チョコレートドーナツ Any Day Now

●「チョコレートドーナツ Any Day Now」
2012 アメリカ PFM Pictures.97min.
監督・(共同製作・脚本):トラヴィス・ファイン
出演:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ、フランシス・フィッシャー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
実話にインスパイアされた、とはいえ時代設定や人物のバックグラウンドに多少あざとい
ところは感じるが、結末も含め感動するストーリーではある。差別を描こうとするとこういう
シチュエイションにならざるを得ないのかな。よく練りこまれた脚本は短い時間の映画で
あるにも関わらず、多弁であり、傑作であると感じた。

1970年代のアメリカ、ゲイとダウン症の少年という組み合わせ。時代はまだまだLGBTに
キツイ差別があった頃であり、片や、ダウン症の子どもたちに対しても今ほど理解が
進んでいなかった時代だ。そんな時代に生きたゲイバーのダンサーと弁護士のカップル、
彼らはダンサーのアパートの隣室に暮らし、母親がドラッグジャンキーで育児放棄された
ダウン症の少年を引取り自分らの子どもとして育てていこうとする話。
実生活でもバイセクシャルであるという、イギリス出身のトニー賞俳優アラン・カミングの
熱演が映画を熱いものにしている。また彼の歌も上手い。主役の二人、顔が「真夜中の
カーボーイ」のコンビ、ダスティン・ホフマンとジョン・ボイトに似ているなあ、と思った。

世間的にも法律的にもゲイの関係は白い目で見られていた時代に、そのカップルが
これも世間的に理解が遅れていたダウン症の少年を養子として育てていこうとするのだから
その容易の無さは想像に難くない。そうした困難を乗り越え世間と戦いを止めない二人なの
だが、結末は悲劇なのだ。根本的に「普遍的な人間の愛とは何か?」ということを問い詰める
お話で、ゲイのダンサー、ルディ・ドナテロ=アラン・カミングがラストに唄う、ボブ・ディランの
名曲「I shall be released」という歌がすべてを物語るのだ。この歌はYouTubeで確認できる。

「基本的人権」「多様性への寛容」といういつの時代にも要請される基本が、人間という
動物はなかなか達成できない。その一面を本作は鋭く指摘している。ラストで、少年の
行末を、主人公の一人、弁護士ポール・フラガー=ギャレット・ディラハントが結果的に
彼らの邪魔をした裁判官や検事らに手紙を書くのだが、彼らの反応を知りたいところだった。
まあ、映画的には余韻を残す、という意味では文句はないところではあるのだが。

邦題のチョコレートドーナツとは、ダウン症のマルコ少年の大好物。まあ原題では何の
ことか分からないので、いい感じのネーミングではなかったか。
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<ストーリー>
1970年代の実話を基に、育児放棄されたダウン症の少年を育てたゲイのカップルの
姿を描くヒューマンドラマ。
出演は、ドラマ『グッドワイフ』のアラン・カミング、「ノーカントリー」のギャレット・ディラハント。
監督は、本作が日本公開初作品となるトラヴィス・ファイン。
第11回トライベッカ映画祭観客賞他受賞多数。

1979年、カリフォルニア。ゲイであることを隠しながら生きる弁護士のポール(ギャレット・
ディラハント)と、シンガーを夢見ながらショーダンサーとして働いているルディ(アラン・
カミング)が出会う。2人はすぐ惹かれ合い、恋に落ちた。

ルディが暮らすアパートの隣に、ダウン症の子ども・マルコ(アイザック・レイヴァ)と
薬物依存症の母親が住んでいた。ある夜、マルコの母親は大音量の音楽をかけたまま
男といなくなってしまう。翌朝、ルディが騒音を注意しに隣に乗り込むと、小さくうずくまって
母親の帰りを待つマルコがいた。ルディは助言を求めてポールが働く検事局に行くが、
ポールは家庭局に連絡してマルコを施設に預けろと言い捨てる。

失望したルディがアパートに戻ると、マルコの母親は薬物所持で逮捕され、マルコは
お気に入りの人形アシュリーを抱いたまま、強制的に施設に連れて行かれる。
翌日、ポールはルディに昨日の言葉を詫びる。2人はお互いが歩んできた人生を
それぞれ打ち明け、さらに深い結びつきを確信する。その帰り道、家に帰ろうと施設を
抜け出したマルコが夜の街を1人で歩いていた。ポールとルディはいとこと関係を偽り、
マルコと一緒に暮らし始める。マルコは初めて学校に通い、ポールはマルコの宿題を
手伝い、ルディは毎朝朝食を作り、眠る前にはハッピーエンドの話を聞かせて眠らせる。
2人はまるで本当の親子のようにマルコを愛し、大切に育てた。

ルディは、ポールから贈られたテープレコーダーでデモテープを作り、そのテープが
クラブオーナーの目にとまってシンガーの夢を掴む。3人で暮らし始めて約1年が経った
ある日、ポールとルディがゲイのカップルであることが周囲にバレてしまう。関係を偽った
ことが原因でマルコは家庭局に連れて行かれ、ポールは仕事を解雇される。今こそ法律で
世界を変えるチャンスだというルディの言葉に、ポールは法を学んでいたときの情熱を
取り戻す。そして、マルコを取り戻すための裁判に挑む……。」(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-10-10 23:30 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)