巴里のアメリカ人 An American in Paris(名画再見シリーズ)

●「巴里のアメリカ人 An American in Paris」(名画再見シリーズ)
アメリカ 1951 MGM 113min.
監督:ヴィンセント・ミネリ 音楽:アイラ&ジョージ・ガーシュイン
出演:ジーン・ケリー、レスリー・キャロン、オスカー・レヴァント、ニナ・フォック、ジョルジュ・ゲタリ他

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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
この所、市の上映会もあり、MGMの名作ミュージカルを月1本は大画面で見られるチャンスがある。
今月はジョージ・ガーシュインの交響楽「巴里のアメリカ人」を。「マイ・フェア・レディ」を書いた
脚本家、アラン・ジェイ・ラーナーが脚本を担当し、ガーシュインの名曲をたくさん楽しめるMGMの中
でも音楽性の強いミュージカルになっている「巴里のアメリカ人」だった。その分、ストーリーがやや
平板というか雑な感じもする。
だが、本作、この年のオスカーで作品賞、脚本賞を始め、美術系など8部門を独占してしまったのだった。
確かに、コレオグラファーとしても参加したジーン・ケリーの踊り、タップは良いし、なにせ、ガーシュイン
の音楽がいいので、派手目な感じの作品に仕上がっていることは確かだ。

ブログでの評価には辛いものも多い。特にラスト18分の歌のないダンスシーンは、長すぎ、とか、
ジーン・ケリーの自己満足の世界、とか指摘される方も多くいる。なんでこれがオスカーを8つも獲った
のか分からない、それほど名作か?との声も聞こえる。

確かに先に述べたように、ジーン・ケリーの踊り、ガーシュインの歌ありきの世界であることは分かる。
物語性が弱い事も分かる。だが私は、それを凌駕するジーン・ケリーとレスリー・キャロン(美人とは
言えないよねえ)の踊りと、プロダクションデザイン、またオスカー・レヴァントが一人複数役をこなす
ガーシュインの交響曲のシーンなどの映像効果などを加味すると、やはり歴史に残るミュージカル映画と
いうべきではないか、と感じるのだ。

レスリー・キャロンは出っ歯だし、およそハリウッド系の美人ではない。が、何故か(スマヌ)良作に
恵まれ『足ながおじさん』ではフレッド・アステアと、『恋の手ほどき』ではモーリス・シュヴァリエと
共演し評価を高め、更に『リリー』ではオスカーにノミネートもされている。
「巴里のアメリカ人」のクラッシックバレエシーンのためにジーン・ケリーがフランスでスカウト、本作が
デビュー作となる。確かにクラシックバレエシーンでは上等な踊りを披露している。現在87歳。お元気だ。

さらに、特殊効果で一人でピアニスト、指揮者、バイオリニスト、打楽器奏者、シロフォン、など何人
もの役をこなすオスカー・レヴァントの活躍と、彼のカフェでのコメディ役者としての演技など見る所が
多い。
イギリスで活躍のクラシック系の歌手ジョルジュ・ゲタリも独特の唱法だが、ジーン・ケリーと歌う
「ス・ワンダフル」は見ものの1つだ。

そしてラスト18分の「巴里のアメリカ人」を表現する踊り。アンサンブルダンサーも含め踊りの質の
高いことはもちろん、背景をフランスの画家、デュフィ、ルノワール、ユトリロ、ルソー、ゴッホ、
ロートレックを使い、これに美しい色彩を配して踊り、見応えは十分だった。長い!とお思いの方も
多いのだが、私は十分堪能させていただいた。これぞ、この映画の白眉であった。
とにかく観ていて平和な気分になれるのが一番いいところだ。

毀誉褒貶する作品ではあるが、アメリカミュージカルを代表する傑作であることは間違いない。

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<ストーリー:結末まで書かれています>
パリに住むアメリカ人ジェリー・ミュリガン(ジーン・ケリー)は、気ままな感じ易い青年だ。
パリに留まって一1人前の絵描きになることが宿望だが、絵の勉強は一向に進まない。だが友達は
たくさんできた。米国人のピアニスト、アダム・クック(オスカー・レヴァント)やフランス人の
歌手アンリ・ボウレル(ジョルジュ・ゲタリ)たちである。

ジェリーの絵はさっぱりパリジャンにうけなかったが、モンマルトルで開いた個展を訪れた金持ちの
米国婦人ミロ・ロバーツ(ニナ・フォック)は、彼の才能を認め保証人になってくれた。
どうやらミロは絵よりもジェリーに思し召しがあるようだ。ミロと一緒にキャバレーにいったジェリーは、
愛くるしい清楚なパリ娘リズ(レスリー・キャロン)を見染めて一目惚れ、強引に彼女の電話番号を
聞き出した。あくる日から、ジェリーとリズは逢いびきを重ね、お互いに愛し合う仲となった。

だがリズはアンリと内々に婚約していることをジェリーにかくしていた。リズは戦争中両親を亡くして
からというもの、アンリの献身的な世話を受けてきたので、彼を愛してはいなかったが深く恩義を感じて
婚約したのだった。やがてアンリはアメリカへ演奏旅行に出発することになり、彼はリズに結婚して
一緒に行こうと申し出た。リズはこれを承諾し、ジェリーにすべてを打ち明けた。ジェリーが落胆した
ことはもちろんである。だがミロは却って喜んだ。そのミロを連れて美術学生の舞踏会に出かけた
ジェリーは、そこでリズとアンリに会った。人影ないバルコニーで、ジェリーとリズは最後の別れを
惜しむのだった。アンリは偶然、2人の話を立聞きし、2人が愛し合っていることを知った。
彼は自ら身を引き、ジェリーとリズは晴れて結ばれたのだった。(Movie Walker)

<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:95% Audiece Score:79%>





by jazzyoba0083 | 2018-09-10 22:45 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)