ザ・ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ The Founder

●「ザ・ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ The Founder」
2017  アメリカ The Weistein Company and more. 115min.
監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:マイケル・キートン、ニック・オファーマン、ジョン・キャロル・リンチ、リンダ・カーデリーニ、
   パトリック・ウィルソン、ローラ・ダーン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
世の中には知らないことが多いのだなあ。だからこうした映画も出来る訳だが。シネコンに行きそこねた
作品で、WOWOWでの放映を待っていた。事実に基づいた話は、「小説より奇なり」なので、面白さは
下駄を履いているとするのが私の信条ではあるが、本作はマイケル・キートンの怪演も含めて、なかなか
見せ所の多い映画だった。というか結構衝撃的だった。
この映画、良くマクドナルドが作らせたな、と思ったのが正直な所。だって、田舎の真面目なマクドナルド
兄弟のシステムをパクって、あまつさえ名前まで盗っちゃって、まあ企業として大きくした功績はあるに
しても、「えげつなさ」が全面に出ていたの物語は、普通に見れば「マクドナルド」が嫌いになると思うのだが。

調べてみると、本作で繰り広げられている、クロックという男の顛末はほぼ事実に即している。彼に
才能と、自身で言うところの「執念」が有ったことは認めるけど、そのプロセスについては、特に日本人で
ある我々には受け入れがたい部分が多いのではないか。ぶっちゃけていえば「乗っ取った」わけだから。

マクドナルドの経営譲渡の際に兄弟と口約束した売上の利益の1.5%を受け取る、ということも結局守る
ことはなかった。フランチャイジーに土地を与えず、その土地を本部が持ちフランチャイジーをコントロール
する、というやり方は確かに効果的ではあったろう。

「ビジネスで成功するためには手段を選ばない」というマキャベリストであるレイ・ロック(キートン)は
52歳の野心家ではあるが成功にはなかなか手が届かず、5本シリンダーを持つミルクシェイクマシーンを
車に積み売り歩くも売れない日々。そこに1つの店で6個も注文をしてきた店がカリフォルニアにあると
いうニュースがもたらされる。
さっそくクルマで長駆駆けつけると、そこには長い行列と見たこともない「ハンバーガーが出るまで30秒」、
紙に包んだバーガーとポテトと飲み物しか扱わない見たこともないシステムに、ウェイトレスさえいない
革新的な店の姿だった。その店こそ、マクドナルド兄弟が苦心の末に繁盛させたハンバーガー屋だった。
これを見てレイの人生が変わっていく。

それまではクルマにローラースケートを履いたお姉ちゃんが注文を取りに来て、また品物が乗ったトレイを
ドアに引っ掛けて置いていく、という「アメリカン・グラフィティ」に出てくるようなシステムだったのだ。

それをこのマクドナルド兄弟は全く違ったものに変えて繁盛させていた。だが、兄弟は味の品質を守るために
大規模なフランチャイズ化をしていなかった。レイはそこに目を付けた。友人や銀行などさまざまなルートで
融資を募り、フランチャイズを嫌がる兄弟を説き伏せ、一号店を出すところまでに漕ぎ着けた。

その後、レイがやったことと言えば、兄弟をいかにたらしこんでマクドナルドの名前を兄弟から取り上げて、
使えなくさせ、自分のやりたい方式で全米に、全世界にマクドナルドチェーンを拡大することだった。

この映画で描かれるレイの一番イヤな所は、創業者であり、名前の持ち主であるマクドナルド兄弟から初期の
システムと名前を盗んだ(法律的に不法ではないのだが)こと。兄弟にビジネスを拡大する野心も執念も
知恵もない、そこをレイが上手く吸い上げMacを大発展させた、ということもできよう。だが、私はレイの
やり方が気に入らない。人を騙してまで成長を遂げたMacにいい印象を持てるはずがない。仁義なき闘いだ。

レイは自分の会社をマクドナルとし、ロゴの入った封筒を作り、「創業者(ファウンダー)」と肩書を入れた
名刺を持つようになった。兄弟の自慢であったゴールデンアーチ(今の黄色いMマークはMacのMではなく、
店がすぐに分かるようにと兄弟が考えた黄色いアーチだ)さえ、横取りする。

確かに現在のMacのシステムを作ったのはレイであろうが、そこには真の創業者であるマクドナルド兄弟に
対する尊敬の念もなにもあったものではない。兄弟は結局自分の店にマクドナルドという看板を上げることが
できなくなり、「ビッグM」と命名して新たな出発を図ったが、あっという間に潰れてしまった。
その頃、マクドナルドは揺るぎのないブランドに成長していたからだ。

レイは、苦労をともにしてきた妻(ローラ・ダーン)とも離婚し、友人の妻を盗んで再婚した。そういう男だ。
マクドナルドの社史には、レイのことをどう書いてあるのか興味がある。
個人的にはレイ・クロックという男、ビジネスの世界では天下を獲った大成功者であろうが、人間的には
認めない。品性卑しい男だ。

そうやって思うと、マクドナルドの「中国に於けるナゲット事件」最近の「ローストビーフ形成肉」事件など
を見るにつけ、消費者は客ではなく、金儲けのコマに過ぎないと思っている企業風土が根強く残っているので
はないか、と感じる。表面は取り繕っても、(Macは社会貢献としてもかなりの金額を寄付しているがそれも
この映画をみたあとだと方便としか見えない)内部では「大衆にはこの程度のものを食わせておけばいい」あとは
利益率だ!儲けだ!と考えているのではないか、という猜疑心が頭をもたげたのだった。

人間性を無視して経済的に成功を収める、これをグローバリズムというのだとしたら、やはり現在進行している
金融資本主義は、人間にとって不幸なシステムなのかも知れない。強いものだけが生き残れる、その結果として
金を持ったものだけが幸せになれる、という事でいいのだろうか。

タイトルの「ファウンダー」とは大いなる皮肉なのだと思う。

そうして考えると、本作は私にとってとても教育的覚醒的な意味があったといえよう。マイケル・キートンが
まあこのえげつないレイを好演しているから余計に腹が立つんだな。ラストシークエンスでレイ本人の
インタビューが出てくる。セクハラをして永久追放されたWeinstein、いい映画を作っていたのに残念だ。

さあ、みなさんはこの映画を見て、Macを更に好きになるのか、嫌いになるのか、どっちだろうか。
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<ストーリー>
カリフォルニア州南部の小さなハンバーガーショップ、マクドナルドを世界最大のファーストフードチェーンへと
成長させた男、レイ・クロックの実話を描く人間ドラマ。創業者であるマクドナルド兄弟とミキサーのセールスマン
だったレイとの出会いから、両者の対立まで、成功の陰にあったダークな側面までも映し出す。
レイをマイケル・キートンが演じる。

1954年、アメリカ。52歳のレイ・クロック(マイケル・キートン)は、シェイクミキサーのセールスマンとして
中西部を回っていた。そんなある日、ドライブインレストランから8台ものオーダーが入る。どんな店なのか興味を
抱き向かうと、そこにはマック(ジョン・キャロル・リンチ)とディック(ニック・オファーマン)の兄弟が経営する
ハンバーガー店“マクドナルド”があった。
合理的な流れ作業の“スピード・サービス・システム”や、コスト削減・高品質という革新的なコンセプトに勝機を
見出したレイは、壮大なフランチャイズビジネスを思いつき、兄弟を説得、契約を交わすのだった。

フランチャイズ化は次々に成功していくが、利益を追求するレイと兄弟との関係は急速に悪化。やがてレイは、
自分だけのハンバーガー帝国を創るため、兄弟との全面対決へと突き進んでいく……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:83% Audience Score:82% >






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by jazzyoba0083 | 2018-07-27 23:15 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)