王様のためのホログラム A Hologram for the King

●「王様のためのホログラム A Hologram for the King」
2016 アメリカ X-Filme Creative Pool,22h22,Fábrica de Cine and more.98min.
監督:トム・ティクヴァ 原作:デイヴ・エイガーズ『王様のためのホログラム』
出演:トム・ハンクス、アレクサンダー・ブラック、アリサ・チョウドリー、シセ・バベット
   ・クヌッセン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
砂漠での国家的プロジェクトの映画というとラッセ・ハルストレム監督の「砂漠でサーモン
フィッシング」という映画を思い出す方も多かろう。本作は全体像は異なるが、「異文化との
出会い」に伴う苦労が通底しているところは似ている。但し映画の出来としては「サーモン」
のほうが遥かにいい。

本作は、トム・ハンクスのための映画と言い切って良い作品。彼が自転車企業取締役を
クビになり、妻にも逃げられ、娘の養育費を稼ぐため、慣れないIT企業に採用されたは
良いけど、所属している企業がサウジアラビアで都市開発のプロジェクトを引き受ける
ことになり、その監督とホログラムによる会議システムを王様に説明するプロジェクトの
責任者に指名されることからドタバタが始まるというのが話のベース。

諸賢ご明察の通り、イスラムの世界に何も知らずに飛び込んだトム・ハンクスの「異文化
との出会い」の衝撃の中で自身が強くなり、(それまでは結構ヘタレであったが、砂漠の
暮らしを通して苦労し、たくましくなって行くのだ)「自己変革」に成功するという、
ハッピーエンドなお話だ。

タイトルからすると「ホログラム」に凄く重点が置かれているように思えるが、「ホロ
グラム」は、主人公の目標点のアイコンに他ならない。

飲酒はだめ、外国人の異性と外で食事もできない、女性の地位の低さ、そしてなにより
約束を守らない。(というか、彼らは何によらずインシャラー<アラーの意志のままに>
という人生主義だから、責められないのだ。外から来た人はそれを理解して付き合わなければ
ならないのだが、主人公を始めとして外国人にはなかなか慣れないものだ。)

主人公アラン・クレイ(ハンクス)背中に脂肪腫のようなコブがあるのだが、それが
彼を「一歩前に出る強い意志」のブレーキのメタファー。現地でそれを肉切りナイフで
取ろうして失敗、病院で治療を受けるのだが、担当したのが女性医師のザーラであった。
彼女との異文化を乗り越えて育む愛情もこの映画の見どころの1つとなっている。
特に彼女の海辺の別荘で二人で泳ぐところでは彼女は男が泳いでいると見させるために
上半身裸で泳ぐのだが、これは見ている方にもなかなか衝撃的であった。異文化の側面を
見た思いだ。

原作があるので、なかなかトム・ハンクスも難しかったとは思うが、重くなく気楽に観られる
「西欧文化ミーツイスラム」な映画として楽しめる。Rotten Tomatoesの評論家評価と
一般鑑賞者の評価の落差が興味深い。
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<ストーリー>
大手自転車メーカーの取締役アラン(トム・ハンクス)は、業績悪化の責任を問われ
解任され、家や車はおろか美しい妻さえも一瞬にして失ってしまう。娘の養育費のために
IT業界に転職した彼に課せられた仕事は、サウジアラビアの国王に立体的な映像を投影
する3Dホログラムを使ったテレビ会議システムを売ることだった。

こうしてサウジアラビアに向かったアランだが、オフィスは傷んだテントが張られている
だけ。設備も環境も整っておらず、抗議しようにも担当者はいつも捕まらない。
しかもプレゼン相手の国王はいつも飛び回っていていつ現れるのかもわからないのに上司には
はっぱをかけられ、ついには身体が悲鳴をあげてしまう。
しかし異なる文化や現地の人々と出会ううちに、アランは新たな一歩を踏み出していく。
(Movie Walker)

<IMDb=★6.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:73% Audience Score:55% >




by jazzyoba0083 | 2018-04-08 23:00 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)