誘う女 To Die For

●「誘う女 To Die For」
1995 アメリカ Columbia Pictures,Rank Organisation.106min.
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ニコール・キッドマン、マット・ディロン、ホアキン・フェニックス、ケイシー・
   アフレック、イリアナ・ダグラス、アリソン・フォランド、ダン・ヘダヤ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ニコール・キッドマン、今や何を考えているか分からない不気味な女性を演らせると
天下一品だが、今から13年前はまだピチピチして可愛くもセクシーだったなあ。本作でも
何を考えているのかよく分からない頭のネジが外れちゃったような女を好演している。
当時からそうんな性格を出せる女優さんと思われていたのかな。
彼女、個人的にあまり得意としない女優さんだが、本作については可愛いし、アホなサイコ
キラーっぽい役回りがピッタリだと感じた。それと若きホアキン・フェニックスがいい。

本作は実際にあった話が小説になり、それを映画化したものだが、相当脚色がなされている
と見えて、ラストは全然実際とは異なる。

全体の演出としては、「テレビ」というものの存在を意識し、映画自体がドキュメンタリーの
ような構成になっていて、そのあたりはガス・ヴァン・サントの上手いところだ。

とにかくテレビの世界で有名になりたい少女が長ずるに及びお金持ちのボンボンと計算
高い結婚をし、やがて「子どもを作って店を手伝ってくれ」と言い出されるに及び、彼を
殺害することを計画する。それに巻き込まれるのが、高校生の主張みたいな企画で彼女が
取材に入った高校の生徒3人だったのだ。一番スザーン(キッドマン)を好きになり、
彼女のセックスの虜になってしまったのがジミー(フェニックス)であった。

スザーンは3人の生徒にカリフォルニアでテレビの仕事を一緒にしよう、と甘言の限りを
尽くして騙し、それには旦那が邪魔だから殺してね、と誘うのだ。純粋な彼らはそれを
実行してしまう。その時刻にはスザーンはテレビでお天気キャスターとして生出演中。
高校生らのやる殺人なんて指紋だらけ、返り血は処理しないなど杜撰なものでたちまち
逮捕されてしまう。しかし、スザーンは裁判で無罪となるのだ。だが、殺された旦那の
父親に雇われたハリウッドのニセプロデユーサー役のマフィアに殺されて湖の氷の中に
閉じ込められた。(実際の犯人は今でも刑務所で服役中)

話は上昇志向の強いお馬鹿な女が自分の夢を実現するためになんでもやらかすという
もの、それにテレビというメディアの怖さを内包させ、画作りも凝ったガス・ヴァン・
サントの構成・演出と、キッドマンの何を考えているのか分からない恐怖を内在した
笑顔に代表される気味の悪さが光った作品だった。もちろんスザーンの虜になり純粋な
若い性と愛を弄ばれたジミーを好演したホアキン・フェニックスの存在は欠かせない。
それと終始スザーンに疑いを持つ旦那の姉(スケーター?)のイリアナ・ダグラスが
映画の句読点になっていて全体を引き締めているように感じた。ラスト、スザーンの
死体が下に凍っている氷の上でスケートをする彼女、溜飲を下げて滑っているのだろうか。

可愛そうなのは、スザーンを信じてひたすら純粋に彼女を愛した旦那(マット・ディロン)
だ。何の落ち度もないのに高校生に銃殺されちゃって。麻薬中毒にされ、高校生は
麻薬の売人だった、とスザーンはいけしゃあしゃあと嘘をつくんだから。

ガス・バン・サントの映画作りと若きキッドマンの魅力が堪能できる一品だと思った。
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<ストーリー:結末まで書かれています>
TVで有名になるという野望に向かって突き進み、ついには夫を亡き者にした悪女の姿を
通して、マス・メディアの危険なパワーを痛烈に諷刺したブラック・コメディ風のサス
ペンス。
ヒロインはもとより様々な関係者たちによる証言で物語を再構成する語り口も斬新。
90年5月に起こった、22歳の女性教師が15歳の少年をそそのかして夫を殺害させた事件に
材を取った、女性作家ジョイス・メナードの長編小説『誘惑』を、俳優のかたわら
「卒業」や「天国から来たチャンピオン」の脚本を手掛けたバック・ヘンリーが脚色。
監督には「ドラッグストア・カウボーイ」「マイ・プライベート・アイダホ」「カウガール・
ブルース」のガス・ヴァン・サントが当たった。

ニューハンプシャー。物心がつくと同時に「TVに出て有名になる」という決意を持って
いたスザーン・ストーン(ニコール・キッドマン)は、大学(専攻はTV報道)を卒業
すると、父親の経営する地元のイタリアン・レストランで働くラリー・マレット(マット・
ディロン)と結婚する。彼の姉ジャニス(イレーナ・ダグラス)はスザーンのことを冷たい
女と言って結婚に反対するが、彼女にベタ惚れのラリーは耳を貸さない。

ハネムーン先はフロリダだったが、現地のホテルでTV界の大物たちが会合を開くと聞いた
からだ。夫の目を盗んで、熱心に売り込みを始めるスザーンはハネムーンから帰ると、
フロリダで仕入れた情報を元に地元のTV局に就職する。
雑用係のつもりで彼女を雇ったボスのエド(ウェイン・ナイト)に次々と企画書を提出する
スザーン。とうとう根負けしたエドは渋々ながら彼女をお天気キャスターに採用した。

ラリーはそんな妻を自慢に思い、全面的に応援する。お天気キャスターでは飽き足らない
スザーンは、さらにエドを説得して、高校生たちの実態を描くドキュメンタリーを制作する
許可を得た。彼女は恰好の素材として落ちこぼれの3人組、ジミー(フォアキン・フェニック
ス)、ラッセル(ケイシー・アフレック)、リディア(アリソン・フォランド)と出会う。
一緒にハリウッドへ行こうと夢を語る彼女に上昇指向を刺激され、反抗的だった3人も次第に
心を開いていく。

ラリーは彼女が何をするにも深い理解と愛情を示していたが、仕事に夢中になり家庭を省み
ないスザーンに、とうとう「いつかは子供を持ち、将来はレストラン経営を手伝ってほしい」
と持ちかける。夫の言葉は彼女にショックを与え、彼は目的達成の邪魔になると考えた
スザーンは一計を案じてジミーを誘惑し、彼を官能的なセックスで虜にした。リディアも
彼女を崇拝し、今では彼らはスザーンの言いなりだ。彼女は夫が暴力を振るうと訴え、
ラリーの殺害をほのめかす。

結婚1年目の記念日。リディアが持ち出した銃を使って、ジミーとラッセルはラリーの
殺害を実行した。番組を終え、帰宅したスザーンは、嘆き悲しむ悲劇のヒロインを演じる。
かけつけた報道陣のカメラの行列に自分が注目される瞬間に、スザーンの顔にうっすらと
恍惚にも似た表情が宿る。3人は素人犯行を見破られ、スザーンにも殺人教唆の容疑が
かかる。
だが、裁判で彼女は無罪となり、死人に口なしとばかりに取材陣の前で、夫は麻薬中毒
だったと発言。やがてマスコミの前から姿を消したスザーンは、念願だったハリウッドの
プロデューサーに会う。しかし、それは息子の死を無念に思うラリーの父親が依頼した
マフィアの殺し屋(デイヴィッド・クローネンバーグ)で、スザーンの死体は湖の厚い
氷の下に沈められた。(Movie Walker)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:87% Audiece Score:65%>



by jazzyoba0083 | 2018-04-18 23:10 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)