ファースト・マン First Man

●「ファースト・マン First Man」
2018 アメリカ Universal Pictures,Dreamworks Pictures and more. 141min.
監督:デイミアン・チャゼル 原作:ジェイムズ・R・ハンセン『ファーストマン』 
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ他
出演:ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、ジェイソン・クラーク、カイル・チャンドラー、コリー・ストール他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
宇宙モノは実話からSFまで幅広く好きだから、私としては当然シネコンへ。しかも監督がチャゼル、主演が
ライアン・ゴズリングと来ては観ずにはいられない。

しかし、2時間20分、観終えて感じたことは、フライヤーも予告編も見ていたのだが、想像したものと違った。
この映画は、いわゆる英雄譚でも月への大冒険譚でもない。人類で初めて月に降り立ったニール・アームストロング
という人は、どういう人で、何故この人が月へ最初に行ったのか、という面にスポットを当てた人間ドラマだ。
だから宇宙ものとしては比較的地味だし、華々しくないし、むしろ暗いかもしれない。
時間配分としてはアポロ11号の月面着陸より、それ以前のことに多くの時間を費やしている。

情報によれば、とにかくアームストロングという人は、謹厳実直真面目、自己顕示欲もなく冷静沈着、肝が
座っている男で、しかも寡黙。映画でもゴズリングのセリフは多くないと言うか少ないというか、殆ど無いと
いってもいいほどだ。
それ故、これまで何度も映画化の話はあったが、ニールという人物が地味すぎで話にならず、また月面着陸の
後も多くを語ろうとせず、今日まで来ていたという。チャゼル監督はそれをそのとおりになぞり、一連のニール
絡みの事柄にマスコミは登場せず、月面着陸後のパレードや大統領との会見も描かれない。だいたい月面で
星条旗を立てるシーンすら無い。ヒューストン司令部の喜びのシーンや歓声も、テレビに釘付けになる国民の
姿もない。繰り返し発生する緊張、それに対する冷静な対応のニールの姿が繰り返される。

アップを多用し、ニールの目線での表現が多い。16ミリフィルムと70ミリフィルムを使い分け、さらにIMAX
カメラも投入、VFXやCGはほとんど使わず、ミニュチュアを作り、背景に必要なものは大きなLED画面に当時の
映像を映し出して合成したというほど、とことん当時の映像にこだわった。音楽もテルミンを使用したりとにかく
拘っている。
「映画にならない」ニールの物語をどう映画に仕立てたのか、その当たりのチャゼルの工夫がこの映画の見所。
普通の宇宙モノを期待していくと裏切られるかもしれないが、この映画の主旨はニールという人物が主で、月面
着陸は従なのだ。だから冒頭テストパイロットでのあわやの着陸に続き描かれるのは難病の娘の死である。

宇宙開発に対しソ連に遅れを取っていたアメリカの焦りは有名な話で、これまでも多くの映画に描かれて来た。
そうした事実を踏まえ、ジェミニ時代、アポロ計画の初期には悲劇的な事故も少なからぬ起きた。胆力を見込まれた
ニール・アームストロングは難しいプロジェクトに投入され、トラブルが次々と起きるが、そのたびに冷静で
周囲の信頼は厚く、当然のごとく月面着陸でも船長に指名される。ニールも当然のごとく受け入れる。

一方、二人の子供がいる良き父でもあったが、仕事の話は家ではしない。月面着陸が決っても子供に説明も
せず、妻に怒られる始末。夫婦の会話は多くはない。妻は夫のそういう性格を知っているので多くは
語らないが、不満は溜まっていた。(妻を演じたクレア・フォイが良かった。映画では描かれないが、夫婦は
38年も連れ添った挙げ句に離婚している)

そして、月面でクレーターに投げ入れたのは地球から持ってきた亡くなった娘カレンのブレスレットだった。
このワンシーンで、ニールという人間が決して冷静冷徹感情を動かさない心だけの人物ではないことを
描ききったと言えよう。(この映画を監修したニールの息子さんはこのことが実際にあったかどうかは
わからないという。チャゼル監督も事実として挿入した話題ではない、と話している)

アップの画面が多くて疲れたが、宇宙モノの新たな描き方をした作品として評価は高くていいと思う。

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<ストーリー>
NASAによる月面着陸計画に人生をささげた宇宙飛行士、ニール・アームストロングの実話を『ラ・ラ・
ランド』のデイミアン・チャゼル監督が映画化した人間ドラマ。『ラ・ラ・ランド』でもチャゼル監督と
タッグを組み、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞したライアン・ゴズリングがアームストロングを
演じる。

1961年、幼い娘カレンを病気で亡くした空軍のテストパイロット、ニール・アームストロング(ライアン・
ゴズリング)は、悲しみから逃げるように、NASAのジェミニ計画の宇宙飛行士に応募する。

1962年、宇宙飛行士に選ばれたニールは、妻ジャネット(クレア・フォイ)と長男を伴ってヒューストンへ。
有人宇宙センターでの訓練と講義を受けることに。指揮官のディーク・スレイトンは、世界の宇宙計画を
リードするソ連すら到達していない“月”を目指すと宣言。月に到達する小型船と帰還のための母船の
ドッキングを実証するジェミニ計画が成功すれば、月面に着陸するアポロ計画へと移行することが決まる。

やがて、ハードな訓練を乗り越え、絆を結ぶ飛行士たち。その中には、エリオット・シー(パトリック・
フュジット)やエド・ホワイト(ジェイソン・クラーク)がいた。そんなある日、ソ連が人類初の船外活動に
成功。またしても先を越されてしまう。

1966年、ニールは、ジェミニ8号の船長として史上初のドッキングを命じられる。代わりにその任務から
外されたエリオットが、訓練機の墜落事故で死亡。友の無念を胸に、デイヴ・スコット(クリストファー・
アボット)と2人、ジェミニ8号で飛び立ったニールは、アジェナ目標機とのドッキングに成功。ジェミニの
回転が止まらなくなる事故に遭遇しながらも、冷静な判断で危機を脱する。

こうして、アポロ計画へと移行し、パイロットにはエドが選ばれる。だが1967年、アポロの内部電源テスト中に
火災が発生。エドと2人の乗組員が死亡する事故に。アポロ計画が世間の非難を浴びていた1969年、月に着陸
するアポロ11号の船長にニールが任命される。乗組員は、バズ・オルドリン(コリー・ストール)と、
マイク・コリンズ(ルーカス・ハース)の2人。家族と別れたニールたち3人は、ついに未知の世界へと飛び
立つ……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:87% Audience Score:66% >
<KINENOTE=74.9点>



by jazzyoba0083 | 2019-02-11 11:45 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)