渦 Maelström (2000)

●「渦 Maelström (2000)」
2000 カナダ Max Films Productions,SODEC,Téléfilm Canada. 84min.
監督・脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:マリ=ジョゼ・クローズ、ジャン=ニコラ・ヴェロー、ステファニー・モーゲンスターン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
「ブレードランナー2049」や「メッセージ」で一躍その存在が普遍的になったカナダの監督ドゥニ・
ヴィルヌーヴ。彼の作品は、これまでも「ボーダーライン」「複製された男」「プリズナーズ」を
観ている。具象的な作品と、観念的抽象的な作品、それぞれに旨味を出せる監督だと思うのだが、
彼の長編二作目、メジャーデビュー作としての「渦」は、ヴィルヌーヴ監督の思想の原典(原点)と
言える作品ではないか。それにしても読み解くのに苦労するタイプの映画だ。

観念的な作品は、メタファーだらけだったり、表現が抽象的だったりするので、読み解くのに苦労
する。一体何を言いたいのだろう、と。本作も、冒頭、身を削がれて殺される大きなグロテスクな
魚の喋りから始まるのにまず度肝を抜かれる。
物語は、大女優の娘で、25歳にしてチェーンブティックのオーナーであるビビアンという女性の
破滅と再生の話。カットインしてフェイドアウトしていく物語の構成だ。

冒頭の魚がナレーションを務めていくのだが、この映画全体を通してキーになっている映像が「水」
「海」だ。ビビアンが最初に登場するのは彼女の堕胎シーン。水子になって流れる世の中に
現れそこねた命が吸引パイプの中を液体となって通っていく。「海」に関連して登場する魚市場だったり
レストランだったり、イメージだったりのさまざまな「魚たち」、時々挿入される泡だった水のカット、
ビビアンが安寧を求められるという(魚がそういう)シャワーはお風呂のシーン、コーヒーの表面の
アップ、ビビアンがひき逃げで殺してしまう魚卸市場の中年の男、ひき逃げされたクルマを洗う洗車機の
泡と水、さらにそのクルマを自ら運転し海に捨てて脱出を試みる、ひき逃げの被害者の息子は潜水
ダイバーを仕事としている(これはなにかのメタファーくさい)、などなど、事あるごとに「水」がキー
映像として使われいる。

ビビアンと水の関係とはなにか。まだ若いビビアンの定まらない心のかたちのメタファーなのかどうか。

彼女は自分が轢き殺した男の葬儀に行き、その息子と話したばかりに、その男に好かれてしまう。殺した
男の息子から好かれるとは! 遺灰を持って故郷に引き上げる彼を飛行機に乗る手前で引き止めるビビアン。
「私にはまだあなたと寝るという忘れ物がある」と。その飛行機は彼を乗せずに飛び立ち、途中で墜落する。
彼は、ビビアンは天使だという。が、彼女は実は自分があなたのお父さんをひき逃げして殺した、と告白する。
しかし、二人の愛情はもはや揺るぎのないものになっていたのだった。

二人は息子の故郷へ帰り、その途中の船の上から遺灰を散骨したのだった。

観念的な物語の中にも、具体的な事象を埋め込み、たとえば、ビビアンとその殺した男の息子が、見知らぬ
男に「人を殺した」「親を殺した女に恋をしてしまった」と相談をするのだが、それが同じ男であったり。

薀蓄を語るグロテスクな死の直前の魚のいる場所はどこだろう。ラスト、「人間というやつは」と言いかけた
ところでこの魚は頭を切り落とされてしまう。そこでエンドだ。
「ビビアンの破滅と再生」といってしまうのは容易いのだが、若きヴィルヌーヴがこれで何を言いたかったのか、
ビビアンの観念的心象風景なのだろうか。原題は映画にも出てくるノルウエーの海の「大きな渦」のことらしい。

ヴィルヌーヴ33歳のときの作品。若さの勢い、尖った表現、向こう見ずな挑戦のような制作姿勢を感じる。
最近の新しい2作はこうした彼の原点ぽい観念性への回帰みたいな雰囲気を感じる。
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<ストーリー>
中絶手術をしたばかりのビビアン(マリ・ジョゼ・クローズ)は、大女優の娘に生まれ、25歳の若さにして
ブティックのオーナー。
しかし経営状態は思わしくなく、絶望を紛らわすために親友クレール(ステファニー・モーゲンスターン)
から慰めを受け、クラブに繰り出し酒をあおる。そして深夜、彼女は誤って、ある男をひき逃げしてしまう。

ビビアンは事故をひた隠すが不安に苛まれ、男との刹那的な関係で気を紛らわそうとするが、混乱は消えない。
やがて彼女は、自分が殺した男が年老いた魚の卸売り業者だと知る。せめてもの償いをしようと男の死体が
安置された場所に出掛けるが、そこで彼の息子であるエヴィアン(ジャン・ニコラス・ヴェロー)と運命的な
出会いを果たす。まもなく二人は恋におち、共にノルウェーの海に死んだ男の遺灰を撒くのだった。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:80% Audience Score:79%>




by jazzyoba0083 | 2018-07-18 23:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)