バリー・リンドン Barry Lyndon

●「バリー・リンドン Barry Lyndon」
1975 イギリス Peregrine,Hawk Films,Warner Bros..186min.
監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック
原作:ウィリアム・メイピークス・サッカレー
出演:ライアン・オニール、マリサ・ベレンソン、パトリック・マギー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
キューブリックの作品は監督生涯でわずか13本。ごく初期の作品を除いて、これで
全部観たことになる。長い長い本作を観ても彼の映像作家としての非凡さが今更
ながらよく分かる。もともと写真に興味を持ちそこからモーションピクチャーに
入っていった作家らしい耽美的映像美も堪能することが出来る。最もこれは
本作で撮影賞を獲った盟友ジョン・オルコットの見事なキャメラの功績も大きい
わけだが。それとこの時代を実に上手く表現したプロダクションデザインの功績も
称賛しておかなくてはなるまい。(オスカー受賞)衣装、化粧、大道具、小道具など
も時代をリアルに反映し、作り物臭さの排除に成功していた。

一方、音楽についても言及しておかなくてはなるまい。インターミッション前までは
バリーが頂点になりあがるまでの経緯から、ベースは2拍子のマーチであり、
没落へと転落していく後半は終始、ヘンデルの弦楽曲が繰り返されていく。ヘンデルは
物語の時代に生きた作曲家であるから、映画の悲劇性、不安という雰囲気の表出にとても
マッチしていたと思えたのだった。

さて、時代は18世紀(1700年代)ジョージ3世治世のイングランドが舞台。
原作があり私は未読であるのだが、本作を文芸大作と呼ぶにはいささかの抵抗を感じる。
そう呼ぶには映像もストーリーも多分に映画的アプローチとみえたからだ。
(失礼な話、シュバリエ・ド・バリバリの登場などもあり、いささか漫画を見ている
ような気分にすらなった)キューブリックは原作の長さをナレーションという形で
短縮したのだが、それが物語のテンポを出し、3時間を超えてもダレない効果を産んだと
思う。

インターミッションを挟んで3時間を超える本作の大意は、取り立てて長所もないし、
自分の将来の行動を読みきれない平民の男が、貴族に成り上がり、更に没落していく
までの大河ドラマであるが、テンポが早く、もたつかないので時間はあまり気にならない。

冒頭で説明される、バリーの父親が些細な揉め事から決闘となり死亡、母の手ひとつで
育てられたが、従姉に惚れ込み(従姉も色じかけをしてくるのだが)、彼女の家は財産を
目当てに位の高い軍人と結婚をさせる。これに我慢が出来ないバリーは、軍人を侮辱した
ことで決闘となり、彼を殺したと信じ、ダブリンに逐電する。その当たりの立ち上がりから
なにやらまともではないバリーの人生の流転の「面白さ」を予見させて見事である。

後半ややもたつくころもあるが、エピソードの起伏が適度にやってきて、(つまり
バリーの身の上にいろんなことが起きて)飽きさせないし、映像がいちいち綺麗だし、
18世紀の戦争の様子や決闘のルールなどにも興味は付きなかった。結局は「小者」の
バリーの、壮大なる失敗の人生の物語。普通の人よりは波乱に富んではいたけれど。

これまで個人的にキューブリックという人はシュールな感性を持っていて前衛的な表現が
強みなのか、と勝手に思っていたのだが、本作を観ると、決してそうではなく、
オーソドキシーな構図の中に、観客に予想させない演出をするから、シュールだと思える
のだな、と得心した。本作のような文芸モノを扱ってもその表現や人間性の描写にあっては
キューブリックの語法でいうシュールな面は現れていたと思う。

バリー・リンドンを演じたライアン・オニールは、よくぞキャスティングしたな、と
感心するフィットぶりである。(名演という意味ではない)
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<ストーリー>
長いストーリーですので、下記Movie Walker あるいはwikipediaに詳細なものが
掲載されていますので、そちらをご一読ください。

<IMDb=★8.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:94% Audience Score:92% >




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by jazzyoba0083 | 2018-05-23 22:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)