ある天文学者の恋文 La corrispondenza

「ある天文学者の恋文 La corrispondenza」
2016 イタリア Paco Cinematografica 122min.
監督・脚本:ジョゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェレミー・アイアンズ、オルガ・キュリレンコ、ショーナ・マクドナルド、パオロ・カラブレージ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
トルナトーレ監督、「ニュー・シネマ・パラダイス」も「海の上のピアニスト」も「鑑定士と顔のない依頼人」も
好きな映画だが、本作は、ちょっとな、という感じだ。脇役というものがほぼいない、主人公二人だけの話。
そこにどう物語としての発展性を見せるか、が勝負どころだと思うのだけれど、そうそうにネタバレしつつどこか
ファンタジーを残そうとした構成にいまひとつ共感を覚えなかった。好き好きだろうけど。

イタリアの監督と製作会社がイギリスとウクライナの俳優を使って、ロンドンを舞台に映画を撮るのはなぜかな。
ロンドンという街がアカデミックな雰囲気を出すからいいのかな。ローマやフィレンツェ、ミラノ辺りでは享楽的に
なりすぎ?天文学ならイタリアもフィットすると思うのだけれど。

大学院の女子学生が博士論文を書きつつ、アクション映画の激しいスタントをアルバイトとする。彼女は担当教授
であった初老の男性と深い恋仲である。という全体像が分かるのが個人的にはエイミー(オルガ)が博士号を授与
された時であった。それまでは教授とスタントをバイトとする女子大生の恋物語であることは分かるが、論文が
博士号取得の為、というのがもうひとつ分からなかった(どこかで提示されていたのかなあ)。
博士にはエイミーと同年齢の娘(彼女が老けて見えるから奥さんかと思っちゃう)と18歳になる長男、まだ
小学校1年か2年くらいの次男だか後妻の息子だかの3人の子どもがいるが奥さんの影はない。何かの理由で
死別したか、離婚したか。どうやら女子大生とは不倫ではないようだ。そのあたりの関係性はロマンを語る上で
重要でしょう。不倫でないのはこの物語成立のための絶対条件でしょう。

そうした背景で物語が綴られるのだが、この指導教官で高名な天文学者エド(アイアンズ)は脳に腫瘍が出来、
余命幾ばくもないとされ、3ヶ月、愛するエイミーのために、「遺志を未来に残すシステム」を作ったらしい。
彼女の前から「また連絡する」と言って去ってから数日後、彼女はエドが死亡したことを知る。
その時に彼からスマホにメッセージが入る。どこかで生きているのか、混乱する彼女。それからというものエドから
まるで彼が生きているかのようにDVDで映像が送られて来たり、タイミング良く手紙や贈り物が届くのだった。
彼女は、エドの足跡を辿り、追想しながらも、彼の死を受け入れつつ、その間にも入るエドからの連絡で
次第に彼がしたかったことを理解していく。

一方彼女が激しいスタントをするのは、数年前に自分の運転の誤りで交通事故を起こし、父親を亡くしてしまった
ことに呵責を覚え、どこかに消えてしまいたいという心を抱えての負の行動であった。そしてそれが引き金で母とは
没交渉となっていた。エドの導きで母との確執も消え、エドの真心を知る。彼は別荘も彼女に遺していた。
またエドの実家の娘とは話し合いもでき、和解も出来た。また彼の導きで博士論文も上手くかけ、見事博士課程を
終了したのだった。エドは彼女の予定と行動を把握し、彼女に対してメッセージを送るシステムを作っていた。
しかし、それは「この世には10人のエドがいて、11人目が自分」というセリフに伏線があるように、
なついてくる犬や窓辺の葉っぱ、バスを並走する大きなトリというふうに、霊的な?宇宙的な?存在も匂わせ、
リアルなエドは死んだけど、あたかも「千の風になって」エイミーの周りにいて、見守っている、と言いたい
ようである。
現実的なシステムを作中に明らかにするのではなく、エドの存在を宇宙という神秘的なもので包み、実在は否定
されても、宇宙的な考えではエドは存在する、というロマンに仕上げた。そこに二人の強い愛の存在を示した
のだ。
監督の思いは分かるけど、テンション低めに推移する割と長めの本作は、たらーっと見てるには見逃せない
セリフも多く、共感共振を得づらかった。オルガはクセのあるキャラクターを上手く演じていたとは思う。

それにしても、ラッピトップPCを叩きながら使うというのは、論文を書くにあたってはクラッシュの恐れもあり
怖いんじゃないの? またエイミーが別荘がある島の、石畳を歩くときの「コッ、コッ」という足音は効果音の
選択のマチガイじゃないかな、だってあれだけ硬質の音なら硬い革靴と想像するが、彼女が履いている靴は
どうしてもそうは思えないんだけど。足音が強調されるシーンだけに凄く目に(耳に)ついた。
彼女のラストのスタントの、山道を走るワーゲンの激しい転倒シーンなど、映像的にはよく出来ているなと
思うだけに残念な箇所と思った。

本作はスマホがなければ成り立たない映画。思いは分かるがエイミーが図書館だろうが劇場だろうが、受信を
マナーモードにしていないのは如何なものか。エイミーの思いをそれで表現しようとしたのなら私には不快感しか
残らなかった。
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<ストーリー>
「ニュー・シネマ・パラダイス」「鑑定士と顔のない依頼人」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が一人の天文学者と
その恋人を主人公に贈るミステリー仕立てのロマンティック・ストーリー。主演は「運命の逆転」「リスボンに誘
われて」のジェレミー・アイアンズと「007/慰めの報酬」「オブリビオン」のオルガ・キュリレンコ。

 著名な天文学者エドとその教え子エイミーは恋人同士。しかし2人の親密な関係は周囲には秘密にされていた。
そんなある日、大学の講義に出席したエイミーは、エドが4日前に亡くなっていたことを知る。悲しみに暮れる
エイミーだったが、その後もエドからの手紙や贈りものが届き続ける。
その謎めいたメッセージに戸惑いつつも、彼が暮らしていたエディンバラや、かつて2人で時間を過ごした
イタリア湖水地方のサン・ジュリオ島などを巡り、彼が遺した謎に向き合っていくエイミーだったが…。
(allcinema)

<IMDb=★6.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:14% Audience Score:31%>



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by jazzyoba0083 | 2018-02-26 22:15 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)