アバウト・タイム ~愛しい時間について~ About Time

●「アバウト・タイム ~愛おしき時間について~ About Time」
2013 イギリス Translux,Working Title Films.Universal Pictures (Dist.) 124min.
出演・脚本・(共同)製作総指揮:リチャード・カーチス
出演:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムズ、ビル・ナイ、リディア・ウィルソン、リンゼイ・ダンカン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
レイチェルとタイムトラベル目当てで鑑賞。これが中々の出来で、何か観終わってから
心温まる思いだった。そういう映画ってありますよね。さすがは「ラブ・アクチュアリー」の
監督・脚本家だけのことはある。というかリチャード・カーチスは本来作家であり、監督を
務めたのはまだ数本だ。彼の持つ人間に対する優しい視線を感じます。

ティムはイギリスのコーンウォールという町に住む学生。大学の教員を早めにリタイアした
父と、母、元気者の妹キットカット、認知症か?と思わせるが人のよい伯父さんのデズモンド、
5人で幸せな生活を送っていた。お城みたいな家に住んでいるんだな。

21歳になったティムは父親から男系の特殊能力として、タイムトラベルが出来る、と
教えられたティム。冴えない男の子だったが、これで俄然有利なガールハントに乗り出すのだ。
暗闇で拳を握り目を瞑り行きたい頃のイメージを頭に浮かべればいいだけ。
但し、未来には行けない。
過去に行った場所だけだ。女の子と出会い、声をかけるがその後うまく行かなければ、ちょっと
失礼してちょっとだけ過去に遡り、反省を元に次のアクションを展開する。当然うまくいくのだ。

そうして見つけたのがレイチェル・マクアダムズ演じるアメリカ人女性メアリーだ。
彼女は出版社に勤務しているという。最初の出会いはティムが友人と行った暗闇デート
クラブ。会話を重ね外へ出ると、メアリーは大層な美人。さっそく電話番号を聞き出し、
再会を約束しその夜は別れる。

ロンドンに出て弁護士を目指し下宿した大家は父の友人の劇作家。彼の最新作の
上演で俳優が長いセリフを忘れるという失態を犯し、劇は台無し、ということを聞き、
彼は過去に遡り、俳優に合ってセリフの復習を、と忠告することにした。
また舞台上では手書きのプロンプターで俳優を応援し、結果、見事劇は大成功を納め、
翌日の新聞の評価も極めて高いものとなった。
そこで彼はメアリーに連絡しようとスマホを出すと、彼女の名前がない。
そうか、彼女に出会った時間に劇の応援に行ったため過去が上書きされてしまったのだ。

ティムは、メアリーがケイト・モスの大ファンと言っていたことを思い出し、ケイト・モスの
写真展があることから、しばらくそこに通いつめ、ついにメアリーを見つける。
ナンパしようとするが、初めてであった男が自分の名前を知っているし、なんかキモい、と
ガードを固くするメアリー。さらに彼女にはボーイフレンドがいたのだった。

そこでメアリーに「あなた刑事?」とか言われながら、ボーイフレンドと出会った友人の
パーティーの場所を聞き出し、過去へ。そして、そこでメアリーと出会い、ここを出て
二人で食事しない?と持ちかけて成功する。二人の話は大いに弾み、お互いに深い
好意を抱いたのだった。その後、メアリーは自分の下宿に誘い、一夜を共にする。
もうふたりともぞっこんだった。上手いセックスをするために何回も時間を遡り・・・。
そのあたりの光景は面白く微笑ましかった。

二人は同棲を始め、ティムは弁護士となり活躍を始めた。法廷では1度だけ過去に
行って状況を好転させたことがあったが、ティムは金儲けとかにタイムトラベルを
利用しなかった。

ここまでの前半は微笑ましいラブストーリーだ。時間を自由に操ることで最愛の人を
手にしたティムだが、時間を行き来するだけでは人間は幸福になることは出来ないと
知るようになる人間ドラマが後半に繰り広げられる。これがリチャード・カーチスの
本領発揮である。
アメリカから両親が出てきてメアリーはティムを紹介する。そしてプロポーズ、田舎での
大嵐の中での結婚式、そして最初の出産、二人目の出産、
キットカットのうまくいかない人生をやり直させたり、ついに来る父親の死、それらに
二人は立ち向かうのだ。
ティムは幸せだったからタイムトラベルを使わないことが多くなったが、しかしキットカットの
事故や父親との別れに際してはこれを使うことになる。

後半はシリアスながら心温まるエピソードが並び、時々タイムトラベルによるパラドックスが
分からなくなる部分もあったが、総じて「いい感じ」でエンディングを迎える。
最愛のメアリーに何か起きるのか、と心配したがそれは無かった。
ティムの3人の子のうち下の子二人は男の子だ。いずれティムも秘密を打ち明ける時がくる
わけだ。

時間をいじれるというのは人間の究極の夢だが、それだけで決して幸せは訪れない。
ティムは父親から同じ日を2回過ごすと最初の失敗が戻ることでより良い幸せな日になる、と
教えられ、数年は毎日を二度経験してみていたが、毎日がしっかり幸せであるように過ごし、
その日一日を、大切な人との日常を大切に生きることこそが大切と知ったのだ。
たとえば毎朝行くテイクアウトのコーヒーショップの店員にちゃんと目を観て話をする、
リアルな時間の中で他人と幸せを分かち合ってこその幸せだとわかるのである。

イギリスという舞台設定。気の利いた上質なヒューモア、レイチェルがとても美しい。
また妹のキットカット、叔父さんのデズモンドの存在、弁護士事務所の吏員ローリー、
下宿先の劇作家の先生らティムとメアリーを取り囲む人々の優しい存在が気持ちを暖かく
する。IMDbやRotten Tomatoesでもびっくりするくらい評価が高い。

個人的にはお城のような家に住み、お金の心配は要らず、弁護士になりという設定が
まあ、生活にギスギスするような設定ではお話にならないのだろいうけど、ちょっと
ハイブロウで鼻についてしまった。それがマイナス点だ。

最初だけ見るとちゃっちいタイムトラベルの映画、と思われがちだが、さにあらず。
なかなかポイントの高い作品である。ちなみに「アバウト・タイム」とは、サブタイトル通り
時間について考えるということと、「もう時間だよ」という意味が掛けてあるのではないか。
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<ストーリー>
イギリス南西部でティム(ドーナル・グリーソン)はちょっと風変わりな両親と妹、伯父ら
家族とともに暮らしていた。家族との仲は良好であるものの、自分になかなか自信が
持てず、恋人ができないでいた。

21歳の誕生日を迎えた日、ティムは父(ビル・ナイ)からある秘密を告げられる。
それは、一族に生まれた男子にはタイムトラベル能力が備わっているというものだった。
はじめは冗談かと思い信じることができないでいたが、能力の使い方を覚えてからは
恋人を作るために繰り返しタイムトラベルをするようになる。

弁護士を目指すティムはロンドンへ移住、そこで出会ったメアリー(レイチェル・マクアダムス)
に恋をする。しかしタイムトラベルしたせいでメアリーと出会っていないことになってしまう。
なんとか彼女の愛を得た後も、タイムトラベルを繰り返して人生の成功を掴もうとするティム。
やがて、どんなにタイムトラベルをしようと誰にでも起こりうる不運や波乱を避けることは
できないことを知り、本当の幸せに気付いていく(Movie Walker)

この作品の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-12-03 23:35 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)