コレクター 暴かれたナチスの真実 De Zaak Menten

●「コレクター 暴かれたナチスの真実  De Zaak Menten」
2016 オランダ NL Films 131min.
監督:ティム・オリーフーク
出演:ヒィ・クレメンス、アウス・フレイダヌス、ノーチェ・ヘルラール、カリーヌ・クレツェン他

コレクター 暴かれたナチスの真実 De Zaak Menten_e0040938_17030644.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
もともとはテレビのミニシリーズとして製作されたという。これを映画に仕立てあげたので、時間の
折りたたみ方が特に後半急速だ。まあ、それはそれでテンポが良くて見やすく、さりとて重要な点が
飛んでしまっている、という欠点もない。

欧州ではナチに蹂躙された国々が、折に触れてナチスドイツの悪行をテレビや映画に仕立てているが
そういう姿勢が再び全体主義や戦争を抑止するチカラとして働いているとすれば、価値のあることだ。
日本はかつての帝国主義に対する反省に基づいた映画やドラマはある時期にぴったりと止んでしまって
いる。危険なことだと感じる。ときとして作れられる太平洋戦争物も下手をすると当時の体制の
称賛になってしまうので、難しいところだ。その点、塚本晋也の「野火」、山田洋次の作品などには
気概を感じる。頑張ってもらいたいし、そういう興行を支えていかなくてはならないだろう。今の日本
は特にだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
閑話休題。本作は事実に基づいた物語で、軸になる時代は1970年代に置かれる。その時代のオランダ。
富豪にして実業界の大物、ピーター・メンテンは、大戦中、ポーランドにおいてナチス親衛隊に属し、
村々で住民多数を惨殺したばかりでなく、ユダヤ人から貴重な美術品を巻き上げ、一部を親しい
ナチ高官にプレゼントしてご機嫌をとっていた。戦後、裁判にはかけれられたが、証拠が揃わず、
「ナチの軍服を着ていた」という微罪のみで放免され、悠々とした生活を送っていた。

一方、本作の一方の主人公であるユダヤ人ジャーナリスト、ハンス・クノープは、オランダの新聞社系の
雑誌編集長。彼のもとに、イスラエルから「ピーター・メンテンはポーランドでおきた大虐殺の指揮者
だった。証人もまだ行きている」という電話がかかってきた。ジャーナリストして見逃せない情報に、
彼は単独メンテンに会いに行く。そしてこのメンテン事件の闇に深く関わっていくことになる。

本作の一番の見どころは、ジャーナリスト・クノープがほとんど一人で隠されていたメンテンの悪行を
暴き出す努力をする過程だ。カメラマンと二人で今はソ連領の虐殺現場に行き、たまたま虐殺現場で
遺体を(遺骨)を発掘する現場に立ち会え、かつ当時の模様を見ていた村人から証言の録音も録ることに
成功する。警察の中にいる気骨のある刑事の協力もありつつ、次第に客観的な証拠が集まり始めるが
司法当局はなかなか動かない。いよいよ逮捕という段になって警察が自宅を訪れるとすでに逃亡した
後。しかし、クノープはドイツの雑誌社に協力を求め、メンテンがスイスに潜伏していることを突き止め、
オランダ検察が踏み込むシーンをスクープ、ここまでの顛末を本にして出版もした。

身柄をオランダに移送されたメンテンは裁判にかけられ当時の目撃証人が何人も出廷して証言、結果
メンテンは禁錮15年となった。しかしメンテンは控訴する。
祝福ムードであった社内だが、控訴後も執拗にメンテンを置い続けるクノープは、次第に雑誌社の中でも
孤立していく。またメンテン派の記者の嫌がらせとしか思えない行動に邪魔をされ、ついには会社を辞めて
しまう。会社全体がユダヤ人に対して寛容でない事が明らかになったことも決断に至る原因の一つだった。
さらに仲間だと思っていたカメラマンが法廷で突然裏切りに出た。今はソ連領になった虐殺現場での
撮影もクヌープのヤラセだと証言したのである。カメラマンはクヌープが金の支払いをケチったと恨んで
いたらしい。そこをメンテン側に買収されたようだ。これにより、メンテン事件はクヌープのでっち上げでは
ないかとの憶測が大々的に取り上げられた。そんなことも会社を去った大きな要素となった。

控訴審では、当時の司法取引が持ち出され、無罪に、さらに検察は上告し、最高裁判所の判断が下される
ところまで行った。この裁判の鍵を握っているのが、メンテンの弟であった。兄に死んだと言われていた弟は
カンヌで生きていることがわかり、クヌープは何度も彼の元に足を運び法廷で証言するように説得するが、
兄は憎いが今更なにになる、と証言を拒む。しかし、クヌープの「このまま行けば彼は無罪になってしまう」と
の必死の説得に、1945年パリであったことを話した。当時パリにいた兄弟はソ連軍やアメリカ軍の侵攻に
ドイツ軍がもうもたないだろうと判断していた。そして兄メンテンは自分の行いを振り返り恐怖していたのだ。
将来、兄の罪が自分や母親に降りかかることを恐れた弟は、兄が告白した虐殺や絵画の強奪などの顛末を
文書にして署名し、公証人にあずけていた。その存在を知ったクヌープは、これを裁判所に提出してくれ、
と頼むものの、拒否する弟であった。

上告審では、メンテンは虐殺当時ポーランドにはおらずベルリンにいた、とのまるめこまれた証人のウソ
証言が始まっていた。そこに割り込むようにして、弟の姿が法廷に現れた。事、ここに至って真実は明らかと
なり、メンテンは禁錮10年、罰金10万ギルダーが確定したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コレクター 暴かれたナチスの真実 De Zaak Menten_e0040938_17031545.jpg
ミニシリーズを短くしたので話題はてんこ盛りで、話が込みってしまって分かりづらいところもあったが、
孤独になってもメンテンを追い詰めていったクヌープの信念が、数本をまとめた分逆に多岐に渡って
説明されるので、厚みを以て迫ってきた。最初のタレコミ電話から最高裁の判決までほぼ10年間、信念を
貫き通したあるジャーナリストの生き様は、見事であった。こういうジャーナリストの存在を許さなく
なった現況の世界情勢は極めて危険であり、直近の作品ではないが、現代のジャーナリズムに対する大きな
警鐘として捉えることが出来る作品である。

<IMDB=7.9>
<Rotten Tomatoes=No Data>
<KINENOTE=70.4 >





by jazzyoba0083 | 2019-01-05 23:45 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)