トゥルー・ストーリー True Story

●「トゥルー・ストーリー True Story」
2015 アメリカ Regency Enterprises.100min.
監督・(共同)脚本:ルパート・グールド 原作:マイケル・フィンケル
出演:ジョナ・ヒル、ジェームズ・フランコ、フェリシティ・ジョーンズ、ロバート・ジョン・バーク他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
日本未公開。WOWOWにて鑑賞。★は6.5。
いつもはおバカをやっているフランコとヒル、本作ではニューヨーク・タイムズの記者マイケル・
フィンケルの原作を元に、シリアスな心理劇に挑んだ。人を取り込む術に長けた殺人犯に
記者が同化していく過程が見ものである。記者自身、まずいんじゃないかと思いながらも
なぜか殺人犯を切り捨てることが出来ない。
記者の前では自分は家族全員は殺していないと主張する。子供を殺した妻と残った子供は
手を掛けたが、というその迫真の描写を記者は見抜けず、否定できない。

作品中に「ダブルネガティブ」というキーワードが出てくる。記者と殺人犯が文章に
ついて議論するとき、所謂二重否定は好ましくない、という下りだ。
「嫌いといえないことはない」など、NOを2つつなげると肯定になるという文章。
これはまさに本作の記者の心理のメタファーである。目の前の殺人犯について本を書こうとして
いる記者は、彼が自分の名誉を回復してくれる存在かもしれず、その甘い心理が殺人犯の主張する
ところに取り込まれていくのだった。「彼は真実を語っていないとはいえない」というジャーナリスト
として失格の心理に自覚もしながらハマっていくのである。

上昇志向が強く、冒頭のアフガンだかイラクで、現地の住人をカネで語らせるなどして、
新聞に特ダネを書いたものの嘘だとばれクビになる実在の記者を演じたジョナ・ヒル。
この記者のファンで家族皆殺しの殺人犯、逮捕された後、電話で記者と接触、彼の
本を書いて名誉挽回と行きたい記者と、彼はやっていないのかもしれないと思わせて
行くジェームズ・フランコ。なかなか魅せていた。悪くない演技である。
最後までこの殺人犯は、本当はやっていないのかもしれないと、映画を観ている観客も
巻き込まれるのだ。これは殺人犯の主張を映像化して見せるという映画の強みが
好むと好まざるとにかかわらず、強く出過ぎるきらいがあった。
全体として、スリリングな心理劇を描こうとしたのだが、なんとも地味な映画になって
しまったのは残念だ。
ジョナ・ヒルの妻にフェリシティ・ジョーンズを持ってきて真実を冷静に見抜く
役割を与えていたが、取ってつけたような感じになっていた。

しかしながら、殺人犯が、ジャーナリストはセンセーショナリズムに毒されていて
真実を語っていない、という趣旨のセリフを吐くなど、また犯人に巧みに取り込まれそうに
なる記者の存在などジャーナリズムとは何か、という側面も描いていて、考えさせ
られる映画ではあった。
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<ストーリー>

ジョナ・ヒルとジェームズ・フランコが共演した実在の殺人事件に基づいたサスペンス。
失業中の記者と殺人事件の容疑者の危うい駆け引きを描く。

捏造記事で職を失った記者と、殺人事件の容疑者が繰り広げる実録サスペンス。
2人の心理的駆け引きに引き込まれる。ジョナ・ヒルが真実と虚構のはざまで揺れ動く記者を
いつものようなコメディ映画と一味違う演技で見せ、怪しい雰囲気を醸し出す容疑者を
ジェームズ・フランコが熱演。更に『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の
主演で注目を浴びるフェリシティ・ジョーンズが、記者である夫を案じる妻役で出演。

些細な出来心で誇張した記事が問題となり、職を追われた元ニューヨークタイムズの記者マイケル。
失意の中、彼は逃亡中に自分の名前を名乗っていた一家殺害事件の容疑者クリスの存在を知る。
ジャーナリストとして地に落ちた評判を回復するため、特ダネを探していたマイケルは、
すぐにクリスの取材を開始して彼と接見を重ねていく。
やがて、クリスはマイケルに殺害事件の真相を語り始めるが…。(Star Channel)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=358910こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-01-08 11:56 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)