スリー・ビルボード Three Billboards Outside Ebbing,Missouri

●「スリー・ビルボード Three Billboards Outside Ebbing,Missouri」
2017 イギリス・アメリカ Blueprint Pictures,Film 4,Fox Searchlight Pictures (production). 116min.
監督・脚本・(共同)製作:マーティン・マクドナー
出演:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、アービー・コーニッシュ他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
一年間にそうそう出会わないであろう秀作に、この早い時期に出会ったようだ。今年のオスカーの
6部門にノミネートされている話題作ではあるが、それだけの評価を受ける価値のある力作であった。
私見であるが、オスカー「脚本賞」は獲るんじゃないかという予感がする。

とにかく「物語のチカラ」が凄い。マーティン・マクドナーという人、イギリス出身で劇作家が出自。
今年47歳と油が乗り切った年齢だ。すでに1回オスカーの脚本賞の候補になってはいるが、作劇の
しっかりした舞台劇を見ているような人間性のぶつかり合いは、さすがはイギリスの舞台育ちという
感じだ。だいたい原題の名付け方からしてそんな感じを受ける。「三枚の道路看板、ミズーリ州エビング
郊外」だもの。

終わり方に異論がある人もいるだろうけど、ああいう終わり方を含めての本作であろう。物語の主要な
テーマは「怒り」と「赦し」だと受け取めた。オスカー主演女優賞にノミネートされているマクドーマンドの
演技、というか存在感は圧倒的であるが、署長のウディ・ハレルソン、そしてダメ警官ディクソン役の
サム・ロックウェルの演技も素晴らしい。出てくる人が多くないので分かりやすいし、ストーリーも明快。

そして、「怒れる母親」、主役のミルドレッドを演じたマクドーマンドに、至言を言うのが、誰あろう
別れた夫のそう賢そうにも見えない19歳の彼女。曰く「怒りは怒りを来(きた)す」。
そう、娘をレイプされ焼殺された母の怒りは、南部の田舎町の警察官らしく、黒人を差別して喜んでいるような
ダメなやつらで、ちっとも捜査は捗らないことで爆発。
怒った母は、道路端の3枚の大型広告板に、警察に対するメッセージを掲載する。しかし名指しされた署長は
膵臓がんで余命幾ばくもない。娘を殺されたことに町の人は同情するが、メッセージに関しては署長に同情的
であった。ミルドレッドの狙いだったのかマスコミにも取り上げられ、忘れ去られそうになった事件に再び
光が当たったことは当たった。

しかし、事態はミルドレッドが目論んでいたものとは違う方向に進み始めてしまう。

本作を見ている人は、娘を無残な事され方をしたミルドレッドの怒りに同情しつつ、真面目な、しかも死期が
迫る署長にも同情してしまう。ミルドレッド、やりすぎじゃないか、とも。ここで登場するのがダメ警官の
ディクソン(サム・ロックウェル)だ。彼の心の動きが、ミルドレッドに大きな影響を与える。ミルドレッドの
心のありように大きな影響を与えたのは署長ではあるのだが。

「怒りは怒りを来(きた)す」のだ。「赦しは赦しをもたらしもする」のだ。

私が映画から受け取った上記の思い、まさに今のアメリカが国として想いを致さなければならない問題なのだ。
「怒りは怒りしか呼ばないし、相手を理解し赦すことから得られる心の平穏こそ大切なのだ」ということ。
その象徴として登場するのが、ビルボードをミルドレッドに貸す広告会社の若社長レッドだ。彼は
ディクソンにボコボコにやられた挙句二階から突き落とされたにも関わらず、ディクソンを赦すのだ。

若干丸めすぎるのが早かったか、と感じたのが、ディクソンが署長からの手紙を見ての心変わりが早すぎかな
と感じたこと。レッドのいい人加減がちょっとな、と感じた。そのあたりが弱点かなあ。

しかし、冒頭にも言ったが、「物語の持つチカラ」の凄さ、強さには目を見張った。そしてそこから流れ
出て来る主張、人間の持つ嫌らしさと良さの提示は実に分かりやすく、南部の田舎の警察と娘を殺され
犯人が見つからない怒れる母親のありようは、そのままアメリカが抱える闇の深さを訴えている。
「差別」「被差別」も含めて。

見るべし。けだし傑作である。「ファーゴ」でオスカー主演女優賞を獲得したマクドーマンドだが、
あれで受賞なら、こちらで受賞しても当然と思えるだろう。「庭の千草」を使った音楽もいい。
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<ストーリー>
「ファーゴ」のフランシス・マクドーマンドが娘を殺された母親の怒りと悲しみを体現して絶賛された衝撃の
サスペンス・ドラマ。
アメリカの田舎町を舞台に、主人公がいつまでも犯人を捕まえられない警察に怒りの看板広告を掲げたことを
きっかけに、町の住人それぞれが抱える怒りや葛藤が剥き出しになっていくさまを、ダークなユーモアを織り
交ぜつつ、予測不能のストーリー展開でスリリングに描き出す。
共演はウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル。
監督は「ヒットマンズ・レクイエム」「セブン・サイコパス」のマーティン・マクドナー。

 アメリカ、ミズーリ州の田舎町エビング。ある日、道路脇に立つ3枚の立て看板に、地元警察への辛辣な
抗議メッセージが出現する。それは、娘を殺されたミルドレッド・ヘイズが、7ヵ月たっても一向に進展
しない捜査に業を煮やして掲げたものだった。
名指しされた署長のウィロビーは困惑しながらも冷静に理解を得ようとする一方、部下のディクソン巡査は
ミルドレッドへの怒りを露わにする。さらに署長を敬愛する町の人々も広告に憤慨し、掲載を取り止めるよう
ミルドレッドに忠告するのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★8.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93% Audience Score:87%>



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by jazzyoba0083 | 2018-02-04 11:40 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)