ジョーカー Joker

●「ジョーカー Joker」
2019 アメリカ Warner Bros. DC Comics,DC Entertainment and more. 122min.
監督・(共同)脚本:トッド・ウィリアムズ
出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、フランセス・コンロイ他

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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
これがDC映画か?と思ってしまうほどシリアスな出来。もちろんエンドロール後のお遊びもない。
DC由来の作品としては初となるヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲ってしまった。欧州で賞を
獲るような、カンヌ系の作品ということが出来るだろう。

更に2008年のクリストファー・ノーラン監督「ダーク・ナイト」で「凶悪」そのものの
ジョーカーを演じたヒース・レジャーをもってジョーカーの演者は定まっったと思っていたら、
いや、ホアキン・フェニックス凄いわ!

ホアキン自身も本作のジョーカーと重なるような人生を歩んできた点もあって、彼の描くジョーカー
は、世間から虐げられた人物が狂気を発するようになっていく様を実にリアルに演じていた。
監督のトッド・ウィリアムズは最近は「アリー/スター誕生」の製作にかかわってりして
(ブラッドリー・クーパー繋がりだと思うけど)やや真面目な作品にもタッチしていたが、なんと
いっても「ハングオーバー」シリーズに代表されるようにおバカ映画ばかり撮って来た監督。

プロデューサーサイドの人を見る目にびっくりする。こんな作品作っちゃうんだなあ。

本作は新聞やYou Tubeあたりでも盛んに考察と分析が行われている。そして一番良く聞かれるのが
トランプが作ったアメリカの不寛容の世界を告発している、障害者と貧困者に思いやりのない世界、
作品中ではウェイン家に代表されるエスタブリッシュメント、富裕層への優遇などを告発していると
いうものだろう。

共同脚本を書いたスコット・シルバーは「思いやりや共感に欠け、治安が悪化した社会から生まれる
のがジョーカー」と言う。
映画を観ているとよーく分かるが、この世にはジョーカーの卵が沢山あり、大量に孵化する日が近い
ということ事実。

観終わってどっぷり重い気持ちを引きずって映画館を後にすることだろう。それにしてもホアキンの
ジョーカーは鮮烈過ぎる。

どこからどこまでが妄想なのか良く分からないところもあるが、作中で使われるチャップリン「モダン
タイムス」の主題歌「スマイル」が、意味深長だ。「モダンタイムス」も資本主義に搾取される虐げら
れた男の話だからだ。
その映画に対するリスペクトというか主張の引用が強烈に伝わってくる。
本作、全体的に音楽の使い方が上手いと思う。

突然笑いだしてしまう病気のアーサーは、その障害もあって職もままならない日々。男手一つで老母の
面倒を見ている。普通にある状況の男が狂気を帯びたジョーカーとなっていく過程に目を見張る。
かなり血も飛ぶし、気分の悪くなるシーンもあるが、それを含めても、障害者を受け入れず、貧困者を
理解せず、一方ウェインに代表される富裕層・権力を持つものはぬくぬくと生きている。
そうした状況をアーサーは受け入れることは出来なかった。本能的に。

本作は「ダーク・ナイト」とは全く別の世界の出来事と思った方がいいだろう。ヒース・レジャーの
生きたゴッサムシティとは別世界の話。

時代は80年代。本作のジョーカーが対峙するのはまだ5歳くらいのブルース・ウェインだ。目の前で
両親が殺される。彼はその後バットマンとなりゴッサムシティの正義の番人になるのだが、
ホアキン・フェニックスの年齢とは上手く都合がつかない。例えば30歳のバットマンとすると
ジョーカーは70歳近い老人となってしまう。本作の世界観は、その辺りは無視しているように感じた。
主役はあくまでも普通の人がジョーカーとなる過程であり、彼の世界観だからだ。

私として一つ良く分からなかったのは、見舞いに来た道化師仲間で拳銃をアーサーに渡してくれた
仲間を惨殺してしまうのだが、そんなに憎しみを抱いていたのか?小人は「君は僕に優しかった」と
見逃すのだが。あれは妄想か?もう一回観なくては分からないのかなあ。

とにかく強烈なインパクトを持つ映画だ。ラストシークエンスでアーサーは精神病院にいるのだが、
当然といえば当然なのだが、廊下を歩く彼の靴の跡には血が付いている。直前に受けていた
カウンセラーを血が出るほどに殺してきたというのか。それは妄想なのか。
メンタルに多少の障害がある人物の未来にある姿を象徴したのだろうか。様々な読み解きが出来る
映画でもある。
観終わって鬱になる人や、まじでジョーカーになってしまう人が出そうな狂気を孕んだ作品だ。
アメリカの批評家にはこの映画に対し辛い点を付けている人も少なくない。確かに人に依っては
嫌悪感を残す要素はあるだろう。唾棄すべき現代に復讐するというのはいいのだけれど、病気が
伴う狂気というのはどう理解したらいいのだろうか、とか。

しかし、DCは「バットマン・リターンズ」の頃から内省的な作りになり、ついにスピンオフ的な
映画とはいえ、ここまで人間を深く抉る作品を作るようになるとは。

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<ストーリー>
いわゆるアメコミが原作の作品としては史上初となるヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞の快挙を
果たした衝撃のサスペンス・ドラマ。
DCコミックスのバットマンに登場する最強最悪の悪役“ジョーカー”に焦点を当て、コメディアンを
夢みる心優しい男アーサー・フレックが、いかにして社会から切り捨てられ、狂気の怪物へと変貌を
遂げていったのか、その哀しくも恐ろしい心の軌跡を重厚な筆致で描き出す。
主演は本作の演技が各方面から絶賛された「ザ・マスター」「her/世界でひとつの彼女」の
ホアキン・フェニックス。共演にロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ。
監督は「ハングオーバー」シリーズのトッド・フィリップス。

 大都会の片隅で、体の弱い母と2人でつつましく暮らしている心優しいアーサー・フレック。
コメディアンとしての成功を夢みながら、ピエロのメイクで大道芸人をして日銭を稼ぐ彼だったが、
行政の支援を打ち切られたり、メンタルの病が原因でたびたびトラブルを招いてしまうなど、
どん底の生活から抜け出せずに辛い日々を送っていた。そんな中、同じアパートに住むシングルマザー
のソフィーに心惹かれていくアーサーだったが…。(allcinema)

<IMDb=★8.9>
<Metacritic=59>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:68% Audience Score:89%>
<KINENOTE=83.1 点>





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by jazzyoba0083 | 2019-10-19 12:10 | 洋画=さ行 | Trackback(2) | Comments(0)