バリー・シール/アメリカをはめた男 American Made

●「バリー・シール/アメリカをはめた男 American Made」
2017 アメリカ Universal Pictures,Cross Creek Pictures,Imagine Entertainment. 115min.
監督:ダグ・リーマン
出演:トム・クルーズ、ドーナル・グリーソン、サラ・ライト・オルセン、ジェシー・プレモンス他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想:結末まで触れていますのでご注意ください>
面白かった!文句なく面白かったかというと、話がいささか複雑な部分もあるので、スカッと
いうわけには行かなかったが、ラストのアンハッピーエンディングの処理の仕方といい、
ハチャメチャな事をしている割にはコメディタッチを加え、見やすくかつ見応えのある作品に
しあげている。テンポやアニメを使った作画も工夫が凝らされていて良い。
なんでこの映画がもっと日本で話題になっていないのか、勿体無い。「ブレードランナー」と
重なったからかなあ。日曜のシネコンの入りはまあまあだった。

50歳を超えたトム・クルーズ、若いなあ。この映画は実在の人物のお話を基にしている、と
言う意味でいうと、その実話が面白いのでこの手の映画はオリジナル脚本に比べゲタを履いて
いると観るのが私として常だが、それにしても、破天荒の主人公の半生を、映像の中に上手に
表現出来ている。観る人によっては、なぜトムがあんな事に手を出したか背景が不足している、
と感じる向きもあろう。しかし、クライムアクションである本作にはそれくらいのハショリは
気にならない。

冒頭に書いたが、「話がいささか複雑な部分」とは、バリー・シールが関わる事件がアメリカの
中米南米政策と深く関わっていて、この辺りの政治的な勢力のあれこれがちょっと日本人には
特に分かりづらいと思ったのだ。
最初、CIAに依頼されたのはニカラグア辺りの偵察と航空写真撮影、そのうちパナマの独裁者ノリエガと
組んで麻薬をマイアミに運ぶことを始め、次いでニカラグアの反政府共産組織サンディニスタ撲滅の
ためアメリカが密かに対立するコントラという組織に武器を運ぶ仕事を引受け、コントラがやる気がない
と見るや、その武器をコロンビアの、パブロ・エスコバル率いる巨大麻薬組織メデジン・カルテルに
武器を横流しし、さらに彼らの麻薬の密輸も引き受けたのだ。これらが「イラン・コントラ事件」と
いう大スキャンダルに繋がっていくのだが、そのあたりが、ややひっかかかり明快さを欠いたかも
しれない。

結局バリー・シールは「政府の極秘の仕事を引き受ける傍ら、麻薬を密輸して大儲けしていた」という
ことなのだが、CIAは目をつぶっていたが、麻薬を取り締まる「DEA」「ATF(アルコール・タバコ・
火器及び爆発物取締局)「FBI」に目をつけられ逮捕される。しかし、政府の秘密を握っているシールは
無罪放免となるのだが、なんとホワイトハウスに呼ばれたシールは、現地事情に詳しいということも
あり、司法取引として、ニカラグアの共産反政府組織サンディニスタが麻薬を密輸している証拠写真を
撮ってくる、というかなり厳しい仕事を引受けることになった。これは成功し、サンディニスタの
悪事が国際的に暴露されたのだが、当然、シールを信用していたサンディニスタのメンバーは、
シールを許さなかったのだ。彼はクルマに乗っているところを射殺されてしまう。

一時期とんでもない財をなし、金の隠し場所がないくらいで庭に埋めたり、倉庫に押し込んだり。
それで何を買うわけでもないのだなあ。せいぜい奥さんに宝石とキャディラックくらい。
大きいうちは買ったけどね。結局シールは現預金を全部没収された。しかし、奥さんが身につけていた
超高額の宝石は差し押さえを逃れ、奥さんと子どもはその後幸せに?暮らしたというような終わり方。
ラスト、奥さんハンバーガーショップかなんかで働いて(ここが彼女の偉い所)いるのだが、彼女の左腕
には超高額と思しきダイヤのブレスレットが輝いていた。

危険な仕事をしている割には悲壮感がない。全体として悪事を働いている映画なのだが乾燥度が
非常に高い映画で、観ていて爽快! 「ジェイソン・ボーン」シリーズや「Mr.&Mrs.スミス」で、この手の映画の作画には定評のあるダグ・ライマン、まだまだやるなあという感じだ。トムの奥さん役を演じた
サラ・ライト・オルセン、(スカヨハ似?)テレビ畑が長い人だが、キュートでイイ感じだった。
こずるいアメリカという国を手玉にとった痛快な男の話、いいです!
トム・クルーズファンでなくてもご覧いただきたい映画。
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<ストーリー>
1970年代後半、バリー・シール(英語版)はTWAでパイロットとして働いていた。シールの若くして
機長に昇進した腕前は一級品かつ裏で検査が緩い立場を利用して密輸に手を染めていた事で、CIAから
も注目されるようになった。
ある日、シールはCIAに極秘の偵察任務への参加を求められた。野心家でもあったシールは喜んでその
依頼を引き受ける事にし、すぐに航空大手のTWAを飛び出してCIAが用意したペーパーカンパニーの
小さな航空会社に転職する。

数年後、シールはパナマの独裁者、マヌエル・ノリエガとCIAの仲介人の役割を果たすようになって
いた。シールはCIAの目を盗み、メデジン・カルテルの指示でコカインをルイジアナ州に密輸する
仕事も請け負っていた。
やがて、CIAはシールが麻薬の密輸に関与していることを把握したが、シールの任務を代わりに担える
ような人材がいなかったため、敢えて黙殺する決断を下した。一方、麻薬取締局(DEA)はシールを逮捕
すべく行動を開始した。DEAの動きを察したCIAはシールに密輸から手を引けと警告したが、シールは
それに耳を貸そうとはしなかった。

その後、シールはニカラグアの親米反政府組織、コントラに武器を密輸する任務も請け負うこととなっ
た。コントラが本気で政府を倒す気がないと確信したシールは、武器をカルテルに横流ししてさらに
儲けていった。CIAの黙認の下で、シールの会社は小さな空港を持ち本人も含めてパイロット5人を
抱える密輸集団に成長し、シールは扱いに困るほどの大金を得る。

暴走を続けるシールを危険視するようになったCIAは、シールを見捨てて地元警察とDEAとFBIとATFが
逮捕するのを黙認した。逮捕後に検事の前に突き出されて絶体絶命の窮地に立たされたシールだったが、
ホワイトハウスが求めているニカラグアの左派武装勢力であるサンディニスタ民族解放戦線が麻薬の密輸
に関与している証拠を得る手助けする事を司法取引の材料として釈放される。
しかし、それはメデジン・カルテルを裏切ることを意味していた。

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:88%Audience Score:80% >



by jazzyoba0083 | 2017-10-29 14:15 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)