アムール、愛の法廷 L'hermine

●「アムール、愛の法廷 L'hermine」
2015 フランス Albertine Productions and more.98min.
監督・脚本:クリスチャン・ヴァンサン
出演:ファブリス・ルキーニ、シセ・バベット・クヌッセン、エヴァ・ラリエ、コリンヌ・マシエロ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
この映画、ヴェネチア国際映画祭で、男優賞と脚本賞を獲っているんだ。映画のオチが、裁判長と、陪審員に
選ばれた想いを寄せる女性との、異型な恋愛譚なのだね。最初は法廷劇だとばかり思っていて、裁判の進行に
注目が行っていた。自分の赤ちゃんを蹴り殺したとして逮捕された男と、被害者的立場の女房。一体真相は
どこになるのか、父親は殺していない、と主張する。どちらかが嘘をついているのか。その真相を追っかけて
いる間に、裁判長の恋愛話になってくる。裁判の行方はどうでもいいというか。(実は裁判の進行と判決は、
この映画に欠かせない心の動きを示すものとして重要なのだが、気がつく人がどのくらいいるだろうか)

フランスの陪審員裁判てこういうふうなのね、という勉強にはなった。一方、裁判の進行に裁判長とその
恋の相手となる陪審員の女性の心の動きがどのような具合に埋め込まれていたかわかりづらく、観終わって
一体、結局何を言いたかったのか、と思ってしまう。彼女への恋心が裁判長の人間に対する気持ちを変えて行き、
映画の背景となる裁判ではしごくまっとうな判決を出すに至る、というこなんだな、と分かるのは私としては
だいぶ時間がかかった。

ラシーヌは刑事裁判を担当する判事で、物事を杓子定規に捉えて人間味が薄く、判決は「懲役10年」以上が
多かったため周囲からは「10年判事」と揶揄されていた。しかし、今回の裁判。陪審員の中に数年前に
自分が入院した時に世話してくれて、それ当時ほのかな恋心を抱いていた女性麻酔医ディットの姿があった。
まあ、焼けぼっくいに火が付いたってやつ。裁判長なんだけど、陪審員を食事に誘い出したり、恋心を
打ち明けたり、彼女の高校生の娘と会ったりしている。(フランスでは法廷外で裁判官と陪審員が裁判中に
プライベートとは言え会えるんだなあ)そうこうしているうちに、堅物であったラシーヌの心に人を思いやる
心が厚みを増し始めた。(もともと無かったわけじゃないから)ディットの方も、素直に愛情を打ち明ける
ラシーヌを憎からず思うようになってきた・・。

裁判の方は、父が殺したのか、事故だったのか、母の陰謀なのかはわからないまま。疑わしきは被告人の
利益に(取り調べた警察官の杜撰さが分かるような証言シーンも挿入される)という原則から、「陪審員
の判断」は無罪。裁判長ラシーヌは、無罪を宣言し、父親を直ちに釈放するようにと命じて閉廷した。

恐らく、ディットとの出会いがなければ、もうすこし杓子定規な判決になっていたよ、といいたいのだろう。
でも裁判長の心の変遷が今ひとつ重みを持って伝わって来なかった。下記アメリカRotten Tomatoesの
批評家と一般観客との評価の差に私の心情が表れているような気がする。物語の骨子は面白いのになあ。

後から言われると、なるほどと思うけど、100分程の映画の中で、主人公ラシーヌ裁判長の心の動きが、
作品が言いたいことにように作られていたかというとかなり深読みしてこないと分からないんじゃないか。
WOWOWで観たのだが、ラブコメディって書いてあったけど、全然ラブコメディじゃない。人間ドラマだ。

なんか、面白そうで良くわからない。裁判のシーンと裁判長の恋愛シーンの割合はこれで良かったのかなあ。
嫌な映画ではないが、なんかひとつ引っかかりが残る作品だった。ディットがもい陪審員にいなかったら
裁判で父親は有罪になったかも、ってこと? 今回この父親はディットに感謝しなくちゃなあ。そこら辺も
すっきりしないところであった。キャスティングは良かったと思う。
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<ストーリー>
ミシェル(ファブリス・ルキーニ)は、厳格で人間味がないと恐れられている裁判官。ある日の法廷で彼は、
思いがけない人物と再会する。かつて入院していた時に想いを寄せた女医のディット(シセ・バベット・
クヌッセン)が、陪審員の1人として姿を現したのだ。
当時、彼女に受け入れられなかった気持ちが蘇り、動揺を隠せないミシェル。彼女の優しさは、患者に対する
医師としてのものでしかなかったからだ。だが、その再会は裁判長としてのミシェルの行動を変えて行くことに
なる。冷徹だった彼の審議は、ディットとのやり取りを経て、次第に人間らしい温かみを帯びてゆく。
その変化は、やがて彼女の心も動かし始める……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:90% Audience Score:50%>



by jazzyoba0083 | 2017-11-14 22:50 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)