フィフス・エステート The Fifth Estate

●「フィフス・エステート The Fifth Estate」
2013 アメリカ・ベルギー Dreamworks Pictures,Reliance Entertainment.128min.
監督:ビル・コンドン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、ダニエル・ブリュール、ローラ・リニー、スタンリー・トゥッチ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
官公庁や公的機関のサーバーをハッキングし、外交交渉などの秘密文章をネットに
「ウィキリークス」と称してアップし告発する、ジュリアン・アサンジの物語を、彼の側近で
後にこの映画の原作の一つとなる本を書いたダニエル・ドムシャイトー=ベルクの目線で
綴るセミドキュメント映画だ。本作、ネットハッキングというテクニカル的に難しいことをしている
上に、暴露する内容もまた難しく、輪をかけてアサンジという人物も難しいので映画として理解
するのにとても疲れる。故に興収的には大コケで、この年の「大コケナンバー・ワン作品」と
なってしまった。で、映画の出来として、観ている人にわかりづらいというのは言い訳の出来ない
欠点ではあるが、個人的には2回観たが、腰を据えて見るとそう悪い映画でもない。

ただ、字幕が多いのでそれを追いかけるのに苦労するし、追いかけ切らないとストーリーが
見えてこない。本作、コケているので日本での劇場は、さしものカンバーバッチが主演と
いえども辛く、未公開となってしまった。出足のイントロなんか、結構かっこいいんだけどな。

アサンジというハッカー、正義感に燃えているのか、ハッキングして暴露するという手段が
目的化してしまっているのか。唯我独尊、わがまま、偏屈、嘘つき、他人への思いやり欠如
人間不信という人間としては魅力の無いカルト系オタクなんだが、ウィキリークスが果たした
役割がないとはいえないのもまた確かである。日本の核燃料サイクル「もんじゅ」の、無いと
された画像を晒したのもウィキリークスだったわけで。

だだ、本作でも何回も出てくるが、秘密裏で交渉されたものを実名が特定されてしまうナマの
ままでアップするのは、人命に関わることで止めなければならないが、アサンジは「それは
我々の仕事ではない」と、否定。特にイラク情報の漏洩に関しては、米陸軍の若い情報分析官の
面白半分での漏洩に基づくウィキリークスのやり方は、果たして正義だったといえるのか、と
いうのは観ている人はだいたい分かるだろう。
その辺り、ガーディアン、ヴェルト、NYタイムズという世界をリードする新聞各社とのやりとりや
アサンジ自身ただ一人の味方、というベルクとのやりとりに詳しく描かれていく。結局彼らすら
アサンジの元を去らしめる行為を譲らないのだった。

ウィキリークスを始めた頃、ベルクが参加した頃は、スイス銀行を舞台にした欧米実業家の
脱税を告発したり、アフリカの独裁者の所業を告発したりしているころは良かった。何より
アサンジ自身が「告発者の匿名性」に拘ったからだ。しかし彼の思想は次第に暴走を始めて
しまうのだ。 カルトの家に生まれた環境もあるだろうが、アサンジという男、いわばネット社会が
産んだ鬼っ子、怪物といえる。

彼は未だに世界を逃げまわり、ハッキングした情報をウィキリークスに流し続けている。おそらく
始めた当時に比べてスタッフ?は随分増えたことだろう。但し、その中のどの位が「社会正義」
の執行者として的確なんだろうか、そんなことが頭に浮かんだ映画だった。
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<ストーリー等>
内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジが、危険を冒しながらも
「リーク」という武器のみで国家権力の不正に立ち向かう姿をサスペンスフルに描いた
ドラマ。「SHERLOCK シャーロック」の英人気俳優ベネディクト・カンバーバッチが、
アサンジ役を務めた。告発者を守り、秘密、隠匿情報を公開する「ウィキリークス」の
創始者ジュリアン・アサンジと、彼のカリスマ性にひかれた仲間たちは、世界的な新聞社や
テレビ局を上回る秘密情報の数々を発信していく。

彼らが暴露する情報は次第に過激で危険なものになっていき、ウィキリークスはアメリカ
国防総省や世界の主要国の国家機関にとって脅威となっていく。アサンジの右腕存在と
なるダニエル・ベルク役に、「ラッシュ プライドと友情」のダニエル・ブリュール。
「ドリームガールズ」のビル・コンドンがメガホンをとった。(映画.com)

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by jazzyoba0083 | 2015-12-08 23:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)