ヒトラーに屈しなかった国王 The King's Choice

●「ヒトラーに屈しなかった国王 The King's Choice」
2017 ノルウェー Paradox. 136min.
監督:エリック・ポッペ
出演:イェスパー・クリステンセン、アンドレス・バースモ・クリスティアンセン、カール・マルコヴィクス、カタリーナ・シュットラー他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<監督>
昨年映画館に見に行くつもりが機を失ってしまい見られなかった作品。この度WOWOWが放映してくれたので
録画して鑑賞した。個人的にノルウェーという国をよく知らない。ビートルズの曲と村上春樹の小説、ノーベル賞
冬季スポーツのノルディックくらだろうか。その国の第二次世界大戦時にこうした秘話があったことを知り得たことが、
まずこの映画を観たことの収穫。スカンジナビア半島の帽子のように北極海に面した横に細長い国である。首都は
オスロ。

映画の冒頭で説明されるが、ノルウェーは長らくデンマークとスウェーデンの属国状態であったが、20世紀の初頭
独立の機運が盛り上がり、国民投票で君主制が選ばれ、議会は投票の結果デンマークのカール王子(デンマーク国王
フレデリク8世とその妃でスウェーデン=ノルウェー国王カール15世の娘であるロヴィーサの次男。兄はデンマーク王
クリスチャン10世。)を国王に選出し、カール王子はホーコン7世として、オスロに入り、ノルウェーは立憲君主国で
主権国家となった。この映画はホーコン7世の治世の1940年4月、突然侵攻してきたナチスドイツとの戦いの物語で
ある。4月9日から3日間を描く。

当時、破竹の勢いであったヒトラー率いる第三帝国は、版図を急激に広げつつ有り、ドイツの周辺国に次々に侵攻して
いった。ノルウェーも例外ではなかった。本作では、オスロ駐在のドイツ大使がヒトラー直々の命令で国王に謁見し、
ナチスが認めた人物を首相に据えて、無血的に国を明け渡せと主張してきたのに対し、断れば、軍事侵攻を招き
(既に始まっていた)国民に犠牲を強いる、しかし、主権国家として、国民に信を問わない政体はありえないと考える
国王は、王宮から北へ北へと逃げる道すがら、悩みに悩む。息子の皇太子は国民の苦難を看過できないとして軍に
入ると主張する。 国王は謁見にやってきたドイツ大使に対し、国民の信を得ていない人物を首相に任じることはで
出来ない、とドイツの交渉を断ってしまう。悩んだ末に、国王は国民に艱難を舐めさせることになっても主権国家
たる挟持を捨ててはならない、と思ったのだ。その後ホーコン7世と皇太子はロンドンに亡命し、対独抗戦を励まし
続ける。当のノルウェーはドイツの本格的な侵攻に3日間で降伏した。皇太子の家族(ホーコン7世の孫たち)は
アメリカに避難していた。ドイツの敗戦とともに、家族はロンドンに集合し、オスロへと戻ってきたのだった。

本作では以上のような経緯をホーコン7世、駐オスロドイツ大使ブロイアーとその妻、皇太子、そして前線の
まだ少年のような兵士セーベルの目を通して描いていく。原題になる通り、「国王の選択」は、自分をノルウェーの
国王に選んでくれた国民を捨てる訳にはいかない、やすやすとヒトラーにくれてやることはしない、という決断は
身を捩るような苦しい決断だったに違いない。しかし、主権国家としてのノルウェーを決して売らないという決意は
末端の兵士やドイツ大使にも伝わる力強さを持っていたのだった。国民から愛される国王であり、国民を心から愛した
国王の決断だったのだ。物語を3日間という短い時間に押し込めたことにより、より映画から伝わるメッセージが
濃く感じられたのだった。画面がいささか単調だったかなあ。

この映画の中には今の世の中でも通じるセリフがたくさん出てくる。ということは、原題が第二次世界大戦前夜の
ような状況になっている、ということではないか、そう思ってこの映画を見る時、本作がただの歴史伝記映画では
ない、と思えてくるのだった。

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<ストーリー>
第二次世界大戦当時、ナチス・ドイツに抵抗し、国の運命を左右する決断を下したノルウェー国王の3日間を描いた
ドラマ。1940年4月、ナチス・ドイツ軍がノルウェーに侵攻。降伏を拒否したノルウェー国王ホーコン7世は、
首都オスロを離れるが……。

1940年4月9日、ナチス・ドイツ軍がノルウェーの首都オスロに侵攻。これに応戦するノルウェー軍だったが、
圧倒的な軍事力によって、主要都市が相次いで占領されてしまう。ドイツ軍は降伏を求めてくるが、ノルウェー
政府はその要求を拒否。
ノルウェー国王のホーコン7世(イェスパー・クリステンセン)は、政府閣僚と共にオスロを離れる。
だが、ドイツ公使は再び降伏を要求し、ノルウェー政府に国王との謁見の場を設けるよう求めてくる。
翌日、ドイツ公使と対峙した国王は、ナチスに従うか、国を離れて抵抗を続けるか、国の運命を左右する選択を
迫られる……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:84% Audiece Score:81%>
<KINENOTE=70.3点>




by jazzyoba0083 | 2019-01-30 23:15 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)