告発のとき In the Valley of Elah (名画再見シリーズ)

●「告発のとき In the Vallery of Elah」(名画再見シリーズ)
2007 アメリカ Warner Independent Pictures. 121min
監督・脚本・(共同)製作・原案:ポール・ハギス
出演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン、ジョナサン・タッカー、ジェームズ・フランコ、
   ジョシュ・ブローリン、フランシス・フィッシャー、ジェイソン・パトリック他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
このところ、映画館に行きたい映画がないので、家で過去の気になる作品を観ている。本作は「名画」というには
ややこぶりであるが、好みであるポール・ハギスの作品で、派手さはないけど、好きな一遍だ。

2009年に初見。その時の感想は下記のリンクをお読みいだだけると幸甚だが、今回見た感想と殆ど変わらない。

製作された年代を考えると、イラクの闘いが泥沼化してきて、アメリカの欺瞞が明らかになり、派兵される
兵士は疲弊し、帰国後もPTSDを発症するなど大きな社会問題になっていた。そうした現場や帰国後の兵士の
苦悩を描いた作品はその後たくさん作られ、今も作られ続けている。
あの戦争が、いかに「国民を欺いた無益な闘い」で、戦場では以下に非人間的な闘いが繰り広げられていたか、
を映画の世界で告発し続けている。

最近の作品で印象深かったのは「ハート・ロッカー」「アメリカン・スナイパー」「アイ・イン・ザ・スカイ 
世界一安全な戦場」などであろうか。

本作では、戦場から一時帰国後の息子が休暇を過ぎても部隊に戻らず、やがて無残な遺体となって発見される、
という事件を中心に、誰が殺したか、なぜ殺したか、を、元軍警察軍曹で父親のトミー・リー・ジョーンズが
明かしていく。(明らかになっていく)これに陰ながら協力するのが地元警察の刑事シャーリーズ・セロンで
ある。

物語に派手さはない。むしろ、イラクの戦闘シーンしても、抑制された作劇により、むしろ「戦争の狂気」が
あぶり出される構造になってくる。ハギスといえばオスカーを獲った「クラッシュ」が最高作と思っている
私だが、それに通底する製作的精神構造を感じる。

「狂気は内に向かう」そして「怒りは外に向かう」それぞれの扱い方が、ハギス自身の脚本で上手く
描かれていて、「静かな進行」(銃声一つ聞こえない)が続く。父であるトミー・リー・ジョーンズが息子の
死を調べれば調べるほどに、この戦争の現場で行われている軍務の狂気、そして担当する兵士たちの精神の崩壊が
じわじわと迫ってくる。息子の兵士仲間、警察、軍、そして家族、それぞれの「イラク戦争」の関連性を上手く
まとめて物語ることで、この戦争を告発しているのだ。長男も既に戦死し、加えて次男も殺される、という事態に
その父母の怒り、疑問を観ている人は共有することが出来るだろう。

原題の由来は初見の時のブログを参照してもらいたいが、映画全体のメタファーの役割を担っているといえる。
そうして見ると、邦題のイージーさからは、何のインパクトもない

ストーリーについても初見のブログを参照頂けると幸甚だ。
2009年に初めてみたのだが、アメリカの現状は10年ほど経ってもなんら改善されていない。トランプになって
からその狂気は上積みされたさえいえるだろう。

初見の時は映画評論サイトの採点を書いていなかったので、下記に記す。
<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:73% Audience Score:77% >
<KINENOTE=71.0点>

実際に戦争を行ったアメリカでの評価と肌身で分からない日本では捉え方にずれや受け止めの温度差が出ることは
いたしかたのないことだ。

by jazzyoba0083 | 2018-09-27 11:54 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)