手紙は憶えている Remember

●「手紙は憶えている Remember」
2016 アメリカ Serendipity Point Films (presents) 95min.
監督:アトム・エゴヤン
出演:クリストファー・プラマー、ブルーノ・ガンツ、ユルゲン・プロフノウ、ハインツ・リーフェン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
久々に体験した、心の用意のない「大どんでん返し」。ところどころに伏線があったのだが、ここまでは
見抜けなかった。というか、予想もつかず、ひょっとしたら、という気持ちも微塵もなく、ラストを観られた
ということは、この映画が目論んだツボに見事にハマったわけだ。しかも痛快に。これも映画の面白みの一つの
醍醐味ということが出来るだろう。

クリストファー・プラマーの89歳になろうとする円熟を通り過ぎた演技を誰が疑うだろうか。ここが
キャスティングの狙い目であったのだろうけど。ただ、大どんでん返し、だけがこの映画の訴えるところで
あってはいけないわけで、すべての驚きがそこへ行ってしまい、重要な何かを失ってはいないか。

WOWOWの「W座」で鑑賞したわけだが、案内人の小山薫堂も指摘していたように、ホロコーストの
映像、当時の戦争の映像を全く使わず、ホロコーストのことを扱った映画も珍しい、と。確かに戦後
70年以上が過ぎ、6000万人が亡くなったあの悲惨な戦争から時間が経つにつれ、体験者が当然減少し、
この映画のようなことになるのだろう。

個人的に思えたのは、ゼヴ・グットマン(プラマー)に指示を出していたマックス(マーティン・ランドー
=遺作)の、あれだけの高齢になろうが決して消すことのない恩讐の悲しさと物凄さ。
そしてゼヴが置かれた境遇の、「さもありなん」的な今日的テーマ。唯一作品の中で主張していたとすれば
ゼヴが旅の途中で入院した時、同室の少女がゼヴの持っていマックスの手紙を読み上げるところだろうか。
彼女はナチをナーズィーとしか発音出来ない。そういう世界になっているということだ。

先日「否定と肯定」という映画を観たが、今日、ヒトラーを受け入れようとさえする風潮が有る世界で、
あの6000万の犠牲を出して我々人類は何を学んだか、ということをもう一度色んな分野から点検する
必要が大事だということだ。中国やロシアによる「覇権」としか見えない動き、トランプの非寛容、
自分さえ良ければ他は知らない、あるいは脅しの政治。日本でも大同小異である。ヒトラーは急に現れた
わけではないのだ。私たちは今の世界の政治家が口にするポピュリズムと排他主義、非寛容を許しては
ならない。とこんなふうにこの映画からみんなが思ってくれたら最高だろうな。

単純で短いお話であったが、本作、含むものの大きさに、しばし考え込んでしまったのだった。
最後になったがアトム・エゴヤンと老優たちの今回の仕事に敬意を表したい。

チャンスがあれば是非ご覧いただきたい映画である。
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<ストーリー>
名匠アトム・エゴヤン監督によるサスペンス。記憶も曖昧な90歳の老人が、第2次大戦の時に大切な家族を
奪ったナチスの兵士を捜し、復讐を果たそうとする姿が描かれる。
『人生はビギナーズ』で史上最高齢でアカデミー賞助演男優賞を受賞したクリストファー・プラマーが
主人公を演じるほか、数々の賞に輝く名優たちが脇を固める。

最愛の妻ルースが死んだことさえ覚えていない程、物忘れが進行している90歳のゼヴ(クリストファー・
プラマー)。ある日、彼は友人のマックス(マーティン・ランドー)から1通の手紙を託される。
「覚えているか。ルース亡き後、誓ったことを。君が忘れても大丈夫なように全てを手紙に書いた。
その約束を果たしてほしい――」二人はアウシュヴィッツ収容所の生存者で、大切な家族をナチス兵士に
殺されていた。そしてその兵士は身分を偽り、“ルディ・コランダー”という名で現在も生きているという。
容疑者は4名。体が不自由なマックスに代わり、ゼヴは単身で復讐を決意。託された手紙とかすかな記憶
だけを頼りに旅立つが、彼を待ち受けていたのは人生を覆すほどの衝撃の真実だった……。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:73% Audience Score:79% >



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by jazzyoba0083 | 2018-01-06 22:50 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)