はじまりへの旅 Captain Fantastic

⚫「はじまりへの旅 Captain Fantastic」
2016 アメリカ Electric City Entertainment,ShivHans Pictures. 119min.
監督・脚本:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、キャスリン・ハーン、スティーヴ・ザーン、ジョージ・
   マッケイ、サマンサ・イズラー、アナリース・バッソ、ニコラス・ハミルトン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<感想>
誰かが作りそうでいて、これまで観たことがなかったタイプの作品。故に捉え方によっていろんな
思いが湧き上がるだろう。私見では、最初のうちはオヤジ、なかなかいいことを教えているじゃないか、と
見ていたが、次第に、子どもたちが幼くして狩りが出来、哲学や政治学、宇宙量子学を語れたとしても、それは
決して子どもたちの幸せではないんじゃないか、と思えてきた。それは社会性を獲得できないからだ。
子供らは家族という単位では素晴らしい愛情と結束で結ばれているが、成長するに従い、人間は社会的な
存在にならざるを得ない。そうしてみると、学校へ行ってない、友だちがいない、知識が偏在する、という状態は
親のエゴでしかないじゃないか、と思えてくるのだ。作品中でも、お父さん(ヴィゴ・モーテンセン)は、やがて
自分の過ちに気づくのだ。子供らは子供らでちゃんと自分たちがどちらへ進んでかなくてはならないか、という
ことは分かってくるのだ。

山の中での自然に任せた暮らしは、弁護士だった母も賛成して始まったことではあるが、(子供らが何歳に
なるまで山にいようとかは話し合ってなさそう)母が、双極性障害(躁うつ病)に罹ってしまってから、
父は、母の重い病気の回復のために山の生活を続けていた。母が自殺し、その葬儀を仏教徒だった母の遺志に
反して教会で執り行われたのだが、それを止めさせに行って、兄弟や母の両親と口論となるのだが、その過程で
母の回復のためだけに、子供を山にやっていたのではいか、と気がついたのだ。父とて、決して子供らに良かれと
思ってのことだっただろう。しかしやはりそれは彼自身の価値観の押しつけ以外の何物でもなかったのだ。
何も知らない子供らは喜々として父のやり方に従うが(面白いから)、流石に長男は、外の世界に目を向けて
いた。大学へ行きたいと、親に黙って図書館で勉強し、大学に願書を出し受験したのだった。後から分かるが
これは母親が後押しをしていたのだった。だから母は、山の暮らしとの決別のタイミングを測っていたのでは
ないか。優秀な長男はハーバード、ブラウン、プリンストン、イェール、MITなど、全米の最優秀の大学に
全部合格していた。大学に行きたい、と父に話すと、嘘をついて、と嫌味を言われる、しかし長男は
「自分は本で読んだこと以外は知らない、他のことをたくさん知りたいんだよ」と叫ぶのだった。そこだろう。

仲間や女性と付き合い、社会の中での自分を見つめ、家族以外の人々のこと、世界のことを広く知らなくては
今の時代、余計に内側にこもる人間になってしまう。幸い子供らは素直に育っている。

物語は母の葬式を一つの大きなエピソードとして、家族の進路の変更を描いてく。母の両親の存在も大きかった
だろう。やがて子供らはスクールバスで学校へ通うようになり、テレビゲームやスマホをいじる子供らと付き合う
ようになっていく。あの子らなら変にならず立派な人間になるだろう。その基礎を作り上げた父の功績は確かに
存在するのだ。彼のやったこと全てがダメだったとは言えない。
ラストシーンでも、家にテレビは無く、ゲーム機もない。スマホもない。本を読み鉛筆でノートを書く。彼らの
未来はきっと明るいだろう。 不思議なカタルシスを感じながら映画は終わっていったのだった。
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<ストーリー>
本作が2本目の長編監督作となるマット・ロスが第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞した、
とある家族の姿を描くヒューマンドラマ。アメリカ北西部の山奥でひっそりと暮らしていた一家が、母親の死を
弔うため、2400キロ離れたニューメキシコを目指す旅がつづられる。
一家の長であるベンをヴィゴ・モーテンセンが演じる。

現代社会に触れることなく、アメリカ北西部の森深くに暮らすキャッシュ一家。父親ベン(ヴィゴ・モーテンセン)は、
自分の全てを6人の子供たちの教育に注ぎ、厳格に育てている。そんな父仕込みの訓練と教育で子供たちの体力は
アスリート並み。みな6ヶ国語を自在に操ることができる。女子と話すのが苦手な18歳の長男ボゥドヴァンは、
名立たる大学すべてに合格。キーラーとヴェスパーは双子姉妹で、キーラーはスペラント語、ヴェスパーは狩りが
得意だ。
レリアは他の兄弟と違い森での生活に疑問を持ち、ベンに反発。好奇心旺盛なサージは、自分で動物の剥製を作る
のが趣味。そして末っ子のナイは、いつも裸でいるのが好きだった。

ある日、入院していた母レスリーが亡くなり、一家は葬儀のため、そして母の最後のある“願い”を叶えるため旅に
出る。葬儀の行われるニューメキシコまでは2400キロ。チョムスキーは知っていても、コーラもホットドッグも
知らない世間知らずの彼らは果たして母の願いを叶えることが出来るのか……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:83% Audience Score:85% >





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by jazzyoba0083 | 2018-03-24 23:10 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)