潜入者 The Infiltrator

●「潜入者 The Infiltrator」
2015 イギリス George Films,Good Films. 127min.
監督:ブラッド・ファーマン  原作:ロバート・メイザー
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・クルーガー、ジョン・レグイザモ、
   エイミー・ライアン、オリンピア・デュカキス、ベンジャミン・ブラット他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルとノリエガ将軍、「イラン・コントラ」事件に
まつわる映画はたくさん作られてきた。先日観たトム・クルーズの「バリー・シールズ」も
そうで、バリーはこの映画の中にも出てくる。

1980年代レーガン政権下で、アメリカ国税庁特別捜査官であったロバート・メイザー氏の
回顧録をベースに描かれた麻薬カルテルへの潜入捜査官の孤独な戦い。
邦題は原題の直訳だ。長い映画で、登場人物もいろいろ出てくるので整理するのに難が
あるのだが、(この麻薬戦争を描く映画はいつもそう)、それらはラストに向かっての
長い助走に過ぎないのだ。

カルテルが麻薬を売った資金の洗浄を引き受ける富豪企業家として潜入捜査を始めるのだが、
相棒はあぶなっかしいラテン系の男。メイザーはボブ・ムセラという名前で組織の重要
人物たちに次々と接近し、信頼させ、事件の中枢、つまりエスコバルとパリに本店を置く
銀行の摘発に迫った。途中で、彼が婚約中、と言ってしまったことから、役所は若い
婚約者としてキャシー(ダイアン・クルーガー)をメイザーに付けた。怪我の功名で
これがカルテルの仲間らの信頼を勝ち得て、捜査は順調に進む。メイザーの武器は
常時携行するアタッシュケースに仕込まれたテープレコーダーで、これで逃げられない
証拠を集めていたのだった。

この映画で主人公やクルーガー以上に存在感が光るのがカルテルの面々の人間臭さだ。
所詮は世の中に悪を散らして金儲けをし、殺しも平然と行う奴らなのだが、彼らは
闇社会に生きているので、普通の社会人よりよほど「信頼」という点に気を使う。
それが無ければ組織が瓦解してしまうからだ。悪の世界には日本の任侠のように義理人情も
あり、悪は悪なりの結束を固めているのだ。だから裏切ればその復讐は苛烈だ。

そうしたなかでメイザーは深い信頼を勝ち得ていく。そしてメイザーとキャシーの偽の
結婚式をタンパで挙げることを計画し、そこに集まったカルテルや銀行家を一網打尽に
する最終計画が練られた。メイザーとキャシーを祝福しようとあつまる「悪人」たち。
会場は捜査機関の手になる何台ものカメラで記録され監視されていた。

バージンロードを歩く二人に祝福の笑顔を向けるカルテルの仲間ら。完全にメイザーを
信頼しきっている。メイザーの心に呵責が生まれる。キャシーとて同じだ。二人を
心から信頼して集まってきた「仲間」。これから彼らを裏切らなければならない。
が、これも正義の為だ。歩く新郎新婦に笑顔がないのはそれを十分に物語っている。

そして新婦の前で宣誓する時になって、会場の四方八方から捜査官が雪崩を打って
乗り込む。銃撃戦が始まる。捕まらないメイザーらを観て、「仲間」の目の色が
変わる。「裏切られた」。メイザーは職務とは言え、「信頼」というものを踏みに
じったことで、事件の解決を心から喜べなかった。彼はその場から愛する家族の元へと
向かっていった。メイザーの心を癒やすのは最愛の妻からの「信頼」でしか無かった。
ここで疑問だったのは開巻のシーンで本筋とは別の小ネタでメイザーが逮捕される
時は彼も一緒に逮捕されたようになる。そうしないと後で仕事ができないからだ。
結婚式のシーンではメイザーは逮捕されない。一緒に捕まるように仕込めば良かったのに
と思うのは私ばかりではないだろう。メイザーのその後の安全を考える点でも。

この映画はラストの結婚式に全てが凝縮されている。もちろんそこに至る物語での潜入
捜査官としてのハラハラ・ドキドキはあるし、美形の婚約者が相棒となったことに対する
メイザーの妻の思いも描かれる。当然、カルテルや悪徳銀行家の信頼を得るための苦労も
描かれる。それがあってのラストである。
エンディングで実在の人物と対比し、その刑期とその後が語られるが、禁錮12年くらいで
出てきたら、裏切られたカルテルの仲間らはメイザーを決して許さないはずだが、メイザー
は今でも妻と元気で暮らしているという。保護下にあるのだろうか。

長い映画ではあったが、エピソードも興味深く、飽きることは無かった。そして潜入
捜査官モノというと、ドンパチでカタルシスを得ておしまいという形が多い中、本作は
どこか苦々しいものを残して終わっていく。そこがこの映画の魅力であろう。
ノワールものだが印象深い映画だった。
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<ストーリー>
麻薬王パブロ・エスコバルの組織に約5年間潜入捜査をしたロバート・メイザーの回顧録を
ベースにした犯罪サスペンス。
1980 年代、エスコバルの巨大麻薬カルテルを内部から崩壊させるために、ベテラン捜査官
ロバート・メイザーは架空の大富豪を装い近づく。
監督は「リンカーン弁護士」のブラッド・ファーマン。「トランボ ハリウッドに最も嫌われ
た男」のブライアン・クランストンが、大胆不敵な計画を実行するベテラン捜査官を演じる。

1980 年代、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルは史上最大級の犯罪帝国を築き、
アメリカに流入するドラッグの大半が彼の組織を経由したものと言われていた。
アメリカ政府はこの事態を憂慮し、大規模な潜入捜査作戦を計画。ベテラン捜査官ロバート・
メイザーを架空の大富豪に仕立てあげ、財力で組織に取り入り、内部から組織を崩壊させよう
とする。(Movie Walker)

<IMDb=★7.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:70% Audience Score:71% >



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by jazzyoba0083 | 2018-03-26 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)