第88回 アカデミー賞授賞式 88th The Oscars

●「第88回 アカデミー賞授賞式 88th The Oscars
2016 28th Feb. at Dolby Theater,Los Angels,Calif.
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
ステージの内容としては昨年の方が出来が良かったが、人種差別問題で、今回ほど
騒がれた大会も少なかろう。司会は俳優、歌手、コメディアンの黒人クリス・ロック。
彼は二回目の登板だった。

冒頭から黒人の話題全開。ギャグを交えながら結構辛辣なコメントを多発していた。
「50年代も60年代も白人だけのノミネートはあったはず。なんでその時は抗議の声が
上がらなかったのか。その時代にはそれ以上に抗議することがあったからだ」
「黒人部門というのを作ればいい。だいたい男優、女優に分かれている必要があるのか?
陸上競技じゃあるまいし。だいたいデ・ニーロがメリル・ストリープに遠慮して演技するかい?」
などとぶち上げ、会場を沸かせていた。
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ことほど左様に、もし今年の作品が黒人キャストだったら、という手間の込んだ映像を
見せてみたり、ジャック・ブラックまでギャグにしてしまったり、プレゼンターもその話題に
触れるケースも多かった。 ステージ監督や構成もよく踏み込んだな、とアメリカの懐の
深さに恐れ入った。毎度の事だけど。
今年から受賞の際の挨拶でスタッフや知り合いの名前を上げるのが基本禁止され、
その代わり、テレビには事前に提出されていた受賞時の感謝の相手がスーパーされた。
が、やはりその手の名前を上げる人が後を絶たなかった。

さて受賞作だが、日本では未公開なものが多数で受賞が妥当なのかどうかは今の段階
ではどうのと言えないが、音響・美術系は「マッドマックス 怒りのデスロード」が6冠に
輝いた。また「レヴェナント 蘇りしもの」は、監督賞に二年連続でイリニャトゥ、撮影賞に
三年連続で長まわし(風)のレベツキが受賞、そしてディカプリオが念願の初オスカー、
主演男優賞に輝いた。やはりノミネート作品をながめても、主要部門は社会的なメッセージ
がないと厳しいかな、ということだ。エンタメ満載はもう作品賞は獲れないのかなあ。
映画を取り巻く社会的風潮なのだろうか。個人的には「スターウォーズ」や「マーシアン
(オデッセイ)」や「ヘイトフル・エイト」とか好きなんだけど。

受賞者のメッセージも注目されるが、今回光ったのは、やっとオスカーを手にした
ディカプリオの環境問題へのメッセージ。説得力があった。「(環境問題を考えると)
今の地球とこの受賞は当然とは思わない」という謙虚さも見せた。
また監督賞のイリニャトゥは「あらゆる差別が髪の毛の長さほどにに問題とならない世界に
しなければ」とアピールした。彼は昨年は移民政策を批判していた。
そして86歳にして初の作曲賞を獲ったマエストロ、エンリオ・モリコーネの姿も感動的
だった。
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ステージパフォーマンスでは昨年に続いて出演したレディ・ガガが良かった。自身の
歌った歌もノミネートされていたのではあるが、やはり彼女は一流である。
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毎年この授賞式を見ていて思うのだが、アメリカという国は多様性の国だということ。
それがトランプの出現などでアンチの意見が出てきたという危険な臭いを映画製作者たち
は敏感に感じ取っているのではないか。多様性を確保し、寛容な心を持ち合うことこそ
アメリカの土台だ、というのはどのスピーチを聞いていても伝わってくる。
「人種、宗教、性別、LGBT、出身母国、言語、政治的志向など人間の存在価値に
かかわらないものはアメリカという国の(子どもたちの)成長に関係ない」という根源的な
ものが訴えられている。こうした多様性の非寛容こそ、アメリカの危機であるのだ。
寛容な心を持ち、社会的弱者に目配せをし健康でいられる権利と自然を守っていこう、
これは日本でも全く同じことが叫ばれなければならないと痛切に感じる。

既にご存知の方も多いとは思うけど、プレゼンターが最後に開く受賞者が記入された紙
には、「and Oscar goes to・・・」というセリフが書き込まれているのだね。必ず云え、と
いうことなのだ。
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by jazzyoba0083 | 2016-02-29 23:45 | アカデミー賞 | Trackback | Comments(0)