砂漠の流れ者 The Ballade of Cable Hogue

●「砂漠の流れ者 The Ballade of Cable Hogue」
1970 アメリカ Eaves Movie Ranch,Warner Bros..122min.
監督:サム・ペキンパー
出演:ジェイソン・ロバーズ、ステラ・スティーヴンス、デヴィッド・ワーナー、ストローザ・マーティン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<感想>
ペキンパーは寡作なので、日本で観られるものは取り敢えず脚本担当だった映画も含め観るようにして
いる。本作は前年に「ワイルドバンチ」を監督し、次の年に「わらの犬」のメガフォンを取る彼にとって
重要な時期だったころの作品だ。それにしても、この3年間に作られた作品群の真ん中に位置する本作は、
いわゆるペキンパーの作風とは違う、と捉えられるだろう。だが、先日見た彼のドキュメンタリー映画でも
その感を強くしたのだが、ペキンパーには、本作に見られる感性というか心情というかは、あったのだ。
暴力シーン、緊張感溢れる作品もペキンパーだし、本作に描かれている、どこか人生を達観してしまった
ような情緒的人間味溢れる人間を描いた映画もまたペキンパーの重要な一面なのだ。wikiによればペキンパー
自身、本作を自分のベスト作品として挙げているという。

これまでに私が観たペキンパーの中で、ハードな方面では「ゲッタウェイ」、ソフト?な方面では本作が白眉と
思う。どこか彼が尊敬する黒澤明の傾向と似ているような気もする。Blue-rayに焼いて永久保存とする。

本作の舞台は西部時代最後の頃。間抜けなのか賢いのか、人が良いだけなのか、根性があるのか、実に人間味
溢れた男、ケーブル・ホーグの半生を綴ったもの。
「面白うてやがて哀しき・・・」という言葉がピッタリ来る。畢竟、彼は最後にその当時走り始めた自動車の
下敷きになって亡くなるのだが、その最後は全く悲しくない。自由に生きた男が天国にその住処を変えたに
過ぎないと思えるくらいだ。葬式の時に牧師が言う「ケーブル・ホーグは悪いやつでもあり、善いやつでも
ありました。そして彼は実に人間臭い男でした。」と。映画が進むに従い、私達は彼を好きになり、応援し、
次第に彼の姿に己を投影しているのだ。憎めないウソをつき、女好きだけど、どこか真面目で、気が小さくも
ある。一方で、冒頭自分を砂漠に置き去りにした二人の男に対する復讐はキッチリとする。

映像にはスローモーションや、印象深いカットバック、今はあまり見ない急速ズームイン、などペキンパー
らしさが十分に出ていて楽しいし、なにしろ半分コメディのようなストーリーが絶品である。ペキンパー
作品でホノボノするとは思いもしなかったが、これもまた彼の持つ感性の一面なのだ。

西部時代の終わりと共に消えていった愛すべき古い男ケイブル・ホーグ。時代の終焉のメタファーのような
存在。時代の先取りをしているつもりで時代に置いていかれた。愛する女性を獲得したと思ったら、数週間で
去られてしまう。砂漠にオアシスを見つけ、駅馬車ステーションを作ったのはいいけど、自動車の登場で
その役目も先が見えてしまう。そこに運転手付きの車で駆けつけたかつての女。彼女と一緒にニュー・
オリンズを目指そうと人生の方向転換を決意した矢先、女の乗ってきた車が坂から無人で下ってきて
止めようとしたホーグは轢死してしまう。その最後も人を食ったものだった。
本作は、ペキンパー作品の中のみならず、アメリカ映画の傑作として残る人生悲喜劇である。

それにしても邦題のぶっきら棒さはどうにかならなかったのか。下記のallcinemaの解説にはいささか
同意しかねるものがある。
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<ストーリー>
近年、原題直訳の邦題で再公開された、ペキンパーの古き良き西部への寓話的挽歌。長いこと幻の名作扱いされ
(名画座で観る機会もほとんどなかった)ていたが、結論から言うと、そこまでの映画か?--という気がする。
最後の西部劇作家と言われたペキンパーだが、個人的には、そのスピリットを現代アクションに活かした作品
(「ゲッタウェイ」「ガルシアの首」)の方が面白いと思う。この、世紀の移り目に時代に取り残されていく男
(J・ロバーズ)の風流な復讐劇--砂漠の真ん中に駅馬車の駅を作り、仇の現れるのを待ち構えるという悠長な
設定で、通いの娼婦(S・スティーヴンス)とすっかり夫婦気取りで暮らすのだ!--は感傷的で、穏やかで、
優しくありすぎるのだ。本当の西部劇の幕引きとなったのは、あの血糊の洪水「ワイルドバンチ」ではなく、
この映画。だから、ケーブルよ、君を好きで嫌いだ。(allcinema)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93% Audience Score:81%>






by jazzyoba0083 | 2018-07-05 23:15 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)