デトロイト Detroit

●「デトロイト Detroit」
2017 アメリカ Annapurna Pictures (presents)  142min.
監督・(共同)製作:キャスリン・ビグロー
出演:ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス、ジェイソン・ミッチェル、ジャック・レイナー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ポスターには「本年度アカデミー賞最有力」と謳ってあったが、蓋を開ければ、ノミネートなし。
「ゴールデングローブ」でも同様。一体どういうことだろう。と思いつつシネコンに足を運んだ。

キャスリン・ビグローはこれまで社会派の優れた作品を作ってきてオスカーも獲ってきた。その期待値が
大きすぎたのか、おおそれながら、私が観ても、先日観た「スリー・ビルボード」や「「ダンケルク」に
比べると、力がないと感じた。それは何故か。

取り上げたテーマは良いし、時宜にもかなっている。但し、ドキュメントに重きを置いてしまったが故に
人間を描く部分が弱かったのじゃないかと感じたのだ。取り敢えずジョン・ボイエガと白人警官代表の
ウィル・ポールターが主人公級ということなんだろうけど、登場人物の重みというかポジションもバラバラになり
焦点がボケてしまった。

例えば「ハートロッカー」ならばジェレミー・レナーであり、「ゼロ・ダーク・サーティ」であれば、ジェシカ・
チャスティンにより、個人的な懊悩や希望を通して社会に訴えるものが優れていたと思うのだが、本作は
「デトロイト騒乱」という事象そのものが「主人公」になっていて、それにからむ群像を通して「事象」絡む
人間を描こうとしたのだろう。それはそれで狙い目なのだろうけど、作劇のフォーカスとしては、ぼやけてしまった
のでは無いか。(日本に住む日本人がアメリカの黒人問題を肌身で感じることは不可能だろうとはいえ、だ)

ビグロー監督は、デトロイト騒乱の中でも悲劇的だった「アルジェ・ホテル」の惨劇を極めて克明に描き、
(おそらく関係者への取材などは半端じゃなかったと思う。また存命の人も多いので、法的に注意する
事柄も多く、脚色を余儀なくされる場面も多かったと聞く)さらに、裁判の過程では白人警官が無罪になって
行くさまを通して、この時代の黒人が置かれた理不尽さを訴えている。1960年代の黒人公民権運動については
毎年といっていいほどさまざまな映画で描かれていくが、今も黒人に対する被差別的なアメリカの国内事情は
変わっていない、と言いたかったのだ。それはそれで分かる。

それならば、実際の映像を使用してのドキュメンタリーを作ってしまったほうがパワーがある場合もあるのだが、
ビグローが敢えて、映画の世界で挑戦しようとした目論見は、騒乱に関わった人間模様を通して訴えようと
したのだろう。が、その目論見は事実を忠実になぞることに力点を感じさせる作品となってしまっているようだ。

アカデミー賞受賞が全てではないが、最近のアカデミー会員が作品賞にかける思いというものは、いかに
人間が描かれているか、という点のような気がする。話が回りくどくなったが、そういうことならば、今回の
オスカーにノミネートされなかったのも分かる。本作HPで姜尚中が行っているように、この騒乱の中において
黒人にもいろんなポジションの人がいて、白人にもいろんな立場の人がいて、それが群像劇のように描かれて
いたのが良かった、とする指摘もある。(確かに州兵の中には黒人を逃がす兵士もいるし、救助する兵士も
描かれる)なるほどと思うが、私の目には、登場人物のキャラクターが散ってしまい主張が薄れたと思えて
ならないのだ。

ただ、作品全体の出来としては決して悪くはない。長い映画だが緊張は続くし、手持ちカメラと固定カメラの
使い方も効果的だ。キャストでは、暴行を主導する若い白人警官を演じたウィル・ポールターが断然光った。
白人の(失礼だが)教育もそれほどでない差別主義者の若い警官のおぞましさを好演。
それにしても不思議なのは、事件の発端となった、ホテルの窓から撃ったのがスターター用のおもちゃの銃だと
いうことを、警官に捕まり暴行を受ける黒人たちはなぜ説明しなかったのだろうか。映画からはそこが今ひとつ
理解しきれなかった。
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<ストーリー>
キャスリン・ビグロー監督が「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」に続いて再び脚本にマーク・
ボールを迎え、1967年の“デトロイト暴動”のさなかに起きた衝撃の事件を映画化し、今なお続く銃社会の
恐怖と根深い人種対立の闇を浮き彫りにした戦慄の実録サスペンス。黒人宿泊客で賑わうモールを舞台に、
いたずらの発砲騒ぎがきっかけで、警察官に拘束された黒人宿泊客たちを待ち受ける理不尽な悲劇の一部始終を
圧倒的な臨場感で描き出す。
主演は「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のジョン・ボイエガと「メイズ・ランナー」のウィル・ポールター、
共演にアルジー・スミス、ジョン・クラシンスキー、アンソニー・マッキー。

 1967年7月、デトロイト。黒人たちによる暴動が激化し、鎮圧に乗り出した軍や地元警察との衝突で街は
まるで戦場と化していた。そんな中、運悪く暴動に巻き込まれ身動きできなくなった人気バンド
“ザ・ドラマティックス”のメンバー、ラリーが宿泊していたアルジェ・モーテルで銃声が鳴り響く。
それは黒人宿泊客の一人がレース用の空砲をふざけて鳴らしたものだった。しかし、それを狙撃手による発砲と
思い込んだ大勢の警察官がモーテルになだれ込んでくる。やがて、偶然居合わせただけの若者たちが、
白人警官のおぞましい尋問の餌食となっていくのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:84% Audience Score:79%>





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by jazzyoba0083 | 2018-02-05 14:20 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)