ジーサンズ はじめての強盗 Going in Style

●「ジーサンズ はじめての強盗 Going in Style」
2017 アメリカ New Line Cinema,Village Roadshow Pictures,Warner Bros. and more. 96min.
監督:ザック・ブラフ
出演:モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキン、アン=マーグレット、マット・ディロン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
本編とは関係ないけど、映画会社のクレジットが冒頭で出てくるのだが、ワーナーのロゴがバラバラに
なって断片がニューライン・シネマのロゴに変化するCGがカッコよかった。それと、この邦題、確かに
原題は難しいが、邦画のパクリのようなセンスのないタイトルで、名優がたくさん出ているのに対して不敬だ
とすら思った。

さて、映画には実話に基づいたシリアスな社会告発型から、本作のような起きるはずのないことが起きると
いう夢物語の大きく2つのサイドに分かれるんじゃないかと個人的には踏んでいるのだが、本作は、典型的
後者タイプ。私など、年齢的に身につまされるので、背景のリアリティには苦笑しつつ、「小粋な夢物語」は
観ていて決して不快ではなく(おそらく名優たちの効果だと思う)、むしろ、「ほんとにこんなことが出来たら
いいのになあ」と思ってしまう。
脚本を手がけたのはオスカーノミニーにもなった「ドリーム(Hidden Figure)」の監督・脚本を担当した
セオドア・メルフィなので、面白さのツボを心得たストーリーが見事なのであろう。これに、全部足したら
オスカー何本になるの、という名優たちが集まっての演技なので、間違いない。
本国での評価が今ひとつなのは、実際はセレブな俳優たちが、実現不可能な夢物語を演じていることが、
「ありえないし、ばかばかしい」、と感じてしまうのではないか。現実はこんなに上手く行くもんか!と。
そういう気持ちでこの手の映画をみちゃ、本作は面白くない。

さて、ストーリーは金欠の年金ぐらし、健康も若いほどのことはない、じいさん3人が銀行強盗をしちゃうと
いう話。特に冒頭登場し、物語のきっかけづくりをするマイケル・ケインが、家のローンの、いわゆる
「ステップローン」というやつの低金利時期が終わり、急に返済金額が増加したため、支払いが滞り、
このままいくと家を差し押さえられ没収されてしまう、そのため、銀行に行き、なんとかならないか、と
交渉するところからスタート。と、そこに覆面を被った3人組の強盗が銃を乱射しながら飛び込んできて、
見事に大金をかっさらっていく。

一方、マイケル・ケインの親友、アラン・アーキンとモーガン・フリーマンは同じ製鉄所に通い、間もなく
年金生活に入る年齢の親友だった。その製鉄所が合併で工場をベトナムに移し、他の会社と合併するため
これまでの年金が消えてしまうという。激怒したケインはモーガンを誘い、例の銀行強盗のように、
自分たちの貰うべき年金がある銀行を襲い、3人分の年金を奪い返そうじゃないか、と計画する。
最初は嫌がっていたアーキンも同行することになる。

そこで、3人は手始めに近くのスーパーで万引きをしてみて実験をする。これがもう大爆笑のトンチキを
やらかしてしまい、結局警備員に捕まるのだが、年寄りだからということで大目に見てもらえる。
本番は相当に計画を綿密に練らねばならないな、とプロのワルを仲間に入れることを画策する。

本番では、銃は空砲にしたり彼らなりの礼儀?を持って臨むのだが、モーガンが途中で気分が悪くなり
倒れた所を客として来ていた母子連れの娘の方に覆面をめくられそうになったり、足が付きそうなこと
をたくさんやらかしてしまった。一応230万ドルの強奪は成功したのだが・・・。

短い映画ではあるが、じいさんたちのアリバイ工作の仕掛けや、強盗を主導するプロのワルの伏線など
ガジェットを含めた伏線とその回収の面白さ、年寄りならではの病気ネタ、アーキンとスーパーの
店員のアン=マーグレットの恋の行方、そして、捜査を担当する刑事マット・ディロンとの駆け引きなど
なかなか濃い構成となっていて、思わずニヤリとしたり、ハラハラしたり、騙されたり、楽しい
一時だった。ラストはアーキンとアン=マーグレットの結婚披露宴で大団円。一方で老人クラブには
パイの下に札束が入った箱を、いつも小銭のチップばかりと嘆いていたいきつけのダイナーのウエイト
レスには札束のチップをと、義賊ぶりを発揮する。

銀行は強盗に入られても、強奪金に保険を掛けてあるから、結局損はしないんだよ、という理屈に
なんか納得しちゃって、3人のじいさんたちの活躍とその結末に、「よかったねえ」と心の中で声を掛けて
いた。でも、実際にこんな美味しい事が世の中で起きるわけもなく。96分間の夢を見させてもらった、と
いう心地よさでいいのではないか。愛すべき一編である。

ところで老人クラブの爺さんの一人が、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのドクを演っていた
クリストファー・ロイド。なぜ分かったかというと、パイに下にあった札束に目を向いた顔が、あの
ドクそのものだったからだ。
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<ストーリー>
モーガン・フリーマン、アラン・アーキン、マイケル・ケインというベテラン・オスカー俳優3人の豪華共演で
贈るクライム・コメディ。1979年のコメディ映画「お達者コメディ/シルバー・ギャング」を基に、真面目に
生きてきた老人3人組が、突然の年金打ち切りに怒りを覚え、自分たちのお金を取り戻すべく銀行強盗を企てる
大胆不敵な計画の行方をユーモラスに描く。
監督は「終わりで始まりの4日間」「WISH I WAS HERE/僕らのいる場所」のザック・ブラフ。

 同じ会社で40年以上も真面目に働き、定年後は慎ましくも不安のない年金生活が送れるはずだったジョー、
ウィリー、アルの親友3人組。しかし会社が買収された途端、年金の支払いが一方的に打ち切られてしまう。
おまけにジョーは、住宅ローンの理不尽な仕組みのせいで自宅差し押さえの危機に直面していた。

そんな時、偶然にも銀行強盗の現場に居合わせた彼は、その手際の良さに感心し、自分たちも奪われた年金を
取り戻すべく、銀行強盗を決行しようとウィリーとアルに持ちかける。そしてまずは腕試しにと、行きつけの
食料品店で万引きを試みる3人だったが…。(allcinema)

<IMDb=★6.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:49% Audience Score:57%>





by jazzyoba0083 | 2018-07-30 23:10 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)