レディ・バード Lady Bird

●「レディ・バード Lady Bird」
2017 アメリカ Scott Rudin Productions and more. 94min.
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ、ルーカス・ヘッジズ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
今年のアカデミー賞の主要部門にノミネートされ、俄然話題沸騰の本作。女優グレタ・ガーウィグが
初めて本格的にメガフォンを取り、脚本もものした青春ドラマだ。もともと脚本とか演出に興味があった
彼女だが、今回はいわゆる「私小説」っぽい自分の体験を自伝的に映像化したもの。本作の次に何を作るのか
大変興味深いものがある。主演は本作でオスカー主演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナン。
彼女のキャスティングもこの映画の大きな収穫だ。彼女もいずれ近い内に必ずやオスカーを獲る女優さんに
なるだろう。(ゴールデングローブでは作品賞と主演女優賞は獲った)

物語としてはそう驚く話ではなく、カリフォルニア州の州都サクラメントのカソリック系女学校に通う
3年生。青春ものの常道として、両親との対立、体制への反発、セックスやドラッグへの興味、親友や
友人たちとの心の駆け引き、プロムなど、誰もが通る(日本ではドラッグは通らないけど)「青春の関門」を
自分を「レディバード」と呼ばせる女性が通解していく過程を、みずみずしいタッチで描いている。

この「瑞々しい」というセリフ、映画を評する時にとても便利な単語であるのだが、とても抽象的だ。
この映画を観ている人はレデイバードの日々の暮らしや変化を、あたかもガラス張りのこちらから眺めて
いるような自然な、どこかドキュメンタリーを観ているような感覚で受け止めることが出来る。
そこには作り物としての不自然さはなく、アドリブを使った映画に興味がある監督の演出らしく、極めて
ナチュラルに観客の心に入ってくる。だが観客がレディバードから何か教訓的なものを受け取ろうとすると
それは叶わないかもしれない。最後もカットアウトのように終わっていくし、レディバードの感性を共有する
ひとときを持てればそれで満足出来る映画なのではないだろうか。少女が大人の女性として羽ばたく過程を。

規律の厳しいカソリック系の学校で反発をしたり先生にイタズラしたりするのだが、レディバードは基本的には
きちんとしたいい子だ。サクラメントなんて田舎、カリフォルニアは嫌い、と(これも青春の特徴)東部の
大学への入学を志し、母親には内緒に、父親からは推薦状などで世話になり、(レディバードは父親は失業、
母は病院看護師、養子の兄とその恋人の二人を抱え、お金はない。ニューヨークに行くにしても奨学金を貰いかつ
バイトもしなくてはならないだろう。理解する父、娘を地元に置いておきたい母(それはエゴでもなんでもない
単純な母の愛情ではあるのだが)。そしてレディバードは東部の大学に補欠で合格する。でも地元のUCLA
デイヴィス校に行くということにしてある・・・。

一方性に関する知識欲も旺盛でボーイフレンドが出来るが、彼がゲイ(実際はバイだと思うけど)であることが
分かり、落ち込む。その後に出会った男の子は童貞だ、といいつつレディバードのバージンを頂いちゃうわけだが、
実は6人くらいの経験を済ませたヤツで、そうしたふしだらな男にも幻滅・・。
さらに親友の女生徒とのあれこれも描かれていくが、レディバードは強く生き抜いていく。ヒリヒリするような
青春の時間を彼女は確実に羽ばたきのエンジンと燃料としているのだなあ、と観ていて思った。
演技をしているなあ、という感じがごく薄い映画であり、他の共演者の演技も上手いので、観客は演者たちの
感情がストレートに伝わってくる。そこがこの映画の魅力であり、「瑞々しい」と形容出来る内容に仕上がったの
ではないか。まるで「レディバード=てんとう虫」の小さな羽ばたきのように!

ラスト、ニューヨークでボーイフレンドが出来るのだが、かれがサクラメントがどこにあるのか知らない。アメリカって
そんなものなのだろうなあ。94分間という無理のない時間だが、切れ目ない話題がゴチャ着くことなく並び、見やすい。
とてもいい映画を観た。
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<ストーリー>
片田舎のカトリック系高校からニューヨークの大学を目指す17歳の少女の揺れ動く心情を繊細に描き、
第75回ゴールデン・グローブ賞で監督賞など2冠に輝いた青春ドラマ。『20センチュリー・ウーマン』の
個性派女優グレタ・ガーウィグが自伝的なエピソードを織り込み単独での監督に初挑戦。主演は若手実力派
として注目されるシアーシャ・ローナン。

2002年、カリフォルニア州サクラメント。高校生活最後の年を迎え、東部の大学に行きたいクリスティン
(シアーシャ・ローナン)は、地元の大学に行かせたい母(ローリー・メトカーフ)と大ゲンカに。
クリスティンは癇癪を起して走っている車から飛び降り、右腕を骨折する。
失業中の父ラリー(トレイシー・レッツ)、看護師の母マリオン、スーパーで働く養子の兄ミゲルと
その恋人シェリーの5人暮らしのクリスティンは、自分を“レディ・バード”と名付けて周りにも呼ばせている。

親友ジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)と一緒に受けたミュージカルのオーディションで、ダニー
(ルーカス・ヘッジズ)と出会う。ダニーと高校のダンス・パーティーでキスをするが、帰宅して母に叱られ、
また衝突する。それでも恋は順調で、感謝祭には彼の祖母の家に招待される。夜はそのまま、ダニーや
ジュリーたちとクールなバンドのライブに行く。帰宅すると、寂しかったと母に告げられる。ミュージカルは
成功を収めるが、アフター・パーティーでダニーが男子とキスしているのを見つけ、彼と別れる。

一方、東部の大学に入るための助成金の申請書を母に内緒で父に頼む。年が明け、アルバイトを始めた
カフェにダニーたちと見た
バンドの美少年カイル(ティモシー・シャラメ)がやってくる。彼とまた会う約束をしたクリスティンは、
学校ではカイルと同じ人気者グループのジェナとつるむようになり、ジュリーと疎遠になる。ある日、
ジェナの家のパーティーでカイルとキスした後、母に「初めてセックスするのって、普通は何歳?」と尋ねる。
ところが母の意見も聞かず、カイルとすぐに初体験を済ませるが、彼の言葉で傷つき、母が迎えに来た途端
泣き出してしまう。
その後、東部の大学からの不合格通知の中に一通だけ補欠合格があったが、まだ母には言えなかった。
高校卒業が近づき、プロムのドレスを選びながら、再び母とぶつかり合う。自分の将来について、
クリスティンが出した答えとは……。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:99% Audience Score:79% >




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by jazzyoba0083 | 2018-06-06 16:00 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)