海街diary

●「海街diary」
2015 日本 東宝、フジテレビジョン、ギャガ、FILM、小学館、テレビマンユニオン. 128分
監督・脚本・編集:是枝裕和  原作:吉田秋生『海街diary』(小学館『月刊フラワーズ』連載)
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、樹木希林、大竹しのぶ他

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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
是枝裕和監督作品鑑賞シリーズ、その3。前回の「三度目の殺人」よりは遥かに好きだし、よく出来ている。
この年の「キネ旬」ベスト10の4位「映画芸術」ワースト3位日本アカデミー賞では作品、監督、新人
俳優を含め5部門を受賞という、なかなか微妙な・・・。(苦笑) まあ、「映芸」は原田、北野、是枝、堤、
三谷、園子とかのメジャー系にがっちり支えらている監督は毎度嫌いだからなあ・・・。

「万引き家族」「三度目の殺人」と来て本作を観たわけだが、今の所まだ、私の是枝評としては「映像をして
語らしめること」と「セリフ」により「説明的でない」、結果的に「観念的」な作品に仕上がっていくことを
本性とする人、と思いに変化はない。また「家族=一番近い人間関係」に何を見るかという点も大切なのだ。
ただ、本作はコミック誌の原作があるので、(未読)感じ方、作り方はいささか異なる部分もあるだろうが、
原作を生かし(たと思う)、4姉妹の人間としての魅力を上手に映像化出来ていたのではないか、と感じた。

是枝作品の特徴の一つとも言うべき、「私たちが良くするような自然な内容の会話をナチュラルなセリフ回しで
語らせる」ことによる、作品へのシンパシーの獲得、それを導入とした本筋への運び、これが効果的に使われて
いる。
説明的なセリフも多々ある。が、それが作品を壊すことはない。ただ、本作は「映像をもって語らしめる」面から
するとやや弱いと感じた。主人公が4姉妹、それに母、祖母、恋人、食堂のおばちゃんやおじちゃんなど濃い
キャラの出演者が多いから必然的に人間を捉える映像が多くなるから会話が多くなるのは致し方のない部分もある。
それをシーンと精選されたセリフの合作で救おうとしているのではないか。
それは例えば、浴衣と花火、風呂場に出現するカマドウマ、梅干し作りの中で繰り広げられるセリフ、鎌倉の四季
の光景やセミの鳴き声などだ。

映画には法事が4回、仏壇前が2回出てきたと思う。ラストシーンの海辺の4姉妹は喪服を着ている。長姉幸が
勤める病院では終末ケアの話も出てくる。それは人の「生」「死」が日常に存在し、それらを意識させながら、
よくある日常のルーティンとしての暮らし、仕事や恋愛の悩みを織り込み、こうした中でメインテーマたる
4姉妹のキャラクターを浮かび上がらせていく。

特に3姉妹を残し妻子ある女の元に走った父の母親違いの妹である広瀬すずが、鎌倉に引き取られ「すべてを
背負って生きようとする」心の重さが上手く伝わったのではないか。姉妹を引っ張らなくてはならない責任を
全うしようとするあまりキツイことも言わなくてはならない長姉幸の綾瀬はるか、銀行員で酒が好きで下らない
男ばかりを好きになる2女佳乃の長澤まさみ、一見ノンシャランながら結構見る目は鋭い3女千佳の夏帆、
それぞれのキャラクターと良く合った演技だった。これに広島弁のリリー・フランキー、食堂のおばちゃんの
風吹ジュン、母大竹しのぶ、そして祖母樹木希林と脇をがっちり演技派で固め、良くも悪くもスキがない。
演技全般、演出全般は良かったのではないだろうか。さらに音楽が良かったと思う。
開巻、長澤まさみのシーンと次の鎌倉を歩く綾瀬はるかの二つのシーンで既に性格付けが始まっている手法は
なかなかい良い。

本作では「人生」という大上段のテーマではなく、「人を想う心」「人の想いを理解し大切にする気持ち」という
普段の暮らしのなかで私たちが必要とする側面にアプローチすることにより、観ている人により共感しやすい
仕立てになっていた。そのさり気なさに法事や仏壇を入れ込むことにより、亡き人への想いや、亡き人のおかげ
でまとまっている自分たちのことに想いを致す大切さが伝わってくる。全体にハイキーで描かれる映像もそんな
意味合いを強調している。
そうしたことは映画で直截的に説明されるわけではない。ここが是枝作品たるところ。

冒頭あたりに綾瀬はるかが鎌倉の道を歩くシーンが有る。両サイドは柴垣である。もうこれは小津作品への
オマージュ。北鎌倉のシーンで繰り返し使われる道の引きのシーンである。小津の「東京物語」「晩春」などで
原節子にもっと深い人間関係の懊悩を演じさせたものもあるが、本作、私としてはこうした小津作品に通底
した心情を感じ取ったのだった。
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<ストーリー>
人気少女漫画家・吉田秋生の同名傑作コミックスを「歩いても 歩いても」「そして父になる」の是枝裕和監督が
映画化。鎌倉の古い一軒家に暮らす3姉妹が、腹違いの妹を迎え入れ、それぞれに複雑な想いを抱えながらも
日々の暮らしを通して家族としての絆を紡いでいく1年の物語を、鎌倉の四季折々の美しい風景とともに綴る。
主役の四姉妹には綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず。共演に加瀬亮、鈴木亮平、樹木希林、
リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ。

 鎌倉の古い家に暮らす幸、佳乃、千佳の香田三姉妹。父は不倫の末に15年前に家を出て行き、その後、母も
再婚してしまい、今この家に住むのは3人だけ。ある日、その父の訃報が3人のもとに届く。父の不倫相手も
既に他界しており、今は3人目の結婚相手と山形で暮らしていた。葬儀に参加した三姉妹は、そこで腹違いの
妹すずと出会う。父が亡くなった今、中学生のすずにとってこの山形で身寄りと呼べるのは血のつながりの
ない義母だけ。気丈に振る舞うすずだったが、肩身の狭い思いをしているのははた目にも明らか。すずの今後を
心配した幸は、別れ際に“鎌倉で一緒に暮らさない?”と提案する。
こうして鎌倉へとやって来たすずだったが、最初は自分の母が幸たちの父を奪ったことへの負い目を拭えずに
いた。それでも、異母姉たちと毎日の食卓を囲み、日常を重ねていく中で、少しずつ凝り固まった心が解きほぐ
されていく。また、入部した地元のサッカーチームでも仲間に恵まれ、中学生らしい元気さも取り戻していく
すずだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:94 % Audience Score:82%>




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by jazzyoba0083 | 2018-09-01 23:15 | Trackback | Comments(0)