追憶の森 The Sea of Trees

●「追憶の森 The Sea of Trees」
2013 アメリカ Bloom,Netter Productions,Waypoint Entertainment. 111min.
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ、ケイティ・アセルトン、ジョーダン・カヴァリス他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆-α>
<感想>
ガス・ヴァン・サントは「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」「ミルク」などで常に注目している
監督の一人であるのだが、最近はめっきりメガフォンを持たなくなってしまった。本作が監督としては
最新作ということになる。現在、ホアキン・フェニックスやジョナ・ヒルを起用した新作を製作中であると
聞いているので公開が楽しみではあるが。

ガスは、人間の内面を描き出すことを得意としている作家だと思うのだが、本作は、そこがスピリチュアルな
面まで行ってしまい、個人的には非常に分かりやすい作品であったのだが、映画としての重さというか出来の
良さはちょっとな、という感じの仕上がりと感じた。

主人公アーサー(マコノヒー)が、アメリカの空港から何も持たず日本を訪れ、青木ヶ原の樹海に入る。自殺
しようとしていることは明らか。その理由はしばらくは語られない。むしろ、妻との折り合いの悪さが原因と
思われるようなミスリードもある。そこに、同じく森を彷徨するナカムラタクミという中年の男性を見つける。
彼も自殺を試みに森に入ったが、止めて森の外に出たいが道が見つからないという。
そこでアーサーは、彼をとりあえず助けるため、樹海を出る努力をしてみる・・・というメインストーリーの
中に、アーサーが岩場から転落して重傷を負ったり、洞窟の中で水に流され、九死に一生を得たり、さまざまな
服を着た遺骸と遭遇したり、昼なお暗い森の中からの脱出は続く。
ナカムラは妻はキイロ、娘はフユという、と自己紹介をしていた。日本人なら、そこれあれ?と思うはずだ。
女性の名前にキイロというのは普通ないから。

二人の脱出行の中で、アーサーがなぜ樹海に来たかが明らかにされていく。それは、折り合いの悪かった妻
(ワッツ)に脳腫瘍が見つかり、摘出手術を受けたが、それは良性であったことがわかり、二人の間にいい
空気が流れ始めたものの、転院する救急車がダンプトラックと衝突し、生きるはずだった妻が亡くなって
しまったのだ。
自分がどれだけ妻を愛していたか、それなのに妻のことを殆ど知らないと愕然としたアーサーは、以前
妻から「死ぬ時は病院以外で。理想的な死に場所を探してね。約束よ」と云われていて、改めて妻を愛して
いたことから絶望の縁にたたされたアーサーは、ネットで日本の青木ヶ原を見つけ、やってきたのだった。

だが、ナカムラとの脱出行で、妻のためにも生き延びることを決意したアーサーは、ケガで動けなくなった
ナカムラを一旦置いて救助を求め、救われたのだった。しかしナカムラの姿はもう森にはなく、掛けたコート
を取ってみるとそこには、ナカムラが言っていた死ぬときに咲く花が一輪咲いていた。

つまり、ナカムラは、アーサーの自殺を止めさせ、森から出そうとする精霊であり、また「千の風になって」
アーサーを見守る妻の精霊であったのだ。「生きろ」と。ナカムラが「生」へのメタファーであったことは
容易に想像がつく。

そしてアーサーはアメリカに帰り、妻の好きだった場所に家を変え、好きだったランの花を育てながら、
研究所に復職して暮らし始めたのだ。

こんな分かりやすい話があるだろうか。たしかに森のなかでの渡辺謙とのことはリアリティも感じるが、
ラストを考えると二人助かって良かったとは絶対にならないわけで、それにキイロとフユ、妻が童話が
好きだったなどという伏線から先々が容易に読み取れてしまった。

悪い映画ではないが、ガス・ヴァン・サントらしい捻りとか心に直球で投げ込んでくる感動という
ものが欠けていたのでは、と感じたのだった。
森のなかの中年男がアーサーと不自由なく英語で会話が出来るということからすでに怪しい(苦笑)。

WOWOWで解説の小山薫堂が紹介していたが、カンヌでは「なぜ日本の青木ヶ原を理想的な死に場所に
選んだのか、まったくその理由が分からないとブーイングだった」そうだ。これは舞台となった日本人が
観るのと西欧人が観るのとでは、初見の捉え方が大きく異なるのだろうな、と思う。
今二つくらいの作品だった。ただ、スピリチュアルな、精神世界の好きなかたは良いかもしれない。
秋山雅史の歌のイメージがお好きな方。
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<ストーリー>
磁石が狂い、携帯電話も通じない樹海で運命的に出会った2人の男が、本来の目的をよそに生き残ろうと
奮闘する姿を描くミステリアスなドラマ。
マシュー・マコノヒーと渡辺謙という実力派が初共演し、深い悲しみを抱えた男たちを熱演する。
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の名匠ガス・ヴァン・サントがメガホンを握る。

アメリカ人のアーサー(マシュー・マコノヒー)は死に場所を求め、富士山の北西に広がる青木ヶ原樹海に
入っていった。木々が生い茂る森の中を分け入っていくと、タクミ(渡辺謙)という日本人男性と出会う。
タクミは妻子のもとへ帰ろうとしているものの、怪我をし寒さに震えていた。タクミを放ってはおけず、
アーサーは彼とともに出口を探して歩き回るが、方向感覚を失い、森を抜け出すことができない。
自然の厳しさに直面しながらさまよううちに、アーサーはタクミに心を開いていき、彼が樹海へ来た理由を
話し始める。(Movie Walker)

<IMDb=★6.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:13% Audience Score:40%>




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by jazzyoba0083 | 2018-08-27 23:20 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)