おみおくりの作法 Still Life

●「おみおくりの作法 Still Life」
2013 イギリス・イタリアRedwave Films,Embargo Films.91min.
監督・脚本・(共同)製作:ウベルト・パゾリーニ
出演:エディ・マーサン、ジョアンヌ・フロガット、カレン・ドルーリー、キアラン・マッキンタイア他
おみおくりの作法 Still Life_e0040938_16263444.jpg

<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
この監督さんは、「ソドムの市」のピエル・パオロ・バゾリーニ監督とは何ら関係は無く、
ルキノ・ヴィスコンティ監督の甥子さんだそうだ。

閑話休題。本作、日本で封切られた時に評判が良かったのは知っているのだが、
見逃してしまっていた。WOWOWで放映してくれたので鑑賞した。

独特の味わいのあるいい映画だと思った。いろんなことを考えさせられる。そして
エディ・マーサンがいい。実に脚本のキャラクターに合っている。
淡々と綴られるがそれがまた、人生を深く考えさせられる効果を持っている。主人公は
ロンドンのある地区の民生委員で、いわゆる「孤独死」をした人の後始末を引き受けている。
それが仕事。身寄りを探しだし、その人なりの人生を浮かび上がらせ、どんな人でも
この世に生きた証を持っているはず、それをなんとかして形なり葬儀なりにしてあげたいと
一生懸命働いていた。しかし、「無縁仏」に時間を掛けすぎるため、効率化をすすめる当局
の目に付き、クビになってしまう。22年間真面目にやってきたのに。

44歳の彼は独身で、アパートに一人で住む、非常に几帳面な性格で、机の上のどんな
ものでも定位置があり、オフィスでも同じであった。彼は手がけた無縁仏の写真を丁寧に
アルバムに貼って整理していた。

最後の仕事となった男性の身寄りを探すうちに知り合った一人の美しい女性。彼女は
亡くなった男性の娘であった。彼はおそらくひと目で彼女に惚れてしまったのだろう、
いつもよりチカラを入れて世話をし、自分の為に買ってあった日当たりの良い墓地まで
譲ってしまった。
また彼は、男性の家族を探す中で人々と触れ合ううちに、自分が頑なに守ってきた事から
自分を開放してやろうとする。そうして出会うのが、例の彼女、男の娘であったのだ。
彼女と葬儀の打ち合わせの後、またお茶を飲もう、と約束しお互いファースト
ネームでぎこちなく呼び合うのだったが、ウキウキと二人分のマグカップを買い求め
道路を渡ろうとした時、バスに跳ねられてしまった。道を渡るにもどんな小さな道も一旦
止まって左右を確認しなければ渡らない彼も、彼女の事で頭が一杯になり、不注意に
なったのだろう。しかし道路に横たわる彼の顔には笑顔が浮かんでいた・・。

彼女は彼が亡くなったことは知らないまま、まず自分の父の葬儀をしていると、その後ろを
霊柩車が通って行く。そして彼は墓石もない所に参列者もなく埋葬されたのだ。

誰もいなくなった墓場。しかしそこにこれまで彼に身元確認や葬儀を出してもらったたくさんの
人の霊が集まってきたのだった・・・。

黒澤明「生きる」にも通ずるような、胸に沁み入るような感動を覚えた。ジョン・メイという
一人の小役人が、地味で誰もやりたがらないような仕事をコツコツとやり遂げる。日々の
喜びも金が貯まるわけでもない。テレビを観ていた様子もない。生活も質素そのもの。
孤独死した人と家族を引き合わせること、そして無縁仏ではない葬儀を出してあげること
これにジョン・メイは生きがいを感じていたに違いない。でも観ている人は思う、君の幸せは?
と。

映画は全編カラーを押さえて白っぽくなっている。また画面の中に柄や模様が少ない。
ジョンが着ている服も地味で無地だ。オフィスも自宅の部屋も色や柄がない。ところが
最後の仕事でケリーという若い女性に出会うと、俄然色づき始める。色のセーターを
着たり(それでも控えめな色だ)、それまで笑顔は見せないのだが、笑顔を見せ多弁に
なり、やっと彼の所にも太陽が巡ってきたのだなあ、と思わせる。
想像できてしまうのだが、彼に訪れる不慮の死。形的には彼も孤独死ではあった。
しかし、道路に横たわった彼の顔には笑みが浮かび、周囲も色を失っていなかったのだ。
本当に一瞬の「春」だったが、ジョン・メイには十分幸せだったのだろう。
そして多くの霊に囲まれて眠るのだ・・・。
おみおくりの作法 Still Life_e0040938_16265397.jpg

<ストーリー>
孤独死した人の葬儀を執り行う公務員の姿を描く人間ドラマ。監督は、「フル・モンティ」
プロデューサーのウベルト・パゾリーニ。
出演は、「思秋期」のエディ・マーサン、ドラマ『ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館』の
ジョアンヌ・フロガット。第70回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門監督賞含む4賞受賞。

ロンドンの南部、ケニントン地区の公務員である44歳のジョン・メイ(エディ・マーサン)の
仕事は、孤独死した人の葬儀を執り行うことである。几帳面な彼は死者の家族を見つける
努力を怠らず、その人のために葬礼の音楽を選び、弔辞を書く。規則正しい仕事と生活を
しながら、ジョン・メイはいつもひとりだった。

ある日の朝、ビリー・ストークという年配のアルコール中毒患者の遺体が、ジョン・メイの
真向いのアパートで発見される。自分の住まいの近くで、その人を知らぬままに人が
孤独死したという事実にショックを受けるジョン・メイ。さらにその日の午後、彼は仕事に
時間をかけすぎるという理由で解雇を言い渡される。

最後の案件となったビリー・ストークのために、ジョン・メイはこれまで以上に情熱を傾ける。
ビリーの部屋にあった古いアルバムで満面の笑顔の少女の写真を見つけた彼は、
イギリス中を回り、ビリーの人生のピースを組み立てていく。旅の過程で出会った人々と
触れ合ううち、ジョン・メイにも変化が訪れる。自然と自分を縛ってきた決まりきった日常
から解放されたジョン・メイは、いつもと違う食べ物や飲み物を試し、知り合ったばかりの
ビリーの娘ケリー(ジョアンヌ・フロガット)とカフェでお茶をする。まもなくビリーの葬儀が
行われることになっていたある日、ジョン・メイは人生で初めての行動に出る……。
(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。


 
by jazzyoba0083 | 2016-03-16 22:40 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)