ジャッキー/ファーストレディ最後の使命 Jackie

●「ジャッキー/ファーストレディ最後の使命 Jackie」
2016 アメリカ Fox Searchlight Pictures,LD Entertainment,Wild Bunch.99min.
監督:パブロ・ラライン
出演:ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、グレタ・ガーウィグ、リチャード・E・グラント他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

ジャクリーン・ケネディ、華やかで悲劇的な存在。大統領暗殺の数年後、ギリシアの大富豪オナシスと
再婚し、死亡時の名前は、ジャクリーン・ケネディ・オナシス、であった。また長男のJFKジュニアも
自ら操縦する自家用機の墜落で死亡、いまやJFKの直系の血を継ぐのは、現在楽天に勤務している
キャロライン・ケネディの長男となってしまった。
そのあたりの毀誉褒貶がないまぜになり、ジャッキーの本心というか実態は我々普通の日本人には
あまりよく理解さいれていないのではないか。また多くのアメリカ人庶民とても。

そんなジャッキーの、JFK暗殺後ほぼ1週間後に雑誌記者からインタビューを受ける形で、ホワイト
ハウスでの生活やJFKを巡る、あるいは子どもたち、ホワイトハウススタッフたちを巡る、結構
重い話が展開される。有名な話は知ってはいても、彼女が語る真実は、ジャッキーの新しい
イメージとして、個人的には面白かった。(映画に書かれたことが本当かどうかは分からないが)

ジャッキーは美人だし、富豪の娘だし、頭はいいし、ファッションアイコンでもあったので
ミーハーな気分で観に行くと、あかんですよ。映画は「重い」。けだし本作は、脚本と
ナタリーの演技を味わうものなのだろう。

ダラスで夫が銃弾に倒れた後、脳が飛び散る頭を押さえ、必死に呼びかけた。しかし、夫は
既に死んでいたことは判ったという。国の安全と政治を継続的に執行するために、棺を乗せ
ワシントンへともどるエアフォースワンの中で、副大統領リンドン・ジョンソンの次期大統領
への宣誓式が行なわれる。(有名なシーンだ)ジャッキーは側近のアドバイスを受け付けず、
血の付いた服で、どうどうと飛行機の先頭出入り口から外へと出ていく。

ジャッキーがホワイトハウスに入り、調度品を全て国民と現代のモチーフに会うように変更した
ドキュメンタリーの再現映像も使われ(この初めてホワイトハウス内部を公開した
ドキュメンタリーでジャッキーはエミー賞を獲得した)、自分がファーストレディとして
ホワイトハウスをどう変えようか、また夫をどうサポートしようか腐心したことが語られる。
一方で、暗殺後ジャッキーは、周囲からは同情の目で見られるが、立場的には「元大統領婦人」。
自分と夫がやってきたことが次々とジョンソンのスタッフににより上書きされていってしまう。

夫の葬儀さえ、自分の主張が通らなくなってきている。しかし自分を主張するジャッキー。
そこには、自分とJFKの仕事とホワイトハウスでの時間を、国民の心に永遠に残して欲しかった
という強い思いがあったからだ。それが二人の生きた証だからだ。そこにジャッキーの強い
こだわりを感じるのだ。そこには大統領夫人として幸せだったのか不幸だったのか、などの
感情は入らない、入れてもらえない。ラスト。最初に流産した子と、産まれた直後に死亡した
二人の子供の棺を夫の隣に埋葬してもらったシーンにおいて、彼女のケネディ家の嫁として
またJFKの妻としての「私的な」感情が戻ってきたシーンであったように思えた。

ナタリーのジャッキーは、似ている似ていないは置いておいて、そのほとんど笑わない演技は
弱さと毅然さがよく演じられ迫力があった。
アップの多用、記者との会見は正対ショットで、いわゆる「ナメ」を使わない新鮮さ、モノクロの
映像でホワイトハウスを紹介するドキュメンタリー映画の質と、当時の音声の再現、葬儀を
中心として時折使われる当時の映像も巧みであった。ジャッキーの心情を代弁するような、
いささか大仰ではあるが、音楽も映像・物語にマッチしていたといえる。

JFKがどういう人であったかとか周囲のスタッフがどうであったか、自分の子供たちはどうで
あったかとかはあまり関係なく、「元ファーストレディ」としてどう振る舞わなければなら
なかったか、そうでなければ、自分とJFKは歴史に残らなくなってしまう、という側面を
ジャッキーサイドから描いた映画である。
故に、サースガードがいきなりボビーとして出て来るが、アメリカ人なら知っている所では
あってもこれが、弟で司法長官だったロバート・ケネディとすぐには分かりづらかろう。また
もう一人の弟、エドワード・ケネディも作品中で紹介されることはない。

ひたすら「元ファーストレディ」となってしまったジャッキーの心情が綴られる作品なのだ。
毎度のことながらRotten Tomatoesでは、玄人筋に受けが良く、一般客にはそうでもない、と
いうのも理解出来る。日本でもヒットはしづらかろう。
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<ストーリー>
1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領は、テキサス州ダラスでのパレードの最中に
銃撃される。
目の前で愛する夫を暗殺されたファーストレディのジャッキーことジャクリーン・ケネディは、
怒りと衝撃に震えていたが、悲しんでいる時間はなかった。
すぐに副大統領が新たな大統領に就任して激務を引き継ぎ、刻一刻と夫が過去の人になって
いくのを目の当たりにしたジャッキーは、彼の名前と功績が後世に残るかどうかは、
この数日間の自分の行動にかかっていると気付いたのだ。
自らの手で築き上げてきた<ケネディ伝説>を永遠にするために、ジャッキーは命の危険さえも
顧みず、最後の使命に身を投じる──。(公式HPより)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:89% Audience Score:63%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=358900こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2017-04-16 16:40 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)