ダウン・バイ・ロー Down by Law

●「ダウン・バイ・ロー Down by Law」
1986 アメリカ・西ドイツ Black Snake,Grokenberger Film Produktion,Island Pictures. 107min.
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ 音楽:ジョン・ルーリー
出演:トム・ウェイツ、ジョン・ルーリー、ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、エレン・バーキン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ジャームッシュという映画作家は、私にとってはタフな存在だ。独特のスタンスでの映像・物語制作は
なまじの感性を受け付けないような気がする。よく分かりもしないのに、ジャームッシュ作品を褒め上げる、
ということはつまり「オレは映画ってものが分かっているんだもんね」というような雰囲気も受けてしまう。
本当にジャームッシュ表現している所が分かって褒めているのか、周りがいいと言うから良いらしい、と
大勢に流されているのか。

繰り返すが、私にはジャームッシュはタフな存在だ。特に、長編第一作だった「ストレンジャー・ザン・
パラダイス」とその翌年に作られた本作あたりは、「分かりづらい」と言っておく。
ただし、昨年観た「パターソン」は、個人的に年間ベスト2位に上げるくらいに、自分の心にヒットした
作品だった。わかりやすかったのだ。いわゆる普通の映画ではない。癖モノの作品ではあるが、「パターソン」
からは「普通であることの幸せ」をストレートに表現出来たものとして、とても感心した出来の映画だ、と
思ったのだった。こうした「パターソン」のような作風を評して、こんなん、ジャームッシュじゃないよ、
軟派に堕落しやがったな、というハードでコアなジャームッシュファンもいるだろう。

私は彼の作品を全部観たわけではないので、断定的なことは言えないのだが、本作と「パターソン」の
ジャームッシュとどちらが好きか、と問われれば、はっきり後者と言える。私が年を取ったのかも知れない。
ジャームッシュも年を取り感性の方向が若干変わってきたのかも知れない。

さて、そんな私のジャームッシュを取り囲む環境の中で、本作を観た。なぜ観たのか、と問われれば、やはり
ジャームッシュは気になるからだ。

モノクロ、脱力感、退廃の中で、人生を斜めに(とっても斜めに)切り取って見せる。所詮人生なんて、と
いう、どこか投げやりな中に、ジャームッシュ的な人生の地平を見せようとするところも覗える。そんな
良い点も感じてしまったりするので、余計に彼のこのころの映画は難しいのだ。オフビート、ということは
出来るが、そんな軽い言葉で言い切れる彼の作品ではない。ジャームッシュ的人生の視座を、一体この映画を
通してどのくらいの人がクリアに理解できるだろうか、いや理解しなくてもいいのだ、登場するキャラクターが
強烈に人生を主張してくるのではなく、逆に、なにかグダグダな人生の中に、「観客のみなさん、こいつらの
人生に何を感じます?」と投げかけているような。そこから何かしら、ひょっとしたらポエムでもいいかも
しれない、そんなものが受け止められれば。

冒頭でトム・ウェイツの歌声に乗せて、クルマの窓から右へ、左へと流れる。3往復くらいこれが続くのかな。
このシーンがこの映画の骨子を物語っているような雰囲気もある。「右往」「左往」。

ニューオリンズ。ポン引きと元DJが罠にハマって刑務所に。そこで英語がよくしゃべれないイタリア人と
出会い(こいつは殺人を犯している)、3人揃って脱獄する。沼にハマって出口がわからなくなったり、
ウロウロしているうちに道に出て、一軒のレストランを見つける。そこでは若いイタリア人女性が経営して
いて、イタリア人男は即恋に落ち、ここで身を固めるという。あとの二人は東部と西部に分かれて自分の
人生を見つけると言って去っていく。さてY字路に来たが、どっちがどっちへ行く道か分からない。

ポン引き、DJ、イタリア人、刑務所、脱獄、沼(人生の縮図)、女の家、分かれ道。キリコやダリの
アブストラクトのように織りなす光景は、やはりある種の光を放っていることは確かなのだなあ。

握手を嫌って、取り敢えず、二人分かれて自分の道を歩んでいく。人生「右往」「左往」だ。これが
冒頭の映像に結びついていくのだろう。そして女と留まったイタリア人の生き方が対比される塩梅。

それだけの話なのだが、結構有名なDJだったのに今やすっかり自信喪失している男、片やポン引きは上昇
志向が強い。これにケセラセラのイタリア人が加わるが、彼が結局人生に対して一番マトモなアプローチを
していたのだ。「取り敢えず」の人生だって良いじゃないか、と言われているような気もする。
この頃のジャームッシュは確かに「パターソン」の彼と比べると尖っていたとは思う。「パターソン」は
カラーだし。
シーンを強引な暗転で折りたたんでしまったり、セリフの独特の間は、ジャームッシュ流で嫌いではない。

もう一回観たら受け取るものも変わるのだろうか。
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<ストーリー:結末まで書かれています>
ルイジアナ州ニューオリンズ。ジャック(ジョン・ルーリー)は、チンピラでポンびき。情婦ボビー(ビリー・
ニール)にあいそづかしされているところへ、縄ばりをはり合っているギグ(ロケッツ・レッドグレア)に
騙されて投獄されてしまう。

一方、ザック(トム・ウェイツ)は、リー・ベビー・シムズの名でディスク・ジョッキーとして結構売れて
いたこともあるが、ジャガーを一時間運転するだけで1000ドルの報酬という話にのって、ワナにかけられて
逮捕される。
こんな2人が、OPP(オリンズ・パリッシュ・プリジン)の同じ獄房に入れられた。むっつりとしたザックと
態度の大きいジャックは、初対面からうまくいかない。そこにロベルト(ロベルト・べニーニ)という変な
イタリア人旅行者がぶち込まれてくる。彼はカタコトの英語で2人に話しかけ、3人はスクリーム(叫ぶ)と
アイスクリームをかけ合わせたジョークを発しながら騒ぎたてる。ロベルトは殺人で投獄されたのだという。

ロベルトの発案で、3人は堂々と脱獄してしまい、川を渡り野や森をぬけてようやくボート小屋にたどりついた。
そこでジャックとザックは、これからミシシッピーに向かうかテキサスに向かうかでいがみ合う。翌朝ボートで
川をのぼる3人。ボートは、しばらくすると同じ風景に戻ってしまい、浸水して沈んでしまう。先導した奴が
悪いと口論が始まり、とっくみ合う彼ら。ザックはDJ調に森の観察をしゃベりつづけ、ジャックは人生を
ぼやき、ロベルトは母が得意だったといううさぎ料理の話を夢中でする。

数日後に蜃気楼のような道に出て、夜ルイジの店と書かれた一軒屋の前に出る3人。偵察に行ったロベルトが
なかなか戻ってこない。びくびく近づく2人。中には暖かい料理とワインでもてなされているロベルトの姿が
あった。彼の前で話を聞いているのは、ニコレッタ(ニコレッタ・ブラスキ)で、ロベルトは彼女に恋をしたと
宣言する。彼はここに残ることに決め、翌日、ジャックとザックは、ニコレッタとロベルトを残して、再び
出発する。相手が右へ行くといえば自分は左に行くというジャックは、ぴったりと分かれ道で別れそれぞれの
道を進むのだった。(Movie Walker)

<IMDb=★7.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:90% Audience Score:94% >



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by jazzyoba0083 | 2018-07-16 23:10 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)