような映画は独特の味わいを持っていたと
思う。ただストーリーの骨子そのものはもう一捻り欲しいと感じた。
リヴァーファンに取ってはたまらない、しかも悲しい1本であろう。
<ストーリー>
「スタンド・バイ・ミー」のリヴァー・フェニックスの遺作。彼の死で未完となっていたが、
「マイセン幻影」のジョルジュ・シュルイツァー監督が自らの手で完成させた。
共演は、「マリー・アントワネット」のジュディ・デイヴィス、「エビータ」のジョナサン・プライス。
2013年ベルリン国際映画祭ほかで公式上映。
かつて白人がネイティブ・アメリカンを迫害し、核実験を繰り返していた砂漠が広がる
アメリカ南西部。倦怠期を迎えた俳優夫婦のハリー(ジョナサン・プライス)とバフィー
(ジュディ・デイヴィス)は、2人の関係を立て直すため2度目のハネムーンのつもりで、
ハリウッドから週末旅行にやってきた。
しかし、運転していたベントレーが故障してしまい、無人の荒野で夜を過ごす羽目に。
朝まで車内で待つと言うハリーに苛立つバフィーは助けを呼びに行く。遠くにかすかに
見えた光を頼りに砂漠を歩き続けた彼女は、今にも倒れそうな掘建て小屋を見つける。
そこに住むホピ・インディアンの血が8分の1流れる青年ボーイ(リヴァー・フェニックス)は、
ネイティブ・アメリカンの妻を白血病で亡くして以来、社会との関係を絶って、1人で暮らして
いる。世界の終わりが近づいていると信じる彼は、地下にシェルターを作っていた。
そこには、偉大な書物、ビタミン剤、魔法の力を持つといわれるカッチーナ人形など、
世界終焉後にも保存されるべきものが集められていた。憔悴したバフィーを見たボーイは、
彼女を手に入れたいという欲望にかられる。バフィーはそんなボーイの思惑に気づかず、
助けてもらおうとハリーと車の元へボーイを連れていく。ハリーとバフィーは車を近くの町で
修理を出すために、ボーイの小屋で待つことになる。
バフィーは次第にボーイの危うさや純粋さに惹かれていくが、ハリーはボーイが自分とは
相容れない人間であることを察し、ボーイも軽蔑する白人文化を象徴するようなハリーを
忌み嫌う。3人の間に流れる空気は、次第に緊迫していく……。」(Movie Waker)
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